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「はらっぱ」 No.37 国際児童文学館イベント紹介

大阪府立中央図書館 国際児童文学館

 国際児童文学館では、子どもの本に関するイベントや貴重な所蔵資料を紹介する展示等を開催している。ここでは、令和5(2023)年1月から12月の活動を紹介する。これらの概要や資料リストは国際児童文学館ホームページに掲載しているので、併せてご覧いただきたい。

【国際児童文学館イベント情報】
https://www.library.pref.osaka.jp/site/jibunkan/kiroku.html

資料小展示 日本の子どもの本 珠玉の30選

期間:4月1日(土曜日)から6月28日(水曜日)
場所:室内小展示コーナー

 国際児童文学館で所蔵している87万点に及ぶ資料の中より、巖谷小波/著『こがね丸』、呉文総/訳『八ツ山羊』、宮沢賢治/著『注文の多い料理店』、江戸川乱歩/著『怪人二十面相』、なかがわりえこ/さく『ぐりとぐら』、織田小星/作・東風人/画『お伽 正チャンの冒険』など、明治・大正・昭和の名作30点を紹介した。とくに稀少な巖谷小波/著・杉浦非水ほか/画『日本一(にっぽんいち)ノ画(のえ)(ばなし)』全35冊は表紙を並べて展示した。会期中のアンケートでは、「こんな昔の本があることにビックリした」「『日本一ノ画噺(にっぽんいちのえばなし)』がずらりと並んでいるのはすごくよかった」「子どもの本の特徴が時代によって変わっていく様子を知ることができてとても興味深かった」「『こがね丸』『少年世界』」などの現物を見ることができてよかった」などの感想をいただいた。アンケートの回答者には、オリジナル絵葉書をプレゼントした。
 本展示は、平成28(2016)年度より国際児童文学館の定例小展示として企画しているもので今回で6回目である。

国際児童文学館閲覧室内での展示の様子
国際児童文学館閲覧室内での展示の様子
「講演と新刊紹介 2022年に出版された子どもの本」

 大阪府立中央図書館で毎年開催している「講演と新刊紹介 ○○○○年に出版された子どもの本」は、前年1年間に発行された児童書について解説と紹介を行う講座で、一般財団法人大阪国際児童文学振興財団総括専門員の土居安子さんによる講演と、当館の専門協力員である科学読物研究会の西村寿雄さん、当館国際児童文学館及びこども資料室の職員による絵本・読物・知識(自然科学、社会科学)の本の紹介で構成している。昨年度に続いて、会場講演会と録画配信の併用で開催した。
 5月12日(金曜日)・13日(土曜日)の会場講演会には2日間でのべ141名、YouTube限定公開での録画配信(6月1日(木曜日)~6月30日(金曜日))には834名のお申込みがあり、アンケートでも盛りだくさんな内容と非常に好評であった。開催方法については、本を実際に見ることができる来館と都合に合わせて視聴できる配信のどちらも続けてほしいとのご意見をいただいた。
 また、長年新刊紹介の自然科学の本の紹介をご担当いただいた西村寿雄さんが今回で退任されるため、参加者の方から感謝の言葉が多数寄せられた。
 5月14日(日曜日)から7月4日(火曜日)まで国際児童文学館とこども資料室で紹介資料の展示を行った。

西村寿雄さん
西村寿雄さん
資料小展示「子どもたちの万博(EXPO’70)

期間:7月4日(火曜日)から9月3日(日曜日)
場所:室内小展示コーナー

 2025年に開催される大阪・関西万博にちなんで、昭和45(1970)年の日本万国博覧会を当館所蔵の児童書で振り返る展示を行った。
 展示したのは、万博に関する児童書、児童向けガイドブック、学校で配布された見学用冊子などの図書や、児童雑誌、マンガ雑誌に掲載されたバラエティ豊かな万博の記事である。加えて当時の子ども達が夢見た未来の姿を紹介した雑誌記事や、昭和45(1970)に出版され今も読み継がれているロングセラー絵本も展示した。
 また、会場とインターネットで、万博の思い出エピソードを募集したところ、75件のエピソードが寄せられた。どれも生き生きした口調でご自身の思い出を語ってくださり、万博を通して、多くの方の人生の1コマに触れられる幸せな企画となった。公開を承諾されたエピソードは当館のホームページで公開している。

国際児童文学館での小展示の様子
国際児童文学館閲覧室内での小展示の様子

【資料小展示「子どもたちの万博(EXPO’70)」 みんなの万博 ~今回、皆様から寄せられた大阪万博の思い出を紹介します~】
https://www.library.pref.osaka.jp/site/jibunkan/rei5expo70.html

出張資料展示「ハイジと妖精の国 スイスの子どもの本

期間:8月4日(金曜日)から9月6日(水曜日)
場所:大阪市立中央図書館 1階 エントランスホールギャラリー

 国際児童文学館の資料を広く知ってもらうという趣旨で企画し、大阪市立中央図書館主催(協力:当館)で、展示キャプション等をセットにした「国際児童文学館展示用貸出パック」を提供した。

大阪市立中央図書館での資料展示の様子
大阪市立中央図書館での資料展示の様子

 平成26(2014)年に国際児童文学館で開催した資料展示を元に、改めてリストを見直した。アニメ化された「アルプスの少女ハイジ」の原作『ハイジ』(ヨハンナ・シュピリ/作)は戦前から現在まで、数多く翻訳されてきた。日本でなじみの深いスイスの作家の子どもの本とともに、スイス児童文学賞を受賞した斬新な絵本や新しい作家の作品なども紹介した。ハイジの世界を感じられるように、スイス、アルプスの写真が豊富に載っている資料なども用意した。
 展示資料は52点で当館職員が搬送・展示設営を行った。期間中に展示を見た方から「『ハイジ』は知っていたが、展示をきっかけに初めて読んで新たな発見があった」など、うれしい感想をいただいた。

【「国際児童文学館展示用貸出パック」のご案内】
https://www.library.pref.osaka.jp/site/jibunkan/tenjipack.html

大阪府立中央図書館国際児童文学館出張展示のちらし
「むかしの紙芝居を楽しもう!」実演および関連資料展示

●街頭紙芝居実演
 11月4日(土曜日)、一般財団法人大阪国際児童文学振興財団と共催で多目的室にて開催し、のべ61人の参加者があった。昨年までコロナ対策で制限していた参加人数を、今年は人数制限なしで、ゴザを設置し、席数も増やして実施した。
 一般社団法人塩崎おとぎ紙芝居博物館(大阪市西成区)から紙芝居師である鶴谷光子さん(写真)・伊丹伝さんに街頭紙芝居を実演していただいた。
 紙芝居の導入にはほのぼのとした『チョンちゃん』、続いて剣士が悪人と闘う時代劇『稲妻剣士』が演じられた。その後は紙芝居にちなんだクイズに子どもも大人も積極的に参加した。景品として紙せっけん等懐かしいものをご用意いただき、会場が大いに盛り上がった。最後に子どもがヒーローとして活躍する西部劇『少年ローン・レンジャー』へと続き、手づくりのペープサートでの西部劇についての説明はより演目をわかりやすくし、参加者は関心を持って見ていた。どの演目も臨場感にあふれ、街頭紙芝居の世界を楽しむことができた。
 長編の紙芝居は、いずれも物語の一部分のみを演じたため、イベント後には続きが気になる参加者が閲覧室で用意しておいた作品の複製版を見に訪れた。

街頭紙芝居実演の様子
街頭紙芝居実演の様子

●資料展示
 実演イベントにあわせて、9月8日(金)から11月5日(日)まで、室内小展示コーナーにて街頭紙芝居の展示を行った。
 当館では、故・塩崎源一郎氏の設立した三邑会(さんゆうかい)が制作し寄贈された貴重な街頭紙芝居コレクションを所蔵している。この中から、代表的な画家6人の作品を取り上げ、画家の経歴や解説とともに展示した。手塚治虫との共作『新宝島』で知られる酒井七(さかいしち)(ま)左久良(さくら)五郎(ごろう)の『鞍馬小天狗』や、塩崎氏から日本一の紙芝居画家と称された佐渡(さわたり)正士(しょうじ)(ろう)『昭和の猿飛』、シゲキ=相馬(そうま)一平(いっぺい)『シルバープリンス』、熱田(あった)(と)(さ)小寺(こでら)(きゅう)(ほ)の『大久保彦左衛門』、宇田(うた)(の)(たけし)『鉄拳』、くつなつとむ『少年龍騎隊』などである。
 展示用のガラスケースのみでなく、木製の紙芝居架を用いて1巻まとめての展示も行った。また、塩崎おとぎ紙芝居博物館にご協力いただき、同館で所蔵している日本画(街頭紙芝居を制作した画家が描いたもの)の展示も実施した。
 なお、当館所蔵の街頭紙芝居約四千巻の絵はデジタル画像をホームページに公開している。

【大阪府立中央図書館国際児童文学館所蔵 街頭紙芝居】
https://www.library.pref.osaka.jp/central/kamishibai/index.html

閲覧室での展示の様子
閲覧室での展示の様子
企画展示子どもの本のはじまり-三宅興子英語圏児童文学コレクションから-

期間:11月10日(金曜日)から12月27日(水曜日)
場所:中央図書館1階展示コーナーおよび国際児童文学館

 一般財団法人大阪国際児童文学振興財団(IICLO)前理事長、梅花女子大学名誉教授の三宅興子さん(令和4(2022)年逝去)より寄贈されたコレクションの中でも特に貴重な、子どもの本の源流をたどる資料を選りすぐって展示した。
展示作品選択と解説執筆は、IICLOの協力のもと、三宅さんと深い親交があり、共同研究者でもあった多田昌美さん、藤井佳子さん、松下宏子さんと、IICLOの土居安子さんが行った。
 子どもの本の出版の歴史は18世紀後半に遡る。展示は当時発行された教訓物語から始まり、『幼い子どものための小さな物語』は200年以上経つとは思えないほど本の状態も良好である。
 19世紀前半から宗教叢書協会が発行を開始した子ども向け雑誌は子どもが買えるよう安価であり、紙質は薄くもろいものの、大切に伝えられて現在目にすることができるという事実に驚嘆する。同誌の年刊版は色刷りの口絵も美しい。
 その他、16世紀末に書かれた物語詩を題材とし、長期にわたって様々に絵本化された「森の子どもたち」や、その歴史は15世紀に遡るというイソップ物語を子どものための読物として著名な画家が絵をつけた7冊。19世紀のしかけ絵本や、人形を題材とした絵本、20世紀初めに発行された日本を紹介する絵本などを展示した。
 三宅さんと親交のあったたくさんの児童文学等の作家からの手紙、また三宅さんがイギリスの古書店で出会ったというおかっぱ頭の少女の日本人形も配置され、お人柄が偲ばれる展示となった。

図書館展示コーナーでの展示の様子
図書館展示コーナーでの展示の様子

●関連講演会(主催:大阪国際児童文学振興財団)
 12月17日(日)に多目的室で、フォーラム「児童文学とは何かを問い続けて 三宅興子の仕事を顧みる」が行われた。
 企画展示の作品選択と解説執筆をした3人の講師による講演では、展示資料の詳細な説明により、理解といっそうの興味を持つことができ、また三宅さんゆかりの参加者からの発言では、三宅さんが次の世代の研究者をいかに育て、課題を託されていたかを知り、感慨を深くした。

イベント「絵本に描かれた戦争」 NPO法人子どもと住文化研究センタ-住まいの絵本館

 12月2日(土曜日)、「絵本に描かれた戦争」というテーマで、大人向けのイベントを開催した。一般参加者23名と講師及び住まいの絵本館メンバー2名は会場で参加。初めての試みとして絵本館メンバー1名と特別参加者2名がオンライン参加となった。

講師・北浦かほるさん(当館専門協力員)による報告

●講演・絵本の紹介
 前半は、新しくリストアップした「戦争を描いた絵本」130冊余に描かれている戦争を、戦いの描写(A現実の戦争、Bイメージ上の戦争)と暮らしへの影響(C生活・環境の破壊、D難民問題)の視点で4分類した資料を講師の北浦がパワ-ポイントで説明しながら、 平和とは? 反戦の訴えや解決への示唆? 国による戦争対応の違い? 原爆被害と原発被害は被害者にとって同じではないか? 等々多くの課題を提起した。次世代を担う子どもたちに戦争をどう伝えていくかは、大人にとって課題ともいえる。
 次いで住まいの絵本館のメンバーの3人が、「戦争を理解する上で最も紹介したい絵本」として各自が選んだ1冊についての思いを語った。
 初めに、植松が『たけのこごはん』(大島渚/文 伊藤秀男/絵 ポプラ社 2015.8)。続いて 長山は『ニッキーとヴィエラ』(ピーター・シス/作 福本友美子/訳 BL出版 2022.3)を。川島がオンラインで『ぼくのこえがきこえますか』(田島征三/作 童心社 2012.6)を説明した。

講演の様子
講演の様子

絵本を読んで語り合うつどい
 後半は、今回リストアップした資料から選んだ45冊(絵本に描かれている戦争)を中心に読むと共に、感想や質問を書いた後、意見交換した。
 このイベントに参加した理由、自身が取り組んでいること、戦争への思いなどが熱心に語られ、時間不足で発言出来なかった方には申しわけなかった。参加者は、戦争を体験された方、現役の小学校の先生、学校図書館司書など、職業や年齢的にも多様で広がりが見られた。
 この様に熱心な集団で「次世代を担う子どもたちに戦争を絵本でどう伝えていくか」についてさらに議論を深めてみたいと思う。

参加者の交流の様子
参加者の交流の様子
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