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本蔵-知る司書ぞ知る(54号)

更新日:2024年1月5日


本との新たな出会いを願って、図書館で働く職員が新人からベテランまで交替でオススメ本を紹介します。大阪府立中央図書館の幅広い蔵書をお楽しみください。

2019年4月20日版

今月のトピック 【外来生物の本

当館では、2019年4月24日から大阪市立自然史博物館巡回展「外来生物」を開催します。それに関連して、今回は外来生物にまつわる以下の3点の資料をご紹介します。

誰でもわかる外来種対策:河川を事例として』(リバーフロント整備センター/編集 リバーフロント整備センター 2012.2)

前半の「基礎編」では、外来種の定義から問題点や対策まで、絵や写真などを取りいれて、わかりやすく書かれており、外来種問題について体系的に知ることができます。後半の「図鑑編」では、日本の河川で見られ、生物多様性を脅かす外来種のうち、代表的な36種を「魚類」「植物」「両生類・爬虫類・哺乳類」「底生動物・昆虫類」の4つのカテゴリーに分け、「生態」「分布」「影響」「対策」「形態」が写真とともに紹介されています。

終わりなき侵略者との闘い:増え続ける外来生物』(五箇公一/著 小学館クリエイティブ 2017.7)

筆者は国立環境研究所の研究者で、生態学や外来生物のリスク評価を専門としており、「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」の策定にも関わられた方です。本書では、セアカゴケグモやヒアリなど、日本で問題となっている主な外来生物について、日本に導入された経緯や被害状況などが詳しく記されており、外来生物問題を身近に感じることができます。

日本の外来魚ガイド』(松沢陽士/写真・図鑑執筆 瀬能宏/監修・解説執筆 文一総合出版 2008.8)

外来生物を紹介した図鑑はいくつかありますが、日本の外来魚に焦点を当てたものとしては本書が初めてのものです。日本に定着している魚類の国外外来種47種と国内外来種47種9亜種について、写真ととともに「形態と生態」「在来種への影響・移植史(国外外来種のみ)」「分布」「原産地」が掲載されています。国外外来種については、標本写真も付されており、魚の特徴を詳細に捉えることができます。

今月の蔵出し

倚松庵の夢』(谷崎松子/著 中央公論社 1968)

阪神電鉄の魚崎駅から、住吉川の右岸沿いを上流側へ5分ほど歩いたところに、谷崎潤一郎の旧邸「倚松庵(いしょうあん)」があります。現在の「倚松庵」は、神戸新交通六甲アイランド線(通称:六甲ライナー)の建設工事のため、平成2年7月に移築されたものです。谷崎の代表作の一つ『細雪』が手がけられ、作品のモデルとなった元の「倚松庵」は、現在の場所から約150m南にありました。

関東大震災のあと、関西に移住してから、約20年間のうちに十数回もの引っ越しを繰り返した谷崎ですが、この「倚松庵」には昭和11年1月から18年11月までの約7年間を妻の松子やその妹たちと過ごしました。谷崎は、生涯に3度結婚をしており、松子は最後の妻にあたります。

本書は、谷崎の死から約2年の間に松子によって記された回顧録です。二人の出会いや暮らし、谷崎の最期のことなどが、妻ならではの視点で綴られています。谷崎が『源氏物語』を現代語訳したときのことや、『細雪』にまつわるエピソードも記されており、谷崎の執筆活動の一端も垣間見ることができます。谷崎亡きあとに書かれたということもあり、松子の谷崎への思いがひしひしと伝わってくる1冊です。

【NM】

ゼラルダと人喰い鬼(評論社の児童図書館・絵本の部屋)』(トミー・ウンゲラー/[作]  たむらりゅういち/やく あそうくみ/やく 評論社 1977)

2019年2月9日に87歳で惜しくもこの世を去った、絵本作家のトミー・ウンゲラー(アンゲラーとも)。『すてきな三にんぐみ』が有名ですが、個人的に好きな作品が今回ご紹介する『ゼラルダと人喰い鬼』です。

昔、朝ご飯に子どもを食べるのが大好きな人喰い鬼がいて、毎日子どもをさらいに町へ。ところが人々は子どもを隠し、人喰い鬼は子どもが食べられず腹ペコになります。一方、田舎に住む料理好きの少女ゼラルダは、父の代わりに作物を売りに町へ出かけた際、自分を狙う人喰い鬼に出会います。腹ペコな彼のために、ゼラルダは料理を作り、人喰い鬼はその味に大満足。城に呼び寄せて料理を作らせ、近所の鬼を集めて宴会も開きます。人喰い鬼たちは子どもを食べることを忘れ、町には子どもが戻り、人喰い鬼とゼラルダはなんと結婚して子どもをたくさん産み、幸せに暮らしました、というおはなし。

ハラハラドキドキな展開にまず引き付けられます。文字だと残酷な印象を与えますが、どこかユーモラスな絵で、登場人物たちの表情、テーブルに並んだ料理の数々、人喰い鬼の変化等ぐいぐい引き込まれます。是非じっくり隅々まで絵を見ながら読んでみてください。実はところどころに「おや?」と思う表現があります。特にラスト、「え?どういうこと?」と思うこと請け合いです。

ウンゲラーの作品はどれも風刺やブラックユーモアに満ちています。その作風は、絵本だけでなく、グラフィックアートや広告の分野等でも同様。そんなウンゲラーの作品と半生を紹介した、『トミ・ウンゲラーと絵本:その人生と作品』もあわせて読んでみてください。

ウンゲラーの作品が片っ端から読みたくなる!かも。

【企鵝】


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