平成27年度第2回大阪府立図書館協議会活動評価部会の概要(平成28年2月19日)
更新日:2016年3月23日
日時:平成28年2月19日(金曜日)午後2時から午後4時まで
場所:大阪府立中央図書館 多目的室
1 開会
2 委員紹介
出席委員:村上委員(部会長)、岸本委員、岡部専門委員
3 議事(質疑要旨)
【議題1】第二期(平成25-27年度)大阪府立図書館の活動評価について
委 員:大阪府内の図書館職員の研修は当初と比べると内容が随分整理されてきて、それぞれの受講者に配慮されたものとなっている。様々な形で府内の図書館職員のニーズを把握された結果であると思うが、こうした形で、特に市町村立図書館の職員のレベルアップに今後も取り組んでいただきたい。加えて、府立図書館として新たに蔵書評価を実施されたことは評価できる。これまで事例そのものがなかった中で、試行錯誤しながら取り組んでこられたことと思料する。今回、医療と法律の分野で蔵書評価を行われたが、効果的な蔵書の構築に向けて、これをどのように発展させていくかが課題である。つまり、今期の蔵書評価の経験をどのように次期の活動に活かしていくのか。例えば、次は分類を変えて実施するのか。それとも、医療と法律の分野で得た成果をもとに、総括的な形での蔵書評価を行っていくのか。
事務局:医療分野については、外部評価を行ったところだが、資料の鮮度がいかに重要かを改めて認識させていただいた。特に、資料の扱うテーマごとに利用できる出版後の経過年の限度をご指摘いただいたことは大きな成果だった。しかし、専門的な医療分野の書籍を公立図書館がどれだけ購入するかは難しい問題である。府立図書館の収集方針や予算を見極めながら、例えば府内に多くある医療系の大学との連携なども検討していきたい。一方、法律分野については、よく収集できていると評価していただいた。この分野でも予算を見極める必要があるが、引き続き目配りしていきたい。但し、全分野について、このような蔵書評価を行うのは現実的には難しいため、ひとまずはこの2例を成果として、今後の取組みに活かしていくこととしたい。
委 員:特に法律分野では、行政サービスやそれに付随する府民のニーズにどう活かしていくかが次の段階として重要になってくるため、その点もご検討いただきたい。
委 員:「e-レファレンス満足度」が3年間を通して95%近くという説明があったが、これは非常に高いレベルであり、広報の良い素材にもなるため、積極的にPRしていただければと思う。また、大変興味深かったのが、「重点目標1-2」の研修事業の充実に向けて、図書館職員が行っている「出前講習」であるが、これはどのような形でカリキュラムを組んでいるのか。
事務局:レファレンス能力向上は重要だと考えているが、府内のどの図書館にも同じ参考図書があるとは限らないため、出前講習のメインは、インターネットによる検索方法を中心とした「情報検索講座」である。カリキュラムは、基本的なテーマを実施したあと、どのようなテーマの要望が多いかを情報収集しながら組んでいるが、最近よく要望に挙がってくるものは、地域資料や子ども資料のレファレンスである。講習の実施にあたっては、リハーサルをすることで、知識の共有を図るとともに、話し方、説明の仕方、資料の作り方、講習の進め方等について、相互に意見を取り入れながら、より良いものを作り上げている。このように、出前講習は府立図書館の司書の能力を高める場としても貴重であると考えている。
委 員:相互にチェックすることで講習の質を担保していること、出前先から次のニーズを汲み取り、PDCAを回していることは大変評価できる。
委 員:レファレンスの事例は、図書館のコンテンツとして非常に良いPRの材料となるはずである。従って、「レファレンス満足度」のアンケートの分析等はもっとアピールしていってもよいのではないかと考える。
委 員:「重点目標4-1」のデジタルデータの公開については、非常に時流に乗ったものであると評価できる。今後もタイミングを逃さずに続けていくことで、利用者にとっても、大阪府以外の方々にとっても有意義なものになっていくのではないか。特に昨今は、オープンデータ、オープンガバメント、ハーティトラスト等のデジタルアーカイブが盛んであるので、この流れに乗って、情報発信を強化していってほしい。
委 員:「重点目標3-3」の学校支援サービスについては、平成27年度の実績が重点指標3項目全てで前年度比減となっているが、これは何が原因なのか。
事務局:一つの要因を特定することは難しいが、府立図書館としては、今後、貸出のみならず様々な形で、図書館に触れていただきたいと考えている。例えば今年度は、高校生のための図書館講座「りぶこ」を企画し、試行実施した。来年度以降は本格的に実施していく予定である。これは府立図書館の色々な機能を知ってもらうための取組みで、館内見学や選書現場の説明等も盛り込んでいる。
委 員:次期以降も、学校図書館との関係は一つの大きな課題になってくると考えるため、この点はよくご検討いただきたい。「りぶこ」や「重点目標5-2」のインターネットの活用については、単に情報を発信するだけではなく、ターゲットを絞って取り組む必要がある。さらに、ターゲットに対して何を伝えるかだけではなく、どのように伝えるかも重要である。学生から色々な図書館を見学した感想を聞くと、中央図書館の場合、やや敷居が高い印象を受けるようだ。若者向けの工夫もなされているが、若者の目線とは少し違う形で情報が発信されている可能性がある。今後は対象に合わせた届け方、表現の仕方の工夫がもっと要求され、単純に発信数だけでは評価できなくなってくるだろう。ツイッター等での情報発信は、ターゲットを絞った上で、その人達にしっかりと届くような工夫をしていっていただきたい。このような点も踏まえて、学校図書館との連携についても丁寧に取り組んでいただければと思う。
事務局:いただいたご意見を参考に検討していきたい。
事務局:「重点目標3-3」の学校支援サービスについては、今期、近隣の小学校に働きかけて、選書のサポートを行ったり、スクールサービスデイに来てもらったり、こちらから出向いてお話し会を実施してきたが、学校設置者が異なるため、結果としてうまく進めることができなかった。しかし、小中学校と地元の公立図書館との連携は、かなり充実してきている。そこで、府立図書館としては、今後、府立学校への支援をメインにするべきではないかと考えている。
委 員:小学校に対する支援については、図書館協議会でも整理が必要とされたテーマである。各自治体の公立図書館と公立学校との連携は増えてきてはいるものの、まだまだ自治体による差も大きい。府立図書館としては小学校や中学校への直接的な支援というよりは、仕組みづくりの部分でのサポートもご検討いただきたい。
委 員:「重点目標4-1」において、大阪関係のデータベースの充実をめざしておられるが、その見せ方の部分についてお伺いしたい。例えば、今注目されているようなテーマのコンテンツをピックアップして、情報発信されているか。というのも、大阪文献データベースの新規登録数やアクセス数は持ち直してきているが、今年特に大阪が注目されている中で、もう少し伸びてもいいのではないかと感じている。直近では、朝のテレビドラマを通じて大阪が人気を集めているため、関連する古典籍資料があれば、ピックアップして発信することを考えておられるかお伺いしたい。
事務局:朝のテレビドラマに関連したものではないが、例えば、今年は「真田丸」が人気を博しているため、大阪資料・古典籍課の部屋に「真田棚」というものを作り、関連資料を配架している。また、二ヶ月に一度実施している小展示では、できるだけトピックに合うものを選び、中之島図書館が有する古典籍の魅力を発信できるようにしている。しかし、大阪文献データベースを活用した情報発信は、現時点では十分に実施できていない。
委 員:魅力的なコンテンツが豊富にあるため、ツイッターを活用するなど発信の仕方も様々に工夫して、積極的に情報発信していただければと思う。
委 員:デジタルデータについて、再利用の許諾はどのようにしているか。
事務局:ホームページにも掲載しているが、例えば貴重書の画像データを出版掲載又は放映する場合には、申請していただいた上で許可書を発行している。無制限に利用できるオープンデータ化はしていない。
委 員:「クリエイティブ・コモンズ」のライセンスで有効活用を進めている自治体もあるが、今後は、「作る」「伝える」だけではなく、「使う」という視点も取り入れていただければと思う。
委 員:大阪が有している様々な財産は、できるだけ多くの人達に使ってもらってこそ意味がある。特に現在は、全国の注目が大阪に集まっている中で、人々の興味に応えていくような資料をタイムリーに分かりやすく広めていくことは、府立図書館の一つの責任であると考える。同時に、これは全国へ大阪の財産をアピールする良い機会でもあると思うので、積極的に取り組んでいただきたい。
【議題2】第三期(平成28-30年度)活動評価について
ア)重点目標の取組内容と工程について
委 員:重点目標評価シート4において、「デジタル大阪ポータル」の構築をめざしておられるとのことだが、デジタルアーカイブを作った場合に、システムの永続性が担保されない、つまり予算の切れ目でシステムが終了するという問題がよく指摘されている。デジタル大阪ポータルについては、できるだけ継続していけるような仕組みを整えていってもらいたい。「知の蓄積を未来に伝えていく」ことを掲げながら、予算の切れ目とともにシステムが終了するような事態に陥らないよう、今の段階から継続性を視野に入れて設計を進めていただければと思う。
委 員:本件の成果指標は、デジタル大阪ポータルの「公開」であるが、3年間の評価はどのような形で行っていくのか。
事務局:その年度に実施したことをご報告させていただく予定である。例えば、今年度は、市町村立図書館に対してアンケートを行い、大阪関係のデータを保有しているかどうか、そのデータの活用にあたり府立図書館が連携できることはあるかどうかを調査した。こうした取組みについてご報告することとなる。
委 員:デジタル大阪ポータルは、平成30年度の下半期に公開の予定だが、それまでの段階として押さえておくべき事柄がもう少し具体的になっていれば、進捗状況を把握しやすい。さらに、タイムスケジュールを見える化していただくと評価しやすい。第三期の重点目標はアウトカムを重視するとのことだったが、この観点で言えば、単純に「公開」を目標とするのが適切なのか否か検討の余地がある。
委 員:「公開」と言っても、どのようなものを公開するのか、具体的な像が明らかでなければ、件数は少ないが公開するだけで目標達成ということになりかねない。公開する時点のイメージをもう少し具体的に示していただいた方が評価も適切に行えるため、この点はご検討をお願いしたい。
委 員:第二期の3年間にわたる活動の中で、評価に唯一「△」がついている、障がい者サービスの改善に向けてはどのように取り組んでいかれるのか。
事務局:障がい者サービスについては、第三期の重点目標評価シートに入っていないが、来年度から法制が変わることもあり、しっかりと取り組んでいきたい。第二期の活動評価で「△」がついた主な原因は、研修や情報交換会の参加団体数があまり伸びなかったことにある。しかし、研修については、今年度、「基礎」と「実践」というレベル別の研修を組み立てることができたため、今後うまく展開させていきたい。情報交換会については、府内のどの図書館も障がい者サービスを高いレベルで実施できているという状況ではない。今後も、一堂に会して障がい者サービスに関する情報交換する場はもっていくが、その他にも、各自治体の中心館に足を運び情報収集等を行う巡回相談等の機会をとらえて、各図書館が具体的に直面している問題を個別に把握する、きめ細かな対応も積極的に行っていきたい。
委 員:ある程度こなれてきて定型的になってきている研修については、例えば画像や動画をアップして、そこにQ&Aをつけるなど、誰もがいつでも自由に見て学ぶことができる、e-ラーニングのような形で提供していく予定はあるか。
事務局:動画については、現時点ではその予定はない。しかし、府内の図書館のみが利用できるサイト上に、外部講師の研修資料(掲載許可をいただいたもの)や、図書館職員の「出前講習」の資料を掲載している。また、紙ベースにはなるが、国際児童文学館を中心に作成している新刊紹介の資料を府内の図書館に配布して、自由にコピーを取ってもらえるような配慮をしながら利用いただく努力はしている。
委 員:昨今、複数の人が一箇所に集まること自体、なかなか難しい時代になってきている。そんな中で、新しい技術を活用した研修の仕組みも考えていくべきではないかと思う。また、重点目標評価シート3において、子どもの読書環境づくりを進めるために、講座等の実施が成果指標となっているが、これに限らず、例えば府内の自治体が実施している良い取組みを「グッドプラクティス」として纏めて紹介すれば、同じような自治体で同じような悩みをどのように解決しているかを学ぶことができる。研修の一つのチャンネルとしてこのようなものがあってもよいのではないかと考える。
【議題3】第三期(平成28-30年度)活動評価について
イ)重点取組業務の具体的方策と数値目標、基礎指標について
委 員:基礎指標(35)の「レファレンス事例DBアクセス数」について、アクセス件数を数値目標とするのは珍しくないが、注意を要することとして、例えばコンピュータプログラムに捕捉されることで、一気に数値が上がってしまうケースがある。もちろんこのような数値を取っておくこと自体を否定するものではないが、その数値がどのような意味をもつのか、本当に人間が閲覧したものか否かということも踏まえて分析、又は統計の基礎資料として利用していただくのがよいのではないかと考える。
委 員:従来、レファレンス事例DBは公開件数を指標にしていたが、今回アクセス数に変えた背景は何か。
事務局:レファレンス事例については、館によって、シンプルな事例を多く掲載するスタンスと、テクニックも経験も要する事例を選定して掲載するスタンスとがあるが、府立図書館は後者をめざしている。そのため、シンプルな事例よりはアクセス数を集める可能性が高いのではないかと考えている。
委 員:つまり、シンプルな事例を掲載して総数でアクセス数を増やすよりは、事例を厳選して一件あたりのアクセス数の多いものを掲載することで、総アクセス数を上げようということかと思う。しかし、そうすると、総数よりも一件あたりのアクセス数を見た方が適切な気がするがどうか。
事務局:アクセス数を掲載件数で除するということかと思うが、少し検討させていただきたい。国立国会図書館のレファレンス協同データベースでは、事例数とアクセス数の二つの基準を組み合わせて、貢献度の高い参加館に御礼状を送付しているが、実は府立の二館はずっと御礼状をいただいている。それは結果的には、数ではなく質によるところが大きいのではないかと考えている。
委 員:数値目標について、重点取組業務14項目についてはアウトプットを、重点目標7項目についてはアウトカムを重視した指標としている旨ご説明いただいた。そこで、両者を比較してみると、14項目の方は具体的な数値が示されているのに対し、7項目の方はどちらかといえば具体的な数値ではない、文章化された目標が示されている。しかし、文章化されたものが果たしてアウトカムなのか否かについては議論の余地がある。ついては、目標設定の際にこのアウトプットとアウトカムをどのように考えられたかお伺いしたい。
事務局:何がアウトプットで何がアウトカムなのか、人によって捉え方が異なり、非常に難しかった。例えば、自分がアウトプットだと思ったものが、ある人にとってはアウトカムであったりする。府立図書館の使命にあるように、「大阪における新たな知識と文化の創造に寄与すること」が最終的にはアウトカムになるのだろうが、そこに至るまでの段階で図書館が何をしてどのようになったかを見せることが大変難しく、結果、数値化しやすい「満足度」を使って目標設定しているケースが多い。
委 員:評価の基準として、満足度はあまり安定した指標にはならない気がする。経年的な変化を見ても、決して安定した形で評価を示すとは言えない。満足度を成果指標とする場合、その業務に実際に携わってきた図書館職員の意欲を直接刺激するものにならなければ意味がない。また、重点目標はアウトカムを重視した指標としているようだが、その部分だけにこだわり過ぎると、指標としては不確実なものになる可能性があるため、「アウトカムに結びつく要素の強いもの」を重視すると考えてはどうか。一例として、基本方針3の「子どもの読書活動推進に貢献する人材の育成」については、重点目標評価シートに挙げられている、講座等の単純な実施回数だけが成果指標となるのではない。例えば参加者数にしても、単に数値的な評価ということではなく、その講座等が参加した人々の意欲を喚起し、彼らが子どもの読書活動推進のために様々な活動をしていく“きっかけ”につながるものとして捉えることができる。
委 員:重点目標についてアウトカムを重視していること自体に問題はないが、重点目標評価シートの「成果指標と数値目標」の記載内容だけを見たときに、本当にアウトカム重視なのかという疑問をもたれる可能性があるため、数値目標として挙げたものがどのようなことにつながり、アウトカムをどう意識しているのかという説明を加えていただければ分かりやすいのではないかと考える。
【議題4】その他(報告事項)
質疑なし
4 閉会挨拶
5 閉会
資料1-1 重点目標評価シート一覧 [PDFファイル/82KB]
重点目標評価シート [PDFファイル/1.33MB]
資料1-2 評価の基準と重点目標評価シートの記入について [PDFファイル/155KB]
資料1-3 大阪府立図書館の活動評価 ― 第二期の総括と第三期への課題 ―(素案) [PDFファイル/340KB]
資料1-4 基礎指標(平成23年度~26年度) [PDFファイル/201KB]
大阪府立図書館の基本統計 [PDFファイル/264KB]
資料2-1 大阪府立図書館第3期活動評価について [PDFファイル/146KB]
資料2-2 「基本方針と重点目標」第2期-第3期 対照 [PDFファイル/113KB]
資料2-3 第3期活動評価 重点目標評価シート1~5 [PDFファイル/280KB]
資料2-4 第3期活動評価 重点取組業務自己点検シート(案) [PDFファイル/150KB]
資料2-5 第3期「基礎指標」について(案) [PDFファイル/323KB]