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大阪府立中央図書館 国際児童文学館「特別研究者」 令和4年度の成果報告について

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更新日:2023年11月24日


 

国際児童文学館「特別研究者」 令和4年度成果報告

国際児童文学館「特別研究者」制度は、当館の所蔵資料を利用して調査研究を行おうとする研究者の方に「特別研究者」にご登録いただくことで、資料を利用しやすい条件を整える代わりに、その研究成果を論文、学会発表等の形で発表していただくものです。

令和4年4月1日から令和5年3月31日までの1年間にご活動いただいた特別研究者の皆様の研究成果をご報告します。 

個人

名前(敬称略) 所属団体(令和4年度当時) 研究テーマ 発表方法等 発表の概要
浅野 法子

大阪成蹊短期大学グローバルコミュニケーション学科(准教授)

中国児童出版美術の検証

発表方法:報告書
国立国会図書館国際子ども図書館ホームページ
(発表年月:2023年3月)

発表タイトル:中国語圏の児童書に関する調査報告及びリストの作成

国立国会図書館国際子ども図書館所蔵の中国語圏の児童書に関する蔵書評価をするとともに、中国語圏の児童書に関する調査をまとめたもの。揃えておきたい書籍のリストも作成した。
同上    

発表方法:論文
『大阪成蹊短期大学研究紀要』第20号
(発表年月:2023年3月)

発表タイトル:中国の童話『神筆馬良』の語るもの―少年馬良(マーリャン)の役割

中国の代表的な童話ともいえる「神筆馬良」には、さまざまなテキストや絵本がある。中国だけでなく、日本で出版されたものも含め、代表的なものに描かれた馬良(マーリャン)を対象に、そのイメージの変遷について検証した。

生駒  幸子 龍谷大学短期大学部こども教育学科(准教授) 戦中戦後の翻訳絵本

発表方法:Web記事
龍谷大学Moglab
(発表年月日:2022年4月15日)

発表タイトル:絵本と食べ物のおはなし3『ぐりとぐら』-カステラがあんなに大きかった理由は?-

食に関する情報Webサイト龍谷大学Moglabにおいて、食べものが描かれる絵本の魅力をお話した。

同上    

発表方法:Web記事
龍谷大学Moglab
(発表年月日:2022年4月22日)

発表タイトル:絵本と食べ物のおはなし4『ガンピーさんのふなあそび』-絵本に描かれるアフタヌーンティー-

食に関する情報Webサイト龍谷大学Moglabにおいて、食べものが描かれる絵本の魅力をお話した。

同上    

発表方法:Web記事
龍谷大学Moglab
(発表年月日:2022年5月27日)

発表タイトル:絵本と食べ物のおはなし5『しろくまちゃんのほっとけーき』-子どもがあるページを何度も読みたがった理由-

食に関する情報Webサイト龍谷大学Moglabにおいて、食べものが描かれる絵本の魅力をお話した。

同上    

発表方法:Web記事
龍谷大学Moglab
(発表年月日:2022年10月21日)

発表タイトル:絵本と食べ物のおはなし6『300年まえから伝わる とびきりおいしいデザート』-絵本に描かれる多様性-

食に関する情報Webサイト龍谷大学Moglabにおいて、食べものが描かれる絵本の魅力をお話した。
同上    

発表方法:Web記事
龍谷大学 Moglab
(発表年月日:2022年11月25日)

発表タイトル:絵本と食べ物のおはなし7『はらぺこあおむし』-学生から教えられた作者のメッセージ-

食に関する情報Webサイト龍谷大学Moglabにおいて、食べものが描かれる絵本の魅力をお話した。
遠藤 知恵子 白百合女子大学児童文化研究センター(非常勤助手) 武井武雄と童画

発表方法:研究ノート
『大阪国際児童文学振興財団研究紀要』第36号
(発表年月日:2023年3月31日)

発表タイトル:岡本帰一の童画観に関する考察

岡本帰一(1888-1930)の口述エッセイ「私の童画をかく気分について 子供は好かれようとする者を嫌ふ」を精読し、その童画作品より、岡本の理想の子ども像を確認した。
今  由佳里 鹿児島大学教育学部(准教授) クラシック音楽が流れる絵本に関する調査

発表方法:学会発表
Asia-Pacific  Symposium for Music Education Research,2023 APSMER Seoul
(発表年月日:2023年8月10日)

発表タイトル:Study on the Effective Use of Picture Books That Make Sound in Music Learning

音楽が流れる絵本は、「音楽を知るための絵本」という側面も持ちあわせている。たとえばオペラやバレエの公演を観劇する際、事前に絵本で物語の内容やその場面で流れる音楽を聴くことによって、劇場での観劇をより深く味わうきっかけとなる。本発表では、音が鳴る絵本を用いた音楽の学びについて、その効果と可能性を提示した。
齋藤 佳津子 浄土宗應典院/学校法人蓮光学園 パドマ幼稚園(主査)

児童文化財である「立絵に関する研究」とその今日的な意味、そして実践活動について

発表方法:公益財団法人前川財団家庭教育研究及び実践助成
(発表年月日:2022年7月22日)

発表タイトル:伝統的な立絵等の文化財と日本音階を活用した新しい時代の児童文化活動

立絵についての参考文献を国際児童文学館から確認し、それらの成立背景などを明らかにしたあと、それを子どもたちと一緒に作るワークショップを運営し、それらをまとめたものを各幼稚園等で保育財として活用してもらえるようにDVDにまとめた。
同上    

発表方法:学会発表
日本保育学会第76回大会
(発表年月日:2022年5月13日・14日)

発表タイトル:即興的な「立絵芝居」の製作実演から考える

立絵という文化財が持つ豊かな児童文化を子どもの発する言葉を視点に考え、幼児と小学生が複合的に行うワークショップ内で、幼児の二次的言葉の発生が確認されたことを報告した。
同上    

発表方法:学会発表
第13回幼児教育実践学会(一般財団法人全日本私立幼稚園幼児教育研究機構)
(発表年月日:2022年8月12日)

発表タイトル:日本の伝統的な文化財から考える実践報告~立絵を作るワークショップより~幼小接続、3つの柱、伝統文化

立絵という文化財が次代を超えて、幼稚園児と小学生の接続的な活動として有効であることを実践活動のワークショップから明らかにし、立絵のもつ児童文化財の意義を明らかにした。また、それらの活動は幼稚園の3つの柱や様々な領域を超えて、文学、絵画造形、音楽などのジャンルをまたぐような力があることを報告した。
田中 卓也 静岡産業大学経営学部(教授) 近代日本の児童教育雑誌の読者意識と読者共同体の成立に関する研究 発表方法:論文
中国四国教育学会『教育学研究紀要』(CD-ROM版)第68巻
(発表年月日:2023年3月31日)

発表タイトル:少女雑誌にみられる愛読者大会と少女読者たち―『少女世界』・『少女倶楽部』を中心に―

 
同上    

発表方法:学会発表
中国四国教育学会第74回大会(香川大学)
(発表年月日:2022年12月3日)

発表タイトル:少女雑誌にみられる愛読者大会と少女読者たち―『少女世界』・『少女倶楽部』を中心に―

 
同上    

発表方法:学会発表
日本子ども社会学会第28回大会(宮城教育大学)ウェブ開催
(発表年月日:2022年5月26日)

発表タイトル:子どもを取り巻く習い事文化
​(企画趣旨・コーディネータ・指定討論者)

 
新美 琢真 川崎市市民ミュージアム(主任学芸員) 戦前期の出版文化が漫画表現に与えた影響とその変遷

発表方法:公開講座
川崎市市民ミュージアムのYouTubeにて公開
(公開期間:2022年8月19日~2023年3月31日)

発表タイトル:昔の漫画に詳しくなろう!「漫画の歴史は関東大震災が変えた!?」編

大正12年9月1日に発生した関東大震災は、首都圏に甚大な被害をもたらし、出版文化を大きく変える契機となった。震災が当時の漫画と出版界に与えた影響と、その後の出版文化の変化を、関東大震災を軸として紹介した。

同上    

発表方法:オンラインシンポジウム登壇
​日本マンガ学会 歴史学習部会 オンライン公開
(発表年月日:2022年8月21日)

発表タイトル:マンガ史の書かれ方×見つめ方―アイケ・エクスナ『コミックスと”物語マンガ”の起源』を巡って

アイケ・エクスナ氏の著書「Comics and the Origins of Manga: A Revisionist History」(『コミックスと”物語マンガ”の起源』)の紹介と検討を、著者を交えてオンラインシンポジウムという形で行った。本書は、アメリカの「コミックス」が戦前期の日本の「マンガ」に与えた影響という、これまでまとまったかたちで検討されてこなかったテーマを、「視聴覚的マンガ」(Audiovisual Comics)という概念を鍵として詳細に論じたものである。シンポジウムを通じてあまり知られて来なかった戦前期のマンガの歴史と表現について学びを深める機会となった。

同上    

発表方法:記事執筆
マンガ誕生100周年記念プロジェクト ウェブサイト
(公開期間:2023年2月~5月)

発表タイトル:『正チャンの冒険』とは(前後編)漫画の歴史と『正チャンの冒険』ビフォアー・正チャン編(後前編)漫画の歴史と『正チャンの冒険』アフター・正チャン編(前後編)

小星(織田信恒)作、東風人(樺島勝一)画『正チャンの冒険』の連載100周年を記念したサイトにて、「正チャンの冒険」の概要と共に、漫画史における重要性と、その後の漫画表現に与えた影響を紹介した。​
葉口 英子 ノートルダム清心女子大学(准教授) 教育テレビと子どもの歌、幼稚園・保育所の放送教育、テレビ文化と子ども

発表方法:学会発表
日本映像学会関西支部第96回研究会
(発表年月日:2023年3月11日)

発表タイトル:『みんなのうた』のアニメーターとアニメーションの特徴からみる子どもの歌

本研究は、NHKが1961年から放送開始した音楽番組『みんなのうた』を対象に、1980年半ばから90年代半ばにかけての番組テキストの資料をもとに、この時期『みんなのうた』をはじめ子どもの歌をめぐるアニメーターの創造性やアニメーションの種類や手法を明らかとした。
秦野  康子 名古屋大学大学院人文学研究科 英米文学分野(博士候補研究員) 英国の児童文学、英文学、女性学

発表方法:論文
早稲田大学英文学会編『英文学』109号
(発表年月:2023年3月)

発表タイトル:A Greedy Desire for More: Petrified Trolls as a Motif in The Hobbit and The Lord of the Rings

トールキンのThe HobbitおよびThe Lord of the Rings に登場する北欧の伝統的なモンスターであるトロルの日光により石化するモティーフを考察した。トロルの貪欲な食べものや宝物に対する貪欲な欲望を、北欧やドイツ等のトロルと比較検証し、その独自性が古代北欧の石化のモティーフを加味した点にあることを明らかにした。また、トールキンのトロルがチョーサーの作品における方言の使い方に影響を受けたものであることを示した。
日高 由貴 大阪城南女子短期大学総合保育学科 (特任講師) ちりめん本を通してみる文化の違いについて

発表方法:應典院にてこども向けのイベントを開催
(発表年月日:2023年7月15日)

発表タイトル:いい動物?悪い動物?-ちりめん本の動物と一緒に考えてみよう

子どもとその保護者を対象に、哲学、音楽、造形などを組み合わせたワークショップを開催。具体的には、子どもたちに、「うさぎ」についてどのようなイメージがあるかを問い、「因幡の白兎」や、ネイティブアメリカンの民話をもとにした紙芝居「火を取りに行ったウサギ」の上演を通して、文化により、同じ動物にも異なるイメージが付与されうること、などを探求した。
弘田 みな子 大阪城南女子短期大学・相愛大学 (非常勤講師) 幼児教育における言葉・幼小接続・文字無し絵本

発表方法:学会発表
幼児教育実践学会
(発表年月日:2022年8月20日)

発表タイトル:幼小接続・3つの柱・伝統文化−日本の伝統的な文化財から考える実践報告〜立絵を作るワークショップより〜

本文学館所蔵の立絵に関する資料及び、幼児教育における児童文化財の利用の歴史に関する資料をもとに、幼児及び低学年児に対する「立絵」の制作実践を行い、その際の異年齢児の関わりを考察し、保育実践において児童文化財が果たす役割の新たな地平を考察・発表した。
同上    

発表方法:論文
常磐会学園大学紀要第23号
(発表年月:2023年3月)

発表タイトル:幼小接続期における児童文化財を活用した「言葉」の力を育てるカリキュラムー『立絵』の共同制作及びVTSを援用した『文字無し絵本』等の活用を中心にー

幼小接続期における、一次的ことばと二次的ことばの接続に寄与する保育カリキュラムとして、「立絵」等の、領域「表現」「言葉」を横断する制作活動及び、「文字無し絵本」の絵像をVTSの手法で共有し、保育者と子どもたちが思考し、言葉を交わし合う経験に繋げていく可能性について論じた。本稿において、保育現場における絵本の活用の新たな局面として、発話する言葉を引き出すことをねらいとした、「文字無し絵本」の活用の新たな可能性を示した。
堀 啓子 東海大学文化社会学部(教授) 明治・大正期の文学作品における西洋文学の影響

発表方法:論文
『日本比較文学会東京支部研究報告』19
(発表年月:2023年3月)

発表タイトル:日本におけるセクストン・ブレイクの展開

イギリスで誕生した、ミステリー及び冒険活劇の主人公セクストン・ブレイク探偵の一連のシリーズが、日本の英語テキストとしてもたらされ、その後は読み物としても人気を博した背景と過程を論じた。
同上    

発表方法:講演
大宮図書館文学講座
(発表年月:2022年12月)

発表タイトル:尾崎紅葉『金色夜叉』~その魅惑の世界へ~

2023年に、明治の文豪・尾崎紅葉の没後120年を迎えるにあたり、その代表作が西洋文学から影響を受けた背景について講演活動を行った。
同上    

発表方法:翻訳
『東海大学紀要 文化社会学部』第8、9号
(発表年月:2022年9月・2023年3月)

発表タイトル:Charlotte M. Brame 著『ドラ・ソーン(Dora Thorne ) 』(翻訳・その22・23)

英国人の女流作家Charlotte M. Brame の代表作で、明治期の日本文学に多大な影響を与えたDora Thorneを分載し、第22 回及び第23回として翻訳した。

町田 理樹 美学会 絵本における詩の言葉-例えば谷川俊太郎ほか-

発表方法:書評
『詩と思想』2022年11月号 
(発表年月日:2022年11月1日)

発表タイトル:三たびパートナーを

絵本『ひとりひとり』(谷川俊太郎/詩、いわさきちひろ/絵)の書評。
同上    

発表方法:書籍(ムック)の刊行・編集・執筆
『たびぽえ』Vol.5 2023年春号
​特集「旅の絵本」
(発表年月日:2023年3月15日)

特集「旅の絵本」と題し、ムックを刊行・編集・執筆した。私の担当した主な児童文学関連の記事は以下の通り。
・小さな絵本美術館(長野県岡谷市)の取材と執筆。
・「おすすめの旅の絵本 45選」の編集と執筆。
・新美南吉の故郷、愛知県半田市における「ごんぎつね」の取材と執筆。
・ヴァルター・ベンヤミン『1900年ごろのベルリンの幼年時代』の翻訳。
・絵本『シェルパのポルパ 火星の山にのぼる』の書評。

宮田 航平 東京都立産業技術高等専門学校(准教授) 戦後児童出版メディアにおける「童話」の編成

発表方法:論文
『国語教育史研究』第23号
(発表年月:2023年3月)

発表タイトル:「ある日ある時」に「中国の大連」が語るもの ー『あるひあるとき』(あまんきみこ文・ささめやゆき絵)論ー

あまんきみこの「満州体験」に関する言及を整理し、エッセイを初期形とする『あるひあるとき』(のら書店、2020年)の成立過程も踏まえ、物語・絵本としての語り方について論じた。
同上    

発表方法:論文
『児童文学研究』第55号
(発表年月:2023年3月)

発表タイトル:あまんきみこにとって「資料」とは何かー「現代児童文学」を語らうためにー

日本児童文学学会第61回研究大会(宮城教育大学、2022年11月20日)で行われたシンポジウム「現代児童文学をいかに歴史化するかー資料の保存・活用の方策を考えるー」での発表を踏まえ、著者が取り組んできたあまんきみこ研究などを振り返りながら、児童文学研究の課題について論じた。
同上    

発表方法:著書(分担執筆)
宮川健郎編『日本の文学者18人の肖像[現代作家編]』(あすなろ書房)
(発表年月:2022年12月)

日本の現代作家(安部公房、あまんきみこ、立松和平、江國香織)を紹介するために、著者年譜や作品解説、コラムなどを執筆した。
森岡 伸枝 大阪芸術大学短期大学部保育学科(准教授) 文部省推薦図書の歴史と絵本

発表方法:記事執筆
『日本社会教育学会通信』235号「学会からのお知らせ」
(発表年月:2022年7月31日)

発表タイトル:現場とともに交流と対話の方法をさぐる:多文化共生を志向する社会における日本語教育・識字実践の現状と課題

日本語を教えることについて、様々な形態での実践報告を取りまとめ、広報として掲載された。
同上    

発表方法:発表
日本社会教育学会プロジェクト研究
本『高齢社会と社会教育』合評会(日本社会教育学会)
​(発表年月:2022年12月26日)

発表タイトル:第3報告 教育史研究の視点から-教育史研究×高齢者教育-

日本社会教育学会において、指定論評者として、著書『高齢社会と社会教育』について、教育史の観点から分析し、意義と課題点を述べた。
山本  貴恵   日本児童文学

発表方法:論文
『江戸風雅』第25号
(発表年月:2022年5月)

発表タイトル:藤川淡水著『お伽八犬傳』―貸本の形跡―

藤川淡水著『お伽八犬傳』を紹介した。同書は、1912年発行の以文館本と1923年発行の大正書行本(孤本)がある。以文館本初版発行の二年後には第四版が発行(大阪府立中央図書館国際児童文学館蔵)、十年経て大正書行からも発行(架蔵)されていることから、明治末から大正期にかけて広く流布していたと推測される。
吉野 莉奈 立命館大学大学院 博士前期課程

川端康成文学における「おとぎばなし」論

川端文学における「少女」「娘」その変化の表象

発表方法:論文(単著)
『立命館文学』第685号
(発表年月:2023年8月)

発表タイトル:川端康成「薔薇の家」論 -愛の「おとぎばなし」の実現を描く-

川端康成文学には「おとぎばなし」という語が度々登場する。その一つとして、本研究で扱った「薔薇の家」(『少女倶楽部』昭和九年二月号)が挙げられる。本作は、川端が愛の「おとぎばなし」の実現を描いた作品であり、優しい愛の永続=「美しいおとぎばなし」であると論じた。主題の分析のため、〈薔薇の精〉の正体・本作における「愛」の多義性・薔薇の表現が意味することを考察した。また、本作の表現や川端自身の言説(「少女と文藝」(『若草』(大正一五年三月号)・「解説」「『世界少年少女文学全集』(昭和三三年三月)から、本作によって「おとぎばなし」の実現を描こうとした川端の意図を推察した。死によって失われることのない愛=「おとぎばなし」への全面的な肯定を描くことが可能であったのは、本作が「少女のための小説」として書かれたゆえと結論づけた。国際児童文学館所蔵資料は、『少女倶楽部』の昭和八年〜九年巻を参照した。

 


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