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本蔵-知る司書ぞ知る(111号)

更新日:2024年1月26日


 
本との新たな出会いを願って、図書館で働く職員が新人からベテランまで交替でオススメ本を紹介します。大阪府立中央図書館の幅広い蔵書をお楽しみください。

2024年1月20日版

今月のトピック 【江戸川乱歩

「江戸川乱歩」の筆名は、『モルグ街の殺人』を書いたエドガー・アラン・ポーにちなむのは有名ですね。乱歩の業績を称え創設された「江戸川乱歩賞」は推理作家の登竜門となっています。今年、2024年は江戸川乱歩(1894年~1965年)の生誕130年です。そこで今回は「江戸川乱歩」をテーマに本を紹介します。

D坂の殺人事件(創元推理文庫) 』(江戸川乱歩/著 東京創元社 1987.6)

乱歩作品の中で、明智小五郎が初めて登場するのが表題にもなっている「D坂の殺人事件」。主人公と明智小五郎は喫茶店から見える古本屋の様子がおかしいとお互いに気づき、二人で古本屋に向かったところ、事件が発覚します。今や名探偵として有名な明智小五郎ですが、この話では主人公に犯人では、と疑われてしまいます。その意味では、ちょっと新鮮な明智小五郎を読める作品です。

江戸川乱歩作品論:一人二役の世界(和泉選書)』(宮本和歌子/著 和泉書院 2012.3)

研究書もひとつ。5つの論文がありますが、いずれも探偵小説や怪奇小説としての乱歩作品の研究とは少し違い、乱歩作品と関連性のある文献との比較等について論じられています。「はじめに」によれば、乱歩の蔵書は日本・海外のミステリ関連の本だけでなく、江戸時代の和漢書籍もあり、また日本の伝統芸能にも強い関心を寄せていたとあります。そのため乱歩作品とミステリ以外の資料との関連性に着目しています。論文としても興味深いですが、乱歩の読んでいた文献を知ることで、乱歩作品を読むにあたっても違った読み方ができるきっかけになる1冊です。

文豪ストレイドッグス [3] 探偵社設立秘話(角川ビーンズ文庫)』(朝霧カフカ/[著]  KADOKAWA 2015.5)

コミックス『文豪ストレイドッグス』の原作者・朝霧カフカによる同小説の第3弾です。『文豪ストレイドッグス』の「江戸川乱歩」と「福沢諭吉」が登場する「探偵社設立秘話」が収録されています。『文豪ストレイドッグス』は文豪たちの名前のキャラクターが、その作品や作風に沿った「異能」によって戦うストーリー。ここでも「江戸川乱歩」は「超推理」という異能を持つキャラクターとして登場します。江戸川乱歩が推理、探偵というイメージを持たれている作家であると感じます。

今月の蔵出し

FASHION:世界服飾大図鑑』*(キャリン・フランクリン/監修 深井晃子/日本語版監修 秋山淑子/[ほか]訳 河出書房新社 2013.10)

みなさんはどんな本がお好きですか?小説や紙芝居、絵本など人それぞれだと思います。
なかでも私は、たくさんの文章を読むことなく、興味を持ったジャンルについて知ることができる図鑑が好きです。図鑑(のほとんど)は3・4階壁側の参考図書1という棚に配架しています。

さて、今回はそんな図鑑の中から衣服の図鑑を紹介します。
この図鑑では古代から現代までの主に洋装の変遷について、図版や写真とともに紹介されています。衣服細部のアップ写真では、手縫いで衣服を製作していた時代、この服を作るのにどれほどの時間がかかったのか、気が遠くなるほどの細かい装飾も確認できます。
いつの日にかアビ・アラ・フランセーズの再現に挑戦してみたいです。

時代ごとに何を重視して衣服が作られたのか、大きく変化した時はどのような出来事があったのかを説明され、それだけでなくヘア・スタイルや靴、帽子についても触れられており、1冊で様々な楽しみ方ができます。

たくさんの服の中から素敵だと思う1着を探すのも、図鑑から読みたい本を探してみるのも楽しいのではないでしょうか。

*の資料は館内利用のみです。

【はにわ】

闇を照らす六つの星:日本点字の父石川倉次』(小倉明/著 汐文社 2012.12)

 「点字」。駅の券売機や、階段の手すり、エレベーターや電化製品の操作ボタン、ジャムのびんなど、身近なところで使われているので、ご存知の方も多いと思います。「点字」は目が見えない方が指でさわって読む文字で、縦3点・横2列の6つの点の組み合わせで表され、左から右へ読んでいきます。
 点字のしくみなど基本的な事柄については、『もっと知ろう!点字:点字の読み方から、歴史、最新技術まで』や、小冊子の『点字にチャレンジ!:マンガでおぼえる点字のしくみ』でわかりやすく説明されています。なお、後者の小冊子は日本点字図書館のWebページ(外部リンク)にて、全文が公開されています。
 また、点字は、1825(文政8)年にフランスのルイ・ブライユによって考案されたことが知られていますが、日本のかな文字点字は、東京盲唖学校の教師であった石川倉次によって考案されたもので、1890(明治23)年11月1日の第4回点字選定委員会で案が採用されました。今年はその石川倉次の没後80年にあたります。

 本書は、石川倉次についての伝記で、生い立ちや、日本のかな文字点字ができるまでの背景について知ることができます。
 ブライユの点字が日本に伝来した頃、東京盲亜学校の小西信八に、かな文字に合った点字の研究を依頼された石川倉次。6点の組み合わせ63通りのうち、読み間違いを防ぐために同形で位置だけが違うものを除いた44通りの組み合わせでは、当時の日本語のかな48文字すべてを表すことが不可能であったことが書かれており、その研究は容易ではなかったことがうかがえます。
 本書を読み進めると、同僚の遠山邦太郎の案が、不可能と思われた、かな文字すべての6点点字表記を可能にするヒントとなったこと、研究の中で石川倉次が、6つの点がすべて打たれた形を見ていると「目」という字に見えてきたことから、その配列をマ行の「メ」とし、そこから点字配列の作業を進めていったことなど、興味深いエピソードが詳しく書かれています。
 また、点字選定委員会の内容についても書かれており、会議で出された3つの点字案に対し、どの案が最も目が見えない人たちにとって、読みやすく覚えやすいか、議論を交わしながら選ばれたことがわかります。
 中高生向けに書かれたもので、多くの漢字にルビが振られ、物語形式で登場人物の会話文を交えながら書かれており、読みやすい資料となっていますので、ぜひ手に取っていただければと思います。

                                  【NM】

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