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本蔵-知る司書ぞ知る(48号)

更新日:2024年1月5日


本との新たな出会いを願って、図書館で働く職員が新人からベテランまで交替でオススメ本を紹介します。大阪府立中央図書館の幅広い蔵書をお楽しみください。

2018年10月20日版

今月のトピック 【インスタントラーメンの本】

今年は世界初の即席麺”チキンラーメン”の発売60周年にあたります。それにちなみ、当館では展示「麺の本 -インスタントラーメン誕生60周年によせて-」を開催しています。今回は、インスタントラーメンにまつわる資料について、以下の3点をご紹介します。

安藤百福:即席めんで食に革命をもたらした発明家(ちくま評伝シリーズ<ポルトレ>)』(筑摩書房編集部/著 筑摩書房 2015.1)

中高生向けの本ですが、安藤百福についてだけでなく、インスタントラーメンの開発の裏側や国民食となるまでの経緯についても知ることができ、大人でも楽しめます。たとえば、開発の裏側については、妻の安藤仁子が天ぷらを揚げる様子から製法のヒントを得たというエピソードなどが詳しく書き記されています。各章末には、安藤百福が残した言葉とその解説を記した「語録コラム」が収録されています。

「国民食」から「世界食」へ:日系即席麵メーカーの国際展開』(川邉信雄/著 文眞堂 2017.10)

日本における即席麺業界の黎明期から日系各メーカーの国際展開後までが詳細に記されており、業界の発展について知ることができます。筆者は経営史やグローバル・マネジメントを専門とする研究者で、本書でも非常に多くの文献を参考にしており、しっかりと裏づけがなされています。研究書ですが、難解な専門用語等は頻出せず、一般の方でもわかりやすく書かれています。

即席麵サイクロペディア 1 カップ麵~2000年編』(山本利夫/著 社会評論社 2010.7)

本書は、大学時代から即席麺の袋やフタを集めつづけている著者による、カップ麺の図鑑です。1046種類のカップ麺の「調理方法(時間)」「付属品」「総質量」「カロリー」などがフタの写真とともに紹介されています。続編の『即席麵サイクロペディア 2 世界の袋麵編』も合わせてご覧ください。

今月の蔵出し

デザインの解剖 2:フジフイルム・写ルンです』(佐藤卓/著 美術出版社 2002.5)

本書は、日常よく目にする大量生産品を、一つ取り上げて分解してみるシリーズとして刊行され、第2巻は、先日逝去された女優の樹木希林さん出演のCMでもお馴染み「写ルンです」を取り上げています。樹木さんの追悼番組と共にCMを再び見る機会が増えた「写ルンです」は、少し前まではコンビニや旅先のキオスク等で気軽に購入できましたが、今年に入り一部生産中止のニュースを聞きました。本書の発行当初は、日常よく目にする大量生産品の一つだったと思うと、時代の流れを感じます。

このカメラは、写真を撮った後に巻き上げダイアルを回してフィルムを巻き上げますが、巻き上げる時にカリカリとした手応えと共に小気味よい音がするのが特徴です。これは、シャッターチャージが確かに働いていることを、ユーザーが操作しながら自然に感じ取れるよう、手応えと音質が「デザインされた」とのことで、何気ない操作の中にも生産者側の工夫があることを知りました。多くのアイデアとこだわりの集積により、一つの商品が出来上がっていることが「解剖」することでより際立つ内容になっています。

スマホで写真も気軽に撮れる時代になり、写真を印刷して残す人が減りました。写真を撮ることが、いつの間にか特別なものではなくなってきたように思います。

追悼番組で、ご自宅に飾られた家族写真を見つめながら「皆が別の方向を向いている家族」と樹木さんはつぶやかれていました。それでも、家族の姿がいつでも見られるように、写真を壁に飾られていたのではないかと、そして写真の中の家族も、樹木さんを見守られていたのではないかと思いました。

シリーズは全6巻。リカちゃんや牛乳等、様々な分野のデザインを解剖しています。多くの皆様にご利用いただきたいと思います。

【秋映】

童苑』(早大童話会 1935-1953)

今回は大阪府立中央図書館の中にある「国際児童文学館」から、本をご紹介します。
国際児童文学館は、国内で発行された、中学生以下の子どもを対象にした資料と、それを研究するための関連資料を収集しています。貸出はできませんが、どなたでも入っていただき、資料を部屋の中で閲覧することが可能です。(小学生以下の方は要保護者同伴)

この部屋には一般に想像される「図書館」とはまた違った資料も見られます。
その一つが、児童文学に関係するサークルや愛好会などが発行している機関誌・同人誌です。
書店には並ばず、関係者の方しか入手できないものですが、そのサークルから寄贈を受けたりなどして、収集に努めています。
現在も多くの寄贈をいただいており、運営にご協力いただいていることは感謝に堪えません。

さて、それら機関誌・同人誌類の中でも、特徴的なものを2つご紹介します。

『童苑』(早大童話会)
早稲田大学内の児童文学・童話サークルが1935(昭和10)年に創刊した、創作作品発表の同人誌です。
この文学サークルからは、多数の児童文学作家・評論家が巣立っていて、国際児童文学館の収蔵資料の中心となる12万点を寄贈し設立発起人となった鳥越信や、岡本良雄、水藤春夫、戦後に機関誌となった第5号の編集兼発行人には「ぼくは王さまシリーズ」の寺村輝夫の名前も見られます。
『童苑』は1953年に『少年文学』と改題され、早大童話会もこの時に早大少年文学会に改称されました。『少年文学 第19号』(1953.9)に掲載された「少年文学宣言」(正式な標題は「「少年文学」の旗の下に!」)は日本の児童文学の歴史を見る上で、欠かすことのできない記事です。

新漫画党』(新漫画党 1961)
数々の著名なマンガ家が住んでいたことで有名な「トキワ荘」。ここで「新漫画党」という団体が結成され、1961(昭和36)年に発行した機関誌がこちらです。
創刊号の「党員御紹介」を見ると、そのメンバーはそうそうたるもので、寺田ヒロオ、鈴木伸一、藤子不二雄、つのだじろう、石森章太郎、赤塚不二夫の名が並びます。
国際児童文学館では創刊号~第4号を所蔵しています。その内容はマンガ家たちの座談会の記録や、党員の近況など。創刊号には手塚治虫の祝辞も書かれています。

いずれも国際児童文学館で閲覧できますので、もしご興味がありましたら、ぜひご来館ください。ただし、貴重な資料ですのでお取扱いにはご注意を!

【RY】


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