令和6年度 大阪府立図書館の活動評価について(外部評価報告)
令和7年7月
大阪府立図書館協議会 活動評価部会
はじめに
令和6年度は活動評価第五期(令和5~7年度)の中間年にあたる。第五期は引き続き第四期までの「府域の図書館ネットワークの核として、広域的かつ総合的な視点から府民と資料・情報をつなぎ、府民の”知りたい”という気持ちにこたえ、”学びたい”という意欲を育み、豊かで活気あるくらしと大阪における新たな知識と文化の創造に寄与すること」という使命の下、5つの基本方針に基づいた基本事業を設定し、加えて、複数の基本方針に横断的に関連した2つの重点事業を設定している。評価に入る前に、5つの基本方針について確認しておく。
5 つの基本方針
- 府立図書館は、市町村立図書館を支援し、大阪府全域の図書館サービスを一層充実させます。
- 府立図書館は、幅広い資料の収集・保存に努め、すべての府民が正確な情報・知識を得られるようサポートします。
- 府立図書館は、府域の子どもが豊かに育つ読書環境づくりを進めるとともに、国際児童文学館の機能充実、資料の利用促進に努めます。
- 府立図書館は、大阪の歴史と知の蓄積を確実に未来に伝えます。
- 府立図書館は、府民に開かれた図書館として、地域の魅力に出会う「場」と機会を提供します。
以下では、まず2つの重点事業について、続いて5つの基本事業について、評価を加える。
重点事業
1.すべての府民が図書館サービスを享受できる環境の整備 ~図書館利用に配慮が必要な府民への読書活動支援~
重点事業1は「すべての府民が読書活動を通じて文字・活字文化の恵沢を享受できること」を目標としており、「大阪府視覚障がい者等の読書環境の整備の推進に関する計画(読書バリアフリー計画)」に沿った施策に重点的に取り組むものである。基本方針1、2、3、5に横断的に関連している。
具体的な事業内容としては以下が設定されている。
(1) 活字による読書や来館が困難な利用者、日本語を母語としない利用者への多様なサービス提供
<1> アクセシブルな書籍等の充実に向け、デイジー図書・テキストデータの作成と国立国会図書館(NDL)へのデータ提供、アクセシブルな書籍等を周知するための取組等を実施する。
<2> 日本語を母語としない、読書や図書館の利用に困難を伴う利用者に向けてサービスを行う上で、市町村立図書館が府立図書館に対しどのような支援を必要としているかを把握するため、初年度にアンケート調査を行う。一層のバリアフリーを進めるため、広報等を見直す。
(2) 障がいのある子どもへの支援
<1> おはなし会やイベントを実施し、障がいのある子どもたちに資料を届ける。
<2> 支援学校の教員や学校司書に向けて、障がいのある子どものための図書館サービスや読書支援活動の講座等について情報提供等を行う。
(3) 市町村立図書館向けの研修実施、情報提供
<1> 府域図書館職員等を対象とした研修を実施する。
<2> (1)・(2)の事業内容について研修時や情報交換会等で報告する等、府域図書館全体に関連情報を周知する。
このうち(1)<1>については、デイジー図書を毎年40件以上作成し、国立国会図書館へデータ提供するという数値目標を掲げ、令和6年度は49件のデータ作成・提供という目標値を上回る実績を挙げた。また、前年度に引き続き、アクセシブルな書籍等を周知するための取組として、点字体験、点字プリンターやデイジー図書再生機器の展示、クイズ形式で学ぶ手話講座など多様な読書体験ができるイベント「見て、聴いて、さわって楽しむ読書の世界」を2日間にわたり開催した。昨年指摘した障がいの有無にかかわらず誰でも参加できる子ども向けのおはなし会、イベントといった形との接続も進み、参加者が多様な方法での読書体験を通じて読書のバリアフリーに関する理解を深める機会とし、その後開催の点字教室への参加に繋げる等着実に普及効果をあげている。また、府域の市立図書館でも関連イベントが開催される等期待される波及効果も続いている。バリアフリー映画上映会の開催時にもデイジー図書再生機器の展示を実施する等積極的な周知への取り組みは高く評価できる。 なお、アクセシブルな書籍等の周知・情報提供としての取り組みの中では、ディスレクシアなどの発達障がいにより文字の認識に困難がある人達のためのマルチメディアデイジー図書に関わる情報提供の強化も求めたい。
(1)<2>については、やさしい日本語の知識習得のための司書セミナー「やさしい日本語の基礎」の企画・開催を通じて、ホームページやデジタルサイネージを見直し、非常時の案内パネルを新たに作成する等やさしい日本語での広報や情報発信を励行している。また、令和5年度に府内図書館に対し実施したアンケートで要望が多くあった言語の絵本セットを作成する等積極的な支援を展開している。
なお、日本語を母語としない利用者への多様なサービス提供に関わっては、防災や生活情報といった大阪府の別の部署が発信しているHPに府立図書館サイトへのリンクを掲載することで外国語資料ややさしい日本語の資料の紹介、加えてOPACでの検索で言語別に検索結果一覧リストが表示される機能等のPRにも繋げられるのではないか。
(2)<1>障がいのある子どもへの支援:支援学校への出前おはなし会は、昨年度同様、学年別に複数回実施し、手話を使ったおはなし会は、21回以上開催し300人近い参加者を得ている。継続的に実施している職員への手話研修の成果検証として、利用者向けの「手話でたのしくおはなし会」を開催する等積極的な取組により着実に成果を出している。今後も引き続きカウンターでの手話による意思疎通や、支援学校への手話による出前おはなし会を担当する職員の育成についても継続されたい。
また、<2>の支援学校の教員や学校司書向け情報提供については、支援学校出前時や教育センター研修時等で9回実施、なお昨年度同様「見て、聴いて、さわって楽しむ読書の世界」を研修の日程とあわせて開催することで教員や学校司書の多様な資料を体験する機会も提供している。
(3)<1>については、日本語を母語としない、読書や図書館の利用に困難を伴う利用者に向けたサービス研修を市町村立図書館職員向けに実施し、児童サービス担当者連絡会等でも関連情報の共有化を図っている。また、前述の「見て、聴いて、さわって楽しむ読書の世界」は、府域の市立図書館でも同様のイベントが開催される等自館での成果還元に繋がる研修となっている点は高く評価できる。さらなる情報提供・共有を今後も推進されていくことに期待したい。
2.府立図書館蔵書の利活用の拡充 ~非来館型利用の促進~
重点事業 2 は「デジタル化した古典籍資料や、国際児童文学館資料等の利活用の推進と、府立図書館資料へアクセスできる機会の拡充」を目標とするものである。基本方針 1、2、3、4 に横断的に関連している。
具体的な事業内容としては以下が設定されている。
(1) デジタルコンテンツの拡充
古典籍資料のデジタル化画像の追加や、行政資料等のデジタル資料の収集を継続するとともに、国際児童文学館所蔵雑誌の目次データの追加により、所蔵情報の充実を図る。
(2) デジタルコンテンツの認知度の向上
大阪府立図書館のデジタルコンテンツについて、他機関データベースとの連携や、SNS・ホームページでの情報発信による認知度 向上に努める。
(3) 資料および情報への多様なアクセス手段の確保と利便性の向上
オンラインによる利用者登録の実現等、来館せずに、より幅広い図書館サービスが利用できる環境整備を進める。
このうち(1)については、古典籍資料のデジタル化:毎年4,000画像、行政資料等のデジタル資料の収集:毎年100件、国際児童文学館所蔵雑誌の目次データ追加件数:毎年100号分、という数値目標を掲げている。古典籍資料のデジタル化については、5,475画像、デジタル資料の収集は104件、目次データ追加件数104件といずれも目標数値を達成している。
一方で、令和6年度より国文学研究資料館のプロジェクト「データ駆動による課題解決型人文学の創成プロジェクト」に協力していることも今後の古典籍資料の飛躍的な情報発信に繋がる取組として注目していきたい。また、行政資料については図書館と公文書館等の収集対象の区分けやその役割分担がわかりにくいため、デジタル化資料収集においては行政資料という枠組みの中での展望や計画、進捗状況等の可視化が望まれるところである。
また、評価項目外ではあるが、国際児童文学館が所蔵する資料については、「国立国会図書館未収かつ入手困難資料のデータ収集事業」に参加し、明治から昭和初期の児童古雑誌のデータ133件の提供を開始するなど国の機関との連携事業にも尽力し、計画的に着々とデジタル化を進め利便性向上に努めている。
(2)のうち他機関データベース連携については、国文学研究資料館の「国書データベース」に3年間で14,000点のデータを提供するという数値目標を掲げているが、既に令和5年度の段階で目標を超えており、公開データ数:18,276点に達している。
デジタルコンテンツの認知度の向上については、中之島図書館特別展「貴重書のみどころ」で、展示資料から「おおさかeコレクション」へ誘導を図るQRコードを掲示したり、全長37メートルの行列絵図『崎陽諏方明神祭祀図』の動画を作成し館内上映並びに図書館公式YouTubeチャンネルでも公開する等魅力的なコンテンツを効果的な手法でPRしており、来場者アンケートでも、好評を博していたことが確認できる。博物館的情報発信手法は斬新で意欲的な取組として高く評価できる。
国書データベースに搭載の画像は高精細でかつ国際的識別子DOIの付与等発見可能性を高めるために高度なメタデータ整備が図られている。現在、国書データベースのみに搭載されている画像群を、今後は提供元の大阪府立図書館の「おおさかeコレクション」でもカテゴリ別の解説付きで閲覧できるようになる日が待たれるが、その際には、国書データベースのメタデータを「おおさかeコレクション」などに効率的に利活用する可能性も追求されてはどうか。大阪府立図書館所蔵の古典籍資料を所管の「おおさかeコレクション」等で閲覧できること、それこそが大阪の歴史と知の蓄積を確実に未来に伝えること、ひいてはシビックプライドの醸成に大きく貢献する取り組みになり得るのではないかと思われる。今後も引き続き、府立図書館が所蔵する素晴らしい財産である古典籍資料群について様々な切り口での情報発信に努めていただきたい。
(3)の資料および情報への多様なアクセス手段の確保と利便性の向上については、中央・中之島両館職員による「非来館登録サービス検討プロジェクトチーム」を立ち上げ、対象利用者層やサービス内容等について議論を重ね、令和7年1月より試行サービスをスタートさせている。3月末までに300人以上が登録された状況にある。今後、利用者からのニーズ分析等を重ねたうえで、令和8年の本格実施に進まれることを望む。
基本事業
1.府域図書館情報ネットワークの活性化
基本事業1は基本方針1「府立図書館は、市町村図書館を支援し、大阪府全域の図書館サービスを一層充実させます。」に対応するものである。その実現状況を測る評価項目として情報ネットワーク(大阪府域図書館グループウェア)を活用した、図書館実践事例を共有する取組回数を設定し、年間の目標値を80回とした。令和6年度は図書館関連の情報をとりまとめて府域市町村図書館に向けた「OPLニュース・ピックアップ」を毎週配信し、大阪府域図書館グループウェアを活用した取組みでは、展示リストの共有、注目の図書館への「OPLニュース・インタビュー」を配信し、掲示板機能を活用した「みんなの質問箱」においても市町村間の情報共有を図る等で、配信回数は97回と目標値を大幅に上回り、昨年度比較でも35%増の実績を挙げる等、府域の図書館ネットワークの核としての役割実績は高く評価できよう。
2.レファレンスサービスの拡充と、所蔵資料を活用できる司書の育成
基本事業2は基本方針2「府立図書館は、幅広い資料の収集・保存に努め、すべての府民が正確な情報・知識を得られるようサポートします。」に対応するものである。実現状況を測る評価項目としては資料展示回数(目標値110回)、パスファインダー新規作成・更新数(目標値60回)、府立図書館職員向けレファレンス研修実施回数(目標値8回)が設定されている。このうち資料展示回数は年間145回と目標値を大幅に上回った。これは開館日の概ね2日に1回のペースで新たな展示が開始されるという状況で時宣に適った資料との出会いの機会を豊富に意欲的に提供したものと高く評価できる。
パスファインダー作成・更新数は59回と目標数マイナス1となったが、各部署での作成総数であり部署間調整等により次年度の達成には不安はないように推測する。 レファレンス研修実施回数は10回(昨年度25%増)と、目標値並びに昨年度比較においても大きく上回る実績を挙げている。日本有数の公共図書館におけるレファレンス技量の継承、一層の研鑽に期待したい。
3.1 広域自治体の視点から学校等に対する支援を拡充し、府域の子どもの読書活動を推進
基本方針3「府立図書館は、府域の子どもが豊かに育つ読書環境づくりを進めるとともに、国際児童文学館の機能充実、資料の利用促進に努めます。」に対しては2つの基本事業を設定しており、そのうちの1つが学校等に対する支援の拡充・府域の子ども読書活動推進である。実現状況を測る評価項目としては府立学校等向けの講座回数(目標値10回)を設定している。令和6年度は司書教諭・学校司書等を対象とした研修のほか、高校生のための図書館講座「LibCo(りぶこ)」など計17回実施し目標数を大きく上回った。今後も引き続き広域図書館の視点から学校支援策拡充に尽力いただきたい。
3.2 国際児童文学館資料の利用促進
基本方針3に対応するもう1つの基本事業は国際児童文学館資料の利用促進であり、実現状況を測る評価項目としては展示・イベント合計回数(目標値:12回)、SNS・HP等による所蔵資料や使い方の発信数(目標値:50回)を設定している。令和6年度はさまざまな資料に出会える機会として、小展示を紹介するページを作成し、イベントや各展示も積極的にX(旧Twitter)やホームページにて広報拡充し、それらの総実施回数は展示イベント回数15回、発信数79回といずれも目標値を大きく上回り、かつ満足度調査でも94%と高い評価を得る結果となった。
4.地域資料の収集・保存と利活用
基本事業4は基本方針4「府立図書館は、大阪の歴史と知の蓄積を確実に未来に伝えます。」に対応するものである。実現状況を測る評価項目としては2025年日本国際博覧会関連資料の収受タイトル数(目標値:3年間で200点)を設定している。令和6年度は、大阪商工会議所・関西経済同友会へ引き続き協力を依頼し、図書館HPにも企業向け寄贈依頼ページを新設した。また、関西経済連合会発行の会員向け雑誌、大阪商工会議所会員向けメール及び関西経済同友会メールマガジンへの記事掲載、大阪商工会議所における府立図書館宛寄贈BOXの設置など万博開催前年度にふさわしい意欲的な収集活動を展開した。タイトル数125点の収受で2年間合計点数は191点となる。
5.府民の生涯学習、地域の情報拠点として地域の発展にも貢献し得るよう様々な事業を展開
基本事業5は基本方針5「府立図書館は、府民に開かれた図書館として、地域の魅力に出会う「場」と機会を提供します。」に対応するものである。実現状況を測る評価項目としては関係機関との連携事業数(目標値:35回)、各種媒体に応じた情報発信(目標値:デジタル媒体3,000、紙媒体130)を設定している。このうち関係機関との連携事業については、中之島図書館では、継続のビジネスセミナー等のほか、日本政策金融公庫と連携した起業セミナーや、府内の行政書士法人と連携した起業相談会など、起業にフォーカスした催しを開催した。中央図書館では、連続講演会のほか、百舌鳥・古市古墳群関係3市による世界文化遺産登録5周年記念講演会等を開催し、X(旧Twitter)やメールマガジン、ホームページでも広報するほか、連携先のSNS等での広報協力依頼などにも尽力した。連携事業数:98回、情報発信数;(デジタル媒体3221、紙媒体176)いずれも目標値を大きく上回る結果となっている。
さいごに
令和6年度は活動評価第五期の中間年度にあたる第2年目である。1年目は図書館情報システムのリプレイスにもあたり利便性向上の新機能も実装しつつ、コロナ禍以前の活況を取り戻したかのように、ほぼすべての目標数値を達成する好調なスタートが切られた。2年目は、中之島図書館において、耐震改修のために建替えられた新書庫棟が完成して外部書庫からの資料移動・配架が順次進められ、令和7年2月には供用開始に至った年でもあった。このような大きな事業を抱えつつも、基本事業・重点事業共にさらなる拡充を進め、概ね数値目標並びに前年度数値においても大きく上回る成果を出している。
特に重点事業である古典籍資料のデジタル化では国文学資料館との連携により大躍進を遂げつつあり、今後さらに魅力的な所蔵資料のデジタル化、「おおさかeコレクション」の拡充に繋がっていくことが大いに期待される。また、母語が日本語でない利用者や障がいにより図書館利用に配慮が必要な利用者への読書活動支援についても、府域図書館への着実な支援を継続し波及効果も顕著に見られる状況にある。図書館サービス全般におけるSNSでの情報発信の効果検証については、各種SNSの利用動向や進展状況とともに引き続き課題にしていただくとともに、大阪府立図書館活動評価において、第六期(令和8年度~)の検討も始まっているなか、今後も歴史ある広域図書館としてのさらなる発展に期待したい。
大阪府立図書館協議会 活動評価部会 (50 音順・○は部会長)
川窪 和子(大阪成蹊大学・大阪成蹊短期大学非常勤教員)
佐藤 翔 (同志社大学教授)
○村上 泰子(関西大学副学長・教授)