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本蔵-知る司書ぞ知る(50号)

更新日:2024年1月5日


本との新たな出会いを願って、図書館で働く職員が新人からベテランまで交替でオススメ本を紹介します。大阪府立中央図書館の幅広い蔵書をお楽しみください。

2018年12月20日版

今月のトピック 【天体観測】

当館では1月11日開催予定の「冬の天体観望会」に合わせた関連資料展示を1月14日まで実施しています。これからの季節は、クリスマス、年末年始と気忙しい時期。そんな時だからこそ、空を見上げてみませんか。今回は星空に関する本を3冊ご紹介します。

賢治の見た星空』(藤井旭/著 作品社 2001.12)

実際に賢治が見た星や月食、賢治の詩や童話の中の星空の再現が写真によって成されています。その検証が画期的で興味深い写真文集です。
宮沢賢治、その名もズバリの星が命名されたいきさつも書かれています。
著者は国際的にも著名な天体写真家で、星仲間とつくった白河天体観測所の活動でも知られています。ローウェル天文台は、発見した小惑星3872番に、著者に因んでAkirafujiiと命名しました。

星をさがす本』(林完次/写真・文 角川書店 2002.10)

星占いの12星座など、四季の代表的な星座にまつわる神話やエピソードが紹介され、星を探すヒントやコツが示されています。流星群の出現時期を知ることもできます。自分の星座を探してみませんか。こちらも写真文集です。

今夜、流れ星を見るために(ガールズ・スターウォッチング・ブック)(星空さんぽ編集部/編 誠文堂新光社 2013.3

いつ、どこで、どのように見ればよいのか。流れ星に出会うチャンスがグッと高まるポイントを解説していて、撮影の仕方も初心者にもわかりやすく紹介されています。
かわいいイラストと星図で思わず手にとってしまう親しみのある本です。

今月の蔵出し

世界の不思議な図書館』(アレックス・ジョンソン/著 北川玲/訳 創元社 2016.4)

みなさんのお気に入りの図書館はありますか。職業柄、特色のあるさまざまな図書館を知っていますが、世界にはこんなに自由な「図書館」がまだまだたくさんあるとは知りませんでした。

この本に出てくるのは、旅先の図書館、動物の図書館、小さな図書館、大きな図書館、移動する図書館など、大抵の人が思いうかべる建物とはスタイルが全く異なる図書館です。

特にいいなと思うのは、電話ボックス図書館です。かつてイギリスで使われていた電話ボックスが大西洋を渡り、アメリカの小さな町で24時間使える図書館になりました。その名も「THE BOOK BOOTH」。電話ボックスに置くのは、どんな本がよいでしょうか。私が選ぶなら、旅心をくすぐる写真集や地図、心に残る詩集、どこから読んでもよい短編集などを置きたいです。絵本なら『おおきな木』(シェル・シルヴァスタイン/さく・え ほんだきんいちろう/やく)とか…。テープカットをする住民たちの笑顔からわくわくする気持ちが伝わってきて、これからどんなふうに利用されていくのだろうと想像がふくらみます。

移動する図書館も魅力的です。フィンランドの救助船ライブラリーの蔵書は、司書が利用者に人気のあるフィッシング、ガーデニング、狩猟の本などを選んで載せているとのこと。また、ツリーハウスにある図書館でのんびり読書もしてみたくなるし、ビーチ・ライブラリーで気軽に本を選ぶのも良さそうです。

まるで夢のような図書館ばかりですが、実在する、もしくは実在した場所です。そんな不思議な図書館でなくても図書館はどこでも、司書が本を選ぶ手助けをしたいと待っていますので、ぜひ身近な図書館に足を運んでみてください。

【Gardenia】

四国猿と蟹蜘蛛の明治大正四国霊場巡拝記』(四国猿・蟹蜘蛛/著 佐藤久光/編 岩田書院 2018.4)

本書は、明治大正期の四国霊場巡礼記を翻刻し解説を加えた資料です。著者の「四国猿」と「蟹蜘蛛」はどちらもペンネームで、編者の佐藤久光は、「ペンネームだけを見ると、さしずめ、童話の『さる・かに合戦』を思わせる」と冒頭に記しています。

四国猿の「卍(まんじ)四国霊場巡拝記」は、『二六新報』にて1902(明治35)年4月から8月にかけて計65回連載。蟹蜘蛛の「四国八十八ヶ所 同行(どうぎょう)二人」は、『愛媛新報』にて1926(大正15)年9月から11月に掲載された連載記事です。

これ以前に四国巡礼について書かれた資料というのは、僧侶による宗教的な旅や、一個人の体験を綴った個人的な旅についての日記・日誌でした。そのため、後世の人に発見されることはあっても、広く公表されることを前提としては書かれていないものだったそうです。

それに対し本書は、はじめから新聞に連載し、読者が読むことを念頭に置きながら、白装束姿で自ら巡礼し、体験したことを詳細に記したものでした。

例えば、「卍四国~」では、何番の札所へ行き、一日の行程が何里であったか、また道中で出会う人々にどこから来ているのか聞いたことなどを書きとめています。また、道中の雨や泥のぬかるみに苦戦したことや、小豆飯を接待されたことも書かれています。蟹蜘蛛の「四国~」では、道々での出来事が、僧や同行遍路との会話を交えつつ客観的に書き記されています。両者とも、歩き遍路を主としていますが、時には汽車や汽船を利用していました。

やや読みづらい文体ではありますが、およそ100年前の「さる・かに」の四国巡礼を感じていただければ幸いです。

【雫】


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