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大阪府立中之島図書館だより「なにわづ」 No.144

印刷用ページを表示する 掲載日:2010年10月10日更新

なにわづ・題字

2010年10月 No.144

106年前の想い

酒本 毅 (さかもと たけし)

 赴任してすぐ「中之島百年―大阪府立図書館のあゆみ」を読んだ。「図書館とは」を考える前に、この図書館はどういう歴史的局面で誕生し、 どのような経過と変遷を辿ってきたのかをまず知りたかったからである。

 当館は住友家十五代当主住友吉左衛門友純氏からの寄付により明治37年に開館し、本年で106年を迎える。

 「我が大阪は関西の雄府にして、人口百万、財豊かに物殷んにして、諸学競い興る。」に始まる建館寄付記には、図書館の開設を通じて大阪の文化隆盛を目指さんとする当時の大阪の明治人の意気軒昂たる勢いを感じさせる。

 大阪図書館は開館時にそれ以前の時代に継承された資料を引き継ぐとともに、多くの人々からの相次ぐ資料の寄贈を受けてスタートした。

 当館はその後、大阪の発展とともに歩みを始め、この間収集されてきた資料は近代大阪の歴史の証人である。同時に、近世大阪の貴重な資料群が蓄積されている。過去から現在までの「おおさか」が一杯詰まっている。

 しかも、開設時の原形をほぼそのまま残したまま、現在も図書館として利用されている。都道府県立図書館としてはおそらく最古のものと思われる。

 当時の大阪朝日新聞(明治36年6月8日)に、「大阪図書館長が書籍備付の第一順序は理想の商工業者養成を標的として其選択を決するの点に在り」、更に「今日の商工業者に最も闕如せるは社会及び人類に対する観念なり」とし、 「利己心に溺れて、浅からぬ害毒を社会に流布し、・・・を治し、此等の愚昧を啓き、其得を進めて其失なからしめんとする図書館の任務決して軽からざるを悟るべし。」との主張が見られる。

 開館を前にして、教育界、文化界からの期待に加えて、商工業都市大阪の期待も一身に背負って立っていたものと思われる。

 中之島は、1世紀を経た現在も大阪産業の情報中枢機能の集積ゾーンを形成している。平成8年の中央図書館の開設、平成16年の開館100周年を機に、当館は、資料調査、キャリアアップ、 創業などあらゆるビジネスステージにおいて迅速、的確なサービスを提供するビジネス支援サービスを新たに立ち上げるとともに、和漢の古典籍としては日本有数のコレクションを有する大阪資料・古典籍室と合わせて、 専門図書館として生まれ変わった。

 このような現在の中之島図書館の姿を106年前の大阪図書館の生い立ちと重ね合わすと、明治の人々の想いを少しでも共有できるのではなかろうか。

 中之島図書館は、これからも「古くて新しい」多彩な図書館サービスを府民に提供してまいりたい。

(大阪府立中之島図書館長)

平成21年度新収資料紹介

 昨年度収集した資料の中から、江戸時代に生まれ、発展し、現代の“笑い”の源流となった大衆芸能関係の資料をご紹介します。<>内は、請求記号。

 『落し噺』刊 29冊
<255.9/120>

落し噺の見本本

「おとしばなし」とは、滑稽な咄の終わりに「落ち」をつける話芸のことで、当初は神社境内などの野天で演じられていたが、後に小屋掛けの公演形式となり、現在の落語へと発展していった。

 庶民文化が発展して行く中、話上手が聴衆相手に演じた小咄や、笑話を愛好する庶民の咄の会に寄せられた創作小咄が「噺本」として出版されるようになった。

寄席が興業化し、聞く笑話が中心となった江戸時代後期には、桂文治ら落語家の高座の台本と、十返舎一九ら戯作者の咄本が並行して出版されるようになっていったが、紹介している資料もその一つ。 板元の本安(本屋安兵衛)は大坂道頓堀日本橋南詰にあった書肆。

 『新撰即席二〇加』松浦正作編集
松浦正作 明治22(1889)年刊 1冊
<779.2/4N>

新撰即席二〇加

 宴席など、なにかの折りの寸劇として人気があった「俄(にわか)」の型や文句を集めた種本。1頁に1種ずつ、身につける衣装や小道具、口上、落ち(説明付き)がその絵と共に書かれている。 

「俄(仁輪加)」は、手近なもので仮装して、その場で寸劇を演じるもので、享保の頃、大坂住吉参詣帰りの人が始めたという。以後関西一円で夏祭りや盆の余興として長く用いられた。滑稽な内容で、最後に必ず「落ち」が付く。 また、「ぼけ」の味を大切にするところは現在の上方諸芸能に引き継がれている。

 喜劇役者・曾我廼家五郎は「俄」に大いに触発され、「俄」ではない新しい芝居「喜劇」をつくろうと志した。「俄」は、現在も続く上方喜劇の源流となった。

平成22年度開催の中之島図書館ビジネスセミナーを開催

講演風景

 平成22年度中之島図書館ビジネスセミナー「IFRSで経営が変わる!」を7月13日(火)に開催いたしました。今回は、藤田英一さん(あずさ監査法人 米国公認会計士 ニューヨーク州)をお招きし、 IFRSの概要およびIFRS時代の経営戦略を中心にご講演いただきました。

 先進諸国では、日本と米国を除いて国際会計基準IFRSを採用されており、日本でも2010年3月からの任意適用を受けてIFRSでの決算報告が始まり、強制適用に向けて進みつつあることをご紹介いただきました。

 第1部「IFRSの概要」では、IFRSの特徴として原則主義・経済実態重視・バランスシート重視・包括利益の4つのキーワードからご説明いただきました。 また、IFRSと税法との整合性の課題やIFRS導入が企業にもたらす影響を会計面だけでなく、ITシステムや財務、体制の確立という人事面にも影響があることをご指摘いただきました。

 第2部「IFRS時代の経営戦略」では、1部での多方面に与える影響について経営からという視点で持合株・年金債務・有形固定資産の減価償却・M&A・財務諸表/経営管理指標の5つを例示してご説明いただいた後、 バランスシートのマネジメントが「いくらで取得したか」という過去を表わす「取得原価主義」から、「いくらの収益を生むか」という将来を表わす「公正価値評価」にシフトすることを踏まえ、 経営戦略を立てる必要性をご指摘いただきました。


講演風景

終了後のアンケートでは、「急激に注目されるIFRSについてよくわかった」「わかりにくいIFRS理解への足がかりができた」等々のご感想をいただきました。

 図書館が開催するセミナーとして、IFRS関連図書・雑誌記事リストを会場で資料としてお渡しするとともに、ホームページ上にも掲載して、 セミナー前の情報収集、セミナー後の調査に役立てていただくように工夫をしております。


平成21年度 大阪府立中之島図書館資料特別展示・講演会・見学会
―「文化遺産としての中之島図書館」―

1 特別展示  

○ 期間:平成21年12月19日(土)~平成22年1月16日(土) 午前9時~午後5時
  (ただし、日曜・祝日、12月29日(火)~1月4日(月)は休館)
○ 会場:大阪府立中之島図書館 文芸ホール
○ 来場者総数:1,849 名

2 講演会

○ 日時:平成22年1月9日(土) 午後1時30分~午後3時30分  
○ 会場:大阪府立中之島図書館 文芸ホール  
○ 講師:笠原一人(かさはら かずと)氏(京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科助教)  ○講演内容:「文化遺産としての中之島図書館」  
○ 参加者数:62名 

3見学会

○ 見学会参加者数:52名 
○ 見学内容:講演会終了後、笠原先生のご案内で本館、北館、南館及び事務棟建物の見学会を開催しました。 
○ 当日の募集にも関わらず、たくさんの方にご参加いただき、大変好評でした。

講演風景

<講演概要>   
今日は中之島図書館についてお話をするのですが、その前に、まず建築の見方について、触れておきたいと思います。建築の見方というのは親しんでいないとなかなか難しいかもしれません。 建築の話は、ともすれば設計者の経歴や、建物の建設に当たって出資した人の話に終始しがちですが、今日は出来るだけ建築のデザインに即しながらその意味、特徴を捉えたいと思います。

 まず、建築は表現物、芸術であるということをご理解いただきたいと思います。建築は常に何かを表現しています。それは建築家や設計者の個性、意図であったり、或いは時代、社会の時勢を反映したものであったり、 常にそこには背景になるものが表れており、そういう意味で表現物なのです。

 次に、中之島という場所について簡単に触れておきます。中之島は明治以降、商業やビジネス、文化の中心になり、日本銀行を皮切りに、新しい建物が次々に建てられました。市役所、中央公会堂、東洋陶磁美術館、公園があり、 中州が文化ゾーンになっています。中州にこれ程充実した施設が揃っているのは、日本では珍しいことです。大阪を代表するこの特長ある空間の中に中之島図書館はあります。

 その中之島図書館の設計者、野口孫市の話に進めたいと思います。19世紀から20世紀の初頭を生きた建築家、野口孫市の設計する建物はイギリスの影響が非常に強く、 実はこの中之島図書館の建物もイギリスの影響がよく表れています。19世紀のヨーロッパ、特にイギリスでは、ゴシック、ルネサンス、バロックなどの色々な時代の建築様式を自由に取り込んだ折衷主義的な建築が流行していました。 中之島図書館も同じで、イギリスの建築様式を手本としながら、様々な様式を取り込んだものとなっています。そして、その折衷のさせ方に野口氏の個性が表われています。 野口氏が、19世紀から20世紀初頭という時代を生きた建築家だという事が建物全体に表れているのです。

 詳しく見てみます。中之島図書館の建物の外観の特徴は、正面にギリシャやローマの神殿のモチーフを使っており、その後ろに大きなドームを掲げていることにあります。 ドームは古代ローマの象徴です。ここでは古代ローマを再生しようとした、ルネサンスの時代の建築様式を取り入れているのです。

 一方、館内のドーム下の階段室は、ルネサンスの時代と全く違う建築様式が採用されていて、ヨーロッパで言うと、ルネサンスの次の時代の様式であるバロック様式です。

 外観、建物全体の構成を一言で捉えるならルネサンス風ですが、しかし中に入るとバロック風。この組み合わせ方に野口氏の個性が表れています。しかも使い方がうまい。 ドーム円形の空間に沿わせながら両側に階段を広げており、丸みを帯びた空間を来館者が体験(体感)できる空間として造られています。また、建物の装飾の豊かさも野口氏の個性の一つです。 花型の飾りやペディメント、壁に取り付けたメダルやコリント式のデザイン、野あざみの葉をモチーフにした柱頭の飾りなど繊細な装飾が施されています。

 中之島は日本銀行、中央公会堂などたくさんの名建築が立ち並んでいますが、その中でも中之島図書館の外観は、最も正統なルネサンス様式に由来するものです。 ルネサンスのモチーフをきちんと使った正統で理想的な建築であること、それが特徴なのです。恐らくこれは、野口氏がこの図書館を造ろうとした時、図書館を知の宝庫、知の殿堂として捉え、それに最もふさわしいものとして、 この最も正統かつ理想的な建築様式を外観のデザインに選んだという風に考えられるわけです。

 増築のことにも触れておきたいと思います。増築部分の設計は日高胖です。野口氏の後輩に当たる方ですが、建物には彼の個性はほとんど表現されていません。 日高氏が考えていたのは、野口氏のデザインを引き継ぎながら、いかにうまく増築部分を造るかということです。そして増築することでより建物全体のバランスが取れるようになりました。 左右両翼(北館、南館)だけですが、巧みに設計されています。

 最後にもうひとつ、重要な面白い建物を紹介しておきたいと思います。中之島図書館には事務棟という建物が南東の隅にあります。 戦後の建物ですが、その設計が実は森田慶一という、有名な建築家の作品なのです。建物は装飾性のないコンクリートのモダンなデザインでありながら、全体の構成としては本館と同様ルネサンス的あるいは古典主義的な建物です。 本館を意識して設計されており、基壇と建物と屋根のひさしの3層構成で、わざわざ窓のまわりを縁取りしています。窓の奥行きが深く石造りの古典主義的な建物のようにも感じられ、古風な印象でいかにも森田氏の作品であります。

 中之島図書館は建設当時から理想的な形をもって、図書館に相応しい姿で造られました。この建物には、建築家の思想、考え方、個性、時代背景が凝縮され、表現されているのです。 そして素晴らしいのは、ここが当時の姿のまま、今も使い続けられているということです。建物は元のまま使い続け、維持していくことが一番いいのです。 それは建物が生きているということです。中之島図書館はまさに文化遺産として歴史的価値のある建物なのです。

4月1日から民間企業との協働運営が始まる

 昨年(平成21年)9月、大阪版市場化テスト監理委員会において、市場化テストの対象業務として「府立図書館管理運営業務」が採択され民間開放されることが決定されました。 これは、民間企業からの事業提案を受けて、実現可能性の観点で、サービスの維持向上やコスト削減方法等についての官民比較の検討を踏まえて行われたものです。 受託事業者の選定に当たっては、公募型プロポーザル方式により選定委員会に付され、5社の民間企業の中から「株式会社図書館流通センター」が委託先として決定されました。

 本年(平成22年)4月1日から3年間の契約期間として業務を開始していますが、図書館管理運営業務を府の職員がするべきものと、委託業者が実施するものとに整理、区分しており、 委託業者に任せる業務の主なものは、貸出、返却、予約、利用者登録、利用案内、複写サービス、書庫出納、書架整理、資料整理・装備などの図書館業務等となっています。

 また、委託業者との協働体制を円滑にするため、図書館2階部分のレイアウトを大幅に変更しています。(下図レイアウト参照)

 これからも、中之島図書館としましては、府民サービスの一層の向上を目指して、民間企業のノウハウを活かしながら、専門性の強化と効率的な業務体制づくりを行い、 より質の高いサービスを利用者に実感いただける図書館を目指していきます。

 

☆☆ 喫煙室廃止のお知らせ ☆☆

 このたび、受動喫煙防止の観点から、1階にありました「喫煙室」を本年5月末で廃止しましたが、室内の環境整備終了後、中之島図書館の由来や所蔵品の常設展示が可能となるスペースを誕生させる予定です。

中之島図書館付近図

開館時間 月~金 午前9時~午後8時
       土  午前9時~午後5時  

休館日  ・日曜日・国民の祝日及び休日
       ・年末年始・6月、10月、3月の第2木曜日

大阪府立中之島図書館
     〒530-0005 大阪市北区中之島1-2-10
     電話(代表) 06-6203-0474