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本蔵-知る司書ぞ知る(95号)

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更新日:2022年9月20日


本との新たな出会いを願って、図書館で働く職員が新人からベテランまで交替でオススメ本を紹介します。大阪府立中央図書館の幅広い蔵書をお楽しみください。

2022年9月20日版

今月のトピック 【翻訳】

9月30日は翻訳の日です。聖書をラテン語に翻訳したヒエロニムスの命日とされる日であり、1991年に国際翻訳家連盟が「世界翻訳の日」と制定しました。日本国内でも日本翻訳連盟が同日を「翻訳の日」に制定しています。今月のトピックでは、翻訳をテーマに3点の資料をご紹介します。

翻訳者あとがき讃:翻訳文化の舞台裏』(藤岡啓介/編著 未知谷 2016.3)

大正・昭和・平成の100年間に刊行された翻訳書の中から、選りすぐりの翻訳者によるあとがき35編を収録した、名訳集ならぬ名翻訳者あとがき集です。『赤毛のアン』で知られる村岡花子が愛息との別れを乗り越えて初めて出版した翻訳書のほか、中野好夫や大久保康雄らの翻訳書のあとがきがあります。日本における外国文学の受容を映し出す翻訳書のあとがきを辿ることで、日本の翻訳史を描き出す一冊です。

悩ましい翻訳語:科学用語の由来と誤訳』(垂水雄二/著 八坂書房 2009.11)

著者の専門である生物学分野の訳語を中心に、科学用語の誤訳例や訳語の歴史的背景を取り上げた翻訳語エッセイです。科学用語と言うと専門的で難しそうなイメージを持ちますが、文学作品に登場する動植物の名前やニュースで耳にするような身近な言葉も数多く取り上げられています。例えば、小説『老人と海』の初期翻訳におけるシイラとイルカの誤訳や「ウイルス」という言葉の表記統一に関する話など。様々な科学用語の翻訳をめぐる物語をお楽しみください。

源氏物語に魅せられた男:アーサー・ウェイリー伝 (新潮選書)』(宮本昭三郎/著 新潮社 1993.3)

世界で初めて『源氏物語』の英語全訳を出版したイギリス人東洋学者アーサー・ウェイリー。卓越した語学力を持ち、世界に日本文学を知らしめたウェイリーですが、驚くべきことにその生涯にわたり日本の地を踏むことはなかったといいます。知りたいことはすべて本から学ぶことができる。日本から遠く離れたイギリスの地で注釈書2冊を片手に『源氏物語』を読み通し、完訳するという前人未踏の訳業を成し遂げたその生涯を追います。

今月の蔵出し

私が源氏物語を書いたわけ:紫式部ひとり語り​』(山本淳子/著 角川学芸出版 2011.10)

この本は『源氏物語』の作者である紫式部の評伝で自身の言葉で語る「ひとり語り」の形式をとっています。著者は平安文学の研究者で、紫式部作の「紫式部日記」「紫式部集」を始め、国文学・国史学の研究成果をもとに本書を書き起こしています。

紫式部は漢学の家に生まれ、家には漢籍があふれていました。父は弟を漢学の道に入れて出世させようとしましたが、弟は入門書の素読もなかなか覚えられず、何度も読み上げているのを横で聞いているうちに、紫式部は自然に覚えてしまいます。その後も漢詩や漢文に没頭しますが、「男でも漢文の知識をひけらかす者はうだつがあがらない」と世間で言われているのを聞き、「一」という字の横棒すら引いていないと日記に書いています。『源氏物語』の中でも光源氏が漢詩を作る場面は書いていますが、詩そのものは書いていません。しかしながら『源氏物語』が漢籍を踏まえて作られている点を著者は原典を引用しながら紹介しています。

紫式部は母、姉を早くに亡くし、夫の宣孝も結婚3年後に疫病で死んでしまいます。無力な現実の前に泣き暮らし絶望しますが、「心」は現実に縛られず違う世界を生きることができると考え、物語を書くようになります。

一生「里の女」(娘や妻として家にいる人)として過ごすつもりでしたが、一条天皇の中宮にして時の最高権力者藤原道長の娘彰子に仕えるようになります。当初は女房の仕事を落ちぶれた人のすることと嫌悪していましたが、様々な経験を経ていくうちに女房として生きていこうと決心します。そしてそこで見てきた様々な境遇の女たちを『源氏物語』の中で言葉と声にして響かせます。

当時の歴史的政治的背景も丹念に描かれており、史料や和歌の解説も丁寧で理解が深まります。紫式部の感情がリアルに語られており、時代をこえて身近に感じることができます。

【雪丸】

選択の科学:コロンビア大学ビジネススクール特別講義』(シーナ・アイエンガー/著 櫻井祐子/訳 文藝春秋 2010.11)

歴史にもしもはないと聞くことがありますが、異なる選択をしていた場合の世界を想像したり、自分事で考えた場合でも、あのときこうしていればとかつての選択を後悔したことが誰しも一度や二度はあるのではないでしょうか。
私自身もそうで、これまでの人生に後悔ばかりしていた時に手にとったのがこの本です。

「選ぶ」ということは、生きるため、自分の人生にどのような意味を持つのでしょうか。
本書の内容は、心理学を中心に経営学や経済学、生物学、哲学、文化研究などの様々な分野から「選択」を考察したものとなっています。
自分らしさを発揮した選択が実は他者の選択に影響されていることがあること、選択肢が多ければ多いほど良いわけではないこと等が述べられていて、今後も出合うであろう選択の機会に対する心構えになりました。

選択できる自由があること自体が幸福な人生につながっているとのことです。選択以外にも偶然や運命など、自分自身ではどうにもできないことに振り回されるのが人生の物語なのでしょうが、意志ある選択が未来を創るのだと生きる力が湧いてくる本です。

【エール】


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