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本蔵-知る司書ぞ知る(68号)

更新日:2024年1月5日


本との新たな出会いを願って、図書館で働く職員が新人からベテランまで交替でオススメ本を紹介します。大阪府立中央図書館の幅広い蔵書をお楽しみください。

2020年6月20日版

 今月のトピック 【和菓子の日】

6月16日は和菓子の日でした。これは、「西暦848年(承和15年・嘉祥元年)の夏、仁明天皇が御神託に基づいて、6月16日に16の数にちなんだ菓子、餅などを神前に供えて、疫病を除け健康招福を祈誓し、「嘉祥」と改元したという古例にちなみ」(全国和菓子協会HPより)全国和菓子協会が定めたものです。毎年、あちこちの和菓子屋さんではこの日に合わせた限定のお菓子を販売していて筆者はそれを楽しみにしています(今年はやっているお店があまりなくて残念)。ということで今月は和菓子にまつわる本をご紹介します。

和の菓子』(高岡一弥/アートディレクション パイインターナショナル 2018.4)

練切、薯蕷、飴菓子、落雁など、季節ごとにその季節に合わせて作られる美しい造形をその由来と共にひたすら愛でる本です。おいしそうであると同時に、食べるのがもったいないと感じさせられます。

プロのためのわかりやすい和菓子』(仲實/著 柴田書店 2006.7)

食べたり愛でたりするだけではなく自分でも作りたくなったらこちらの本はいかがでしょう?
​「プロのための」とありますが、餡作りから、蒸し菓子、餅菓子、生菓子、羊羹、どら焼きまで、様々な和菓子の作り方が写真を多用して丁寧に紹介されています。

地域名菓の誕生』(橋爪伸子/著 思文閣出版 2017.11)

全国各地でお土産物として親しまれているその土地の「名菓」。地域固有の菓子がどのように誕生し、そして全国的な「名菓」になっていったのかを熊本の朝鮮飴やかせいた、長崎のカステラなどを例に辿っています。

今月の蔵出し

7つの習慣:成功には原則があった!』(スティーブン・R・コヴィー/著 キング・ベアー出版 1996.12)

約200年分の「成功」にかかわる文献を調査した結果として導き出された、誠意、謙虚、勇気、正義、忍耐、勤勉、節制、黄金律といった不変の「原則」から、人生の成功への法則を抽出し、7つの「習慣」としてわかりやすく説明してくれる本です。

著者は、アメリカの建国以降に発行された約200年分の「成功」にかかわる文献を調査した結果、最近の50年分の文献ではコミュニケーションスキルなど、上辺だけの応急処置的なテクニックの解説がほとんどであるのに対して、その前の150年間の文献では誠意、謙虚、勇気、正義、忍耐、勤勉、節制、黄金律といった、不変の「原則」に基づく優れた人格の養成を重視していたことを発見しました。

また、著者は、それぞれの人間の認識、理論、解釈を決定する物の見方を「パラダイム」と呼び、「大きな改善を望むならパラダイム転換」が必要だと主張します。老婆にも若い女性にも見える絵などを例として、着眼点を変えると同じものが全く違って見えるように、パラダイムを変えると今までと同じものを見ても全く違って見えること、また、私たちの持つパラダイムを不変の「原則」と一致するようにすれば、個人および人間関係に非常によい影響をもたらすと説明します。

「原則」と一致した生き方とするための、7つの「習慣」のそれぞれについて、多数の具体例が挙げられており、それぞれの「習慣」や行動がわかりやすく説明されているので、心にストンと入ってくるキーワードに出会うことができました。

将来の生き方や人付き合いに悩んでいた一時期、いろいろな人生訓や、人付き合いのコツの本などを読みましたが、目新しいテクニックではなく、普遍的に大切なことを教えてくれる『7つの習慣』の内容は、今でもとても心に残っています。

 【Poco】

戦場の秘密図書館:シリアに残された希望』(マイク・トムソン/著 文溪堂 2019.12)

舞台となる街ダラヤは、シリア政府軍によって包囲され、4年間外部から孤立します。街の中に残る決断をした住民約8千人は、非暴力の自治組織「評議会」によって、街を自分たちで維持しました。

そんな街に、住民たちの手で運営する地下の図書館ができます。棚に並ぶ本は、爆撃された民家や建物から持ち出した1万4千冊です。狙撃兵の目を盗み、命をかけた本の救出に、なぜそこまでと思いますが、ダラヤの人達にとって、本は恐怖や空腹を紛らせてくれるものであり、「頭や心の栄養」なのです。

1冊ずつ、表紙の内側に所蔵者を記録した上で台帳に記載し、いずれ持ち主に返す前提で、市民に公開されます。図書館が爆撃や風雨から本を守る、一番安全な場所となるくらい、過酷な環境です。

図書館が本を読む場から、本を通して知識を分かち合い、学びあう場へと発展していく様は、まさに図書館の理想の姿です。

自由な国家を願い、平和的解決を求めた住民たちは、最終的にダラヤの街から強制退去させられ、図書館は政府軍に差し押さえられるという結末を迎えますが、ダラヤでともされた希望の“ともしび”は、新しい街の移動図書館へとつながっていきます。

通信環境も遮断され、活動を知られることが命に関わる状況の中で遠隔取材を行い、図書館の運営に関わった人物や利用者のインタビューをまとめた一冊です。

この本を手にしたのは、全世界が自粛生活を行っている真っただ中。姿の見えない敵に、見えない鎖で縛られるようなくらしと、ふとリンクしました。

社会がどんなふうに変わっても、図書館の本が「雨のよう」に、すべての人に「わけへだてなく降り注」ぎ、本を読むことで「人間の知恵が花開く」。そんな存在であり続けることを願ってやみません。

本書は児童書ですが、一般書も出ています。

シリアの秘密図書館:瓦礫から取り出した本で図書館を作った人々

【BM】


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