大阪府立図書館

English 中文 한국어 やさしいにほんご
メニューボタン
背景色:
文字サイズ:

「はらっぱ」 No.37 乳幼児るーむおはなし会―子どもの健やかな成長を願って

野の花文庫&野の花あかちゃんるーむ主宰
岩出景子
野の花文庫あかちゃんるーむ(0才から就学前までの親子)

 2023年12月「野の花文庫Xmas会」では、恒例の「野の花あかちゃんるーむ」の母達のハンドベルが響いた。片手に子どもを抱き(パパ同伴で預けているママも)片手にベルを持ち、ほとんど即席の演奏だが♪きらきら星やジングルベルなどが流れる。人数が足りないとピアノの先生である元あかちゃんるーむ在籍の母が飛び入りで参加。ベルを両手に持ち和音を上手く入れて演奏も華やかになった。大型絵本読みは、センパイ母と赤ちゃんから来ていて今は6年生の親子組。子ども達のクイズや高学年のブラックパネルシアターなども。それを見ていた1才児の母は、うちの子もこんなことができるようになるかしら、とえらく感じいっていた。(エェ!あと10年後!笑)

Xmas会赤ちゃん抱っこでベル演奏の写真
Xmas会赤ちゃん抱っこでベル演奏
あかちゃんるーむから文庫―そして図書館へ

 今回もプレゼント詰めに、今は社会人、大学生の赤ちゃんから来ていた姉弟や母が助っ人に来てくれた。(この姉弟も姉が文庫に来ていて母のお腹にいる時からの¨ぶんこっこ¨!うちのあかちゃんるーむには3代目もいる)20年近く自宅で開いていた「あかちゃんるーむ」はコロナ以降、自治会館の和室(有料)で続けている。公園の一画にあるので草花摘みや外遊びもでき、親子の交流も深まるよう。「野の花文庫」は変わらず本のある自宅で続けている。余談だが文庫の蔵書が増えて来たので長く仕事としてきた保育関係の本を整理しかけたら、「けいこさーん!保育の本貸してー」と保育士になった子が再びやってきた。私自身もあかちゃんるーむに関わるようになって原点に立ち返る事多く、本の部屋はいよいよ整理できず狭い!文庫に無い本は図書館へ行って借りてね!

野の花Xmas会の写真
野の花Xmas会(サンタは中2の3代目)
あかちゃんるーむ絵本タイムの写真
あかちゃんるーむ絵本タイム
うんぽんぽん人形の写真
うんぽんぽん人形
かえるとおたまじゃくしの写真
かえるとおたまじゃくし
おはながわらったの写真
おはながわらった
大阪府立中央図書館・親と子のひろば「たんぽぽ」

「乳幼児のおはなし会」に関わりだして一番長いのが大阪府立中央図書館の「たんぽぽ」かしら。こども資料室の記録では「平成14年(2002年)4月から」とのこと。22年目になる。それも第1金曜と第3金曜の月2回。「たんぽぽ」は図書館側との連携で東大阪の近藤、高槻の岩出が主な世話人だった。赤ちゃん絵本は司書さん中心に読んでもらい、私たちは合間にわらべ歌、手遊びや小物を使って触れ合い遊びをした。2002年4月19日の記録では子ども21人大人16人の参加、テーマ「お花がポンと咲きました」。6月7日は子ども20人大人16人、テーマ「キャベツの中から」で、いづれも親子がたくさん来ていて今更驚いた。

マー君と「たんぽぽひろば」

 ある年、元気な3才近い男の子がきた。ダッダー!と狭い部屋を走り回っていて、私が膝に乗せ揺さぶり遊びをしても(信頼関係が築けておらず)もがいて逃げていく。「ま、いいかー」と無理強いすることなく、でも彼の好きな乗り物の絵本や膝あそびの♪きしゃぽっぽ などを取り入れていた。(来年幼稚稚園に行くとかで続けて来てくれたのが救いだった。よく迷惑をかけると来なくなる親子がいるので…)すると、秋のどんぐり遊びをする頃私の膝に座って私が痛いくらい(笑) 歌に合わせ♪ゆすらんかすらん と飛び跳ねていた。そのまま小さく揺すっていると絵本も見ていた。後半は母の膝で絵本、わらべうたも楽しむようになってきた。

府立図書館「たんぽぽ」の出席カードの写真
府立図書館「たんぽぽ」の出席カード
英国から日本へ「ブックスタート」

 英国バーミンガムで1992年にはじまった「ブックスタート」が日本では2000年の「子ども読書年」に紹介され、2001年から活動が展開された。赤ちゃんに絵本を「読む」のではなく、共に楽しみを「Share books分かち合う」ことだとブックスタート発案者のウエンディさんは言う。英国の多文化、他民族社会の家庭では母語を使う人が多く、識字問題もあり、ヘルスビジターが母親に通訳したりいくつもの言語に翻訳された絵本を揃えたりと地域、社会で赤ちゃんの育ちを応援していきたいという願いもこめられているかと思える。「赤ちゃんと絵本を介して心ふれあうひとときを共有する」と日本社会に合わせたブックスタートでありたいと松居直も書いていた。
 20年経った。現在8割以上の自治体が取り組んでいる(2022年度調べ)との事。

ロンドンの「ナーサリー」でおはなし会

 私もロンドンに暮らしていた娘家族を通して他民族、多文化の尊重を少なからず経験させてもらった。当時3才の孫が通っていたナーサリーでは,園の玄関扉に24か国語でwelcomeと書かれていて、先生はきれいなヒジャブを被っておられた。その日私は2,3才児クラスで日本の絵本とわらべうたを紹介することになっていた。♪ととけっこう人形や絵本(娘が通訳)やこれも♪いーちくたーちくたんまんご♪とわらべうた手遊びをして小さい人達はあぐら座りで大きな瞳でじーと見てくれ、歌に合わせ手を叩いたり笑ったり共に楽しむことが出来たと思う。そのあと私は稚拙な短歌を詠まずにはおれなかった。〈ロンドンの幼児園でおはなし会子等はたやすく国境を越へ  景〉。
ロンドン滞在中、マグノリアの咲く住宅街の中にあるナーサリーへ夫と私は孫の送迎を何回かした。小さい人たちはいつもニコニコ手を振ってくれた。
 現在中学生の孫らもオンラインで会話している友だちは2つも3つもルーツを持つ(それが自慢の)子ども達みたいだ。

ナーサリーでわらべうたの写真
ナーサリーでわらべうた
ナーサリーの友だちの写真
ナーサリーの友だち
各図書館・地域での「あかちゃんのためのおはなし会」

 2006年、高槻市でも4ヶ月検診の時、ブックスタートが開始、私も保健所でブックスタートボランティアをさせてもらった。検診を終えた赤ちゃん親子が(やや疲れてる親子もいたが)司書に絵本を見せてもらい、市独自の絵本や図書館案内の入ったブックスタートパックをもらっていた。検診まで待ち時間があり、中央に敷かれたカーペットの上で、当時保育所の先生がわらべうた遊びなどをしていた。この短いわら べうたの時間は、検診前の親子の緊張を和らげ温もりを与え良いと思った。

ととけっこう人形の写真
ととけっこう人形
「おひざであそぼう012」―わらべうたも取り入れて

 高槻市で一番古い図書館に出入りしていたが、乳幼児おはなし会が無く、(うちの野の花あかちゃんるーむでも狭い家に10組以上の親子が来るので)司書さんに声をかけた。結局言いだした者で「おひざであそぼう012」がスタートした。その後この図書館は耐震問題や老巧化で休館となり、2013年に新設された服部図書館に「おひざであそぼう012」は移行され、現在は図書館側と連携で継続している。
 30分の中で絵本とわらべ歌の組み合わせを各図書館でも工夫しつつ楽しんでいる。

ボランティア養成講座

「乳幼児のためのおはなし会」が増えると同時に、あちこちでボランティア養成講座も開催されるようになった。私は文庫や保育の現場で長く絵本やわらべ歌に親しみ、コダーイ教育研究所で少し学んだりしてきたので教えてーと呼ばれる事も少なくない。当初わらべうたは古臭いと言われたり、30分のおはなし会で「赤ちゃん絵本を5冊読んでます!」とか、「絵本は良いと聞いているので10冊は読むようにしています」と1才児を抱いた母が真剣な顔で言う。わらべうた絵本もたくさん出版されてきたが、赤ちゃんと目を見つめ合って「いないいないばあ!」あそびをしたら子どもは喜びますよ、とハンカチで ♪いないいないばあ! をすると坊やがキャッキャと笑った。それを見てお母さんも嬉しくて笑う。この母と子の笑顔が子育てには大切だと思う。乳幼児期はあやし遊び、身体への触れ合い遊びを十分楽しみつつ絵本の世界も楽しんで欲しいと切に願っている。

小さい人と楽しむわらべ歌と絵本―その成長・発達に寄り添って

 私はボランティア対象の講座の時は、上記のサブタイトルを付ける。(子育て真っ最中の親子対象の時は成長発達には個人差があるので絶対に言わないのが良い。)
  わらべうたは見事に子どもの皮膚感覚や平衡感覚を刺激し培う。あかちゃんの前で色のきれいな布を歌いながら揺らす。あかちゃんは布を目で追い(追視) 取ろうと手を伸ばす。5本の指が開く、足を踏ん張る、知らずしらずに体幹が育つ。追視を重ねることで視野が広がり絵本を見る目が養われる。♪せんべせんべやけた と歌いながら手のひらをクル!クル!とまわす。手首の動きは道具(スプーンやお箸)を使う手になる。♪ねーずみねーずみどーこいきゃ と腕や体を刺激する中で、こそばし感や緩急感を知る。♪おすわりやーすいすどっせ や ♪きしゃぽっぽ の膝のせの上下揺さぶりや、♪おふねはぎっちらこ と前後左右に揺らしたりすることで平衡感覚が刺激され、情緒も安定してくる。何より子どもの顔をみてわらべうたを歌う事で、口の開きやことばのリズムを模倣し、ことばも模倣しながら獲得していく。絵本の絵を見る目、言葉を聞く楽しさ、自分でページをめくる手。指の発達―「手(指)は突き出た脳」―といわれるぐらい、指差しやしぐさ遊びなどが脳を刺激し言葉が出てくる。膝の上で或いは横でくっついて絵本を読んでくれる人の温もりは心地よく、安心感につながる。乳幼児期にこの心地よさ、安心感を味わうことによって人への信頼感も生まれると思う。

ある日のあかちゃんるーむでわらべうたの写真
ある日のあかちゃんるーむでわらべうた
終りにーそしてヒトから人への はじまりの時

 乳幼児期は、「ヒトからひとへ、そして人から人間になる」という「ひとなる」の土台の時。わらべうたの3つの柱として 1)大人がまず乳幼児に歌いかける(あやしうた、こもりうたなど)あそばせあそび 2)子ども同士が仲間と歌い楽しむわらべうた 3)わらべうたを歌ってあそぶ「詩」の体験―瀬田貞二はその著『幼い子の文学』でわらべうたは文学体験、音楽体験―と書いている。
 先日Ⅰ、2才児がみごとにこの3つの姿を見せてくれた。大阪府立図書館2024年2月の「たんぽぽ」で2歳3か月の男の子が『ぶーぶーぶー』(こどものとも012)を読んでと持って来てFさんが読むとうろうろ動きつつも、すぐ追っかけるように同じことば(擬音のぶーぶーぶーとかばっぱっぱ)を反復する。それも読み手に呼応するように、高い声やささやき声になったりと強弱をつけ、リズムに乗るように反復をしていてとっても楽しかった。そのそばで一番に来ていてちょっとぐずっていた1才児女児が、みるまにご機嫌な顔になり、あーとかうーとか声を上げ笑っていた。この子たちはすでに小さい仲間同士の楽しさ、文学、音楽体験をしていたのだと思う。人格をもった1,2才児たち!!
「わらべうたが人間関係や親と子の仲をいい方向に変えていく、はかりしれない力に驚かされます。(中略)「わらべうた」でたっぷり遊んだ子どもたちが、本を読むこともとても好きになるということは、嬉しい発見でした。あそびの中で物語体験のようなことをしているのでしょう。」(近藤信子著『にほんのわらべうた(全4巻)』より)
 私はこれからも子ども達の計り知れない力、すてきな場面に出会いたく、「絵本からわらべうたを、わらべうたから絵本に繫げる」楽しさを子どもたちと共有していけたら、と願っている。図書館とボランティアが協力して、小さい人たちの心と身体を育む、個を持つ「ひとなる」のお手伝いを[乳幼児るーむおはなし会]で出来たらいいですね。
  私はこれからも、季節感のある絵本、わらべ歌で「絵本からわらべうたを、わらべうたから絵本を繋げる」楽しさを子どもたちとひろげていけたらいいなあ、と思っている。(終)

2024.2/2の府立図書館「たんぽぽ」で『ぶーぶーぶー』絵本よみの写真
2024年2月2日の府立図書館「たんぽぽ」で『ぶーぶーぶー』絵本よみ
2024.2/2の府立図書館「たんぽぽ」で『ぶーぶーぶー』絵本よみの写真
2024年2月2日の府立図書館「たんぽぽ」で『ぶーぶーぶー』絵本よみ

参考図書
・『赤ちゃんと絵本をひらいたら:ブックスタートはじまりの10年
(NPOブックスタート/編著 岩波書店 2010.2)
・『ブックスタートの20年:自治体と市民が赤ちゃんの幸せのためにつながり実現してきたこと 20th Anniversary Book
(ブックスタート/編 大日向雅美/監修 代田知子/監修 ブックスタート 2022.1)
・『絵本は心のへその緒:あかちゃんに語りかけるということ
(松居直/著 NPOブックスタート 2018.10)
・『いっしょにあそぼうわらべうた 0・1・2歳児クラス編
(コダーイ芸術教育研究所/著 明治図書出版 1998.8)
・『わらべうたと子ども』
(木村はるみ/著 蔵田友子/著 古今社 2001.4)
・『乳幼児おはなし会とわらべうた
(落合美知子/著 児童図書館研究会 2017.2)
・『「気になる子」のわらべうた
(山下直樹/著 クレヨンハウス 2018.9)
・『幼い子の文学(中公新書)』
(瀬田貞二/著 中央公論社  1980.1)
・『にほんのわらべうた』全4巻
(近藤信子/著 福音館書店 2001.4)

わらべうた
♪ととけっこ よがあけた
♪せんべ せんべ やけた
♪ゆすって ゆすって ゆすらんめ
♪おすわりやーす いすどっせ
♪ゆすらん かすらん
♪いーちく たーちく  たんまんご
♪おふねは ぎっちらこ
♪きしゃぽっぽ さんじゅっせん
♪ねーずみ ねーずみ どこいきゃ
♪さよなら あんころもち またきなこ

おはながわらったのてぶくろ人形のつくりかたのイラスト
p2掲載の♪うんぽんぽん人形のつくりかたは、p19へ
PAGE TOP