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本蔵-知る司書ぞ知る(60号)

更新日:2024年1月5日


本との新たな出会いを願って、図書館で働く職員が新人からベテランまで交替でオススメ本を紹介します。大阪府立中央図書館の幅広い蔵書をお楽しみください。

2019年10月20日版

今月のトピック 【栗】

味覚の秋ということで様々な美味しいモノがあふれていますが、秋といえばやっぱり栗!くり!クリ! 栗きんとんにモンブランに栗餅……栗ご飯もおいしいですよね。
1階ではトピック展示「グルメ本大集合!!」も開催中!ということで今月は栗にまつわる資料を紹介します。

クリと日本文明』(元木靖/編 海青社 2015.8)

日本の栗文化の歴史についての資料は何点かありますが、本書は近代以降の栗産地の形成についての記述がある点に特徴があります。栽培産地としての茨城県・熊本県の事例のほか、2大栗菓子産地である中津川市および小布施町の栗菓子産業の発展について書かれています。

果樹園芸大百科 7 クリ』(農文協/編 農山漁村文化協会 2000.3)

栗を自分で栽培して収穫するにはこちら。大部な本ですが、品種ごとの特性、土づくりから生育と生育段階ごとの作業や技術、剪定、病害への対策、貯蔵方法、各地の農家の栽培事例など詳細に記述しています。

モンブランの技術 人気パティシエが公開する自慢のモンブランの作り方』(旭屋出版書籍編集部/編著 旭屋出版 2013.8)

全国の有名店のモンブランがその作り方も含めて紹介されています。モンブランと一口に言ってもお店ごと、パティシエごとに多種多様のバリエーションがあることがわかり、作れなくても見ているだけでおなかがいっぱいになります。

今月の蔵出し

『山羊の歌』が世に出るまで(中原中也記念館企画展)』*(中原中也記念館/編 中原中也記念館 1998.10)

10月22日は近代を代表する詩人、中原中也の命日です。中也は30歳という若さでこの世を去りましたが、「サーカス」や「汚れつちまつた悲しみに」など数々のすぐれた詩を残しました。

中也は生前に『山羊の歌』という一冊の詩集を出しました。本書では『山羊の歌』の出版に至るまでの過程が紹介されています。この経緯を辿ると、中也がどのような人物であったかを垣間見ることができます。

例えば、『山羊の歌』の装丁は、彫刻家や詩人として知られる高村光太郎が担当しています。光太郎は『宮沢賢治全集』の装丁を手掛けており、それを気に入った中也がぜひとも自分の詩集にも字を書いてほしいと光太郎に依頼したのでした。当時賢治はほぼ無名の詩人でしたが、中也は彼の詩をいたく気に入り、賢治に関する評論を発表したり、彼の影響を受けた作品を書いたりしました。

また、中也の酒癖の悪さをうかがい知ることができる話も紹介されています。中也は『山羊の歌』の刊行費用を集めるために友人たちに予約募集をしたものの、応募はほぼなく資金集めに苦労しました。友人たちが予約に積極的でなかったのは「中也にお金を渡しても飲み代に使ってしまうから様子を見よう」と思っていたからでした。中也は酒を飲んでは仲間に喧嘩を吹っ掛け、時には酔った勢いで民家の軒灯を壊して留置所に拘留されたりしていたので、友人たちがこうした疑念を抱くのは当然のことだったでしょう。結局中也は母から得た資金をもとに印刷にとりかかったのでした。

『山羊の歌』に収録されている詩に「寒い夜の自我像」があります。中也の詩人として生きる決意を述べた詩であると言われており、「自画像」でなく「自我像」という漢字が使われていることからも自己表明の意志が強く伝わってきます。この詩で宣言したとおり、中也は生涯詩を書き続けました。それらの詩は今なお多くの人に愛されています。10月22日には中也を偲んで出版までのエピソードとともに『山羊の歌』を読まれてはいかがでしょうか。

*の資料は館内利用のみです。

【海ほたる】

楽しき哀しき昭和の子ども史(らんぷの本)』(小泉和子/編著 河出書房新社 2018.11)

「令和」という名称にも慣れてきた頃でしょうか?平成元年生まれの方も30代ということで、昭和がちょっと遠く感じられるようになってきた昨今、本で昭和を振り返ってみませんか?

著者の小泉和子氏が館長をつとめる「昭和のくらし博物館」での、企画展をもとにした本です。昭和は60年以上あり、戦前と戦後でも大きく変わる子どものくらしが写真や図版とともに紹介されています。

デパートの食堂や屋上遊園地、駄菓子などの写真に懐かしさを感じたり、子どもが手作りの服を着ている姿を最近見かけないことに気づかされます。集団学童疎開での献立や勤労作業の内容も紹介されています。戦争に翻弄された子どもの様子を知ることで、ドラマの中の戦争孤児の姿などもリアルに感じられるのではないでしょうか。

昭和の子どもの楽しみとしては「街頭紙芝居」が紹介されています。先日、当館でも塩崎おとぎ紙芝居博物館の紙芝居師さんによる街頭紙芝居の実演があり、昭和にタイムスリップしました。国際児童文学館では「むかしの紙芝居を楽しもう!」と題して「街頭紙芝居」を展示しています。

また11月15日から「魅せます!紙芝居展」と題して貴重な国策紙芝居などをご紹介いたします。ぜひ、ご来館ください。

 【コップポーン】


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