本蔵-知る司書ぞ知る(41号)
更新日:2018年3月20日
2018年3月20日版
今月のトピック 【伊能忠敬】
今年は伊能忠敬の没後200年にあたります。最近は人生80年どころか100年時代とも言われるようになってきました。3月で定年を迎え第二の人生のプランを立てている方もおられるかと思います。伊能忠敬は50歳(数え年)の時に隠居して家業を息子に引き渡し、19歳年下の高橋至時に師事して暦学や天文学を学びます。その後の伊能図の作製は誰もが知るところです。志を忘れず、生涯現役を貫いた伊能忠敬の本を紹介します。
『天と地を測った男:伊能忠敬』(岡崎ひでたか/作 高田勲/画くもん出版 2003.6)
児童書ですが、大人が伊能忠敬を知るための資料としても十分楽しむことができます。図版や写真がたくさん掲載されており、巻頭には「伊能図以前の日本地図」と「伊能図」が掲載されていて見比べることができます。漢字にルビが振られていますので、人名等の読み方を調べるのにも役に立ちます。巻末には「伊能忠敬年譜」、「伊能隊の主な測量法」、「伊能隊の地図のつくり方」、「参考資料一覧」が掲載されています。
『四千万歩の男』(全5巻)(井上ひさし/著 講談社 1990.1)
井上ひさしによる長編小説です。二十代後半の時はあまりにも愚直な足跡に何の未練もなく「忠敬先生」といったん「サヨナラ」したが、厄年を迎えて資料を繰り返し読んでいくうちに、忠敬が味のある人物として蘇ってきたという執筆動機に心がひかれます。人生の達人といわれる忠敬の魅力がわかるのにはそれなりの人生経験が必要ということかもしれません。
『伊能図大全』(全7巻)(伊能忠敬/著 河出書房新社 2013.12) *
伊能忠敬測量隊による全ての測量結果を集成し、文政4年(1821)年に上呈された「大日本沿海輿地全図」を収録しています。1巻~4巻は、地域別の「伊能大図」、5巻は、「伊能中図・伊能小図」、6巻は「伊能図の概説と各図解説」、7巻は「地名索引」という構成になっています。
*の資料は館内利用のみです。
今月の蔵出し
『本を読む本』(M.J.アドラー/著 C.V.ドーレン/著 外山滋比古/訳 槇未知子/訳 講談社 1997.10)
「本を読むこと」が、好きな人も嫌いな人もいます。本に関わる仕事をしている身としては好きな人が増えたらいいなあ、と思いますが、そこは個人の好みの問題。
さて、読むことが好きな人は「もっと上手に読めるようになるにはどうすればいいだろう」と思うことがありますし、嫌いな人は「読めるようになれたらいいのに」または「嫌いだけど、どうしてもこの本を読まなくてはならない」ということがあるのではないでしょうか。
そんな時に役に立つのは「読書法」と呼ばれるジャンルの本です。
つまり、本を読む技術について書かれた本。野球ならば、バッティングやピッチングについて書かれたマニュアル本がありますが、その読書版です。
試しに大阪府立図書館Web-OPACにて「件名」の検索欄に「読書法」と入力し、検索してみてください。たくさんの本が出ていることが分かります。
本を読めるようになるために本を読む、というのは本末転倒に聞こえますが、「料理が上手になるためにレシピ本を読む」「数学のテストの点数を上げるために参考書を読む」というのと同じ感覚です。何かができるようになるためには、まずは基礎を学び、実践を繰り返して、習得する。読書も同じだと私は思います。
本の読み方は自由です。好き嫌いも自由です。けれど、自分に役立ちそうな技術を習得したい、というときは、読書法の本をいくつか手に取っていただき、これは役に立ちそうだと思うものを実践してみてはいかがでしょうか。
標題の『本を読む本』は、私が読んだ中でもおススメの1冊です。
アメリカの哲学者による本で、書かれたのはなんと1940年。しかし、今でも十分通用する、読書の手引書です。
とにかく本を読む、ということを技術的、論理的に分析し、解説してくれています。本の選び方から、内容の把握の仕方、言葉の汲み取り方、一つのテーマについて複数の本を比べながら読む方法など。
主に実用書が対象ですが、小説の読み方も少し解説されています。
【RY】
『コンテナを追え』(吉野克男/著 成山堂書店 2000.8)
まるで推理小説のような書名ですが、本書は海上輸送の主役であるコンテナ箱についての解説本です。とは言うものの、船乗りやコンテナ生産等に携わってきた著者が、臨場感あふれるエピソードとともにコンテナのルーツを紐解いてくれる本書は、謎が明らかにされていくミステリと同じように、わくわく読み進められる一冊です。
ところで、当館は、近畿自動車道と阪神高速が交差する東大阪ジャンクションの近くにあります。最寄りの荒本駅または長田駅から当館に向かう道路は、交通量が多く、いろいろな種類の車両が通っています。車を何台も載せたカーキャリアや、巨大な建材を載せたトレーラーなど、思わず目を奪われる車に出会うこともしばしばです。もちろん、われらがコンテナを積んだトレーラーもお目見えします。鉄道用のコンテナはこぢんまりとしてかわいらしいですが、海上用のコンテナは巨大で、中にどんな荷物を積んでいるのかを想像すると楽しいものです。また、エンジ色や藍色などのしぶい色合いをしていることが多く、潮風のなかを長い時間かけてここまでたどり着いたことを教えてくれるようです。
本書は、そんなコンテナが発明される前の海上輸送はどうやっていたのか、コンテナが登場したときの現場の高揚感はどんなだったか、コンテナの生産ラインや保守管理の方法についてまで丁寧に教えてくれます。またその解説の合間には、著者の経験談や所感が述べられているのですが、それらには隠しきれないコンテナへの愛情が感じられます。コンテナ船などの図解、コンテナを作っている現場や検査の場面の写真も豊富で、眺めるだけでもおすすめです。
ただし、本書を読んだあとは、自然に目がコンテナを追うようになってしまいますので、どうぞご注意を。
【焼肉】