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本蔵-知る司書ぞ知る(110号)

更新日:2024年1月19日


本との新たな出会いを願って、図書館で働く職員が新人からベテランまで交替でオススメ本を紹介します。大阪府立中央図書館の幅広い蔵書をお楽しみください。

2023年12月20日版

今月のトピック 【クリスマス】

12月のイベント、クリスマス!子どもの頃は待ち遠しくても、大人になるにつれ普通の1日として過ごす方もいるかもしれません。それでも百貨店や駅などが装飾され、華やかになる様は心癒されます。今回はそんなクリスマスにちなんだ本を紹介します。

図説クリスマス百科事典』(ジェリー・ボウラー/著 中尾セツ子/日本語版監修 笹田裕子/日本語版編集委員 成瀬俊一/日本語版編集委員 柊風舎 2007.12)

クリスマスに関する世界各国の伝統や食べ物、文学、映画、賛美歌、人名などのクリスマスに関する様々な事柄約1100項目が掲載された事典です。「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」など著名な作品の解説から各国のクリスマスの宗教的登場人物など、読んでいるだけで世界の風習の違いが楽しめます。*※の資料は館内利用のみです。

クリスマスの発酵菓子:ヨーロッパで愛され続けるその背景、魅力と作り方』(誠文堂新光社/編 誠文堂新光社 2022.9)

パン屋さんでも見かけるシュトレンから、パネットーネ、クグロフなどの聴き慣れないお菓子までヨーロッパのクリスマスに伝わる発酵菓子の歴史や作り方が紹介されています。見ているだけでお腹が空いてくる素敵なお菓子を、クリスマスに合わせて作ってみるのはいかがでしょうか?

クリスマスの歴史:祝祭誕生の謎を解く』(ジュディス・フランダーズ/著 伊藤はるみ/訳 原書房 2018.11)

「クリスマスといえば」といった風習や物は沢山あります。プレゼントやツリー、御馳走…。こういった風習はいつから始まったのでしょうか?この本では古代から21世紀までのクリスマスを世紀やトピックごとに紹介しています。知らなかったクリスマスの姿が見えてくるかもしれません。。

今月の蔵出し

津軽:失われゆく風景を探して』(アラン・ブース/著 柴田京子/訳 新潮社 1992.10)

青森県・津軽地方出身の作家、太宰治は、戦時中の昭和19年、小山書店の「新風土記叢書」シリーズの企画で、ふるさとの津軽を訪れ、紀行小説『津軽』を書きました。それは、津軽の風土の紹介にとどまらず、ふるさとに寄せる憧憬と反発といった複雑な思いを詰め込んだ、太宰の傑作の1つとなっています。

大学生のころ、太宰にはまっていた私は、津軽を一人旅しました。大阪から寝台特急に乗って青森へ。それから、太宰の『津軽』に沿って、津軽地方の各地を訪ねました。津軽半島の東岸、太宰が「風の町」と表現した蟹田。太宰が学生時代を過ごした弘前、五所川原。太宰の実家の巨大な邸のある金木、さらに、『津軽』のクライマックスで、子守の「たけ」との再会の舞台となった小泊まで。その旅は私にとって大切な思い出になっています。

今回取り上げるアラン・ブースの『津軽』もまた、太宰の『津軽』に沿って、津軽地方を旅した紀行小説です。

著者は、イギリス出身の演劇の演出家で、日本で作家としても活躍していた人物です。アランの津軽の旅は、通り一遍の旅行とは大違いで、とにかく濃い!旅館のおかみさんや同宿の人と交流し、身の上話を聞き、温泉につかっては、スナックで民謡を歌い、町の人々と一緒にお相撲さんを応援することも。主にお酒を媒介とした、現地の人とのすさまじく深い交流は、「外国人だから」という特殊性も少しはあるかもしれませんが、著者のもつ人柄によるものと感じさせられます。そしてその文章は、ユーモアと自虐がないまぜになって、どことなく「太宰っぽい」のです。

アランの旅の舞台は昭和63年で、青函トンネルが開通した年。描かれた街や人々の様子は、今から見ると昔風でコテコテですが、昭和の終わり、バブルの足音が聞こえつつも、まだまだ昭和の雰囲気を残していた時代の人々を活写しています。

【ハチ公】

入江泰吉自伝:「大和路」に魅せられて』(入江泰吉/著  佼成出版社 1993.1)

縁あって奈良に住み数年が経ちます。

奈良と言えば、修学旅行で訪れて若草山でお弁当を鹿に食べられそうになった思い出が強いのですが、そういえば、実家の本棚には写真好きな母の『入江泰吉写真全集』(全8巻)が鎮座していました。

奈良・大和路の風景写真をライフワークとした入江泰吉。

芸術一家に育ち写真家を志した入江は、大阪の写真店に就職。文楽の人形を撮った作品で評価を得ますが、大阪大空襲ですべてを失い地元奈良に戻ります。

失意の中、亀井勝一郎著『大和古寺風物誌』と出会い、かつての都の荒れ果てた寂しさを美ととらえたこの著作は入江の写真家としての方向性を決定づけます。折しも、空襲を免れた奈良の寺社には、疎開していた仏像が運び込まれているところでした。その仏像がアメリカに接収される噂を聞き、写真家として仏像の記録をすることを思い立ち、手作りの撮影機材で撮影を続けました。

また、幼馴染の上司海雲(かみつかさ・かいうん のちの東大寺別当)と再会し、上司を通じて志賀直哉など当時の文化人や芸術家に知遇を得たことの影響も大きかったようです。画家らと切磋琢磨しながら、数多くの写真集を出版しました。

本の最後には弟子たちの座談会も収録されており、思い描いた風景を撮るために、何時間でも待つことをいとわない厳しい一面と、普段はやさしい人柄とのギャップがあったと語られていたのが印象的でした。

筆者も、近所を歩いていて、夕暮れ時などにははっとするほど美しい風景に出会うことがあります。写真を通じて大和路の歴史と美を表現しようとした入江泰吉の作品をもっと深く知りたくなりました。

本を通じて先人の見た風景を感じて、今の奈良を歩いてみるのはいかがでしょうか。

【在原】


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