第169回大阪資料・古典籍室小展示「古典籍資料のいろはの『ろ』」
更新日:2023年5月22日
展示内容
「古典籍」とは一般的に江戸時代以前に作られた書物のことをさしますが、中之島図書館では洋装本だけではなく、古典籍も多く所蔵しています。当館ではこれに加え、明治時代以降の和装本や古文書などの資料も古典籍と同じ取り扱いをしてきました。今回の展示では当館が所蔵するこうした資料を総称して「古典籍資料」として、その入口をご紹介します。
第168回大阪資料・古典籍室小展示「古典籍資料のいろはの『い』」に続き、今回の展示では和装本に注目し、その部位の名称や大きさの違いを実物の展示を通じてご案内します。
開催期間
令和5年5月22日(月曜日)から令和5年7月22日(土曜日)まで
※平日9時から20時 土曜日9時から17時 入場無料
※期間中の休館日は、毎週日曜日、祝日、6月8日(木曜日)です。
場所
大阪府立中之島図書館 3階 大阪資料・古典籍室1
展示資料一覧
古典籍資料の部位
和装本の各部分の名称を実物を展示してご紹介します。
平家物語図会 高井蘭山/著 有坂蹄斎/画 文政12年(1829) 【朝日255.6/11/#】
外題(げだい)・題簽(だいせん)
表表紙に書かれたタイトルを外題といい、この外題のうち別に紙片にタイトルを書いて表紙に貼ったものを題箋といいます。
表紙(ひょうし)
本の外側のこと。本の始まる方の表紙を表表紙(おもてびょうし)、終わりの方の表紙を裏表紙(うらびょうし)といいます。表紙に絵が描かれているものを絵表紙といいます。ほかにも表紙の材質などで区別をすることがあります。
請求記号(せいきゅうきごう)
図書館で貼り付けしたラベルでこの番号順に本を並べて管理しています。古典籍資料は洋装本と異なり、大阪府立中之島図書館図書分類法に基づいて分類されています。上から分類番号、通し番号の順番に段を分けて記載しています。特別文庫の場合は1番上に文庫名がつきます。
版心(はんしん)・丁(ちょう)
袋綴じした版本の中央部分を版心といいます。この部分に記された書名は版心書名といいます。
丁は今の本のページに近いものです。袋綴じにした和装書では、表裏1枚で1丁となります。先に来るページは「■丁オ(表)」、後にくるページは「■丁ウ(裏)」として区別しています。
蔵書印(ぞうしょいん)
みずからの所蔵を示すため、歴代の所蔵者がハンコを押したものです。記載内容から本の来歴がわかることがあります。
この本は「朝日新聞文庫」の一つであるため、下に「朝日新聞社」の蔵書印が押されているほか、上部にも蔵書印が押されています。
内題(ないだい)
書物の内部に記された書名のことを指します。古典籍資料の中には外題と内題が異なる場合もありますが、一般的には内題が優先されます。
見返し(みかえし)
表紙の裏側をいいます。江戸時代中期以降、見返しに書名や著者などの情報を印刷する習慣が定着しました。
匡郭(きょうかく)
本の各丁を囲む枠線のことです。匡郭より外側のことを「欄外」といいます。
刊記(かんき)
刊本に書かれた書物の出版に関する内容について書かれたものです。この本では校合(校正)者、画家の名前とともに、文政12年(1829)に京都(京師) ・大坂(摂陽) ・江戸で出版されたことがここからわかります。
背(せ)
本を綴じた方を背といいます。洋装本の場合は背表紙がありますが、和装本にはなく、背に直接書名や巻数などを書入れています(「背書き」といいます)。
帙(ちつ)
書物の保護をするため、くるむものです。
>>もっと詳しく知りたい方は「古典籍の部位」も併せてご覧ください。
いろいろな和装本
大本(おおほん)
- 五畿内産物図会 大原東野/著 河内屋太助 文化10年(1813) 【802/4/#】
美濃判紙を二つ折りした大きさのものです。さらにサイズの大きな本は特大本として区別する場合があります。実用書や和刻本(日本で出版された漢籍のこと)に多く見られます。
中本(ちゅうほん)
- 東海道中膝栗毛 十返舎一九/編 改板本 【255.8/38/#】
大本をさらに二つ折りにした本のことです。草双紙(くさぞうし。江戸時代中期から明治時代の初めまでに刊行された通俗的な読み物のこと)は一般的にこの大きさで刊行されました。
横中本(よこちゅうほん)
- 商人買物独案内 中川五良兵衛 天保3年(1832) 【大和銀91】
中本程度の大きさで横長のものです。こうした横長の本は総称して横本と呼ばれますが、刊行される本は実用的なものが中心でした。
半紙本(はんしぼん)
- 南総里見八犬伝 滝沢馬琴/作 柳川重信等/画 文化11年(1814)~天保13年(1842) 【255.6/2/#】
半紙を二つ折りにした大きさの本です。大本とならび一般的な書型で、絵本類や談義本、草双紙の一部に用いられました。
小本(こほん)
- 平安人物誌 弄翰子/編 堺屋仁兵衛、桝屋利助 文政13年(1830) 【朝日354.1/1/#】
半紙本をさらに二つ折りにした大きさの本です。この本とは異なりますが、とくに洒落本(遊里に関する戯作の一種)に多く見られる大きさの本です。
横小本(よここほん)
- 日本国花万葉記 菊本賀保/著 雁金屋庄兵衛等 元禄10年(1697) 【朝日370/10/#】
小本と同じ大きさで横向きの本のことです。地理案内書などによく見られます。
縦長本(たてながぼん)
- 豆腐百珍 何必醇/編 藤屋善七 天明2年(1782) 【593/20/#】
通常の本よりも縦長の本をさします。縦長である唐本の特徴に似せたもので、中華趣味を内容としたものに多く用いられました。
横三つ切り本(よこみつきりぼん)
- 万代大阪町鑑 小川愛道/編 柏原屋清右衛門 宝暦6年(1756) 【378/160/#】
半紙本を横長に三つ切り(三等分)にした大きさの本です。
豆本(まめほん)
- 絵本十二月 紀伊国屋保兵衛 【子628】
小本よりも小さい判型の本のことを特小本と言いますが、さらに小さい本を豆本と言います。「趣味の本」の側面が強いもので、一般的な出版で流通するものとしては小本までの大きさのものでした。
参考文献
●本の話 [Web] 大阪府立中之島図書館 https://www.library.pref.osaka.jp/site/osaka/about-book.html
●和書のさまざま [Web] 国文学研究資料館 https://www.nijl.ac.jp/etenji/washo/
■『西尾市岩瀬文庫常設展示案内』(西尾市岩瀬文庫/編集 西尾市岩瀬文庫 2003.4) 【018/107N/】
■『日本古典籍書誌学辞典』(井上宗雄/[ほか]編 岩波書店 1999.3)【020.2/28N/】
■『和本入門 千年生きる書物の世界』(橋口侯之介/著 平凡社 2005.10)【022.3/36N/】
■『図録・古文書入門事典』(若尾俊平/編著 柏書房 1997.6)【210.02/6N/】
■『古文書用語辞典』(荒居英次/[ほか]編 柏書房 1983.6)【312.6/77/#】