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本蔵-知る司書ぞ知る(84号)

更新日:2024年1月5日


本との新たな出会いを願って、図書館で働く職員が新人からベテランまで交替でオススメ本を紹介します。大阪府立中央図書館の幅広い蔵書をお楽しみください。

2021年10月20日版

今月のトピック 【化石】

10月15日は化石の日でした。2017年に国際古生物学協会が「国際化石の日」を10月第2週の土日に制定したことを受けて、2018年、日本古生物学会が毎年10月15日を「化石の日」としました。今回のトピックでは化石や古生物に関する資料をご紹介します。

化石になりたい:よくわかる化石のつくりかた(生物ミステリー)』(土屋健/著 技術評論社 2018.7)

タイトルのとおり、「化石になりたい」という要望にまじめに答えている本です。まず化石の種類の多さに驚かされます。「化石はどうやってできるのか」など、豊富な写真とともにわかりやすく解説しています。表紙を初めとして、柔らかいタッチのイラストもふんだんに使われており、化石の世界に親しむことができます。

ウンチ化石学入門(インターナショナル新書)』(泉賢太郎/著 集英社インターナショナル 2021.4)

化石の中でも「生痕化石」と呼ばれる足跡や巣穴などの化石のうち、糞(ウンチ)の化石に特化した本です。ティラノサウルスと首長竜のウンチ化石を取り上げ、さまざまな角度からウンチ化石の魅力を説いています。実際に化石を探してみるといった、身近な化石の楽しみ方も案内しています。

恐竜博士のめまぐるしくも愉快な日常』(真鍋真/著 ブックマン社 2019.7)

日本を代表する恐竜博士によるエッセイです。化石の発掘調査や恐竜研究の最前線、特別展「恐竜博」の裏話など、具体的なエピソードが生き生きと描かれています。「初めて恐竜を見つけた人物」「恐竜の羽毛に違和感を持つのは大人だけ」など面白いコラムも豊富です。

今月の蔵出し

算法勝負!「江戸の数学」に挑戦:どこまで解ける?「算額」28題(ブルーバックス)』(山根誠司/著 講談社 2015.1)

算額というものをご存知でしょうか。

算額は、和算家による数学の問題や解法が書かれた絵馬で、江戸時代になってから神社仏閣に奉納されるようになり、その風習は明治時代まで続いたと言われています。破損などで取り払われたものも数多くありますが、現在でも全国各地に残っています。また、算額の奉納には、問題が解けたことに対する神仏への感謝のほか、創案した問題を掲げ、広く解答を求める手段としての意味合いもあったそうです。現在神社などに掲げられている一般的な絵馬の大きさは、縦横10~20cm程度と小型のものが多いのに対し、算額は平均的なもので縦90cm×横180cm程度と、比較的大型のものが多いことが特徴です。

本書は、現存するものを含め記録に残る算額の中から28題を選定し、それぞれ問題と解答が記されています。問題は、幾何学(図形)形式のものが多く、初級編と腕試し編が10問ずつあり、そのほか代数的問題が7問、最後に和算の到達点として極めつけの難問が1問掲載されています。解答では、現代の解き方だけでなく、江戸時代の和算によるものも記されており、対比することができるようになっています。
また、28題それぞれの末尾には、「算額の分布」「最古の算額」「和算の歴史」「塵劫記の出版」などの算額・和算にまつわる話や、「関孝和」「建部賢弘」といった和算家に関するエピソードも収録されています。

算額に書かれた問題を解く以外にも、算額や和算について知ることもでき、新書ながら読み応えのある一冊です。

【NM】

働きたくないイタチと言葉がわかるロボット:人工知能から考える「人と言葉」』(川添愛/著  朝日出版社 2017.6)

普段何気なく使っている言葉の面白さや難しさを感じ、興味を持つようになったのは、業務で点訳や音訳、手話に関わるようになったここ最近のことです。点訳には漢字の読み方や品詞といった日本語の知識が欠かせず、音訳では正しいアクセントやイントネーションを意識する必要があります。そして、手話では、手指の形や動き、口の形や表情、そして動きの強弱が意図を伝える大切な要素になります。

AI(人工知能)が囲碁や将棋で人間を上回り、自動運転自動車の開発が進む今日、点訳、音訳、手話も含め、AIによる言葉の研究は日々進んでいるようです。

「僕らが言ったことを何でもやってくれるロボットを作ろう!」
イタチ村のイタチたちが、そんなロボット作りを思い立つところから物語は始まります。音声認識ロボットを作ったモグラ村、会話ロボットを作ったカメレオン村、質問に答えるロボットを作ったアリ村などを訪ねて行くなかで、コンピュータが「言葉」を、そして「言葉が含む意図」を理解することの難しさに直面しながら、少しずつ、自分たちのロボットに改良を重ねていきます。物語の進行に合わせて、コンピュータによる言語理解(自然言語処理)の課題が解説されていきます。物語の果てに、イタチたちのロボットは言葉を理解できるようになるのでしょうか?

先日、図書館で行われた講演会で、舞台上での手話通訳を見る機会がありました。手話勉強中の私には、細かな意味は分からないものの、動きや表情は、言葉以上に伝える力を持ち、今更ながら人と人とのコミュニケーションの奥深さに驚嘆しました。いつの日か、人間の表現力を上回るロボットが現れる日が来るのでしょうか?それは、楽しみなようでもあり、怖いようでもあります。

【走る図書館員】


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