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本蔵-知る司書ぞ知る(65号)

更新日:2024年1月5日


本との新たな出会いを願って、図書館で働く職員が新人からベテランまで交替でオススメ本を紹介します。大阪府立中央図書館の幅広い蔵書をお楽しみください。

2020年3月20日版

今月のトピック 【偽書・奇書に関する本】

「1999年7月に天から恐怖の大王が降臨して人類は滅亡する」「東北に大和朝廷とは別の王朝が存在した」「義経は衣川で死んでおらず、大陸に渡ってジンギスカンになった」。そんな奇妙奇天烈な内容が記載された偽書・奇書について考える本を3冊紹介します。

ノストラダムス予言集』(P.ブランダムール/校訂 岩波書店 2014.10)

「一九九九年七つの月/…/アンゴルモワの大王を蘇らせん/…」の四行詩で有名な予言集です。本書は、ノストラダムスがルネサンス期の真の詩人であったことを考慮し、彼の予言の再解釈を試みています。アンゴルモワの大王はアングーモワ領のアングレーム伯(後のフランソワ一世)で、人類の滅亡ではなく、彼の治世下の繁栄を予言している詩と解釈しています。

偽書「東日流外三郡誌」事件』(斉藤光政/著 新人物往来社 2006.12)

青森県の小さな集落の天井裏から大量に見つかった「古文書」には古代の北日本にあった私たちの知らない王国と、その壮大な歴史が記述されていました。この本はその「東日流外三郡誌」が世に出た経緯を描き、それを支持する人たちを徹底的に批判しています。しかし個人的には、大和とは違う王国が北に存在して、大陸と交流していても面白いな、と思います。

近代日本の偽史言説:歴史語りのインテレクチュアル・ヒストリー』(小澤実/編 勉誠出版 2017.11)

従来、偽書・奇書の研究はアカデミズムではまともに取り組まれてきませんでした。この本は、そうした言説が生まれ受け入れられていった事象を学問的に考察したものです。偽文書を必要とした寺社、日本は文字も発明した国だと考えた平田篤胤、義経がジンギスカンとしてアジアを統治していたと信じたかった戦時下の人々。さまざまな社会背景があって、偽書・奇書が生まれてきたことがこの本からわかります。

今月の蔵出し

薔薇とハナムグリ:シュルレアリスム・風刺短篇集』(モラヴィア/著 光文社 2015.5)

本日ご紹介いたしますのは、イタリアのモラビアが1950年頃に書いた風刺短編集です。どの短編も「その発想はなかった!」と思い「いや、それはないわー、多分」とツッコミを入れたくなる奇抜さ。しかし一方で「もしかしたら……、私が知らんだけで、あるかもしれんのやろか?」と、考えれば考えるほど、現実との境目がぼんやりしてくるところが面白いです。

私のイチオシは「ワニ」です。主人公の夫人は、夫の上司の奥様から家に招かれます。奥様になめられたらあかんっ!と意気込んでお宅訪問へ向かう夫人。奥様は気高く上品でお部屋も素敵。出される紅茶もキラキラしているように見えます。夫人は心の中でいろいろ考えます。あれがおしゃれなんやな……。これがパリの流行なんやな、きっとそうやな……。と。そして最後は「私も近い将来あんな風になるでっ!」と誓い、帰路につきます。(この内容に「ワニ」も絡んでくるのです!)

この話を読んで「あの人がしているからおしゃれ」「あの人が言ってるから正しい」など、ある程度は他人に流されるのも構わないとしても、本当におしゃれなのか。本当に正しいのか。自分で物事を判断するために、日頃から考えることを怠けてはいかんと思いました。みなさんもこの短編集を読んで「本当に面白いのか。」確認してみてください。

【Osushichan】

バス:日本のBusワイドカタログ』(海老原美宜男/著 山と渓谷社 1983.9)

突然ですが、バスはお好きですか。
この本は100ページほどのコンパクトな体裁ながら、ページを開けると、それまであまり気にならなかったバスのことを、うっかり大好きになってしまうような、“バス愛”にあふれた1冊です。

まず、昭和50年代に撮影された、ダブルデッカー、ボンネットバス、日本全国各地のバスの写真が数多く掲載されています。どの写真も、それぞれのバスの魅力がぐいぐい伝わってくる構図で撮影されており、著者のバスへの熱い情熱を感じます。当時の方向幕やナンバープレート、車体広告、背景に写り込んだ建物や、乗客のファッションなど、見どころが満載です。
また、たくさんの写真に加え、バスの歴史についてもまとめられています。今では当たり前であるバスのワンマン方式は、1951年に大阪市交通局が初導入した、などという豆知識も披露されます。
さらに、車体ができあがるまでの21の工程も紹介されています。輸入されてきた新車のバスが、港に立つ巨大なキリンのようなガントリークレーンで、コンテナ船から陸あげされる場面の写真もぜひお目にかけたい一枚です。

この本を読まれて、バスのことが気になって仕方がなくなられた方は、あわせて『歴史に残る働くクルマたち バス・資材部品』*もぜひ。運賃表示器や、バスの座席について詳しく知ることができます。

ちなみに、当館の周囲には、青と黄色のシュッとしたカラーリングでありながら、少し丸みを帯びたかわいらしさも併せもつ路線バスが走っています。ご来館の際にはぜひ探してみてくださいね。

*の資料は館内利用のみです。

【降車ボタン押したい族】


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