大阪府立図書館

English 中文 한국어 やさしいにほんご
メニューボタン
背景色:
文字サイズ:

大阪府立中之島図書館だより「なにわづ」 No.154

更新日:2021年1月8日

なにわづ・題字

2020年11月 No.154


新型コロナウイルス感染拡大防止と図書館サービスについて

令和2(2020)年を表す漢字には「新」が候補になるのではと思うほど、今年は新型コロナウイルス感染症の影響の大きい一年かと思います。当館についても例外ではなく、新型コロナウイルス感染症対策を行いながら、様々なサービスの提供を模索してきました。今年の「なにわづ」発行の機会に、これまでの取組を時系列に沿った形で、簡単にではありますが紹介いたします。

当館における「コロナ」による影響は2月18日から始まります。大阪府が2月20日から3月20日まで府主催の府民参加事業の中止または延期を発表。それを受けて開催を予定していた「大阪府立中之島図書館特別展関連講演会」「経営・起業相談会」その他各種セミナー類をすべて中止しました。また3月2日には、不特定多数が集まる屋内の府有施設の休館という大阪府の方針により、当館も臨時休館することとなりました。その後は府立学校の臨時休業延長や緊急事態宣言の発令などのたびに臨時休館が延長され、都合3回臨時休館が延長されました。5月16日に一部サービスを再開するまでの75日間休館したのは、明治37(1904)年に開館して以来リニューアルに伴う休館を除けば最長です。

臨時休館中は各種来館サービスを府立中央図書館ともども停止しましたが、レファレンスや複写依頼についてはウェブや文書などからの申し込みへの対応は両館とも継続しました。利用者の方々への情報提供の影響をできるだけ減らすためです。事実、当館のレファレンス、ウェブからの複写依頼はともに昨年度と比べ急増傾向にあり、来館での申し込み依頼がウェブにシフトしてきたことがうかがえます。

また、5月1日より予約図書の郵送貸出サービスを府立中央図書館と同時に開始しました。外出自粛の長期化を受け、自宅での読書活動を支援するために実施したものです。新聞やテレビでも取り上げられ、反響も大きいものでした。なお、通常の予約図書の貸出サービスを再開してからも、感染症拡大防止策の一環として現在も継続しています。

このような臨時休館期間を経て、5月16日に感染症拡大防止策を実施しつつ、一部来館によるサービスを再開しました。感染症拡大防止策としては、消毒液の設置・閲覧席の撤去・利用者が使用した資料は一定期間隔離するなどを実施。これらは日本図書館協会のガイドラインなどに照らし合わせながら策定しています。また、部屋の構造上人が密集しやすい新聞室については、レイアウトを変更し、一定の身体的距離を保てるようにして各種新聞を提供しています。5月26日には対面でのレファレンスや来館による複写の申込みなどを再開。5月29日には「大阪コロナ追跡システム」を導入し、利用者の方々に登録をお願いしているところです。

以上、簡単にではありますが当館の取り組みを振り返ってきました。現在でも長時間の館内滞在をご遠慮いただいたり、休館前と比べて閲覧席数を減らしていたりして、利用者の方々には引き続きご不便をおかけし、たいへん心苦しい限りです。感染症拡大防止策にご協力いただきながら利用してくださっていることに感謝しつつ、今後も感染症拡大防止策を行いつつ着実にサービスを提供していきます。


令和元年度新収資料紹介 <大阪資料・古典籍課>

令和元年度中に収集した大阪にゆかりのある和古書・既刊書の一部をご紹介します。
※【 】内は当館の請求記号です。

『〔崇蘭館〕方薮』

『〔崇蘭館〕方薮』上下2冊 福井楓亭著 石崎勝蔵写 [明治23年](1890)【692-202】

福井楓亭は、江戸時代中期の医師(1725-92)。自邸を「崇蘭館」と称して代々、医薬書の収集にも励んだ。『〔崇蘭館〕方薮』は臨床家として聞こえた楓亭の処方をまとめたもので写本として流布したが、本書は当館の石崎文庫を収集した漢方医・石崎勝蔵が書写したもの。

『落噺顋懸鎖』

『落噺顋懸鎖(おとしばなしあごのかけがね)』5冊 和来山人作 中邑長秀(有楽斎)画 文政9年(1826)【255.9-128】

古典落語「三軒長屋」は、この「腮懸鎖」に「これは尤」という題名で掲載されている。

『遊女五十人一首』

『遊女五十人一首』上下2冊 〔安田蛙文〕編 〔月岡雪鼎(月岡丹下)〕画 文化元年(1804)再版【224.5-782】

宝暦3年(1753)に刊行され、文化元年(1804)に大坂の塩谷平助が再版したもの。安田蛙文は江戸中期上方で活躍した浄瑠璃作者・歌舞伎狂言作者。月岡雪鼎(丹下)は、江戸時代中期から後期にかけて活躍した浮世絵師で宝暦年間に大坂に移住した。

『新町遊郭全図』

『新町遊郭全図』大正8年(1919)写【378-1206】

新町遊郭は、江戸時代、幕府から公許された大坂唯一の遊郭であり、江戸・吉原、京都・島原と並ぶ三大遊郭の一つ。明治以降も花街として賑わいをみせた。

その他、『大阪商工案内 初編』太田清次郎編輯 弘榮社 明治43年(1910)【335-72NX】、『五千分一地番入大阪市図』和樂路屋 昭和8年(1933)【291.63-93NX】等の資料を収集しました。


イベントレポート <ビジネス支援課>

大阪中小企業診断士会との共催セミナー「学んですぐ実践!仕事力・経営力アップ講座」

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、令和2(2020)年2月20日に開催を予定していた「大阪の産業・経済を知る!第4回」をはじめ、セミナーは相次いで中止、もしくは延期を余儀なくされました。

セミナーやイベントは人を集める性質があるため、開催方法や再開時期は慎重に検討しなければ感染拡大につながるおそれがあります。一方でビジネスセミナーは、紙の資料だけでは得られない生の情報を補完する役割を果たしていることからも、少しでも安全に再開できるよう、共催先と図書館とで、どのような形で開催するのがベストなのか、何度も真剣な討議を行いました。その結果、大阪府の定めた感染拡大防止策を講じつつ、定員を前年度の同講座の半分に減らし、7月15日を『仕事力・経営力アップ講座』の第1回目として、セミナーを再開することとしました。

開催当日は、換気・消毒・距離の確保を行い、対面における飛沫感染防止策を講じました。具体的には、常に風が通るように会場の二方向の窓を開け、マイク・ドアノブ・机・椅子の背もたれなどの消毒を行い、座席は間引きしました。講師の定席でもある講演台には透明の覆いを設置し、講演台から近い席は前から2列、離れた席は前から1列は空席にし、受講者・講師が出来るだけセミナーの内容に集中できるよう環境を整えました。また、受講者と図書館スタッフの双方の安全のため、入口付近に手指の消毒液を置き、受付に飛沫防止の仕切りを設置し、会場の入り口は開放してドアに触れずに入退室できるようにしました。万が一感染者が出た場合に備え、開催日から2週間の間だけ参加者名簿を保管させていただくことを申込書等に明記するとともに、マスク着用および当日体調の悪い方は参加をご遠慮いただくよう呼びかけ、広報に努めました。これらに加え、第2回目からは、アンケート用紙の裏側に大阪コロナ追跡システムのQRコードを新たに記載し、登録の協力をお願いしました。

現在も、これまで体験したことのない新型コロナウイルス対策を講じてのイベントを毎回試行錯誤しながら運営しています。今回は、これまでに開催したセミナーの中から、『学んですぐ実践!仕事力・経営力アップ講座』第2回についてご紹介します。

『打ち手がわかる決算書の活用方法』講師:橋本 賢宏 さん(中小企業診断士)

開催日 令和2(2020)年8月19日(水曜日)18時30分から20時

セミナー当日の様子

『仕事力・経営力アップ講座』は大阪中小企業診断士会との共催で毎年開催しているもので、様々な得意分野を持つ中小企業診断士にご登壇いただいています。今年度第2回の講師は税理士として会計事務所も経営されており、特に数字に強い経営者になるための支援に力を入れられています。

セミナーでは、始めに決算書の概要説明として貸借対照表の構成や、損益計算書の各用語について、それぞれ解説がありました。決算書の概要説明の後は、売上・固定費・粗利率から経常利益を算出する演習問題の回答作成からスタートし、その後、講師による解説が行われるという形で進められました。

特に印象的だったのが、大口顧客からの値下げ交渉に応じた場合と応じなかった場合、どちらの方がより損が少ないかという問題でした。受講者はそれぞれの場合での計算結果を比較して回答を作成しましたが、解説では、計算上とは違い、実際には値下げに伴うマイナスの影響が他の顧客に出る場合もあるので、いったん値下げに応じた上で新規顧客を開拓する方が望ましいといの説明がありました。このように、実務に即したプラスアルファのアドバイスも数多く盛り込まれ、充実した内容のセミナーとなりました。

この講座は開催日までに定員に達し、事前申込を締め切りました。嬉しい反面、定員一杯の状態での開催に不安もありましたが、受講者の方は全員がマスクを着用して参加下さり、手指の消毒や洗浄も積極的にご協力いただきました。開催者が万全の注意を払うのは当然のことですが、参加者の方のご理解なくしては成り立たない部分も多くあり、ご協力いただけたことが何より有難く感じられました。


書庫建替え工事の話

中之島図書館の書庫棟、2号書庫と3号書庫の建替え工事を進めています。令和3年度には、2棟の書庫の解体工事が始まる予定です。解体前に、書庫にある資料を運び出す必要があるため、10月からその準備を始めています。2号書庫には、約19万冊、分類でいうと文系の資料、雑誌、新書、文庫本のほか柏原家文書などの特別コレクションが収められています。3号書庫には、約29万冊、主にビジネス支援課の資料と大阪資料・古典籍課で扱う古典籍(和装書)などが収められています。

中之島図書館の2階概略図

図は、中之島図書館の2階部分の略図ですが、1号、2号、3号とも書庫は5階まであります。本館の1号書庫は2号書庫と1階から4階まで、2号書庫と3号書庫の間は1階から5階まで渡り廊下で繋がっています。1号書庫から3号書庫へ行くには、必ず2号書庫を通ることになります。2号書庫と3号書庫の渡り廊下にエレベータ(6人乗り・550kgで)も設置していますが、各書庫内には階段がありますので基本的には階段を上り下りして資料を出納していました。

2号書庫は大正5年、3号書庫は、昭和2年に増築したものです。

このたび耐震化のため建替えすることになりました。併せて本館へバリアフリーで通行できる入り口も設置する予定です。

さて、2号書庫、3号書庫の資料は、どのようにして運び出すことになるのでしょうか。それぞれの書庫から直接外に出る出入口はありません。この図の破線の箇所、2階部分にのみ2号書庫と3号書庫に沿って図書館事務棟への渡り廊下が設けられており、その廊下から事務棟1階まで降りて搬送用トラックに積み込むことになります。渡り廊下の幅は、1.6メートル、長さ約25メートル。建築年の違う建物に沿って設置されているため、段差あり、坂ありで、大量の資料を運ぶには、注意が必要です。日常的に職員も行き来しています。

例えば、3号書庫の1階にある資料を運び出すには、2号書庫との間にあるエレベータで2階へ運び上げ、2階の渡り廊下を通り、次は事務棟のエレベータ(7人乗り・500kgまで)で1階まで降りてトラックに運び込むというコースを辿ります。上がったり下がったり、効率がよいとは言えませんが、このようなルートを辿るしか方法がありません。また、資料の移設先には、資料を置く棚(書架)がなく、資料を運び出すと同時に書架も解体して、移設先に設置する必要もあります。資料と書架の両方を書庫から運び出す複雑な工程を狭くて段差のあるルートで行います。3月末まで、カウンターの後ろではこのような作業が続きます。運び出しの期間中は、2号書庫、3号書庫の資料がご利用いただけませんが、ご理解、ご協力のほどお願いいたします。


中之島図書館周辺の地図

開館時間 月~金 午前9時~午後8時
土    午前9時~午後5時

休館日  日曜日・国民の祝日及び休日・年末年始
6月、10月、3月の第2木曜日

大阪府立中之島図書館   
〒530-0005 大阪市北区中之島1-2-10
電話(代表) 06-6203-0474

https://www.library.pref.osaka.jp/site/nakato/


PAGE TOP