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本蔵 -知る司書ぞ知る(24号)

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更新日:2016年10月20日


本との新たな出会いを願って、図書館で働く職員が新人からベテランまで交替でオススメ本を紹介します。大阪府立中央図書館の幅広い蔵書をお楽しみください。
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2016年10月20日版

日本史有名人の身体測定』(篠田達明/著 KADOKAWA 2016.3)

織田信長170、豊臣秀吉140、徳川家康159。この数字は何かわかりますか。
身長です。当時の男性の平均身長は157cmでした。いかに秀吉が小さかったかがわかります。
日本史上の有名人(本書掲載人物)のなかで、一番身長が高いのは、江戸時代後期の見世物力士だった大空武左衛門で236cm。反対に一番低いのは、「生類憐みの令」で有名な五代将軍徳川綱吉で124cmです。

「偉人を偉人たらしめたのは身長と体格、そして健康状態だったとしても過言ではなかろう」と著者は言います。著者はもともと医師であり、厄年を過ぎて小説を書き始め、1983年に『にわか産婆・漱石』で歴史文学賞を受賞したほか、直木賞候補にも5回なっています。歴史小説を多数執筆しており、代表作に『法王庁の避妊法』、『病気が変えた日本の歴史』、『徳川将軍家十五代のカルテ』などがあります。

本書では、体形のイラスト入りで一人の人物が1ページにまとめられています。身長、体重などの数値がわかる日本史上の有名人の身体測定を行い、体形や寿命、持病、死因などが記載されています。身体上の特徴の他にも、何をやったどういう人物なのかも、わかりやすく紹介されています。そういう意味では、古代から現代まで、それぞれの人物の解説を読むことを通じて、日本史を通読できる内容にもなっています。

亡くなった人物の身体測定の方法は、色々あるようです。著者は、(1)遺体の計測、(2)古文書の記述、(3)肖像画、(4)奉行所の人相書、(5)本人の縁故者の証言、(6)肖像写真、(7)本人の遺品、(8)身体計測の記録、(9)外務省発行のパスポートなどを手がかりに身体測定をこころみたとしています。(その際に著者が参考にした主要参考文献が巻末に掲載されていますが、『増上寺徳川将軍墓とその遺品・遺体』など、当館で所蔵しているものもあります。)これらいずれかの方法で、身体測定をすることができた日本史上の有名人132名が掲載されています。
本書を読んでみると、歴史上の偉人も伝わっている人物像と違って意外な感じがします。抱いていたイメージと違って、小柄だったり、大柄だったりする人もいます。偉人たちが身近に感じられる一冊で、今までにない本です。一読をおすすめします。

「それでは本邦初公開の『歴史人物丈比べ』をじっくりご覧あれ」(著者)(文中敬称略)

 【慈】

利己としての死』(日高敏隆/著 弘文堂 1989.11)

「利己的になってください。」
本書の著者日高敏隆が、教え子の結婚披露宴で新郎新婦に送ったことばです。
「長期的な視野で、深い意味で利己的になってください。」

親鳥がけがをしたふりをして天敵の目を引きつけ、巣から遠ざかって雛を守る擬傷行動や、自らは子孫を残さず命を賭して女王を助ける働きアリや働きバチなど、動物にはしばしば“利他的”な行動が見られます。ダーウィンの進化論からすると、このような「損」なことをする個体は子孫を残しづらく淘汰されてしまうはずなのにそうならない。この矛盾は、かつては淘汰が個体ではなく集団(種)に働き、より生存に適した種が生き残るという「グループ淘汰説」として理解されていました。
しかしその後、動物の同族殺し、子殺しなど、同説では説明がつかない現象が次々と報告されはじめ、その矛盾を遺伝子が自身を残そうとしているのだという視点から解き明かし、これまで動物の美しい“利他的”行動だとされてきた物事は全て実は“利己的”に説明可能であるとしたドーキンスの「利己的遺伝子説」が登場してきます。
本書は動物行動学のこのような流れについて、多くの事例を引きながら、わかりやすく噛み砕いて紹介しています。

「グループ淘汰説」時代の名著と言えば『ソロモンの指環:動物行動学入門』です。著者ローレンツは、動物は種族間の闘争に於いて致命傷を避ける方法が進化していることを取り上げ、同族殺しを行うのは人間だけだと主張し、読者は彼の描く美しい野生生物の世界に魅せられました。同書の内容の大半は現在では科学的には否定されていますが、科学的事実が重要な図鑑などと違い、科学的思考を記したものとして今なお読めば得るところが多く、何より上質なエッセイとなっています。
ドーキンス『利己的な遺伝子』は少々分厚いですが、まえがきに「この本はほぼサイエンス・フィクションのように読んでもらいたい」と記されているとおり、数式による説明を避けるなど、このレベルの科学書としてはありえないぐらいに読みやすく面白いものになっています。興味をひかれた方は、ぜひ挑戦してみてください。

“利他”か“利己”かという問いは、環境保護・自然保護や差別解消など、人間が行っている数々の行為にも繋がるので、多くのクリエイターにも影響を与えています。
コミック『動物のお医者さん』には、ローレンツ博士が登場します。近年映画化もされたコミック『寄生獣』には、重要人物の一人が「利己的遺伝子説」の講義を受講する場面が出てきて、それが物語のテーマとうまく絡み合っています。

本書以降の動物行動学にも少し触れておきましょう。「利己的遺伝子説」は“利他”と“利己”について多くを説明しましたが、謎が全て解けたわけではもちろんありません。ウイルスの視点から“共生”の進化について論じた『破壊する創造者:ウイルスがヒトを進化させた』は、その回答のひとつでしょう。クリエイターへの影響つながりで言うと、上橋菜穂子は同書が『鹿の王 上』執筆のきっかけになったと明言しています。

「グループ淘汰説」で血に飢えた種として例外扱いされていた人間を、「利己的遺伝子説」は動物と同じ平面に引き戻しました。しかし、ドーキンスはまた別の「人間だけ」を提示しており、日高も比喩も交えてその概念をわかりやすく説明しています。
「人間は子孫ばかりでなく、もう一つ別のものを後代に残したがっている。それは『名』である。」
ドーキンスや日高は、この“「名」という利己”についても、論理的な考察を巡らせています。

冒頭にあげたことばは、どういう意味で送られたのか。本書を読んでみれば、分かるかも知れません。

【ミーム】

人里の植物 1(カラー自然ガイド)』(長田武正/著 保育社 1975)

洗濯するときに、服にひっつき虫がついていました。オナモミだったかな?ヌスビトハギだったかな?と思って開いたのが本書です。カラーイラストで見つけた植物の様子を確認し、解説ページで大きさなどの形態、花期などを確認すると、ヌスビトハギでした。
保育社の「カラーブックス」シリーズには、なつかしさを感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか?「見る文庫」をコンセプトに、昭和37年に刊行されたシリーズです。この2冊もその中の「カラー自然ガイド」に含まれます。
この本は、コンパクトサイズなので、持ち歩きしやすく、見つけた植物をその場で調べられます。家に帰ってから調べようとすると、枯れていたり、また生えていた様子の記憶が曖昧になっていたりします。また、むやみに植物を採取するのもいかがなものか、なので、その場で調べられるのが一番です。
見つけた植物の名前を知ると、その植物がとても身近なものになります。名前を知っている人と知らない人では距離感が違うのといっしょかなと思います。本が、いろんな場面で「知り合い」を増やす一助になるという力を感じます。
今回ご紹介した「カラー自然ガイド」シリーズは、植物はもちろん、鳥や魚などもあります。これからの季節は、興味のある1冊を手にお出かけするのもいいかもしれません。残念ながら、現在は入手不能のものもありますが、そんな時こそ図書館をご活用ください。
最近の図鑑は、DVD付録つきはもちろん、スマホと連動させるものも出ています。でも、自然の中では、アナログにこんな本をめくって探したいと思うのでした。

【コップポーン】

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