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本蔵-知る司書ぞ知る(116号)

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更新日:2024年6月20日

本との新たな出会いを願って、図書館で働く職員が新人からベテランまで交替でオススメ本を紹介します。大阪府立中央図書館の幅広い蔵書をお楽しみください。

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2024年6月20日版

今月のトピック 【難民の本

今号が公開される6月20日は、「世界難民の日」です。国際連合の総会で2000年12月4日に決議された国際デーの一つで、難民問題について知り、保護や支援への関心を高めるための日とされています。紛争などの危機を逃れて支援を必要とする人が世界にたくさんいます。

そこで今回は、いろいろな形で難民問題を知ることができる本を3冊ご紹介します。

ルブナとこいし』(ウェンディ・メデュワ/文 ダニエル・イヌュ/絵 木坂涼/訳 BL出版 2019.2)

難民キャンプにやってきたルブナと父親。ルブナの一番の友達は、タイトルにもある小石で、小石に描いた笑顔になんでも話しかけ、のちにキャンプにやって来たアミールとも小石を通して友達になります。別れの時、ルブナはそんな小石を悲しむアミールに手渡しました。
難民に関する詳しい説明はあまりありませんが、苦しい状況の中でのこども2人のやりとりと、希望の象徴のような笑顔の小石の描写が印象的な絵本です。

紛争・迫害の犠牲になる難民の子どもたち』(国連難民高等弁務官事務所/著 UNHCR駐日事務所/協力 櫛田理絵/訳 合同出版 2022.2)

シリア、南スーダン、中央アメリカ出身の難民の子どもに焦点を当てた本です。子どもたちの様子を撮影した写真や、子どもたち自身が描いた絵が多く掲載されているのが特徴的です。子どもたちが実際に体験したこと、考えていることなどが伝わってきます。難民と移民の違いや、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が難民のために行っている活動などを知ることができるページもあります。

難民を知るための基礎知識:政治と人権の葛藤を越えて』(滝澤三郎/編著 山田満/編著 明石書店 2017.1)

政治学や経済学など幅広い分野から難民問題を取り上げている本です。第1部から第4部は難民に関する全般的な内容や支援を行う国際機関について、第5部からは第三世界の難民の状況、ヨーロッパやアメリカといった各国・地域の政策などを解説しています。日本の難民問題についても触れています。基礎的な知識を身につけることに役立ちます。

今月の蔵出し

まちの植物のせかい:そんなふうに生きていたのね』(鈴木純/文・写真  雷鳥社 2019.9)

マスク着用、外出や面会の自粛。新型コロナ感染症(COVID-19)の世界的流行で、日頃、活動的な人ほど、不自由感は強かったかもしれません。だんだんと日常を取り戻していく中で、仕事や授業のリモート・オンライン化が定着して便利な反面、直接会えなくなった人も。

「なんだか最近よく落とし物に気が付くなあ」という人は、知らず知らずのうちにうつむいているのかも。

うつむいていると、落とし物以外にも、ふと、気が付くこと。

それは、たとえば、アスファルトのすきまから伸びている、ちいさいお方。タイルを押し上げて覗く、力強いお方。

根性大根ほど話題にはならないけど、そんなところで頑張ってたのか。おっ、タンポポはわかるぞ。ドクダミもわかるなあ。だんだん視線を上げていくと、かわいい小花。つい触ったらすごいにおい! もっと見上げると、あんな高いところにドクダミっぽいお方、お名前なんとおっしゃいますかね? いやあ、知り尽くして退屈だと思っていたご近所の道、通勤の道に、こんなに発見があるなんて。

そう、それは、いつもそこにいて、こんなときだからこそ、ゆっくりと出合い直せた、植物一族のみなさんなのでした。

同じ著者による、「種から種へ命つながるお野菜の一生」や「すごすぎる身近な植物の図鑑」などと一緒に、身近な世界をじっくり観察したら…。

まさに本書の副題そのままに、つぶやいてみませんか。

「そんなふうに生きていたのね」。

                                                     【笑門来福】

おとなの進路教室。』(山田ズーニー/著 河出書房新社 2007.3)

本書はウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」で連載されている「おとなの小論文教室。」から30本のコラムを選択し、加筆修正したものです。

社会人になってしばらく年月が過ぎた頃、うまくいかないことが多々あり、本当にこの道で良かったのか考え込むようになってしまいました。この本を読んだのはそんな時です。

今回この「本蔵」を書くにあたり読み返してみると、この本は単純な進路相談ではなく、社会とどう向き合うかを考えるための本であることにきづきました。当時と異なる部分が心に響きます。

進路は自身で選択できるものも、自身で選択できないものもあります。進学、就職を始めとし、異動、転職、定年退職、結婚、子育て、介護などなど。誰しも生きていれば度々、公私ともども「「アイデンティティの組み替え」問題に遭遇。」します。著者はアイデンティティを生きがいと捉えています。こうした「生きがいを変えろ」という問題に遭遇した時、どのように乗り切ればいいのか。答えは載っているわけではありませんが、考えるヒントをもらえます。

ウェブサイトのコラムから編集されていますので、著者の考えだけが書かれた自己啓発本と異なり読者の経験談や著者と読者とのやり取りも含まれ、共感しながら読み進められるのもこの本の良いところだと思います。

コラムはそれぞれ独立しています。進路を選択する時に生じる悩み、進路を選択した後に生じる悩み、進路が断たれた際に生じる悩み、その時それぞれに寄り添ってくれるコラムが揃っています。この先も読み返したい本です。

                                                     【コロ】

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