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本蔵-知る司書ぞ知る(30号)

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更新日:2017年4月20日


本との新たな出会いを願って、図書館で働く職員が新人からベテランまで交替でオススメ本を紹介します。大阪府立中央図書館の幅広い蔵書をお楽しみください。
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2017年4月20日版

今月のトピック 【人工知能】

4月7日は手塚治虫さんのSFマンガの主人公「鉄腕アトム」の誕生日でした。公式設定の生年は2003年となっていますが、近い将来、アトムのように、自らの頭で考え、行動できるロボットは誕生するのでしょうか?今回は、「人工知能」にまつわる本を紹介します。

東大准教授に教わる「人工知能って、そんなことまでできるんですか?」』(松尾豊/著 KADOKAWA 2013.12)

人工知能の専門家と、ビジネス戦略家の対談をまとめた本です。具体的な技術より、人工知能の発達によって私達の身近な所にどのような影響があるかに重点を置いて書かれています。なお、この本の中に出てくる「星新一のショートショートを書くプロジェクト」の顛末は、『コンピュータが小説を書く日』として出版されています。

人工知能ガイドブック:「ビッグデータ+人工知能」時代目前-その可能性と問題点』(I O編集部/編集 工学社 2016.6)

人工知能について、色々な面から分かりやすく解説した本です。人工知能を取り巻くこれまでの流れと現在、将来予測についても書かれています。「強いAI・弱いAI」「シンギュラリティ」「機械学習とは」「ディープ・ラーニング」など、基本的なところから知ることが出来ます。

人狼知能:だます・見破る・説得する人工知能』(鳥海不二夫/共著 森北出版 2013.12)

副題にあるように「だます・見破る・説得する」のが醍醐味の「人狼」というゲームをプレイできる人工知能をつくるためのプロジェクトについて書かれた本です。将棋、囲碁で人間に勝った人工知能が、次に目指すべき課題は「人狼」と筆者は考えていますが、それはなぜなのでしょうか?答えはこの本に書かれています。

今月の蔵出し

「ギガタウン‐漫符図譜」 こうの史代/著 (『一冊の本』*連載 朝日新聞社 1996.4-)

大阪府立中央図書館では、現在2つのマンガ関連展示を行っています。「日本のマンガ:100年の歴史」(1階登録カウンター付近)と、「マンガを楽しもう! ウェブサイト『マンガのひみつ大冒険!』公開記念」(1階国際児童文学館奥)です。

マンガをマンガたらしめている特徴とは何でしょう? コマ割り、手書き文字などに加え、漫符(まんぷ)とも呼ばれるマンガ独特の様々な記号表現があります。これらマンガのしくみについては、上記ウェブサイトでも紹介されています。
雑誌『一冊の本』で2015年6月号から連載中の「ギガタウン‐漫符図譜」は、日本最古のマンガとも称される『鳥獣人物戯画』に登場するウサギ、カエル、サルなどのキャラクターを使ってその日常生活を描きながら、毎回数点の漫符を紹介しています。
作者のこうの史代は広島出身。代表作には、ドラマ化され、2016年にはアニメ映画化もされた『この世界の片隅に』(上)や、2007年に実写映画化された『夕凪の街 桜の国』などの広島・原爆を扱った作品があります。「ギガタウン」は『鳥獣人物戯画』へのリスペクトのためか墨で描かれています。表現上同様の工夫を凝らした作品としては、古事記の原文に絵をつけ、全編ボールペンのみで描かれた『ぼおるぺん古事記』(123)があります。

マンガ表現の研究書としては、『マンガはなぜ面白いのか』ほか夏目房之介の著作が面白く読めます。房之介の祖父は今年生誕150年を迎えた文豪・夏目漱石。言われてみれば漱石の著作には、『吾輩は猫である』や『坊っちゃん』のように、キャラが戯画化されたマンガ的なものもあるように思います。当館では5月12日から1階展示コーナーで企画展示「漱石と弟子たち ――津田青楓が選んだ十弟子を中心に」も行います。冒頭で紹介した展示と合わせて、こちらもぜひご覧ください。

*の資料は館内利用のみです。
【ミーム】

Q&A障害者差別解消法:わたしたちが活かす解消法みんなでつくる平等社会』(野村茂樹・池原毅和/編 生活書院 2016.3)

2016年4月、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」が施行され、1年になります。この法律は、全ての国民が、障がいの有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障がいを理由とする差別の解消を推進することを目的に作られた法律です。

この法律のポイントは、「不当な差別的取扱い」と「合理的配慮」です。「不当な差別的取扱い」とは、障がい者に対して正当な理由がないにもかかわらず差別をすることで、盲導犬や介助犬の入店を拒否する、イベントで手話通訳が準備できないので聴覚障がい者の参加を断ることなどが該当します。法律ではこのような場合、過重な負担がない限り、「合理的配慮」により障がいのある方の求めに対して可能な限り対応することが必要となります。「合理的配慮」が複数回または複数人から求められた場合は、施設・設備の改修、サービスの改善など「基礎的環境整備」で対応することになります。

本書の「第2部 Q&A 障害者差別解消法」では、51の疑問に答えており、次のような質問があげられています。

・障害者割引の利用者はジェットコースターを利用できないといわれました
・車いすを利用していますが、最寄りの駅にエレベーターがありません
・役所からの手紙の内容が難しく理解できません
・講演会に行きたいので手話通訳の有無を問い合わせたら自分で手配するように言われました
・目が見えないからとアパートを貸してもらえません
・視覚障害のため、自治会の清掃活動に参加できません

障害者差別解消法を理解する上で多くの例から「不当な差別的取扱い」や「合理的配慮」について考えることのできる1冊です。視覚障がい者等で活字による読書が困難な人の為に、大阪府立中央図書館では本書を音訳し、デイジー形式に編集したものを製作し、貸出しています。

国立国会図書館の視覚障害者等用データ送信サービスと、サピエ図書館に利用登録している視覚障がい者等の方はストリーミング・ダウンロードにて利用可能です。

【S】

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