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「はらっぱ」 No.27(2014) 乳児院・児童養護施設におけるおはなし会・絵本の読み聞かせについて

印刷用ページを表示する 掲載日:2014年3月28日更新

大阪府立中央図書館 こども資料室

はじめに

 大阪府立中央図書館では、平成23年3月に「大阪の未来をつくる図書館を目指して」として、「大阪府立図書館の基本方針と重点目標」を策定した。基本方針の3には「大阪府立図書館は府域の子どもが豊かに育つ読書環境づくりを進めます」として、「乳幼児、児童およびYA(ヤングアダルト)、障がいのある子どもなど、すべての子どもの読書やサービスに関する情報の収集と発信を行います」としている。

 また、平成25年度から27年度までの3カ年における「大阪府立図書館基本方針と重点目標」においても、基本方針3における重点目標の柱として、「図書館利用が困難な環境におかれた子どもへのサービスを広げます」としている。

 この目標の達成に向け、平成24年度より、いくつかの新たな事業を展開してきた。ここでは、乳児院・児童養護施設で行っている取組みについて報告する。

1.準備について

 図書館を利用している子どもたちの多くは、親や祖父母、あるいは兄や姉などに連れられて来館する。それは、年齢が小さいほど顕著である。赤ちゃんや乳幼児は、自分で歩いて来館できない。自分で歩いて来館できる小学校区内の子どもですら、昨今の物騒な世情を考えれば、大人と共に来館することになる。すべての子どもに対するサービスの提供を実現するためには、図書館に来館する子どもに対するサービスだけでは不十分ではないかと考えた。そこで、日常的に図書館へ連れて行ってくれる大人が身近にいない子どもたちへのサービスを進めることになり、親と離れて暮らす子どもたちへのサービスを考えることになった。

 乳児院・児童養護施設へのサービスを実施するにあたって、相手方のニーズや方法などわからないことが多かったため、まずは、施設を所管している大阪府の福祉部子ども室家庭支援課に相談することにした。こちらで考えていた方法は、資料をセットにして貸し出す「特別貸出」と、施設に出向いて行う「出前おはなし会」だったが、特別貸出は、施設での管理が難しいこと、破損・汚損した場合の弁償などを考えると実施は困難であろうと指摘を受けた。おはなし会については、家庭で絵本を読んでもらった経験のない子どももおり、良い経験になるのではないかとのことだった。学童期の子どもは、平日、学校から帰って来た後は宿題などがあり、時間が取れないかもしれないが、就学前の子どもなら大丈夫ではないか、また、年齢の高い子どもの場合は、読書に親しむことで自分の将来について考えるきっかけになるかもしれないということだった。受入れ先の施設についても家庭支援課から打診してもらうことになり、乳児院と児童養護施設の両方を持つ施設が受入れ先として決定した。

 施設の子どもたちへの接し方や、おはなし会で取り上げる本などに関して、気をつけなければいけない点についてアドバイスをお願いした。「原則はいつも通り、普通に接すればよい」とのことだったが、「人との距離をうまく取れない子もいるので、べったりくっついていたかと思うと、帰る時はあっさりしているなど、戸惑いを覚えるかもしれないが、適切な距離を保てばよい。入退所児童が多く、人の出入りが多い季節は、落ち着きをなくすことも多いかもしれない」とのことだった。また、「暴力を受けた子どもも多いので、そのような場面が想像できるような本は避けた方がいいかもしれない。この点については、施設の方に、読み聞かせ後何か普段と違うことがあれば教えてもらうようにすればよい」とのことだった。

 受入れ施設が決まってからは、直接施設と相談することになるが、その前に、平成15年以来実際に乳児院・児童養護施設において絵本の会を実施しておられるボランティア団体「綿の花」にアドバイスをお願いした。「綿の花」が実施している絵本の会の内乳児院1カ所と施設1カ所、計2カ所に同行して、実際に見学させてもらった。アドバイスいただいたことは、継続して行うこと、最低でも1年は続けることが重要で、絵本やおはなしを届けることに徹していれば、他に特別なことはなく「かならず絵本やおはなしを一緒に楽しめるようになる」とのことだった。絵本の会を見学して受けた印象としては、定期的に決まったメンバーで実施することにより、打ち解けた関係ができ、子どもたちも安心して楽しんでいるようだった。

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 平成24年2月、初めて受入れ先である乳児院・児童養護施設に伺った。おはなし会を実施するこども資料室、国際児童文学館の職員と、ここまでの調整にあたった協力振興課の職員が出向き、趣旨説明を行い、おはなし会の実施について了解を得た。続いて、実施について詳細を打ち合わせた。実施時間帯については、お昼寝の時間(12時~15時)があるので、乳児院は10時~11時、15時~16時、児童養護施設は、10時~12時、15時~17時が都合がよく、児童養護施設の方は、小学生や幼稚園児がいるので、午前なら未就学児だけになってしまう、ということで、15時から実施することになった。曜日については、双方の事情から水曜日か木曜日に行うこととし、月1回程度伺うことになった。プレイルームに子どもたちを集めて行うことも可能だが、当初は、子どもたちそれぞれのホームで実施することにし、様子を見ていくことになった。選ぶ本の内容などについても尋ねたが、特に注意することはないとのことだった。その後、施設の見学をさせてもらったが、非常に家庭的な雰囲気の中、職員の方々が親身になって子どもたちに接しておられるのがとてもよくわかった。子どもたちが安定した生活を送るためには、いろいろな経験が必要とのお考えから、今回の提案も、子どもたちにとってよい経験になると受け止めてもらった。本格的な実施は、平成24年度から行うことになったが、その前の春休み期間に、一度試行実施することになった。

2.実施方法について

 次に、それぞれの施設で、実際にどのようにして、おはなし会や読み聞かせをしているのかを紹介する。こども資料室の職員2名、国際児童文学館の職員2名、計4名の固定メンバーの内、2名が訪問し、それぞれの施設に1人ずつ入る。訪問回数は月1回なので、職員側からみれば、隔月で訪問することになる。

2-1.乳児院での読み聞かせについて

 試行実施の際は、午前中ということもあり、訪問した施設では独立した5つのホームのうち、比較的年齢の大きい1~2歳児の2ホームで20分程度のおはなし会形式で行った。

 本格実施になってからは午後の実施が多く、お昼寝から起きておやつの終わった子どもたちが施設内の広い部屋にスタッフの方といっしょに集まってくれる。人が集まったところでおはなし会形式で30分弱過ごし、残りの時間は図書館から持ってきた絵本をスタッフの方や図書館職員といっしょに読んで過ごすパターンが多い。

 実施当初は、はずかしがる子どももいたが、何度か通ううちに慣れてきてくれたようだ。おはなし会の冒頭のあいさつにサルのぬいぐるみやクマのパペットを使ったことで、親しみやすくなった気もする。子どもたちはこうした人形が大好きで、離れがたい子もいるが、帰り際には、スタッフの方といっしょに「さよなら」もしてくれるようになった。

 おはなし会のプログラムの一つとして、わらべうたや手遊びをいれる。図書館内の乳幼児向けのおはなし会で行うような大人と子どもが一対一で行う親子遊びの類は人数の関係上難しいこともあるが、スタッフの方が一人何役にも徹して御対応くださる中で、わらべうたのことばの響きとあわせて楽しんでいる。また、この時期は子ども自身の成長も早く、同じ手遊びでも前回できなかったことができるようになっていたりする。

 読み聞かせの内容は、季節のものを中心に、子どもたちの好きな食べものや動物、乗り物の絵本を選んでいる。知っている物が出てくると「あ、ゾウ!」などと声に出し、また施設のスタッフの方も「この前、トマト食べたなあ」と子どもと絵本を楽しんでくださる。

 自由に読む時間では、おはなし会で読んだ本のほか、乗り物や動物の出てくる絵本も人気がある。その日の参加人数によっては、持参した絵本の数が足りないこともあるが、いっしょに読むように声をかけたりして対応している。

2-2.児童養護施設での読み聞かせについて

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 訪問した施設内には4つのホームがあり、それぞれ独立した家庭のようになっている。それぞれのホームを訪問し、絵本を持って生活の中に入って行く。おやつを食べている時やテレビを見ている時もある。その時は終わるまで待ってから読み聞かせを始めることになる。特に急がせることはしていない。外に遊びに行きたい子は外に遊びに行く。絵本の途中で出て行く子もいるので、大抵、読み始めた時より終わりの時の方が人数が少なくなる。読んでもらうのを聞くのではなく、自分の気にいった本を持って行って、読んでいる子もいる。出て行っても、途中で戻ってくる子や、最後まで喜んで聞いてくれる子もおり、いつも「ごめんね、また今度」と言って名残惜しく終わることになる。おはなし会のプログラムを予め組み立てて行っても、その時の子どもの年齢などによって、読む絵本を変える。「おはなし会」を楽しむというより、いろいろな絵本を読んで「あー、おもしろかった」と思ってもらえればいいという方針で行っている。図書館の中でする「おはなし会」というより、家庭内で大人に好きな絵本を読んでもらっているという感じである。選書にあたっては、季節を感じられる本は毎回入れるようにしている。また、乗り物の本、虫の本などは、いつも人気があり、繰り返し読むこともある。子どもたちは、手遊びやふれあい遊びも大好きだ。帰る時には、「次、来る時は○○の本、持ってきて」とリクエストを受けるが、次回を心待ちにしてくれるのだとこちらも嬉しくなる。

3.これからの課題

 試行錯誤の中で始めたが、1年を経過したところで施設側と話し合いの時間を持った。子どもたちの反応を聞くと、乳児院では、集中できる子が増えてきた、当初全員を1部屋に集めて実施するのは混乱するかと思ったが、大丈夫とのことだった。児童養護施設の方は、「絵本に興味を持つ子が多くなった。また、おやつの時間が少しずれてしまうことがあるが、おやつも一緒に食べてもらっていい、一緒に食べると子どもは『この人は大丈夫』と認識して安心する」とのことであった。児童養護施設では感染症が心配なので、集合形式ではなく、今のスタイルでの実施が希望とのことだった。今後については、施設以外の大人とふれあうことは、子どもを豊かにするし、施設として第三者の目が入ることも必要との考えから次年度以降の継続を希望された。図書館からの提案として、おはなし会で読んだ絵本を子どもが普段の生活の中でも読んでもらいたいと思ったときの参考にしてもらえるよう、読んだ本のリストを渡すことにした。また、気がかりなこととして、本を選ぶ際におかあさんと密着したような本はどうしても避けてしまいがちであることを相談すると、「子どもが内に閉じ込めていたものを話し出すきっかけにもなることがあるので、小さい子が対象の時は、気にせず選んで構わない。しかし、高学年になると配慮が必要になってくるかもしれない」とのことであった。

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 1年半が経過し、少しずつ、子どもたちにも名前と顔を覚えてもらい、絵本にも親しんでもらっていることが感じられるようになってきた。先日、『おおきなかぶ』を読んだところ、途中で一人の子どもが後ろに座っている子どもに対して、自分の服の裾を持って「ぼくのここ、ひっぱって」と言い、それがページを繰るごとに他の子どもへと広がっていき、最後のページを繰るときにはその場にいた全員が一列につながって「うんとこしょ、どっこいしょ」とかぶをひっぱって、おはなしの世界を楽しむことができた。かぶが抜けた瞬間の子どもたちの喜びはこちらにも充分に伝わり、とても楽しいひとときだった。子どもの変化は、一朝一夕に起こるものではない。子どもの心に寄り添いながら、読書に親しむひとときを届けて行きたいと思う。大阪府域には、施設で暮らすことを余儀なくされた子どもたちが大勢いる。「すべての子ども」の読書活動を推進するため、この取組みをきっかけとして、それぞれの地域で、子どもたちに読書の楽しみを届けてくれる活動が広がっていくよう、府立図書館として考えて行きたいと思う。