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本蔵-知る司書ぞ知る(44号)

更新日:2024年1月5日


本との新たな出会いを願って、図書館で働く職員が新人からベテランまで交替でオススメ本を紹介します。大阪府立中央図書館の幅広い蔵書をお楽しみください。

2018年6月20日版

今月のトピック 【LPレコード】

今年(2018年)の6月21日はLPレコード発売から70年を迎える日です。1948年アメリカ・コロンビア社のピーター・ゴールドマーク博士により発明されたLPレコードは、それまでのSPレコードと比べ、音質・録音時間ともに優るものでした。今回のトピックではレコードや再生装置の歴史がわかる資料をご紹介します。

世界のレコードプレーヤー百年史』(山川正光/著 誠文堂新光社 1996.12)

1887年にエジソンが発明した音を蓄積できる「フォノグラフ」を起点に、およそ100年間のレコードとレコード再生機器の発達の歴史をふり返る1冊です。LPレコードの開発について詳述されており、長時間再生を実現し、かつ音質低下を防ぐために涙ぐましい努力があったことがうかがえます。再生装置の図版や写真も多く収録されています。

日本レコード文化史』(倉田喜弘/著 岩波書店 2006.10)

当時の新聞や雑誌等の資料を駆使し、レコードから見た日本近代史を解説した1冊です。明治期のフォノグラフの導入から始まり、音の大衆化やレコード業界の高成長、戦時期の検閲の強化、LP,CDの登場等が時代に沿って詳述されています。本書は1992年に東京書籍から刊行されたものを底本としており、音楽のネット配信に関する内容等が追記されています。

レコードとレコード・プレーヤ(ラジオ技術選書120)』(井上敏也/監修 ラジオ技術社 1979.2)

本書は出版当時までのレコードと再生装置の諸技術を紹介する資料で、日本ビクター株式会社の音響技術研究に関わる技術者により執筆されています。音を録音・再生するための基礎理論やレコード・プレーヤを構成する要素等、再生装置の設計技術を中心に詳述しています。

LP事典』(藤田不二/著 高城重躬/著 鱒書房 1953)*

鑑賞篇約1000ページと技術篇約500ページからなる大部な事典です。鑑賞篇では出版当時の名盤の紹介やレコード会社の案内の他、音楽鑑賞の一大革命としてLPレコードができるまでについて記述しています。技術編ではLP再生装置の原理・設計について詳細に説明しています。

*の資料は館内利用のみです。

今月の蔵出し

わが子が発達障害と診断されたら:発達障害のある子を育てる楽しみを見つけるまで
(佐々木正美/編著  諏訪利明/著  日戸由刈/著  すばる舎 2011.12)

子どもに発達障がいがあると診断された親だけでなく、これから産む子どもに障がいがないかを心配している親や、健常な子を持つ親、また身近に障がいのある人がいない人にとっても、障がいがあることを、優しい目で受け入れるための助けになる本だと思います。

「発達障害スペクトラム」という概念によると、発達障がいというのは、切れ目のない連続性(スペクトラム)であって、特性が非常に顕著な人もいれば、薄い人もおり、健常として育ってきた人の中にも、自閉症の傾向、アスペルガー症候群の傾向等が認められることもあるそうです。著者自身の子どもさんにもアスペルガー症候群や、学習障がいの傾向があったことや、そのお子さんたちを育てた体験談から、障がいがありながらもそれぞれの特性に合わせ、社会で立派に就労し、いきいきと生きていくことができると書かれています。障がいがあるというのは確かに大変な面もあるが、周りの理解で幸せに生きていけるのだと、障がいのある人や周りの人を元気づけてくれます。

著者は、長年にわたって非常にたくさんの子どもたちを診察してきた経験から、発達障がいの有無を無理に診断しなくてもよいと考えています。多くの人にさまざまな程度に発達障がい的な部分があるのではないかと考えるからです。健常であれ、発達障がいのある子であれ、まずは子どものありのままの姿を受け入れること、さらに、発達障がいの特性がある場合には、その障がいの特徴を知り、上手にかかわることが大切だと述べています。この心がけは、発達障がいの傾向がある健常の人との関わりの中でも、とても大切なことだと思われます。

【Poco】

おかげさまで大阪市営交通創業100年これからもよろしく 1903明治36年-2003平成15年』(大阪市交通局/編集 大阪市交通局 2003.7)*

2018年4月、大阪の交通の歴史が大きく動きました。1903年9月の日本初の公営市電(路面電車)開業から115年近くを経て、大阪市営の鉄道・バスは民営化という形で新たなスタートを切りました。

この資料は、創業100年となった2003年に発行されたものです。2018年現在とは15年の空白がありますが、各時代の豊富な写真とともに事業の歩みをわかりやすく紹介しています。
12ページ目から掲載されている最初のトピックは、市電開業について。最初の営業区間は、花園橋西詰から築港桟橋までの東西5キロメートルで、1区1銭でした。
32ページ目からは地下鉄について。大阪府立中之島図書館のすぐ近くの淀屋橋周辺では川を堰き止めての難工事となりました。地下鉄車両をトラクター、人、牛が引っ張る写真は、その時代ならではの光景を伝えています。多大な苦労の末、1933年5月に開通した地下鉄が御堂筋線です。最初の営業区間は、梅田から心斎橋までの南北わずか3.1キロメートルでした。

時代は移り、公営から民営へと変わりましたが、積み重ねてきた歴史を受け継いで大阪の交通をこれからも支えることでしょう。本書はその歴史を知ることができる貴重な1冊です。

なお、「大阪市交通局」として発行された創業からの節目を記念する資料としては「100年」が最後で、本書のほかに『大阪市営交通局百年史本編』及び『資料編』(大阪市交通局/編集 大阪市交通局 2005.4)*があります。こちらは本編だけで1,134ページもある、より専門的な資料です。

 *の資料は館内利用のみです。

【善哉】


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