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大阪府立中之島図書館だより「なにわづ」 No.156

更新日:2022年12月3日


なにわづ・題字            QR2022年11月 No.156


チャレンジしたいことは、デジタル化した資料を手元に届ける試み

八軒屋着船の図

 上の絵は、『浪花名所図会』のなかのひとつ「八軒屋着船の図」です。図書館ホームページの<おおさかeコレクション>でデジタル画像でもご覧いただけます。色刷りの版画、錦絵というものになります。

作者、広重(初代)は、江戸時代後期に活躍した絵師で、『東海道五十三次』『名所江戸百景』など多くの風景版画を残しました。八重洲に生まれたと伝わりますので、上方には馴染みが薄いとは思いますが、『浪花名所図会』『京都名所』『近江名所』など関西の名所を描いたシリーズ作品も残しています。

『浪花名所図会』には、「今宮十日恵比寿の図」「八軒屋着船の図」「順慶町夜見世の図」など、10カ所の名所が描かれます。「八軒屋着船の図」の川の色は、広重ブルーと称される、鮮やかな青で表現された川面が美しく、一仕事終えたのか、船頭さんが舳先で一服している姿や荷物を陸揚げしている人々、これからどこへ行くのか杖を手にした女性二人組などが描かれ、情緒があります。「今宮十日恵比寿の図」「順慶町夜見世の図」などは、風景よりも人物が中心となっており、当時の風俗を見ているうちにいつしかその世界に紛れ込むような心持ちになるかもしれません。

この作品、実物の大きさは1枚縦25cm×横37cmほどで、ほぼB4用紙(25.7cm×36.4cm)と同じくらいでしょうか。作品保護の観点からも展示貸出しには条件が付き、実物を見ていただく機会は限られます。<おおさかeコレクション>では、デジタル化した資料を見ていただけますが、実際に手にしていただくことで、歴史を伝える貴重な作品をより身近に知っていただく機会を増やせないかと考えています。そこで、デジタルデータを活用した複製品を作成し、学校の授業や市町村の図書館行事などで役立てていただき、大阪の歴史と文化を引き継いでいく仕掛けを創りたい。当館では、大阪教育ゆめ基金という「ふるさと納税」の仕組みを活用した寄附金にて、実現を目指します。

江戸時代の人はこのような錦絵によって景色を共有していたのだということや、名所の描かれ方から今と比較するなど、歴史や文学や芸術は、現在に地続きであることも気づいていただけるのではないかと思います。

詳しくは、ホームページ<「大阪教育ゆめ基金」の寄附金を受付しています – 大阪府立図書館 (pref.osaka.jp)>をご覧ください。是非、ご協力をお願いします。


令和3年度新収資料紹介     <大阪資料・古典籍課>

令和3年度中に収集した大阪にゆかりのある和古書・既刊書の一部をご紹介します。

※【 】内は当館の請求記号です。

『二代目嵐吉三郎の惟喬親王と三代目中村歌右衛門の加藤正清』 北洲画 文政3年(1820) 【甲雑/181】

 文政3年(1820)9月の北堀江の芝居「時再興在原景図」と角座「八陣守護城」に取材したもので、同時期に別劇場で行われた芝居を大首の1枚にまとめています。

これは両名の翌年の共演が決まったことを記念して作成されたものでしたが、その後吉三郎が亡くなったため共演は実現しませんでした。

 作者の北洲は葛飾北斎に入門したともいわれる大坂の浮世絵師です。

二代目嵐吉三郎の惟喬親王と三代目中村歌右衛門の加藤正清

『祖塔之記』 『祖塔之記』  『祖塔之記』 

祖塔記表紙

          

『祖塔之記』 高松清喜序 高松清房述 写本 文政8年(1825) 【350/18】

 白粉の製造販売で財をなした銭屋高松家は、一時期柏村新田(八尾市)の経営にも携わっていました。その時期、柏村新田会所の敷地に、先祖の慰霊のための五重石塔(現存せず)を建立し、その由来として高松家の歴史を叙述したものです。

 同題の資料(個人蔵)が『河内どんこう 第10巻22号』【雑/2549】や『新版八尾市史 近世資料編2』【216.3/52NX/2】で紹介されています。内容は同じもののようですが、掲載されている図版とは絵柄が異なっているため別本と考えられます。

蔵屋敷

『大坂堂嶋御蔵屋敷并舩納家惣絵図』 河内屋清右衛門清芳手控 写本 天保3年(1832) 【甲雑/182】

表題・年などは外袋によります。

絵図上に書かれた地名「堂嶋新地弐丁目」及び敷地形状によると武蔵国忍藩の蔵屋敷が近いのですが確証はありません。建物の形状や用途などが詳細に描かれています。

イベントレポート     <ビジネス支援課>

大阪中小企業診断士会との共催セミナー「学んですぐ実践!仕事力・経営力アップ講座」

ビジネスに役立つ幅広い情報をご提供するため、大阪中小企業診断士会との共催で開催している「学んですぐ実践!仕事力・経営力アップ講座」では、毎回、異なる専門分野をお持ちの中小企業診断士を講師としてお招きし、仕事や働き方に活かせるテーマをわかりやすくお話しいただいています。令和4年度は、6月から令和5年3月までの10ヶ月間、毎月第3水曜日に開催しており、興味が湧いた回だけでも受講いただけます。ここでは、第1回、第2回の模様を紹介します。

●「ありたい姿を作る整理整頓の方法」(第1回)

講師:数本 優さん(中小企業診断士,企業内整理収納マネージャー,エスモット代表)

開催日時:令和4(2022)年6月15日(水曜日)18時30分から20時まで

整理整頓は、「他の仕事が忙しくて手が回らない」といったことを理由に、後回しにしがちですが、整理整頓されていないと、「使いたいときに見つからない」といったことが生じます。人が、ものを探すことに費やす時間は、一年で150時間にもなり、さらに、仕事に集中している人に「どこにある?」など尋ねた場合、その人が再び集中するためには、約23分も要するそうです。この時間を目標達成のために使えたら、もっと「ありたい姿」近づくことができます。

講師の数本優さんは、整理整頓をおこなって、生産性を高めてこられた経験と企業内整理収納マネージャーの知識により、整理整頓の効果や自分に合った物の分類・整理方法を考えるための思考法などについて、ワークを交えて具体的にお話しくださいました。

当日は、生産性向上を試みる社会人、起業家など23名の方々に受講いただき、受講者からは、「処分したいが、もしかしたら今後使うかもしれないと思う物はどうしたら良いか」「押しつけにならないように職場で整理整頓を広めるにはどうしたらよいか」などの質問があり、数本さんから、すぐに実践できる解決方法の具体例など、質問者に寄り添った回答がされていました。

セミナー1

●「経営管理とリスク管理、コロナ禍における事業再構築とリスク管理」(第2回)

講師:正木 祐司さん(中小企業診断士,有限会社正和代表取締役)

開催日時:令和4(2022)年7月20日(水曜日)18時30分から20時まで

近年、新型コロナウイルス感染症拡大や地震・大雨といった災害など、想定しにくいリスクへの対応を迫られることが増加しています。このようななか、事業継続計画(BCP/Business Continuity Plan)を作成する必要性が高まっています。

講師の正木祐司さんは、保険会社に勤務されていた際、生命保険、損害保険などのリスクマネジメントに関する業務を担当され、阪神大震災時に災害対策計画を策定された経験をもとに、「経営管理とリスク管理との関係」「BCPとの関係を押さえた経営管理」「業務運営に生かせるリスク管理」についてお話しくださいました。

また、最新のリスクの捉え方とともに、リスクを特定し、分析評価するための視点をわかりやすくご紹介くだったことで、BCP作りのきっかけをご提供いただきました。

盛りだくさんの内容だったため、質問の時間を設けることはできませんでしたが、受講された経営者、管理者など21名の方々からは、「リスクのとらえ方と活用について理解できた」「体系化した知識の吸収ができた」「一人では勉強できない内容だったので良かった」といった感想をいただきました。

セミナー2


~カウンターより~

社史・団体史に関する業務について

私が中之島図書館ビジネス支援課に配属され、今年で3年目を迎えます。この間、社史に関する業務に携わってきました。3階社史コーナーでは約4,900冊もの社史・団体史が自由に閲覧できます(2022年8月末現在)が、それらの大半は各会社・団体のご厚意によりご寄贈いただいたものです。今回は社史・団体史に関する業務をご紹介します。

・社史・団体史発刊の調査

社史・団体史の担当職員は以下のような情報源から社史・団体史の発刊状況を確認・寄贈依頼を行っています。

(1)他の図書館の所蔵:国立国会図書館、公共図書館、専門図書館など。

(2)インターネット情報:会社・団体のプレスリリース、社史制作会社のHPなど。

・資料紹介、広報

記念日などに合わせ、ツイッター・メールマガジンで資料紹介を行っています。2022年7月3日は初代通天閣の誕生110周年だったので、通天閣を運営する企業の社史を紹介するツイートを投稿しました。

また、昨年度から社史寄贈を呼びかけるチラシ(右画像)を作成し館内で配布しています。さらに庁内外の関連部署・団体と連携し、チラシの配布・メールマガジンの掲載等、広報にご協力いただく取り組みも開始しました。おかげ様でこれらの新規広報により、ご寄贈いただけたケースも出てきています。

中之島図書館はこれからも社史・団体史の収集に努めます。社史・団体史を発行されましたら、ぜひ当館へご寄贈いただければ幸いです。(KT)

求む社史

図書館で働いてみて

図書館の司書になり、1年半が経過しました。中之島図書館で働いてみて感じたことについて書いていきたいと思います。

まず、カウンター業務では質問の内容が多岐にわたることに驚きました。「○○という本はありますか?」という所蔵調査だけでなく、「昔、××町にあったお店の屋号を知りたい」、「今は存在しない橋の載った古い地図が見たい」など、利用者の方が調べている内容は様々です。資料が見つかったとき、利用者の方から感謝の言葉をいただけるのは、カウンター業務の魅力だと思います。ただ、資料を調べても答えが分からないこともあり、歯がゆい思いをすることもあります。

利用者の方と関わるのは、カウンターだけではありません。8月に、高校生対象のイベント「なにわタイムとらべる」を実施しました。新型コロナウイルス感染症の影響で、3年ぶりの対面実施でした。館内をはじめ、普段は入れない書庫にも案内し、江戸時代に作られた貴重な本などを見てもらった後、和綴じ本(左画像)を作るワークショップを行いました。若い人に歴史・文化的に価値のある資料に触れる機会を提供できるのは、中之島図書館ならではだと思います。参加者の方から楽しかったと言っていただき、とても励みになりました。

カウンターでの対応だけでなく、図書館の仕事の全体をまだ分かっておらず、戸惑うこともしばしばあります。しかし周りの職員が丁寧に教えてくれるので、何とかやっています。自分でも学ぶ姿勢を忘れず、教えてもらったことを利用者の方の調べもののサポートに活かせるよう、努めていきます。(Y2)

なにわタイムとらべる


中之島図書館周辺の地図

開館時間 月~金 午前9時~午後8時
土    午前9時~午後5時

休館日  日曜日・国民の祝日及び休日・年末年始
6月、10月、3月の第2木曜日

大阪府立中之島図書館   
〒530-0005 大阪市北区中之島1-2-10
電話(代表) 06-6203-0474

https://www.library.pref.osaka.jp/site/nakato/

編集後記:156号より、1ページ目にQRコードを準備しました。読み取っていただくと、当館のHPにある「なにわづ」のページへと繋がります。HPでは、写真をカラーで見ることができ、これまでのバックナンバーを閲覧することも可能です。ぜひ、ご覧ください。


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