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本蔵-知る司書ぞ知る(72号)

更新日:2024年1月5日


本との新たな出会いを願って、図書館で働く職員が新人からベテランまで交替でオススメ本を紹介します。大阪府立中央図書館の幅広い蔵書をお楽しみください。

2020年10月20日版

今月のトピック 【鉄道】

10月14日は「鉄道の日」です。それにちなんで今回は、鉄道についての本を3点ご紹介します。また当館では10月31日まで展示「鉄道の世界」を開催しています。この機会にぜひ手に取ってみてください。

日本鉄道事始め:NHKニッポンに蒸気機関車が走った日』(高橋団吉/編著 NHK出版 2018.4)

1872(明治5)年10月14日、日本で初の鉄道が開通しました。今や我々の生活に欠かせないものとなった鉄道は、どのようにして日本に広まっていったのでしょうか。本書では日本への鉄道の伝来や建設の経緯、鉄道が日本に与えた影響など、日本の鉄道事情がQ&A形式で紹介されています。

鉄道旅で「道の駅“ご当地麵”」:全国66カ所の麵ストーリー(交通新聞社新書)』(鈴木弘毅/著 交通新聞社 2016.3)

本書では鉄道駅から歩いて10分以内の道の駅で味わえるご当地麺が紹介されています。どれも個性的で美味しそうですが、特に驚いたのが、山形県尾花沢駅の「尾花沢スイ辛冷麺」という、スイカに見立てた辛味調味料がのっている冷麺です。写真を見てもスイカとしか思えません。山形を訪れた際には、ぜひ食べてみたい一品です。

鉄道駅スタンプのデザイン:47都道府県、史跡名勝セレクション』(関田祐市/監修 青幻舎 2014.6)

駅スタンプは今から約80年前に福井駅に設置されたのが始まりといわれています。本書では全国の駅スタンプ約380点が「人気のモチーフ」「主要駅の変遷」「ご当地の名産」の3つのテーマに沿って紹介されています。どの駅スタンプも地域色豊かで、頁をめくるだけで旅行気分を味わえる一冊です。

今月の蔵出し

ウィンザーチェア大全:歴史、デザイン、製作技法、名品紹介などすべてを網羅した決定版』(島崎信/著 山永耕平/著 西川栄明/著 誠文堂新光社 2013.4)

タイトルのとおり、ウィンザーチェアについて様々な視点で書かれた本です。

ウィンザーチェアは、17世紀後半から18世紀前半頃にイギリスで誕生した木製の椅子です。地元の木材を使用している、素朴で美しい、丈夫で機能的などの特徴があり、近代椅子のデザインや製作工程に大きな影響を与えたといわれています。名前を知らなくてもひと目見れば、「この椅子のことか。」とわかるような日用の椅子です。

当初はウィンザー地方を含むイギリスの中南部各地で製作されていましたが、イギリス全土に広がり、さらに世界に広がって地域ごとに発展していきました。
日本では開国以降、外国人居留地に海外の日用品や家具が持ち込まれるようになり、西洋建築の増加に伴って洋家具の需要が増えていきました。
そうした中でウィンザーチェアも見られるようになりますが、本格的に紹介されたのは、民芸(民衆的工芸)運動の提唱者、柳宗悦(1889-1961)と陶芸家の濱田庄司(1894-1978)が、1929(昭和4)年に渡英した際に収集したイギリスの工芸品を東京で展示販売したときでした。陶器やチェストなどの木製家具とともに、30脚あまりのウィンザーチェアが紹介されたといいます。(それらの椅子の中には、1936年に開設された日本民藝館や、濱田が晩年に設立した益子参考館の収蔵品となったものもあるようです。また、濱田が滞英中に収集した工芸品は『英国の工芸』*で紹介されています。)
その後、日本各地の木材を使い、日本流の仕上げをした日本版ウィンザーチェアが誕生します。これらの椅子は、民芸運動と重なり合って民芸家具として広まっていきました。

2017年に日本民藝館と長野県信濃美術館で「ウィンザーチェア-日本人が愛した英国の椅子」という特別展が行われました。国内にあるウィンザーチェアの優品と欧米の多様な椅子がこれまでにない規模で展示されたようです。本書では、この展示の出品元である日本民藝館や松本民芸生活館などの名品や、北欧や日本の家具デザイナーが、ウィンザーチェアからヒントを得て生み出した名作椅子も紹介されています。

椅子の歴史や名作椅子にご興味のある方は、『名作椅子の由来図典:歴史の流れがひと目でわかる』もどうぞご覧ください。

*の資料は館内利用のみです。

【ミルクパン】

SFショートストーリー傑作セレクション 時間篇 人の心はタイムマシン/時の渦』(日下三蔵/編 456/絵 汐文社 2018.11)

科学的な空想に基づいた物語、「SF(サイエンス・フィクション)」。SFの世界は実はとても多様です。思いつくものを並べてみても、宇宙船、ロボット、タイムマシン、超能力、未来社会、異次元などなど。

そんなSF作品の中でも、主に昭和の時代に発表された日本SFの名作短編がテーマ別に編まれたアンソロジーのシリーズをご紹介します。2020年10月現在、第1期、第2期と続いており、各4冊合計8冊刊行されています。第1期は表題に掲げた『時間篇』以外に、『ロボット篇』『異次元篇』『未来篇』、第2期は『宇宙篇』『超能力篇』『怪獣篇』『破滅篇』というラインナップになっています。

シリーズ1冊目のこの『時間篇』では、小松左京「御先祖様万歳」、星新一「時の渦」、筒井康隆「時越半四郎」、平井和正「人の心はタイムマシン」、広瀬正「タイムマシンはつきるとも」、梶尾真治「美亜へ贈る真珠」といった、時間SFが6篇収録されています。前者3人、小松左京・星新一・筒井康隆は、日本におけるSF御三家。令和から平成を飛び越えた昭和の作品群ですが、全然古びていません。傑作ぞろいです。ほかの巻では、眉村卓や光瀬龍、今日泊亜蘭他の作品が紹介されています。

それぞれの巻末には、各テーマのSFの歴史の解説や各著者のプロフィール、代表作なども掲載。そのテーマの他の作品も紹介されていて、ブックリストとしても活用できます。

挿絵も巻ごとに違いますので、味わいもその都度変わります。お好きなテーマ、挿絵から、1冊の中でも好きな作家から、気になる作品からといろんな楽しみ方ができます。いずれも短編なので、1つ1つは短く、4ページと超短編もあるくらい。読みやすいです。SFって難しいんじゃないかと思っている方こそ、ぜひ、読んでいただきたいです。

【企鵝】


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