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本蔵-知る司書ぞ知る(64号)

更新日:2024年1月5日

本との新たな出会いを願って、図書館で働く職員が新人からベテランまで交替でオススメ本を紹介します。大阪府立中央図書館の幅広い蔵書をお楽しみください。

2020年2月20日版

今月のトピック 【暦に関する本】

今年は令和最初のうるう年です。当館では展示「暦を紐解く~令和最初のうるう年~」を2月29日まで開催しています。この機会に暦に関する本を読んでみませんか。今回は展示資料の中から以下の3点をご紹介します。

世界をよみとく「暦」の不思議(イースト新書Q)』(中牧弘允/著 イースト・プレス 2019.1)

現在の日本では、一年は十二か月と定められておりそれぞれの月の日数も決まっていますが、世界には一年を十三か月と定める暦や、月の日付や日数が決まっていない暦が存在します。本書では、暦の歴史や世界中の様々な暦、食と暦の関係性、暦とアートなどが紹介されています。

暦ちゃん江戸暦から学ぶいい暮らし』(荒井修/著 橘右之吉/著 いとうせいこう/著 講談社 2013.2)

江戸には節分の時だけの商売「厄祓い」がありました。家々の厄を祓って回る代わりに豆と厄祓い賃をもらっていたそうです。豆を厄祓いの歳の数だけ渡すことで、相手に厄をあずけるという意味がありました。本書では、年中行事や季節の事柄にまつわるエピソードを通じて江戸時代の人々の暮らしが紹介されています。

日本の暦:旧暦と新暦がわかる本』(岡田芳朗/編 新人物往来社 2009.12)

こよみとは「日読の意で、日をよみかぞえることが語源」であるといわれています。本書は、暦の歴史や世界と日本の暦、年号などについて詳細に解説しています。また「国宝の暦」や「明治の改暦」など108の暦の知識が紹介されています。なお巻末には「今日は何の日」カレンダーが掲載されています。

今月の蔵出し

きっと元気がでる10の方法』(ウエイン・W・ダイアー/著 クリスティーナ・トレーシー/著 山川紘矢/訳 山川亜希子/訳 サニー・パク/絵 PHP研究所 2007.10)

私は府域図書館が発行している「図書館だより」に紹介されていたこの絵本のことがずっと心に残っていました。そのため、このコーナーで紹介するなら、この本をと考えていました。

この本は子どもが幸せで充実した人生を送るために役立つ「10の考え方」をまず詩の形で説明し、つぎに日常生活の中でどのように使ったらよいか、例を挙げて分かりやすく示しています。

この本は絵本ですが、子どもだけではなく、めまぐるしく変化する社会に身をおく大人にもきっと何か得るものがあるのではと思います。

かくいう私も「10の考え方」のほぼすべてにおいて、得るものが多くありました。特に第8章「心配しないで」に出てくる「もし、おちこんでしまったなら、近くの人に話を聞いてもらおう。自分の問題を人にうちあければ、心がきっと、かるくなるよ。」(14ページ)のくだりは、仕事や家族のことなどでしばしば落ち込むことのある私もそうですが、だれもが一度は経験したことがあり、共感できるのではないでしょうか。

読書がちょっと苦手な人でも読みやすく、おすすめの1冊です(もちろん、読書好きな人にもです)。

【トワイライト】

文学者掃苔録図書館:作家・詩人たち二五〇名のお墓めぐり』(大塚英良/著 原書房 2015.7)

墓碑巡りが好きです。藩政時代の藩主の菩提寺から、路傍にたたずむ小さな塚に至るまで、およそ「墓(とされているもの)」のためならどこまででも歩きます。今では「墓マイラー」などと呼ばれ同好の士は多いはずですが、一般的には「何が楽しいのか分からない」と言われてしまいます。江戸時代の文人の流れをくむ古式ゆかしい趣味なのですが。

本書はウェブサイト「文学者掃苔録」(外部リンク)の運営者が1995年から2015年までの20年間にわたり近現代の小説家や詩人の墓所を訪ねた記録です。選りすぐりの文学者250名について、人生や逸話といった解説と墓所での所感を書いています。

例えば、われらが大阪の作家・織田作之助。大阪市内の楞厳寺(りょうごんじ)にある織田作之助の墓を訪れた著者は、文章をこんな風に終わらせています。

<墓石の大きさにまず驚いておもわず、「ちょっと違うな」と呟いてしまった。>

なぜそう感じたのかは書かれていませんが、織田作之助のデカダンな生き方と権威的にも見える大きな墓石に「ちょっと違うな」と感じる気持ち、私も少しわかります。でも墓石を建てた人たちの弔辞や追悼文、墓石の裏に刻まれた藤沢桓夫の撰文を読んだ後では、若くして東京で客死した織田作への哀惜と愛情が伝わる大きさでは?とも思うのです

事程左様に墓前に立って感じることは人それぞれ。著者も「人それぞれの思いを込めた 掃苔(そうたい:墓の苔を取り去る、転じて墓参り)がある」と言っています。文学者の墓は大規模な霊園にあることも多く、アクセスが簡単で「墓マイラー」初心者にはうってつけ。この本で興味のある文学者を見つけたら、この本をお供に、来月のお彼岸にでも訪ねてみてはどうでしょうか。え?スマホでサイトを見ればいい?いえいえ、ぜひこの本とお出かけください。書籍をこよなく愛した文学者たちに敬意を表して。

もう少し軽く知りたい人は、山崎ナオコーラの『文豪お墓まいり記』もどうぞ。

【御書物方同心】

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