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大阪府立中央図書館 国際児童文学館 資料展示「絵本作家・小山内龍 コグマとムシとそして海」

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更新日:2017年9月20日


はじめに

小山内龍は、70年前、終戦の翌年に42歳で亡くなっています。彼が絵本作家として活躍した期間はわずか十数年ほどですが、子どもたちを戦争に駆り立てるための絵本が主流の時代にあって、小山内龍は、漫画家出身らしいコミカルな絵で、クマやウサギなどの動物や昆虫たちを生き生きと描いた物語絵本を残しています。
また函館で生まれ育ち、かつて船員であった小山内龍は、海への愛を感じさせる絵を描いています。

本展示では、その作品の数々をご紹介します。さまざまな画法で表現された、あたたかで親近感のある、ユーモアあふれる作品の魅力を感じていただければ幸いです。

うさぎの手紙 挿絵

『うさぎの手紙』より (小山内龍/著 東榮社 1943年)

会期

平成29年9月20日(水曜日)から10月31日(火曜日)まで
休館日:月曜日(10月9日は開館)と10月10日(火曜日)および12日(木曜日)

場所(開館時間)

国際児童文学館内 小展示コーナー(午前9時から午後5時まで)

入館は無料です。

小山内龍(おさない・りゅう) プロフィール

1904(明治37)年-1946(昭和21)年

漫画家、絵本作家。函館市に生まれる。本名・澤田鉄太郎。小学校卒業後、1921(大正10)年、貨物船の船員となるが、心臓病のため5年で下船。1929(昭和4)年、上京し、様々な仕事で生計をたてながら独学で絵の修行を積む。1931(昭和6)年「アサヒグラフ」の懸賞漫画に入選、横山隆一、近藤日出造らの「新漫画派集団」に加入。アナキストの運動に共鳴しつつ「労働雑誌」「新青年」などに大人向けの漫画を発表した。

子ども向けの仕事は1937(昭和12)年から絵雑誌「コドモノクニ」を舞台に、コマ割り漫画の「オヤマノコグマ」を発表。以後、百田宗治との合作絵本『山カラキタクマサン』や自著の絵本でコグマシリーズを展開する。

森永ミルクキャラメルの中箱に昆虫漫画を描く企画に参加したことから、昆虫に魅了される。1939(昭和14)年、「動物と昆虫漫画」で第二回児童文化賞受賞。

挿絵も多く手がけ、またエッセイも画風と同様のユーモアがあふれ、『昆虫放談』で昆虫記を、『黒い貨物船』に自伝的な冒険譚を語った。

1945(昭和20)年の東京大空襲で焼け出され、故郷北海道にて翌年42歳で亡くなるまで、病と闘いながら植物のスケッチなど描き続けた。

展示資料

1.新聞雑誌にみる動物漫画

小山内龍の初期の子ども向け作品としては、1934(昭和9)年に東京朝日新聞に連載された「新イソップ物語」があります。横山隆一案・小山内龍画の4コマ漫画で、ほぼ毎日、全60話が掲載されました。

1937(昭和12)年から絵雑誌「コドモノクニ」にコマ割り漫画を発表するようになります。最初は「太郎ト蝶子」という人間の兄妹の日常描写でしたが2回で終了し、以後はコグマやウサギ、ゾウなど動物が主人公のストーリー漫画が定着していきます。

「漫画学校」「ラヂオ 子供のテキスト」「コドモアサヒ」「子供マンガ新聞」などの新聞雑誌にも元気な動物たちが登場する作品が掲載されています。

タイトル 著者 出版者 出版年月 請求記号 場所区分
「新イソップ物語」少年小説大系 別巻 1 少年漫画集 横山/隆一∥案 小山内/龍∥画 三一書房 1988.3 N860228/1-A-1/ B41和図
「ドングリコボウ」 ラヂオ 子供のテキスト 10(7) 小山内/龍∥[作] 日本放送出版協会 1937.6 BC_KOD/34 B52古雑
「オハネノウサチヤン」 漫画学校 23(7) 小山内/龍∥[作] オカシノクニ社 1939.7 BC_MAN/7N/23-7 B52古雑
「ハタラククロチヤン」コドモノクニ 20(4) 小山内/龍∥[画] 東京社 1941.4 BC_KOD/24/20-4* B52指定
「オ山ノコグマ」子供マンガ新聞 <25> 小山内/龍∥[画] 子供マンガ新聞社 1946.11 B31新聞
「トンチャンノオ正月」こくみん三年生 1(6) オサナイ/リュウ∥[作] 小学館 1947.1 PBJ/482N/1(6) B24児雑

2. 「日本のファーブルおじさん」

小山内龍は、昆虫の生態を子どもにわかりやすく表現する「日本のファーブルおじさん」とも呼ばれています。

1936(昭和11)年、漫画集団の横山隆一、近藤日出造らと森永ミルクキャラメルの内箱に昆虫漫画を描く企画に参加するようになります。監修は岡本一平で、解説を担当していた日本昆虫学会の石井悌農学博士のすすめで昆虫採集や飼育・観察を始めます。とりわけ蝶に魅了され、一般には難しいとされるオオムラサキの飼育に成功しています。その苦心談はエッセイ風観察日記『昆虫放談』にまとめられていますが、子ども向けにも、写実的に昆虫を描いた絵本『昆虫ノハナシ』や幼年童話風科学読物『昆虫たちの國』などを残しています。

タイトル 著者 出版者 出版年月 請求記号 場所区分
「コーロギノコロチヤン」科学マンガ[1] 小山内/龍∥[画] 中央公論社 1938.10 N381020/2-(1)/ B52古和
「座談会 虫の世界を語る」 少女の友 33(10) 小山内/龍 宮里/良保 石井/悌 河田/党 実業之日本社 1940.10 BC_SHOJ/17 B52古雑
昆虫放談 小山内/龍∥著 大和書店 1941.6 N410625/2/3 B52古和
昆虫ノハナシ 小山内/龍∥画・文 博文館 1942.7 N420716/1/2 B52古和
「アカトンボ」 コドモノヒカリ 6(10) 古川/晴男∥[文] 小山内/龍∥画 帝国教育会出版部 1942.10 BC_KOD/20 B52古雑
南の国の動物(少国民選書) 石井/悌∥著 青山/二郎∥装幀 小山内/龍∥挿画 増進堂 1943.3 N421201/1-(3) B52古和
昆虫たちの国 小山内/龍∥著 中央出版 1944.3 N440325/1/3 B52古和
「小さい動物達の生活」 少年読売 1(2) 小山内/龍∥画と文 読売新聞社 1946.11 PBJ/802N/1(2) B24児雑
「小山内龍 木の花・草の花 昭和21年函館でのスケッチから」母の友 <265> 6月号 福音館書店 1975.6 BA/H B24般雑

3.コグマとムシと

1937(昭和12)年から登場した「コグマ」が主人公のストーリー漫画は、『オ山ノコグマ』(国民絵本)『ゲンキナコグマ』『オ山ノナカヨシ』等の動物絵本に引き継がれ、「コグマシリーズ」と呼ばれています。実生活での昆虫を育て観察した体験も生かされ、『うさぎの手紙』『コグマトムシ』等には虫たちの生態とともに小動物たちの生活の様子が盛り込まれて物語が展開していきます。

1941(昭和16)年、百田宗治が新日本幼年文庫シリーズで自身初めての絵本『オヤマノカキノキ』を手がける際、画家として最初に頭に描いたのが小山内龍だといいます。2作目の合作『山カラキタクマサン』の「あとがき」によると、「本文では一切説明」を省き「言葉と絵で主題の展開を」はかったのは「一人一人の子供に一枚一枚の絵の主人公とならせるため」であり、「これは在来の漫画のやり方を踏襲した」という意図があり、小山内龍もこれまでと異なった絵の表現を試みています。

タイトル 著者 出版者 出版年月 請求記号 場所区分
オ山ノチビチャン (小学館文庫 12) 小山内/龍∥作並画 小学館 1940.7 N391215/6-12 B52古和
オ山ノコグマ (国民絵本 4) 小山内/龍∥文・画 博文館 1940.10 N400914/1-4 B52古和
ゲンキナコグマ 小山内/龍∥著 コドモアサヒ∥編 樋口/正徳∥編集 朝日新聞社 1941.5 N410510/1 B52古和
オヤマノカキノキ (新日本幼年文庫) 百田/宗治∥著 小山内/龍∥絵 帝国教育会出版部 1941.7 N410720/1-(1) B52古和
山カラキタクマサン (新日本幼年文庫) 百田/宗治∥著 小山内/龍∥画 帝国教育会出版部 1942.11 N410720/1-(16) B52古和
オ山ノナカヨシ 小山内/龍∥画ト文 富永興文堂 1942.10 N421015/3 B52古和
ハタラクコグマ : 絵バナシ 小山内/龍∥[作] 冨士屋書店 1943.7 N430715/3/2 B52古和
うさぎの手紙 小山内/龍∥著 東榮社 1943.7 N430720/1 B52古和

4.海への思い

函館で生まれ育った小山内龍にとって海は身近にありました。17歳から5年間、外国航路の貨物船の船員として働いた経験もある小山内作品には、海をテーマとしたものもいくつかあります。自伝的エッセイ『黒い貨物船』は、生きているような波の動きや、海で働く男たちの勇ましさが伝わってくる、太い黒い大胆なタッチの絵が印象的です。小山内の没後に出版された『ニッポンノアマ』(少国民絵文庫)は、海に囲まれた日本に暮らす子どもたちに向けて、海中の生き物や海女の姿を、油絵タッチで親しみをこめて描いています。平塚武二の作品への挿絵は『風と花びら』『海のふるさと』『フシギナモノ』『歌とをどり』に続く5作目で、すでにクジラや船といった海にまつわる絵も発表されています。

小山内龍の生前最後の出版物となった『一茶絵本』では、特徴的な藍色が海の色を思い起こさせ、小山内の深い郷愁を感じとれます。

タイトル 著者 出版者 出版年月 請求記号 場所区分
「魚の旅行」国民五年生 21(5) 儀府/成一∥[著] 小山内/龍∥画 小学館 1941.8 BC_KOK/10/ B52古雑
黒い貨物船 小山内/龍∥著 映画出版社 1942.9 国立国会図書館デジタルコレクション
風と花びら (小国民文芸選) 平塚/武二∥著 小山内/龍∥装幀・挿絵 帝国教育会出版部 1942.7 N420510/1-(2) B52古和
海のふるさと 平塚/武二∥著 小山内/龍∥装幀・挿絵 泰光堂 1943.8 N430820/2 B52古和
フシギナモノ 平塚/武二∥文 小山内/龍∥画 東栄社 1943.12 N431215/4 B52古和
童話集 歌とをどり 平塚/武二∥著 小山内/龍∥[挿絵] 東栄社 1944.3 N440320/4 B52古和
海獣船とうえい丸 (少国民文芸選) 平野/直∥著 小山内/龍∥装幀・挿画 国民図書刊行会創立事務所 1944.8 N420510/1-(13) B52古和
海の護り 軍艦 片柳/忠男∥編 小山内/龍∥表紙絵 横須賀海軍人事部∥監修 国民図書刊行会 1945.3 N450305/1 B52古和
一茶絵本 小山内/龍∥絵 石塚/友二∥解説 [小林/一茶∥俳句] 鎌倉文庫 1946.10 N461030/5-(1) B52古和
ニッポンノアマ (少国民絵文庫 [12]) 平塚/武二∥文 小山内/龍∥画 中央出版 1947.3 N430510/3-(12)F B52古和

5.装幀・挿絵の仕事

小山内龍は、他の作者の児童書の装幀や挿絵でも、意欲的に仕事をこなし、さまざまな絵を描きわけています。

小山内龍のことを高く評価した児童文学者の瀬田貞二は、小山内の画法を、「リアリスティックなタッチ」「中川一政風(新文人画風)」「棟方志功風(ぶっきら棒な線)」「一挙にデフォルメ」「抽象的な記号のよう」という5つに分類しています。

ここには、小山内が装幀や挿絵を手がけた本を集めました。彼の多彩なスタイルを見ることができます。

タイトル 著者 出版者 出版年月 請求記号 場所区分
新児童劇集 児童劇研究会∥編 福岡/信夫∥編輯 鈴木/信太郎∥装幀 小山内/龍∥挿絵 日本学芸社 1935.7 N350701/1 B52古和
コロチャントオートバイ : 幼年童話 与田/準一 小山内/龍∥装幀・挿絵 文昭社 1941.9 N410918/1 B52古和
家畜物語 ([偕成社少年少女文庫]) ファーブル∥著 永井/直二∥訳 青山/二郎∥装幀 小山内/龍∥挿絵 偕成社 1941.11 N411110/2-(1) B52古和
「西遊記」 少国民の友 19(3) 佐藤/春夫∥著 小山内/龍∥さしえ 小学館 1942.6 BC_SHO/50 B52古雑
肥後民話集 荒木/精之∥著 小山内/龍∥装釘 地平社 1943.3 N430320/9-(1) B52古和
蟻の総力戦 R・シュレユミューレル∥作   林/行夫∥訳   小山内/龍∥表紙画 増進堂 1943.7 N430705/10/ B52古和
牛をつないだ椿の木 (日本少国民文学新鋭叢書 1) 新美/南吉∥著 小山内/龍∥装幀 大沢/昌助∥挿絵 大和書店 1943.9 N430910/7-1 B52古和
西遊記 佐藤/春夫∥著 小山内/龍∥そうてい・さしえ 新潮社 1944.6 N440615/1 B52古和
野中兼山 (少国民文芸選) 榊山/潤∥著 小山内/龍∥装幀・挿画 国民図書刊行会設立事務所 1944.6 N420510/1-(11) B52古和
「屁」 季刊 新児童文化 <1> 新美/南吉∥[著] 小山内/龍∥絵 国民図書刊行会 1946.8 BA/K B24般雑
新美南吉童話選集 久助君の話 新美/南吉∥著 巽/聖歌∥編 小山内/龍∥装幀・挿絵 中央出版 1946.12 N461230/1/2 B52古和
寓話集 猫のひとりごと 小川/三男∥著 小山内/龍∥装幀・挿絵 組合書店 1947.8 N470825/2 B52古和

6.小山内龍 雑誌掲載作品(パネル展示資料)

タイトル 出版者 出版年月 請求記号 場所区分
「太郎ト蝶子」コドモノクニ 15(13) 東京社 1936.11 BC_KOD/24/15-13* B52指定
「太郎ト蝶子 2」コドモノクニ 15(14) 東京社 1936.12 BC_KOD/24/15-14* B52指定
「[ネボスケコグマ]」コドモノクニ 16(13) 東京社 1937.11 BC_KOD/24/16-13* B52指定
「オヤマノコグマ」コドモノクニ 17(1) 東京社 1938.1 BC_KOD/24/17-1* B52指定
「オヤマノコグマ 2」コドモノクニ 17(2) 東京社 1938.2 BC_KOD/24/17-2* B52指定
「オヤマノコグマ 3」コドモノクニ 17(3) 東京社 1938.3 BC_KOD/24/17-3* B52指定
「オヤマノコグマ 4」コドモノクニ 17(4) 東京社 1938.4 BC_KOD/24/17-4* B52指定
「オヤマノコグマ 5」コドモノクニ 17(6) 東京社 1938.5 BC_KOD/24/17-6* B52指定
「オヤマノコグマ 6」コドモノクニ 17(7) 東京社 1938.6 BC_KOD/24/17-7* B52指定
「オヤマノコグマ 7」コドモノクニ 17(8) 東京社 1938.7 BC_KOD/24/17-8* B52指定
「オヤマノコグマ 8」コドモノクニ 17(9) 東京社 1938.8 BC_KOD/24/17-9* B52指定
「オヤマノコグマ 9」コドモノクニ 17(10) 東京社 1938.9 BC_KOD/24/17-10* B52指定
「オヤマノコグマ 10」コドモノクニ 17(11) 東京社 1938.10 BC_KOD/24/17-11* B52指定
「オヤマノコグマ 11」コドモノクニ 17(12) 東京社 1938.11 BC_KOD/24/17-12* B52指定
「オヤマノコグマ 12」コドモノクニ 17(13) 東京社 1938.12 BC_KOD/24/17-13* B52指定
「オイシヤノコンチヤン」コドモノクニ 18(6) 東京社 1939.6 BC_KOD/24/18-6* B52指定
「チビチヤン」コドモノクニ 18(7) 東京社 1939.7 BC_KOD/24/18-7* B52指定
「ドウブツマンガ リンカンガツカウ」コドモノクニ 18(8) 東京社 1939.8 BC_KOD/24/18-8* B52指定
「ドウブツノサーカス祭」コドモノクニ 18(9) 東京社 1939.9 BC_KOD/24/18-9* B52指定
「ウサギトザウ」コドモノクニ 18(12) 東京社 1939.12 BC_KOD/24/18-12* B52指定
「オヤマノクロチヤン」コドモノクニ 19(3) 東京社 1940.3 BC_KOD/24/19-3* B52指定
「クロチヤンノカイランバン」コドモノクニ 19(12) 東京社 1940.12 BC_KOD/24/19-12* B52指定
「オ山ノコグマ」 コドモアサヒ 19(4)<228> 朝日新聞社 1941.4 BC_KOD/5/19-4(228) B52古雑
「オヤマノコグマ」 コドモアサヒ 19(7)<231> 朝日新聞社 1941.7 BC_KOD/5/19-7(231) B52古雑
「ハタラグコグマ」 コドモアサヒ 19(9)<233> 朝日新聞社 1941.9 BC_KOD/5/19-9(233) B52古雑
「童画を考へて」 読書人 2(5) 東京堂 1942.5 BC_DOK/5/2-5 B52古雑
「動物画について」 少国民文化  1(2)<2> [復刻版] 日本少国民文化協会 1942.7 児庫復刻
「お山のきつね」子供マンガ新聞 <1> 子供マンガ新聞社 1946.5 B31新聞
「ネズミノオカアサン」子供マンガ新聞 <28> 子供マンガ新聞社 1946.12 B31新聞

関連事業

茂田井武原画展


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