本蔵-知る司書ぞ知る(136号)
本との新たな出会いを願って、図書館で働く職員が新人からベテランまで交替でオススメ本を紹介します。大阪府立中央図書館の幅広い蔵書をお楽しみください。
2026年2月20日版
今月のトピック 【春が来る】
今年の冬は、寒い日も多いですね。家の中で暖かくして過ごすのも良いですが、ぽかぽか陽気も恋しい!ということで、今月は春を感じる本をご紹介します。
『いいことってどんなこと(こどものとも傑作集)』(神沢利子/さく 片山健/え 福音館書店 2001.1)
ある冬の日、外は雪景色。雪解けのしずくがうれしそう跳ねるので、どうして?と聞くと「いいことが あるからよ」と言います。いいことってどんなこと?長靴を履いて雪の中を尋ね回るうちにたどり着いたのは、雪の下から聞こえる歌声でした。軽快なオノマトペと優しく繰り返す文章で、あったかい気持ちになる絵本です。
『はるがきた』(ジーン・ジオン/文 マーガレット・ブロイ・グレアム/絵 こみやゆう/訳 主婦の友社 2022.3)
もうすぐ春だというのに、町は灰色。人々が暗い顔をしていると、男の子が言います。「まってなんか いないでさ、ぼくたちで まちを はるに しようよ!」……おお!その発想はなかった!そうです、待つんじゃなくて自分たちで春にすればいいんです。ユーモラスなストーリー展開で、読んだ人から春が来ます。
『フィフティ・ピープル 新版(となりの国のものがたり14)』(チョン・セラン/著 斎藤真理子/訳 亜紀書房 2024.11)
この小説の主人公は50人。それぞれの仕事と生活の断片が、時に繋がりながら描かれています。春は出会いと別れの季節。希望や不安、切なさが入り混じる人間関係の変化を余儀なくされる中、少し立ち止まって人との繋がりを改めて考えさせられる1冊です。
今月の蔵出し
『知っておきたい!ベトナムごはんの常識』(ナタリー・グエン/文 メロディー・ウン/絵 三本松里佳/訳 原書房 2023.7)
短い休暇を利用して、久々に海外旅行に行きました。LCCを駆使すれば比較的安く行ける南国、と我が家の奥様が選出した渡航先は…ベトナムでした。
ベトナム!各日本企業の海外進出先としても近年上位に顔を出す親日国。であるにもかかわらず、歴史や文化、風土や政治など詳しいことはほとんど知らないことに気付きました。奥様が見るYouTubeのリアルタイムに近い現地動画を盗み見ながら便利な世の中になったものだと感心しつつ、体系的な情報を知るにはやはりなんだか物足りない。そこで、付け焼刃ながら当館のベトナム関連本を複数つまみ読みしたのでした。
まずは『現代ベトナムを知るための63章』。この「エリア・スタディーズ」シリーズは200巻を超え、複数の専門家による各章記述は世界各地のいまを知るのに最適です。また定番の『地球の歩き方 D21 ベトナム』も、流行のお店・ホテルから治安情報、現地語ミニフレーズ紹介まで流石の情報量。当館もシリーズの一部を所蔵していますが、これは現地持参用に購入いただいた方がいいかな…笑。購入前の下見用にでもご利用ください。そして最も面白かったのが、掲題の『知っておきたい!ベトナムごはんの常識』。こちらもアジアを中心に世界各地の料理を紹介するシリーズですが、ビジュアルで読みやすく、歴史的背景などが簡潔に記述され、ベトナムの豊饒な食文化を窺い知ることができる良書でした。他にも『地域学者と歩くベトナム』や『ハノイの熱い日々』、『ベトナム・ストーリーズ』などなど、研究書から読物風現地レポートまで、興味に任せて幅広く予習できました。
また帰国した後も、掲題の本などは現地料理の風味などをありありと思い出すことができなかなかの味わいです。旅行の予習にも復習にも、児童書から専門書まで取り揃える当館蔵書を、動画サイトと併せて是非ご活用ください。
【T】
『ゲームフリーク:遊びの世界標準を塗り替えるクリエイティブ集団』(とみさわ昭仁/著 太田出版 2025.2)
「本蔵」今号の公開月から30年前の1996年2月、ゲームソフト『ポケットモンスター(ポケモン)赤・緑』が発売されました。
『赤・緑』とは違うシリーズですが、小学生の頃に親に買ってもらいそのまま視力が悪くなるほど遊び込んだことなど……勢いのまま「本蔵」の趣旨を無視してポケモンの思い出を書き続けそうなので、この辺りでやめておきます。
今回はポケモンを生んだゲームメーカー「ゲームフリーク」を題材とした1冊をご紹介します。
「第1部ポケットモンスター」では文字通りポケモンが完成するまでの逸話が書かれています。ポケモン生みの親である田尻智氏は、携帯型ゲーム機であるゲームボーイ向けの新しいゲームを企画するにあたり、同じゲームをいっしょに遊んでいた相手にばかり珍しいアイテムが出ることを羨ましく思った経験を思い出します。
「もし自分のアイテムと相手が持つアイテムと交換できれば……」アイデアはどんどん膨らんでいき、1990年に企画書が仕上がります。ここから6年近く、同社内でポケモンが練り上げられ、発売されるまでの過程が描かれています。
印象的であったのは、多くのポケモンを生み出すにあたって、会社内で人気投票が行われていたという話です。文中では第1回目の人気投票で上位になったポケモンが紹介されていますが(p.121-122)、1位は(私にとっては)意外なポケモンでした(ちなみにまだピカチュウは誕生していなかったそうです)。
「第2部ゲームフリーク」では田尻氏の歩みや「ポケモン前夜」の同社について取り上げています。社名にもなっている「ゲームフリーク」、実は田尻氏が手がけた同人誌の名前に由来しています。「ゲーム好き」から「ゲームの作り手」へと変わる過程を追体験できます。
この本は2000年に刊行された本の復刊です(ちなみに旧版も当館で所蔵しています)。復刊にあたり、田尻氏をはじめ本書に出てくるポケモンに携わった方がコメントを寄せています。ゲームの枠組みを超えたコンテンツとなった「ポケモンのその後」の一端がうかがえます。
余談ですが、当館向かいの東大阪市役所にはポケモンが描かれたマンホール「ポケふた」が設置されています(「モノづくりのまち」らしく体にネジがついているポケモンです)。来館される際はぜひ探してみてください!
【スペラン】