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「はらっぱ」 No.36 国際児童文学館 イベント紹介

更新日:2023年3月31日

大阪府立中央図書館 国際児童文学館

令和4年は、引き続き新型コロナウイルス感染拡大防止に努めながら、子どもの本に関するイベントや貴重な所蔵資料を紹介する展示等を開催した。ここでは、令和4年1月から12月までの活動を紹介する。
これらの概要や資料リストは国際児童文学館ホームページに掲載しているので、併せてご覧いただきたい。

国際児童文学館イベント情報のQRコード
【国際児童文学館イベント情報】

資料小展示 日本の子どもの本 珠玉の30選

期間:令和4年4月1日(金曜日)から6月26日(日曜日)
場所:室内小展示コーナー
本展示は、平成28(2016)年度より国際児童文学館の定例小展示として企画しているものである。国際児童文学館で所蔵している86万点に及ぶ資料の中より、巖谷(いわや)小波(さざなみ)/著『こがね丸』、呉文総/訳『八ツ山羊』、宮沢賢治/著『注文の多い料理店』、江戸川乱歩/著『怪人二十面相』、なかがわりえこ/さく『ぐりとぐら』、織田小星/作・東風人/画『お伽 正チャンの冒険』など、30点を紹介した。とくに稀少な巖谷小波/著・杉浦非水ほか/画『日本一(にっぽんいち)ノ(の)画噺(えばなし)』全35冊は表紙を並べて展示した。会期中のアンケートでは、「大学の授業で巖谷小波の名は見たが、なかなか現物を見る機会は少なく『日本一ノ画噺』が並べられている姿は圧巻だった。」「歴史を感じる児童書に見入りました。」などの感想をいただいた。アンケートの回答者には、オリジナル絵葉書か、または、しおりをプレゼントした。

国際児童文学館閲覧室内での展示
国際児童文学館閲覧室内での展示

「講演と新刊紹介 2021年に出版された子どもの本」

大阪府立中央図書館で毎年開催している「講演と新刊紹介 ○○○○年に出版された子どもの本」は、前年1年間に発行された児童書について解説と紹介を行う講座で、一般財団法人大阪国際児童文学振興財団総括専門員の土居安子さんによる講演と、当館の専門協力員である科学読物研究会の西村寿雄さん、当館国際児童文学館及びこども資料室の職員による絵本・読物・知識(自然科学、社会科学)の本の紹介で構成している。
令和2年度、3年度は新型コロナウイルス感染拡大による臨時休館のため、会場講演会は中止、インターネット配信(録画配信)のみとなったため、会場講演会は3年ぶりの開催となった。また今回初めて会場講演会と録画配信の併用で開催した。
会場講演会(5月13日(金曜日)・14日(土曜日))はコロナ前に比べて定員を減らし、2日間で66名の参加を、録画配信(6月1日(水曜日)から6月30日(木曜日))では、当日の模様を録画したものをYouTubeの限定公開で配信し、789名の申込をいただいた。 講座後のアンケートでは、本を手に取って見ることができる会場講演会と、都合の良いときに見ることができる配信という双方の長所を挙げ、今後も併用での実施を希望される意見を多くいただいた。
また、5月15日(日曜日)から7月5日(火曜日)まで国際児童文学館とこども資料室で紹介資料の展示を行った。

会場講演会の様子
会場講演会の様子

資料小展示「イギリス生まれの伝承童謡 Mother Goose(マザーグース)」

期間:令和4年7月5日(火曜日)から9月4日(日曜日)
場所:室内小展示コーナー
「国際児童文学館展示用貸出パック」の利用を促進するため、2006(平成18)年に旧大阪府立国際児童文学館で行った同名展示(解説:藤野紀男、マザーグース学会会長)を元に、展示リストや解説を見直し、新たな資料を追加したもの。
主に4つのカテゴリーに分け、展示1「マザーグースの作品」では、The Opie Collectionの復刻版(ほるぷ出版)などを展示。展示2「マザーグースの研究書」では、詩と絵の関連性を論じたものを紹介。展示3「日本における受容」では、北原白秋、西条八十ほか大正時代に日本語に翻訳された作品などを、展示4「マザーグースの絵本」では、著名な画家による作品のほか、同じ作品を異なる画家が絵本化した作品も展示した。
会期中に行ったアンケートでは、戦前のマザーグースの翻訳書や同タイトルで英語版と日本語版の両方を並べていたことが興味深かったという感想もあり国際児童文学館の多様な資料について広く知ってもらうことができた。
アンケートの回答者には、しおりをプレゼントした。

国際児童文学館閲覧室内での資料展示の様子
国際児童文学館閲覧室内での資料展示の様子

出張資料展示「シンデレラ本 いま・むかし」

期間:令和4年8月19日(金曜日)から9月14日(水曜日)
場所:大阪市立中央図書館 1階 エントランスホールギャラリー
大阪市立中央図書館主催(協力:当館)で、国際児童文学館の資料を広く知ってもらうという趣旨で企画され、当館から展示キャプション等がセットになっている「国際児童文学館展示用貸出パック」を提供。
昨年に当館で開催した企画展示を展示用貸出パック向けに組み直したもので、様々なシンデレラ本から「シンデレラ」の何が人々を魅了し続けるのか、「シンデレラ」の描かれ方はいかに変化しているのかをたどりながら、昔話のおもしろさ、絵本の魅力を伝えた。
展示資料は63点。当館職員が搬送・展示設営を行った。期間中に、大阪府子ども文庫連絡会主催児童文化講座が開催され、多くの講座参加者もご覧くださったと大阪市立中央図書館の担当者から伺った。

シンデレラ本 いま・むかし ちらし

「国際児童文学館展示用貸出パック」のご案内
国際児童文学館展示用貸出パック

「むかしの紙芝居を楽しもう!」実演および関連資料展示

●街頭紙芝居実演

大阪市立中央図書館主催(協力:当館)で、国際児童文学令和4年11月5日(土曜日)、一般財団法人大阪国際児童文学振興財団と共催で多目的室にて開催し、のべ43人の参加者があった。
一般社団法人塩崎おとぎ紙芝居博物館(大阪市西成区)の紙芝居師である古山千賀子さん(写真)・古橋理絵さんに、街頭紙芝居を実演していただいた。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、参加者の席の間隔を取り、演者にマスクを着用していただいた。
イベントの導入では塩崎おとぎ紙芝居博物館のご厚意でお持ちいただいた、街頭紙芝居ができる過程が分かる原稿や作家の肉筆画を解説していただいた。子どもたちから質問が出るなど、参加者の関心を集めていた。
演目は街に現れ透明な体を活かして悪さを働く怪人をトム少年が追う『透明怪人』、命を狙われている少年が忍者へと成長していく『少年忍者』と続いた。紙芝居の導入には短くて楽しい『チョンちゃん』を演じ、長い演目の後はクイズを楽しんだ。後半は子どもたちに鳴り物を渡して鳴らしてもらい、会場が一体となる楽しい時間となった。 長編の紙芝居は、いずれも物語の導入部分のみを演じたため、イベント後には続きが気になる方が閲覧室で用意しておいた作品の複製版を見に来られた。

街頭紙芝居実演の様子
街頭紙芝居実演の様子

●資料展示

実演イベントにあわせて、令和4年9月9日(金曜日)から11月6日(日曜日)まで、室内小展示コーナーにて街頭紙芝居の展示を行った。
当館では、故・塩崎源一郎氏の設立した三邑会(さんゆうかい)が制作し寄贈された貴重な街頭紙芝居コレクションを所蔵している。この中から、代表的な画家6人の作品を取り上げ、画家の解説とともに展示した。手塚治虫との共作『新宝島』で知られる酒井七馬(さかい・しちま)=左久良五郎(さくら・ごろう)の『宇宙少年』や、塩崎氏から日本一の紙芝居画家と称された佐渡正士良(さわたり・しょうじろう)『白猫・黒猫』、かんさきわたる=相馬一平(そうま・いっぺい)『うさぎのちえ』、熱田十茶(あった・とさ)の『文福茶釜うかれ狸』、宇田野武=うどのたつを『海の鷹シーホーク』、くつなつとむ『朝丸夕姫』、などである。
展示用のガラスケースのみでなく、木製の紙芝居架も用いて1巻分全ての展示も行った。
なお、当館所蔵の街頭紙芝居約四千巻の絵はデジタル画像をホームページに公開している。

大阪府立中央図書館国際児童文学館所蔵 街頭紙芝居
【大阪府立中央図書館国際児童文学館所蔵 街頭紙芝居】

閲覧室での展示の様子

閲覧室での展示の様子

画展示「国際児童文学館所蔵資料にみる 絵本史にかがやく名著たち」

期間:令和4年11月11日(金曜日)から12月28日(水曜日)
場所:中央図書館1階展示コーナーおよび国際児童文学館

国際児童文学館では、明治以降に国内で出版された児童書を網羅的に収集しており、日本でここにしかない貴重な資料も多数所蔵している。そこで、令和4年度は当館の所蔵資料を通じて、近代日本の絵本の歴史をたどる展示を行った。
展示作品選択と解説執筆は、一般財団法人大阪国際児童文学振興財団にご協力いただいた。
展示の前半では、明治維新の年に出版され、のちの科学絵本の系譜につながる『訓蒙(きんもう) 窮理図解(きゅうりずかい)』に始まり、近代日本の子どもの本の開拓者とされる巖谷小波の作品や、ちりめん本「欧文日本昔噺」シリーズ、国内で唯一当館が特製本棚付きで所蔵している「日本一(にっぽんいち)ノ(の)画噺(えばなし)」全35冊などを展示した。
中盤では、カラー絵雑誌の嚆矢として大阪で出版された『お伽(とぎ)絵解(えとき)こども』や『コドモノクニ』等、明治・大正期の絵雑誌や、武井武雄、竹久夢二、初山滋ら童画家の作品を展示した。
後半では昭和(戦前、戦中期)に刊行された『新日本幼年文庫』『帝教の絵本』『キンダーブック』『講談社の絵本』等、戦時中の困難な時代においても新たな表現が模索されていたことが分かる作品を展示した。
会期前半は展示コーナーAの一部が工事中だったため、工事が終了した12月6日(火曜日)に展示ケースの配置換えを行った。また展示会場で5冊の本の表紙の人気投票を行った。アンケートにご協力いただいた方には、国際児童文学館移転開館10周年記念クリアファイルをプレゼントした

特製本棚に収められた「日本一(にっぽんいち)ノ(の)画噺(えばなし)」
特製本棚に収められた「日本一ノ画噺」

12月11日(日曜日)に多目的室で、講演と鼎談(ていだん)「国際児童文学館所蔵資料にみる 絵本史にかがやく名著たち」(宮川健郎理事長(講演・鼎談)、遠藤純理事・土居安子理事(鼎談))が行われた。 宮川理事長の絵本とは何かについての講演の後、土居理事による「日本一(にっぽんいち)ノ(の)画噺(えばなし)」の分析、遠藤理事による豆本、しかけ絵本についての考察と鼎談が行われた。質疑応答では会場から様々な質問が挙げられた。

図書館展示コーナーでの展示の様子
図書館展示コーナーでの展示の様子

イベント「住まいの絵本ってなぁに!? -欧米と日本 絵本の中で住まいはどう描かれてきたか-」 NPO法人子どもと住文化研究センタ-住まいの絵本館

令和4年12月3日(土曜日)、「住まいの絵本ってなぁに!?-欧米と日本 絵本の中で住まいはどう描かれてきたか-」というテーマで、大人向けのイベントを開催した。欧米と日本の絵本を比較して住まいや暮らしの違いについて考えようと、当日参加を含め、15名の参加があった。

●講演

講師の北浦かほるさんが、長年にわたり取り組まれてきた欧米、日本での研究成果を紹介しながら、家とは、暮らしとは何かについて述べられた。研究に携わるなかで絵本の中の幼児の空間やその意味に興味を持つようになったという。内外空間が一体になっている木造の架槽式住居と異なり、組積造や洞くつ住居に原点をもつ欧米の住まいでは、古くから室内(インテリア)をしつらえる事が家事とされていた。また、『なっちゃんのたんじょうび』(川村みづえ/文と絵 日本建築協会 1988)には、既に都市生活の魅力や、男性が家事に参加する姿が描かれていると解説された。

●絵本の閲覧、質疑応答のつどい

住まいの絵本館作成のリストの分類項目「家とは」「シェルター」から選ばれた33冊を机に並べておいた。講義後、参加者には自由に選んで読み、質問や感想を書いてもらった。講演のなかで触れられたシェルターへの感想から、防空壕や戦時中の体験につながるなど、話題が広がった。『ここが家だ』(アーサー・ビナード/構成・文 ベン・シャーン/絵 集英社 2006.9)にまつわる体験を語る参加者もいて、気づきを共有することができた。

会場で絵本を閲覧する様子
会場で絵本を閲覧する様子

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