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本蔵-知る司書ぞ知る(119号)

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本との新たな出会いを願って、図書館で働く職員が新人からベテランまで交替でオススメ本を紹介します。大阪府立中央図書館の幅広い蔵書をお楽しみください。

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2024年9月20日版

今月のトピック 【世界で活躍した日本の女性たち

今年は昭和から平成にかけて活躍した世界的ファッションモデル山口小夜子(1949.9.19-2007.8.14)の生誕75周年に当たります。そこで今月は、山口小夜子をはじめ芸術分野において世界で活躍した日本の女性たちの芸術観や人生哲学を伺い知ることができる本をご紹介します。

この三日月の夜に』(山口小夜子/著 横須賀功光/写真 講談社 2024.6)

パリコレなど世界のファッションシーンで活躍した山口小夜子の、生前の寄稿、インタビューや書籍の文章、写真をもとに再構成されています。「黒髪・おかっぱに切れ長の目」という東洋の美を世界に広め、優れたパフォーマーであった彼女の残した言葉から、「美とは何か」ということについて深く考えさせられる一冊です。

ピアニストだって冒険する』(中村紘子/著 新潮社 2017.6)

数々の国際コンクールの審査員も務めた世界的ピアニスト、中村紘子(1944-2016)の素顔が垣間見られるエッセイ集です。コンクール審査の選考裏話や、幅広い交友関係による貴重なエピソードが満載で、困難な状況に出くわしても軽々と乗り越えていくその明るさと強さが、読後に爽快感を味わわせてくれます。

私の体がなくなっても私の作品は生き続ける』(篠田桃紅/著 講談社 2023.12)

世界的美術家、篠田桃紅(1913-2021)の未公開作品と生前録音された肉声による言葉が添えられた画文集。桃紅は父親の手ほどきと独学で書を学び、「墨による抽象表現」という独自のスタイルを確立しました。107歳で惜しまれながら世を去りましたが、タイトル通りその作品は生き続けています。

今月の蔵出し

モモちゃんとプー:モモちゃんとあかねちゃんの本2』(松谷みよ子/著 菊池貞雄/絵 講談社 1974.6)

「困ったときの神頼み」といったとき、私には毎回頭に浮かぶ決まり文句があります。
神様、仏様、お釈迦様、キリスト様、イエス様、マリア様…と、空に向かってお願いするというのが小さな頃からのお決まりでした。
語呂が良いのと、これだけたくさんの神さまにお願いすれば、誰か一人くらい助けてくれるだろうという、なんでもありな感じが好きだったんでしょうか。
さて、この並びはいったいどこからきたんだろう、と思い返してみると、ルーツはこちらの本でした。
『モモちゃんとプー』は『ちいさいモモちゃん』に続く2作目。ちいさい女の子のモモちゃんとねこのプーのおはなしです。
この中の「モモちゃんのおいのり」というお話で、モモちゃんがお願いをするのに唱えていたのがこの言葉でした。
こんなにたくさん神さまを並べて、どんなお願いをしていたんだっけ、と忘れていたので読み返してみたところ、「わたあめが食べたい」というかわいらしいお願いでした。
願いは叶い、「おほしさまのおまつり」で食べた雲のわたあめのおいしそうなこと!

この本には全部で17のおはなしが入っており、どれも少し不思議なおはなしです。
影をたべてしまうウシオニの話や、戦争の話など、大人になってから読むとまた違った感じ方をするおはなしもありますので、大人の方にも読んでほしい一冊です。

【びいどろ】

櫓太鼓がきこえる』(鈴村ふみ/著 集英社 2021.2)

仕事とは何でしょうか。子どもの頃憧れた職業に就くこともあれば、なりゆきや思わぬきっかけで就くこともあります。人生の節目に合わせて転職することも、長く続けることもあります。思ったようにできないこともたくさんありますが、働くことがきっかけとなり、自分が成長できたら幸せだと気づかせてくれた一冊でした。

主人公の篤は17歳。高校を中退し呼出見習いとして相撲部屋に入門します。大相撲というと、煌びやかな化粧まわしをつけ、大勢の観客の前で取り組みを行うイメージですが、篤はいわば裏方。土俵の中央でしこ名を呼び上げるほか、毎場所ごとに土俵を作る「土俵築」や、太鼓を叩いたりもします。入門して間もない篤は、しこ名を間違えて読んでしまうなど、呼出にも自分自身にも自信がもてません。どうせ自分はダメなんだ。そう思ってしまう篤が、呼出の兄弟子や先輩、部屋仲間の力士たちなどと過ごすなかで変わっていきます。

大相撲について細かな描写も多く、中継やニュースではわからない奥深さが感じられ学べます。勝負の世界。勝つために強くなりたい。そのために日々鍛え、しっかりちゃんこを食べる。相撲部屋は生活の場でもあるので、ちゃんこ番を務める力士もいます。朝霧部屋の力士が切磋琢磨し、互いに感情をぶつけながら、成長していく姿もみられます。相撲に限らず、将来への不安や自分がどう生きるか、考えるヒントになるように思います。

篤の周りには力士、呼出、行司、親方、女将さん、ファンや後援者、また家族親戚も登場します。国技として不変で継続して行われることも多いですが、登場人物たちは等身大で多くの人が経験する悩みを抱え、立ち向かいます。仕事を続けるうえで、初心忘るべからず、初心を思い出すことの大事さを思い、元気がでました。第33回小説すばる新人賞受賞作。

 【トトン】

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