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本蔵-知る司書ぞ知る(117号)

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本との新たな出会いを願って、図書館で働く職員が新人からベテランまで交替でオススメ本を紹介します。大阪府立中央図書館の幅広い蔵書をお楽しみください。

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2024年7月20日版

今月のトピック 【意外な視点の歴史本

「歴史の本」というと、学校で読んでいた歴史の教科書が思い浮かぶかもしれません。今回ご紹介するのは、教科書とはまた異なる、「意外な視点で歴史を見る」本です。身近な事柄やこんなことから!?と思うような事柄から歴史を見ることで、過去の出来事や人々に親しみを持ってもらえればと思います。

ひとりみの日本史』(大塚ひかり/著 左右社 2024.5)

ジェンダーレスの日本史』(中公新書ラクレ)や『ヤバいBL日本史』(祥伝社新書)などの独創的な視点で歴史を見る著者による、「独身」をテーマにした日本史の本です。晩婚化や少子化が話題となって久しいところですが、この本ではそうした「独身」や「結婚」というものが、歴史の中でどう捉えられてきたか、古代から幕末に至るまでどんな人物がどう考えていたか、物語などからどう読み取れるかが記されています。

昭和史 :1926-1945(平凡社ライブラリー)』(半藤一利/著 平凡社 2009.6)

堅苦しそうなタイトル!と思われたかもしれませんが、そんなことはありません。

出版社の編集者さんより「昭和史をほとんど習わなかったので、手ほどき的な授業をしてほしい」と言われた著者が、生徒(編集者さん)を相手に毎月1回1時間半ほどお話をした記録をもとに作られたのが本書です。文章は語り口調。昭和史を知らない人のために語っているため、なじみのない語句についての説明も豊富です。

この本では第二次世界大戦終戦の1945年までを扱いますが、続きとして『昭和史 戦後篇 1945-1989(平凡社ライブラリー)』もあり、こちらは戦後のGHQ統治下から1989年の昭和の終わりまでを扱います。

さらに、『B面昭和史 :1926-1945』という本も出ています。上の2冊は政治や軍事、外交関係が主に書かれていますが、B面では一般の人々の生活や視点に焦点を当てられており、こちらも昭和を知らない人にとって驚くことがたくさんあると思います。

情熱でたどるスペイン史(岩波ジュニア新書)』(池上俊一/著 岩波書店 2019.1)

歴史学者である池上俊一さんが手がけた『~でたどる〇〇史』のシリーズの1冊です。
シリーズはほかにも以下の4冊あります。

『王様でたどるイギリス史』
『森と山と川でたどるドイツ史』
『お菓子でたどるフランス史』
『パスタでたどるイタリア史』

いずれの本でも、その国の象徴的なものをとりあげて歴史をたどるものとなっています。児童書のレーベルではあるものの、大人でも読み応えがあります。その国について概要を知りたいときはまず手に取ってみてはいかがでしょうか。

今月の蔵出し

遊びの博物誌』(坂根厳夫/ [著]  朝日新聞社 1980)

大人になり毎日忙しく生活していると「遊び」を少し無駄に感じてしまうことがあります。みなさん、心の中に遊びの精神は生きていますか。

本日紹介するのは、ゲームやパズルをはじめ、心理学的な遊びを含めた世界の様々な遊びを紹介している資料です。

遊びとして紹介されているものは、隠し絵、スプラウト、からくり人形、清少納言知恵の板、迷路、星座の他、エッシャーの絵や安野光雅のアルファベット、歴史的建造物のペーパーモデルなど幅広いです。

中でも私のお気に入りは「さかさま音楽」。ことばの回文のように、楽譜をひっくり返して演奏しても全く同じ曲に聴こえる楽譜が掲載されています。本文によると音楽の回文はバッハの時代から試みられていたそうです。モーツァルトが作曲した曲で、ふたりのヴァイオリニストがそれぞれ譜面の上下から眺め、演奏すると二重奏になる曲が紹介されています。

もう一つのお気に入りは「オートメ生活」。これは、「風が吹けば桶屋が儲かる」形式(「ピタゴラ装置」形式という言い方の方が、現代人には馴染みがあるかもしれません)の話について、アメリカの漫画家ルーブ・ゴールドバーグの「バッツ教授の発明」シリーズの図版を紹介しています。「メイドが玉ねぎの皮をむくと、釣りエサのミミズが手に入る」しかけなど、眺めてたどるのが面白いイラス卜が3点掲載されています。

1つの遊びは、3〜4ページでまとめられています。また、白黒ですが大きめの図版や写真が掲載されているため、気軽に眺めても楽しめます。昭和50年代に朝日新聞で連載されていた記事をまとめたものですが、遊びに古さは感じず、遊びは時代や国境を越えて楽しいことを思い出させてくれます。

忙し過ぎて遊び心を忘れている時に眺めると、仕事・生活・創作のための新たな視点を得られるかもしれませんよ。

                                                     【河原町しげを】

ブックデザイン365』(パイインターナショナル/編著 パイインターナショナル 2020.3)

好きな著者やジャンル、テーマなど本を手に取る理由は様々ありますが、思わず手にとってしまう、そんな時はブックデザインの影響が大きいのではないでしょうか?

本書は、主に2015年から2020年の間に刊行された本の中から魅力的なブックデザインを365冊以上紹介、本の内容に加え、装丁家や編集者の名前、デザインコンセプトや特殊加工などが掲載されており、紹介されている本のそれぞれの作り手の本への愛がわかる1冊です。 カバーを外した本体表紙のデザインも一部収録されており、普段見ている本の違った一面も垣間見ることができます。

また、読んだことのある本への作り手たちの思いを知ることができ、新たに読みたい本が増えていく、好きな装丁家が見つかるかも知れません。

本ってなんて美しいんだろう。そう思わずにはいられず、どんどんブックデザイン、装丁の世界へと引き込まれていくことでしょう。

もちろん、この本には載っていない素敵な本もたくさんあります。新書や文庫の統一されたデザインは、その出版社のこだわりが感じられますし、古い本のデザインからはその当時の流行や時代背景を知ることができます。

そして、あらためて本書を見返したとき、今の本の傾向や流行、何を読者へ作り手が伝えようとしているかを改めて知ることができますので、好きな本が掲載されているか、掲載されていればどんな意味のデザインだったのか、手に取って確認してみてください。

【めい】

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