本蔵-知る司書ぞ知る(139号)
更新日:2026年5月20日
本との新たな出会いを願って、図書館で働く職員が新人からベテランまで交替でオススメ本を紹介します。大阪府立中央図書館の幅広い蔵書をお楽しみください。
2026年5月20日版
今月のトピック 【ゴルフ】
5月28日はゴルフ記念日。1927年(昭和2年)のこの日、第1回日本オープン・ゴルフ選手権競技が横浜で開催されました。コロナ禍では「三密」を回避しながら楽しめる屋外スポーツとして、若者や女性にも人気のスポーツとなりました。今月はゴルフにまつわる本を3冊ご紹介します。
『日本のゴルフ100年』(久保田誠一/著 日本経済新聞社 2004.7)
著者が独自取材を重ねてゴルフの歴史を繙いた1冊。1903年(明治36年)に日本最初のゴルフ場が神戸にオープンし、その後の100年を読みやすい文章でまとめています。巻末に紹介されている参考資料も多く、読み応えのある1冊です。
『コースが語る世界のゴルフ史』(大塚和徳/著 日本経済新聞出版社 2015.6)
ゴルフをプレイするコースはゴルフ場ごとに異なります。起伏や芝の種類、風向き、ホール毎の距離など、様々な観点から設計されます。この本ではコース設計家やコース設計の思想など、実在のコースを取り上げながら解説しています。
『現代ゴルフ全集 1 ゴルフへの招待』(日本プロゴルフ協会/監修 中央公論社 1959.4)
全5巻。第1巻には、日本のゴルフ史やゴルフの起源、用語解説などが掲載されています。刊行から60年以上経っており、掲載されている写真や図版を眺めているだけでも歴史を感じることができて楽しめます。
今月の蔵出し
『プロのための製菓技法 チョコレート』(森大祐/著 長島正樹/著 森下令治/著 藤原和彦/著 誠文堂新光社 2013.11)
私の家には1歳と3歳の息子がいます。兄である3歳児は、既に自分のことを大人扱いするように求めており、先日も電車に乗っていった際、隣に座っていたご婦人に「小さいのに偉いねえ。」と褒められるや否や、「小さないわ!」と怒鳴り返す暴挙に出ていました。
そんな彼に「大人」たる自覚を芽生えさせたものにチョコ―レートがあります。我が家は3歳になってからチョコレートを食べることのできる決まりとなっています。1歳児の羨まし気な視線を余所に、彼はチョコレートを頬張ります。そんな彼のチョコレートの「扉」に触発されて、この本を紹介したいと思います。
この資料はタイトルからも明らかなように、プロ級のチョコレートを作るための数多くの製菓技法を豊富な写真とともに紹介したものです。主にパティシエとしての将来を考えている方に向けられた、チョコレート菓子に特化した本です。大人であるはずの私が読んでも、馴染の薄い材料や道具が必要となるため、簡単には再現できないでしょう。しかしながら、デパートのガラスケースの向こう側にあるような鮮やかなスイーツ達の裏側が覗けることに、「自分でもこんなスイーツを作れるかもしれない。」とワクワクさせてくれるのです。
もし何かの拍子に思い立って、この本の中にあるスイーツの一つでも作ることができたなら、新しい扉が開くような気がします。パティシエ志望の方々には勿論ですが、プロの仕事を垣間見ることのできる面白さがあります(写真だけでも美しいのです)。府内の中高生が職業体験等で来館した際に、専門書の説明のために紹介している資料の一つでもあります。
府立図書館にはこのような専門書が数多く存在します。大人になっても新しい扉が開かれてしまうことがあるかもしれませんよ。
【ホンコくん】
『街角の遺物・遺構から見たパリ歴史図鑑』(ドミニク・レスブロ/著 蔵持不三也/訳 原書房 2015.4)
本書はパリの街を「美術品や骨董品の巨大な陳列室」に見立て、細部にある「一見無意味とも思えるさりげないもの」を集めて、その来歴を紹介した図鑑です。著者がフィールドワークをして集めたものは、樹木、時計、給水栓、弾痕、モザイク、聖母像、動物たちのモチーフ、なんの役に立つのかわからないものなど、さまざまです。
たとえば、16区の集合住宅カステル・ベランジェについてこんな描写があります。
「外壁は、その輪郭からしてまことに見事なもので、あまりにも驚くべきでき栄えゆえ、しばしば細部の装飾が剽窃されたほどである。そこでは猫や鳥、怪獣、昆虫、蛇、さらに目だけがはっきりしているほかは形姿が不確かな生き物などからなる、緑青の幻想動物群が壁をよじ登っている。さらに、正体不明(コウモリ?)の生き物が屋根の上をさまよっている。」
ここからは騒々しい外観を想像してしまいますが、実際は派手に目立っているわけではなく街にとってもなじんでいます。しかし、よくよく見てみると細部のデザインがおもしろいのです。本書はそんな気づかず通り過ぎてしまいそうなデザインや興味深いものをガイドしてくれます(この住宅を設計したエクトル・ギマールの地下鉄の入り口も載っています。こちらはガラスの屋根がトンボの羽のようです)。
なお、本書で掲載されているカステル・ベランジェの写真図版はタツノオトシゴ(のような装飾)のみで、残念ながらバルコニーの謎の顔(仮面?)や不思議な曲線の扉などはありません。ただ、HathiTrust Digital Library(アメリカの大学図書館などが協同で運営しているデジタルアーカイブ)で図集『Le Castel Béranger』が公開されていますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
【ミルクパン】