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大阪府立図書館の活動評価について(外部評価報告) 平成25-27年度

更新日:2018年6月28日


[PDFファイル/313KB]

平成28年8月
大阪府立図書館協議会 活動評価部会

はじめに

平成25年度から27年度の三ヵ年は、大阪府立図書館の活動評価の第二期に当たる。活動評価の開始にあたり、府立図書館の使命を「府域の図書館ネットワークの核として、広域的かつ総合的な視点から府民と資料・情報をつなぎ、府民の“知りたい”という気持ちにこたえ、“学びたい”という意欲を育み、豊かで活気あるくらしと大阪における新たな知識と文化の創造に寄与すること」と宣言し、第一期には、国際児童文学館の移転・開館と大阪版市場化テストの導入という二つの大きな変革に取り組んだ。第二期には中之島図書館のあり方の再検討、それにもとづいたリニューアルという大きな事業を進めながら、全体として府域の図書館基盤の充実に取り組んだ。
以下では、5つの基本方針に沿って評価を加える。

1.「基本方針1」
(大阪府立図書館は,市町村立図書館を支え,大阪府全域の図書館サービスを発展させます。)

基本方針1の目標は、大阪府全域にわたる図書館サービスの充実・発展である。この点に関する今期の重点課題は、以下の4項目であった。

  1. 市町村への資料提供、図書館間連携・協力の強化
  2. 府域図書館職員を対象とした研修事業の充実
  3. 他機関との連携・協力
  4. 調査・研究活動、専門性の向上

1については、第一期に大きな成果が得られた協力貸出および市町村間物流をさらに進めた点、第一期外部評価で指摘のあった「府立図書館に求められている資料の分析」を、協力貸出の分析やアンケートにより明らかにした点、協力車のコース再編により、搬送能力の強化に取り組んだ点など、いずれも府域全体へのサービスレベルの向上に繋がるものであり、大いに評価できる。
一方、協力貸出冊数は目標の67,000冊に対して62,000冊台で推移している。第三期評価ではその原因分析をすべきであろう。
2の研修事業についても、第一期に比べ内容が整理され、受講生のニーズに沿った内容になってきた。このことが、目標を大幅に上回る参加者増や、高い満足度の維持につながったと見てよいだろう。研修事業の拡充は、4の府立図書館職員の専門性を高めることにもなり、相乗効果が得られた。
3についても、連携事業の実施回数、連携機関数ともに目標を大きく上回った。MOBIO(ものづくりビジネスセンター大阪)との共催事業が定着したこと、矯正施設や病院等の府域の機関との新たな連携活動など、積極的な取組を評価したい。
このように、基本方針1に関わっては全体に着実な前進が見られた。研修事業に関しては、さらに次の2点を指摘しておく。
ひとつは、様々な職種の職員も含めた研修機会の提供と、研修成果の集積および可視化の仕組みの提供である。後者については、学生の学修を可視化するラーニング・ポートフォリオや、看護領域におけるポートフォリオの導入が一つの参考になるだろう。
さらにインフォーマルな情報交換の場の設定による府域図書館職員どうしの連携強化にも期待したい。府域図書館の連携を支えているのは「人」であり、その人と人の顔の見える関係は、コンピュータネットワーク全盛の時代においても引き続き重要と考える。

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2.「基本方針2」
(大阪府立図書館は,幅広い資料の収集・保存に努め,全ての府民が正確な情報・知識を得られるようサポートします。)

基本方針2の目標は、蔵書とそれを基盤としたサービスの充実である。この点に関する今期の重点課題は、以下の5項目であった。

  1. より効果的な蔵書構築、収蔵能力の確保
  2. レファレンス、資料提供サービスの充実
  3. ビジネス支援サービスの展開・強化
  4. 府域全体の障がい者サービス向上
  5. ICTの進展に合わせたサービス提供基盤の構築

今期の評価において、特筆すべき点のひとつが1である。第一期の外部評価では「資料保存のガイドライン」の作成が進められている点に触れて、府内の図書館全体での図書館資料の保存を考えていくための協議の必要性が指摘された。また、基本方針1と関わって、府域図書館から府立図書館に期待されている資料提供の姿について明確化することが求められた。その第一歩が、府立図書館の蔵書自体の分析、評価である。法律分野と医療情報分野については外部専門家による質的評価が実施され、また、中央図書館の蔵書と府内市立図書館数館との購入図書の比較、重複調査、中央図書館の蔵書利用分析なども行われた。その結果、府立図書館と市立図書館との蔵書傾向の違いも明らかになった。全国的に見てもこのような分析事例自体が無かった中で、試行錯誤を重ねながら苦労して取り組まれた成果は非常に大きいと評価したい。今回の分析結果は、他地域においても応用可能であり、社会的・学術的にも大きな意義がある。この取組を「大阪モデル」として、全国的な取組に発展することを期待したい。また府立図書館においては、これを「今後の府民のニーズに結び付けていく」という次のステップにつなげていただきたい。
2のレファレンスサービスについては、e-レファレンスの満足度が3年間を通じて95%近くで推移しており、堅調と言ってよいだろう。レファレンス協同データベースへのデータ登録については一層の促進を図るとともに、その効果を測定するために、レファレンス協同データベースに登録したデータへのアクセス数等も加える必要がある。
2から4を通じて、年度ごとの指摘に即応し、新たな企画展開に取り組む姿勢は評価できる。ビジネス支援サービスについては、中之島図書館のリニューアルの影響があり十分な展開が難しかったと思われる。次年度以降に期待したい。いずれにおいても、まだまだ利用者に広く認知されていない領域である。外部への効果的かつ適時のアピールに、いま一歩の工夫を求めたい。
5については、平成25年度に図書館情報システムのリプレイスが実施された。円滑な移行が完了したことは当然であるが、リプレイスによりおおさかeコレクションの検索システムが稼動したこと、国立国会図書館等とのデータ連携が可能になったことがリプレイスの成果であろう。旧システムから大きく変わることを懸念したのかもしれないが、検索インターフェイス自体には旧来型のイメージが色濃く残った。機能は充実しており、堅実である。使い慣れた利用者には良いかもしれないが、より多くの利用者を惹きつけるだけの魅力には乏しいと言わざるを得ない。先進的な図書館では、横断検索の速度向上といった利用者の体験そのものを重視する実装がなされつつある。情報環境の進展が著しいなか、利用者にとって魅力ある府立図書館システムを構築していくためには、新しい技術動向にも十分な目配りをしながら、次期システムに向けての検討を進めていただきたい。

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3.「基本方針3」
(大阪府立図書館は、府域の子どもが豊かに育つ読書環境づくりを進めるとともに、国際児童文学館の機能充実に努めます。)

基本方針3の目標は、府域の子ども読書活動の推進である。第一期、もっとも大きな変革に取り組まれたのが、この領域であった。今期においては、取組の成果が活動に携わる人々に還元される活動、児童サービスの延長ではない挑戦的な活動が期待された。この点に関する今期の重点課題は、以下の4項目であった。

  1. 図書館利用が困難な子どもへのサービス
  2. 子ども読書活動の推進、児童サービスに携わる人材の育成と交流
  3. 学校支援
  4. 国際児童文学館機能の充実

1および2の今期の活動では、基本方針1の「他機関の連携」、「研修事業の充実」で評価した、矯正施設や病院等の府域の機関との連携、研修の重層化、多様化に新たな展開が見られた。ここでも重ねて評価をしておきたい。
3の学校支援のあり方については、小・中学校への支援について検討が必要であろう。小・中学校への支援は第一義的には基礎自治体である市町村が責任を負うべきものである。府立図書館としては、直接的な支援というよりも、自治体ごとの取組の格差を縮小させるような仕組みづくりの部分での支援を検討していただきたい。
4については、外部資金の活用、外部機関との連携・協力によるイベント、展示が実施され、ホームページのアクセス数も当初の目標の6倍近くに達した。このことは国際児童文学館のみならず、府立図書館の一定の存在感を外部に示すことにもつながったのではないか。27年度の試行を経て28年度には特別研究者、専門協力員の制度が本格実施される。国際児童文学館、府立図書館の持つリソースの活用が、より多様な知の創造に貢献することを期待したい。

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4.「基本方針4」
(大阪府立図書館は、大阪の歴史と知の蓄積を確実に未来に伝えます。)

基本方針4の目標は、地域資料・行政資料の収集・蓄積および情報発信、とりわけデジタル資料の収集、蓄積、提供である。この点に関する今期の重点課題は、以下の3項目であった。

  1. 地域資料、古典籍の有効活用、大阪に関する情報発信の強化
  2. 専門性を活かした外部連携
  3. 行政資料等、デジタル資料の収集・提供

1、2に関しては、中之島図書館の耐震工事およびリニューアルにより十分な体制でのサービスが提供できない時期があったものの、府域図書館からの研修要望によく対応している点、限られた財源の中で大阪文献データベースの収録データ数を着実に伸ばしている点、「住友文庫ドイツ医学学位論文目録」のような独自コレクションへの手掛かりを提供している点で、評価できる。一方、デジタル化されたコンテンツは再加工を含めた利用がされてこそ、その真価が発揮される。たとえばCC(クリエイティブ・コモンズ)ライセンス※の導入などによる、二次使用の円滑化を検討いただきたい。公開コレクションが増えてきた現在、検索インターフェイスについて、画面展開等の再設計も検討が必要であろう。コンテンツの魅力を利用者に伝えようという図書館側の熱意が見えるような改善を求めたい。このことは、外部への発信・PRの全般についても同様である。効果的な発信のためには、利用者の視点で考えることが重要である。利用者が何を期待しているのか把握したうえで、そこに向けたアピールになっているのかどうかの検証がなければならない。このことは、次の基本方針5で述べるSNSの活用においても同様である。
3に関する今期の成果として、「おおさかeコレクション」の一部として「大阪の行政資料」を収集・提供するサービスが開始されたことが挙げられる。今期は運用体制の整備にとどまっている。大阪府ホームページの「主要な府政情報」や「統計情報」からは、図書館の存在が見えない。第一期外部評価では「大阪府庁全体の課題としてアーカイブ機能を考えていくべき段階にある」と指摘した。高度情報化社会において、情報のハブたる図書館が、こうしたアーカイブをはじめとする各種の議論において存在感を示すことの必要性をあらためて指摘しておく。まずは議論に参加し、本サービスが活用されるよう他部局との一層の連携・協力を進めていただきたい。

※ CC(クリエイティブ・コモンズ)ライセンス:
現在最も利用されているパブリック・ライセンスで、6種別がマークにより表示される。第三者は個別の権利処理を行うことなく、表示されたライセンス条件の範囲内で著作物を再利用することができる。

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5.「基本方針5」
(大阪府立図書館は、府民に開かれた図書館として、府民とともにあゆみます。)

 基本方針5の目標は、府民に親しまれる図書館づくりである。この点に関する今期の重点課題は、以下の2項目であった。

  1. 府民の生涯学習活動の支援、地域の魅力づくりへの貢献
  2. インターネットを活用した情報発信

 中之島図書館の正面玄関開扉イベントは多くの人々に注目され、地域の魅力づくりへの貢献を果たしたと言えるだろう。
基本方針5では、公費によって支えられている図書館が、府民から「あってよかった」と思われる存在であり続けることを欲している。効率的な施設管理の検討が必要とされるのも、その観点からである。28年度からリニューアルオープンし、施設管理等に指定管理者制度を導入する中之島図書館において、文化ステーションとして実施される事業による盛況ぶりが一過性のものに終わることなく、より府民に親しまれる図書館として飛躍することが望まれる。
2に関して、Twitterによる情報発信も開始されたようである。第三期においてはこうした新しいメディアによる情報発信の成果も評価対象となる。TwitterをはじめとするSNSはインフォーマルな色合いの濃い媒体である。いくら発信しても、その表現が堅苦しくては近寄りがたい印象を与え、かえって逆効果にもなりかねない。職員の自由な力を発揮できるよう工夫していただきたい。

さいごに

 二期にわたるPDCAサイクルを終えて、府立図書館が府域の図書館サービスに大きく貢献してきたことが確認され、外部との連携や研修、調査活動では「外に出る」図書館員の力強い姿が見られた。多くの困難の中で、一歩一歩ここまで進めてこられた努力に心から敬意を表したい。
なお、他館とのデータの比較にあたっては、統計の取り方にも留意願いたい。少なくとも大阪府域の図書館間では同じ指標で比較できるような基盤整備が必要である。また大阪府ではオープンデータの取組が進められている。図書館が評価活動の中で取得した統計データについても、より利用しやすいオープンデータ形式での公開が求められよう。
府域の蔵書評価の取組でも、組織の殻に「閉じこもらない」図書館協力活動の意義が浮き彫りになった。第三期に向けて、情報環境の一層のオープン化に向けた取組にも期待したい。

 大阪府立図書館協議会 活動評価部会

岡部 晋典(同志社大学学習支援・教育開発センター助教)
岸本 岳文(京都産業大学文化学部客員教授)
○ 村上 泰子(関西大学文学部教授)
(50音順・○は部会長)

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「基本方針と重点目標(平成25-27年度)」およびそれに基づく活動評価について

平成25-27年度

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