大阪府立図書館

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本蔵-知る司書ぞ知る(51号)

更新日:2024年1月5日


本との新たな出会いを願って、図書館で働く職員が新人からベテランまで交替でオススメ本を紹介します。大阪府立中央図書館の幅広い蔵書をお楽しみください。

2019年1月20日版

今月のトピック 【大原社会問題研究所】

中央図書館の主要なコレクションの一つである大原文庫は1919年2月9日に設立された大原社会問題研究所が収集し、1937年の東京移転の際に大阪府に譲渡されたものです。現在、設立100年を記念した企画展示「大原社会問題研究所と「大原文庫」の百年」を開催していますが、その展示資料の中から、研究所に関する基本資料を紹介します。

大原社会問題研究所五十年史』(法政大学大原社会問題研究所/編集 法政大学大原社会問題研究所 1970)

現時点で最新の年史です。設立の背景、設立後の活動、東京移転と戦後の法政大学の機関としての活動について記載されています。口絵写真では、研究所本館(大阪大空襲で焼失)やのちに大原文庫となる資料が納められた書庫などの写真が掲載されています。

高野岩三郎伝』(大島清/著 岩波書店 1968)

大原社会問題研究所初代所長となった高野岩三郎の評伝です。高野はドイツ留学後、東京大学教授となりましたが、のちに辞職し大原社会問題研究所の所長となりました。本書では大原社会問題研究所の設立と研究所での活動について多くの紙幅を割いて紹介しています。

大原孫三郎伝』(大原孫三郎伝刊行会/編 大原孫三郎伝刊行会 1983)

大原社会問題研究所を設立した倉敷紡績社長大原孫三郎の評伝です。会社経営だけではなく文化支援活動や社会事業についても書かれており、特に第二編成年期では大原が社会事業に携わるきっかけとなった石井十次との出会いが、第三編青壮年期では大原社会問題研究所の設立について書かれています。

今月の蔵出し

オフサイドはなぜ反則か 増補(平凡社ライブラリー)』(中村敏雄/著 平凡社 2001.11)

「競技場は(中略)V字型のみぞで区画してはならない。」サッカールールにあるこの不可解な規定の謎が、本場イギリスを訪れた際一気に解き明かされたと語られるところから本書は始まります。「V字型のみぞ」は危険防止のための芝の刈り方を規定したものでした。サッカーやラグビーが芝生の上で行われるイギリスでは、ラインは芝を刈って描かれるためこんな規定があるわけですが、土のグラウンドが多い日本ではなかなかピンと来ません。こんな風に、ルールを理解するには、その前提となる歴史的・風土的、そして文化的条件を知らねばならない、と著者は説きます。

不可解なルールのひとつにオフサイドがあります。単純明快なサッカーのルールの中で、オフサイドだけは知らない人に説明するのが難しい。それは、オフサイドにはこれといった競技上の必然性が無いからです。最も制限の厳しいラグビーでは、スローフォワードやノックオンも含めると、とにかくボールより前にいる味方が攻撃に参加することを徹底して禁じています。前進することで得点する陣取りゲームなのに、考えてみれば不合理極まりない。本書は、密接に結び付いたイギリスの社会史とフットボール史を辿りながら、その由来を探っていきます。

ラグビーもサッカーも、オフサイドがあるためにより高度な戦略性をもつスポーツとなり、結果として世界大会が開かれるほどになったことは間違いありません。しかし、元々は全く別の目的のためにできたルールでした。では何のために? 詳細は本書をご覧ください。

今年はラグビーワールドカップが日本で開催され、聖地・花園も会場となります。これに合わせて当館でも、2月13日から3月10日まで、 「ラグビーワールドカップ2019日本大会大阪・花園開催」をテーマとした展示やイベントを開催する予定です。どうぞご期待ください。

【ミーム】

葉っぱのフレディ:いのちの旅』(レオ・バスカーリア/作 みらいなな/訳 島田光雄/画 童話屋 1998.10

しんしんと冷える冬の朝。図書館へ出勤する道すがら、枝を長く伸ばした木々の中に、いつまでも枝に残っている葉っぱがあります。そんなときは、もしかしてあの葉っぱはフレディかもしれない、と想像しながら歩きます。

『葉っぱのフレディ』が日本で出版されてから20年。日本でベストセラーとなり、ナレーションCDや映画にもなった有名な絵本です。
真っ白いページの中で、ひょっこり顔を出す1枚の葉っぱ、それがフレディです。葉っぱのイラストの、水彩の淡く滲んだ色合いが、季節とともに、ページをめくるたびに変化していきます。実はアメリカで出版された原作『The fall of Freddie the leaf:a story of life for all ages』は写真と文のみで、絵はありません。また、雑誌『日本児童文学』50(6)<554>の中では、原文との訳文の違いについても触れられています。直訳か翻案か、逐語訳か意訳か、という問題はありますが、訳文では私たちに親しみやすい、語りかけるような文章になっていると感じます。

この春、大きな木に生まれた葉っぱのフレディは、数えきれないほど沢山の葉っぱにとりかこまれていました。フレディは親友で物知りのダニエルから、いろいろなことを教わります。夏にはみんなで体をよせて木陰を作ったり、秋には鮮やかに紅葉したり。風が別人のように冷たくなったのは、そのあとでした。1枚、また1枚とみんなが木から落ちていきます。冬になるのです。フレディはダニエルに、「ぼく死ぬのがこわいよ」と言います。やがてそのダニエルもいなくなり、フレディは木に残った最後の葉っぱになりました。

死を見つめる、あるいは受け入れるということは、今生きているということを考えることでもあり、死を題材にした絵本は他にもあります(『100万回生きたねこ』、『ぶたばあちゃん』、『わすれられないおくりもの』)。絵本の中では、死の実体として姿を現す死神や、幽霊(おばけ)になって子どもを見守る家族なども描かれます。自分ではうまく説明できない不安や悲しみも、絵本を通して伝わることがあります。大切な誰かが亡くなったとき、自分の死について考えたとき、そっと絵本を手に取ってみてください。
校庭や仕事からの帰り道、木を見上げればいつでも、フレディのような葉っぱがいるかもしれません。

【祭】


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