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本蔵-知る司書ぞ知る(39号)

更新日:2024年1月5日


本との新たな出会いを願って、図書館で働く職員が新人からベテランまで交替でオススメ本を紹介します。大阪府立中央図書館の幅広い蔵書をお楽しみください。

2018年1月20日版

今月のトピック 【ソグド人についての資料】

当館では、大阪教育大学名誉教授で神戸常盤大学客員教授の山田勝久さんによるシルクロードに関する連続講演会を好評開催中です。それに関連して、今回はシルクロードで商業の要として活躍していたソグド人のネットワークが東方に与えた影響がわかる資料を紹介します。

興亡の世界史 05 シルクロードと唐帝国』(青柳正規[ほか]/編 講談社 2007.2)

唐代の中国とシルクロードに関する歴史を中央ユーラシアからの視点で描いた資料で、西域に関しての言及が多く、ソグド人や、その故地であるソグディアナについての記述も至る所に見受けられます。唐代文化の西域趣味について書かれた章では、西域からもたらされた文化に唐の人々が耽溺していた様子が、様々な資料を紹介しながら描写されています。

長安の春 (東洋文庫)』(石田幹之助/著 平凡社 1967.5)

中国で西域の歌舞音曲や雑技などの文化が楽しまれていたのは、漢代からのことだったようですが、p.25~43の「「胡旋舞」小考」では、唐代になって記録の中に見えるようになったものの一つとして、「胡旋舞」が紹介されています。「胡」という文字は「外国」や「異民族」などの意味を持ちますので、具体的に何を指しているのか注意が必要です。しかし、胡旋舞におけるそれはソグドを指していると著者は断言しています。

安禄山:「安史の乱」を起こしたソグド人 (世界史リブレット人)』(森部豊/著 山川出版社 2013.6)

安禄山は、ソグド人の父と遊牧騎馬民族である突厥の母のもとに産まれ、『旧唐書』の列伝巻第百五十で「異なった種族の血を引くソグド人」という意味の「雑種胡人」だと説明されています。本書は、中国史の流れから見るとネガティブに捉えられることの多い安禄山や安史の乱を、中央ユーラシア史という広い観点から再評価しています。

今月の蔵出し

大絶滅:遺伝子が悪いのか運が悪いのか?』(デイヴィッド・M・ラウプ/著 平河出版社 1996.4)

自然科学系の担当司書となってから、生き物に関する多くの資料に触れる機会がありましたが、その中で最も興味深く読んだもののひとつがこの『大絶滅 遺伝子が悪いのか運が悪いのか?』です。
著者のデイヴィッド・M・ラウプは、統計解析等の手法を古生物学に用いる異才として著名です。ウィットに富みつつも丁寧で論理的な筆致は、読者を生命史の世界へといざないます。

本書は、副題にもなっている「(種の絶滅は)遺伝子が悪いのか運が悪いのか」をテーマとしています。種の生存競争は、優れたものが生き残り劣ったものが滅びるフェアなゲームなのか、それとも不確実性が支配する理不尽でアンフェアなゲームなのか。この問いに対し、著者は様々な要素・視点を慎重に検討し、結論を導き出します。
また、生命35億年の歴史のなかで500億種の生物が登場し、現在地球上に生息するのは約4000万種。つまり99.9%の種が絶滅するなかで、我々ホモ・サピエンスの繁栄の終りは近いのか遠いのか。そしてそれを遠ざける手立てはあるのか。おそらく我々の関心が最も高いこの問いについても、古生物学の観点から筆者の見解が示唆されます。これらの結論に至る過程では、専門家でない我々にも理解しやすい平易な言葉で、古生物学の枠に囚われない学際的な考察が展開され、生命史を巡るエキサイティングな旅を楽しむことができます。

当館では他にも、恐竜絶滅に関する同著者の『ネメシス騒動』や、より詳細に解説した『絶滅古生物学』、人類にスポットを当てた『次の大量絶滅を人類はどう超えるか』といった資料等、関連本を多く所蔵しています。豊富な当館の蔵書にて、太古に思いを馳せつつ冬を過ごされるのも一興かと思います。

  【T】

さわるめいろ  [1]    (てんじつきさわるえほん)』(村山純子/著 小学館 2013.2)

迷路とは、複雑に入り組んだ道を抜けて、ゴールまで辿り着くことを目指すゲーム、パズルのこと。通常の本の迷路は、線と線の間、道(路)を辿ってゴールを目指しますが、今回ご紹介する本は、線を辿っていく迷路です。

見える子も見えない子も一緒に楽しめるものとして出版されたこの本は、見えない人が利用している点字、その点字の線をさわって楽しむ迷路です。1ページにデザインされた図柄の線の上に、点を隆起させて線が描いてあります。目で見て探ろうとすると、図柄と重なって惑わされます。一方、さわってみると、ぶつぶつと浮かび上がっている線があり、辿っていくことができます。もちろん迷路ですから、途中で切れている箇所もあり、行きつ戻りつゴールを目指します。スタートは▽、ゴールは○で、これもさわって違いがわかるようになっています。
この迷路、実際に見える人・見えない人が集まって数人で競争したところ、見えない人の方が早くゴールしました。目が見えない人は、指でさわって読むことに慣れているからかもしれません。

[1] とあるように、『さわるめいろ  2  (てんじつきさわるえほん)』もあります。どちらも1冊に簡単なものから難しいものまで11種類が収録されています。折本(おりほん)仕立てなので、広げると1枚の大判になり、広げて各迷路をそれぞれ楽しむこともできます。説明は点字だけでなく活字でも書いてありますので、安心して手に取っていただけます。
「てんじつきさわるえほん」シリーズは他にもあります。この機会に点字の世界を体験してみてはいかがでしょうか。

さわるめいろ、是非とも目を閉じて、指の感覚だけで挑戦してみてください。

 【企鵝】


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