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第87回小展示(大阪資料・古典籍室1)
平成20年11月14日(金)〜平成21年1月7日(水)  (入場無料)

>>PDF版はこちら(813KB)


シリーズ 観光の大阪展
−旅行案内書[ガイドブック]に見る大坂 大阪 OSAKA−

第4回 水都中之島のいまむかし  

 

10月19日に京阪中之島線が開業し、さまざまなメディアで「中之島」が注目されています。

東端に公園、御堂筋附近に市役所、日本銀行などの歴史的建築物、そして西に大企業のビル群や国際会議場のある中之島は、まさしく大阪の政治、経済、文化の発信基地、といえるのではないでしょうか。

しかし、そんな中之島も、明治維新以来、島の殆どを占めていた全国各藩の蔵屋敷が無用のものとなり、廃墟、荒涼とした光景で追剥ぎが昼間でも出没したと伝えられているということです(中之島尋常小学校創立六十五周年 中之島幼稚園創立五十周年記念会『中之島誌』(378-141#)1937(昭和12)年)。

その後、豊国神社の遷座(1879(明治12)年)、朝日新聞の中之島移転(1885(明治18)年)を経て、(1891(明治24)年)に大阪の市街地で最初の公園が、ここ中之島に開設されました。ビヤホールやホテルの開業が続き、噴水の設置や川に舟を浮かべるなど、市民の憩いの場となっていきます。

一方、土佐堀川にそって倉庫会社や電燈会社、筑前橋北詰の大阪府立医学校、玉江橋南詰の大阪工業学校など近代的な建物のつらなるオフィス街、文教地区にもなり、新しい中之島が形作られていきました。

こうして再び人々の集うようになった中之島が、明治以降の旅行案内書(ガイドブック)ではどのように紹介されていたのでしょうか。今回の展示では昔から現在までの旅行案内書(ガイドブック)を紐解いて、中之島−主に中之島公園−がどのように紹介されていったかをご覧いただきます。

資料の解説に続き、「****」から下は、その旅行案内書(ガイドブック)が記す中之島の説明文です。最後に★があるのは、要約したものになります。適宜、句読点も打っています。


〔参考〕第21回小展示 「中之島風景・今昔」

http://www.library.pref.osaka.jp/nakato/shotenji/21_konja.html


            大阪新繁昌記

1.大阪新繁昌記(378-1249#)

駸々堂発行(島田薫著)

1896(明治29年)年3月12日発行  92ページ

明治以降、新しい技術が導入され、鉄道や汽船が発達します。その結果、「旅客西より東より連々として来阪し、肩磨接踵(けんませっしゅ)」蟻の如く「聚れるに似たり」と書き、昔とは違う今日の大阪の繁昌があると、著者は言います。そうした新しい観光地大阪について記したガイドブックです。


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浪花橋の西一域の地市民縦遊の公園を設く、噴水を設け、飛泉高く水珠を飛ばす。夜は彩色電気を照らして更に観を添ゆるあり、夏時最も賞すべし。豊国神社は東方に鎮座し、明治紀念標屹然として高く雲表に聳ゆるあり、大阪ホテル巍然として亦茲に偉観をなせり。塵煙の中此公園あり。身風塵を厭ふもの朝夕来遊其跡を絶えず、春夏秋の晩景は殊に人影動揺して其賑わひを盛んにす」。★

   
大阪名所 附堺名所独案内

2.大阪名所 附堺名所独案内(378-579#)

中村鐘美堂発行(篠田正作編輯)

1895(明治28)年5月6日発行 109ページ

京都で開催される第四回内国勧業博覧会への客を当て込んだガイドブックです。「序(ついで)ながら。平安城の昔より尚また古き高津の宮」のある大阪の名所旧跡を梅田停車場から出発して巡覧するスタイルで案内します。


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中の島の東端に在り。園中種々の樹木花卉を植ゑ、両側は川に臨み、遠く東に金城を望む。誠に絶景の地なり園中に明治紀念標あり。即ち薩肥の賊徒討伐の役、忠死せし人々の紀念碑なり。又名家の建碑多し。豊国神社あり。銀水楼、自由亭、大阪ホテル等の割烹舗、旅館等あり。★

 
大阪名所 附堺名所独案内

3.大阪名所(378-457#)

古島武治郎発行 大室音吉編輯兼彫刻 楓斎春孝画

1897(明治30)年3月19日発行 20枚

錦絵による大阪の名所案内。遠くにホテルが見え、噴水のまわりに人々が群集しています。手前では川で舟遊びをする風景が見えます。


大阪名勝記 附近傍名所案内

4.大阪名勝記 附近傍名所案内(378-1047#)

小谷卯三郎発行(道楽山人編輯) 1901(明治34)年8月5日発行 280ページ

冒頭に口絵と地図を配しています。「難波津に、昨夜此花冬ごもり、今を春べと踏出す。旅路の宿り朝疾く出でし浪華の町の中央の、心斎橋を西に向ひ、見るはよつ橋みつ八幡宮」と調子もよく、名所を案内しています。


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園内には幽邃の区なれども河畔には垂柳嫋々として河風に靡き老樹の蔚葱たるものなしと雖も緑樹青松梅桜を植え大いに風致あり。間々に東亭を建て、噴水泉を設く。霧の如く上辺四周に迸る夜間は電光之に映じて虹霓の如く七彩を呈す。東南に明治紀念碑、その後に能舞台、東には豊国神社ありて其背面を望み社殿の甍よりも高く大阪倶楽部(ホテル)の宏壮華麗なる建築物を見る。★


5.大阪案内 附近府縣名勝(378-1367#)

玉鳴館発行 1902(明治35)年6月25日発行 142ページ

大阪案内 附近府縣名勝

第五回内国勧業博覧会に際して刊行されたものです。博覧会場の写真に続いて口絵が入り、後半以降から案内文が綴られています。大阪市内を中心に、三島や豊能、近隣府県では岡山、広島の名所まで取り上げています。


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西は大江橋筋に至る。規模甚だ大ならずと雖も、此建詰りたる市の住民をして聊か心身を保養せしむるに足る。樹々の緑濃やかに東亭に憩ふ人ベンチに腰掛けせる三々五々漫歩を運ぶ皆楽し気に涼風を貪るゝは夏の景なり。朝日ビーヤホール等散在し、銀水楼に美酒佳肴に飽くも可なり。住友氏寄付の図書館は目下建設中に属す。


実地踏測 大阪市街全図

6.実地踏測 大阪市街全図(291.63-1208N)

和楽路屋発行 1918(大正7)年2月10日発行 1枚

展示している表面は大阪市街の地図。他に大阪市の財力なども記しています。
裏面がガイドになっており、上町、天王寺、高津、中之島、天満などの記述があります。


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公園内なる図書館には数万の図書を備へ昼夜公開して閲覧者を待つ。東隣の公会堂には時々種々の催会あり日本銀行支店は市内第一の建築と云可く郵便本局に並びて東洋第一の大阪朝日新聞社有。


7.大阪案内(378-393#) 

大阪之商品編輯部発行 1936(昭和11)年1月1日発行 234・210・18・206・38ページ

いわゆる大大阪と言われた頃のガイドブックです。「大阪市勢案内」「大阪遊覧案内」「大阪知名人士・諸機関案内」「大阪著名商工案内」「大阪便利案内」にわかれて大阪を案内しています。


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淀川を二分して北を堂島川、南を土佐堀川とし、共に西流して船津橋で合し川口へと広がる。その絲瓜形の空間が中之島である。旧幕府時代には各藩の蔵家敷軒をならべ、当時すでに大阪、否日本の経済の中枢であった。殊に近年、公衙、大会社、大銀行などのオフィスが櫛比し、大阪のシヴイツク・センターをなす。島と両岸とは、天神、難波の二大橋をはじめ、下流へ二十の美しい近代橋が、ボートのオールのやうに、中之島から両岸へ架かる。これらの橋と川と、高層建築群とで表現されるシツクで明朗な現代的大景観は、まことに水の都大阪なるかなと嘆ぜしめる。殊に夕映華やかな頃、天神橋上流の將棊島からこれを望めば、この世からなる楽天境の実感に、恍惚たらざるを得ない。★


8.紀元二千六百年の大阪(378-483#)

大阪市役所産業部観光課発行 1940(昭和15年)10月20日発行 80ページ 附録10ページ

神武天皇即位2600年に際して刊行されたガイドブックです。大阪は神武東征の際に難波の碕に船を泊めたことから海運交通の要衝として約束された土地といい、歴史を概観し、「これらの歴史的伝統的実録と実行力と気魄が基調となって培はれた三千町会、三百余万の大阪市民が、商業に、工業に、貿易に、経済に、その他あらゆる文化面に於て、曠古の聖業を翼賛する姿こそ、わが大阪の明日の希望を約束する」と序を締めくくっています。


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「水の都に適しき中之島(水上)公園一帯」
 大阪市庁、豊国神社、府立図書館、中央公会堂、木村長門守の表忠碑、手形交換所があり、運動場、花壇を挟みつヽ細く長く水上公園の面目を発揮して、堂島、土佐堀両川の分かれる剣先に至る。大きさはさまで広くないが、交通の至便と環境に恵まれ市民殊に附近のビルメン、ビルウイメンの好箇の逍遥場で、天神橋、難波橋、淀屋橋、玉江橋の名橋が架かる。★


9.最新大阪観光市街図(291.63-1109N)

日本交通公社発行 発行年月日不明 1枚

旅行者のための「大阪の表情」では、「産業都市大阪を知ってもらうためにはハッタリのかヽつた名所旧蹟よりも」市電、阪急、阪神の乗降客の雑踏を挙げ、「現代感覚あらたな」梅田新道、「文化には縁のうすい大阪にはまれな文化地帯」の中之島公園、「天下のお台所」北浜を挙げた方がよい、と言います。「名所めぐりでしたら、駅から出る観光バスを利用するのが早くて便利な方法です」とそっけありません。


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淀屋橋の下には水の都を代表する中之島公園があります。このあたりは文化には縁のうすい大阪にはまれな文化地帯で、府立図書館、公会堂、野外音楽堂などがあります。それらは富豪の寄附によって建てられたもので関西財閥の肝玉のほどがうかがわれるもっとも大阪における近代文化の様相を知ることができます。

     

10.大阪ガイド(291.63-107N)

東京法令出版発行(牧村史陽著) 1961(昭和36)年8月10日発行 355ページ

大阪ものの出版物は売れないというジンクスを打破したいと考えていた著者が、大阪府警本部からの依頼で執筆した出版経緯がやや特殊なガイドブック。名所旧跡よりも、都市の様相、産業の状態の記述にまで手を広げ、誰一人手をつけなかった新しい形の大阪のガイドブックを作り上げたと自負しています。


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大阪最初の市営公園。大正時代に難波橋と天神橋の間の大川を埋め立て、水上公園とした。水都大阪の代表的公園。天神橋近く、軍艦最上のメインマストがたてられたのは昭和4年。現代は“大阪市民国旗掲揚柱”として利用されている。大噴水塔は市制70周年記念事業の1つとして復旧したもの。★


11.おいでやす 観光大阪のシリーズ第1集・第2集(378-599#)

大阪観光協会発行

第1集 1968(昭和43)年8月1日発行 81ページ

第2集 1968(昭和43年)10月1日発行 80ページ

日本万国博覧会を前にして刊行されたガイドブックです。数千万という内外のお客さんを迎えるにあたって、美しい町にし、公徳心を高揚させ、来阪者はもちろん、府内在住の人々にも大阪のもつよさと味を認識してもらおうと企図されたといいます。
 第1集で大阪観光の全般を、第2集で開発のすすむ大阪をクローズアップします。


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御堂筋を境に東西はおもむきを変える。東は市庁舎、図書館、中央公会堂と続き、テニスコート、バレーボールコートを含む公園がのびる。さらに難波橋からはエアポケットを思わせる荒涼とした表情を持ち、悪臭を漂わせながらドス黒く川が流れる。
 御堂筋より西は日本銀行、住友、三井、電通、朝日ビル、関電ビルが林立。天下の台所として江戸時代に諸大名の蔵屋敷が立ち並んでいたが、今でも大阪の中枢の役割を果し、中之島の歴史を現代的に再現したともいえる。(第2集より)★


12.大阪青春街図(378-687#)

有文社発行(プレイガイドジャーナル編著) 1975(昭和50)年11月25日発行 224ページ 索引24ページ

「大阪という街でおもしろく生きてゆこうとする人たちのためのガイドブック」。名所旧跡とは一線を画したプレイガイドジャーナルが編集した大阪の本。「プレイガイド」「演芸」「古本屋」「バラエティショップ」を紹介する。「風噂聞書」では活躍する大阪人を紹介します


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図書館、公会堂などの古い建物はよくスケッチする人がいる。オフィス街の中の貴重な緑地帯。5月の連休には毎年中の島まつりが開かれる。


13.御堂筋八景(378-849#)

難波別院発行(藤嶽彰英著) 1981(昭和56)年11月9日 110ページ

南御堂復興20周年を記念して編まれたガイドブックです。御堂筋を梅田、中之島、淀屋橋、北御堂、南御堂、心斎橋、道頓堀、難波の八景に分けて紹介します。


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中之島公園は大阪の中心部にあって、昼はオフィス街のサラリーマン、OL、夜はアベックで賑わう。知名度が高い割には、さほどスケールがない。ある人が地図を開いた外国人に「中之島公園はどこか」と聞かれて、「ここだ」と答えるのにひや汗をかいたという。うっそうとした森林地帯やえんえん何キロもゆく遊歩道がある外国の公園のイメージからいうと、ほんの公園の入り口程度のスケール。しかし、キタとミナミに近く、明治大正時代の建物も残っており、市民のいこいの場としてコンサートなども聞かれる。★


14.浪花なんでも帳(378-965#)

大阪観光協会発行 1983(昭和58)年発行 49ページ

大阪築城400年まつりに際して作成されたガイドブックです。表紙見返しにまつり関連のイベント一覧が載ります。写真、イラストマップを多用した編集で現代的なガイドブックの様相を呈してきています。


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荘厳な明治建築とバラ園。緑と水の美しい水上公園です
 季節とお天気にめぐまれた中之島は、そぞろ歩きには最高のオアシスコース。もちろん明治の洋館が川面に影をおとす冬枯れの景観も味わい深く、夏の炎天下にずらりと並んだしだれ柳と川風のとり合わせもまた捨てがたいのですが。 


15.実践 大阪デートマニュアル(291.63-53N)

日本交通公社出版事業局発行 1991(平成3)年7月1日発行 191ページ

「ケバイ色で塗り込められている大阪の街も」恋する二人にはバラ色だとか。パステルカラーの大阪の街でデートするために編まれたガイドブック。


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「私を中之島へ連れて行って」
 つきあい始めて一年目。そろそろシブメにデートしましょと提案してみた。2つの川にはさまれた中之島は、昔ながらのビルや橋が架かったビジネス街。どっしりとした赤レンガの中央公会堂、日本銀行の姿を横目にお散歩を。5月以降は、中之島公園のバラの花盛り。赤、黄、ピンクと咲くバラをバックに写真をパチリ。大阪で初めて“アイスクリン”を出した資生堂パーラーで休憩したあとは、西天満のギャラリーへ。小さなギャラリーが並ぶ老松町で2人でゆっくりアートしたいのだ。

16.るるぶ大阪(291.63-151N)

JTB日本交通公社出版事業局・JTB発行

「見る 食べる 遊ぶ」が語源のムックタイプのガイドブック。ここでは1994(平成6)年からの8冊を紹介します。表紙のコピーや写真からその時期の大阪観光のメインがうかがえ、興味ぶかいです。


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文明開化の香りが漂う緑と水の都
 堂島川と土佐堀川に囲まれた中洲が中之島。バラが咲き乱れる緑が繁る中之島公園には平日、休日を問わず、憩いの時間を過ごす人達であふれ返る。カップルのデートコースとして最適なエリアだ。ビジネス街としてお固い建物が並んでいるのも特徴になっているが、府立中之島図書館、中央公会堂など明治、大正の頃に建てられたモダンな建築群がランドマークとして人々の目を楽しませてくれる。 (‘94年版より)


17.月刊島民 中之島

月刊島民プレス発行

中之島を対象にしたフリーペーパーがこの8月に刊行されました。単なるお店紹介だけでなく、歴史や中之島で働く人たちの紹介も載っています。駅や書店で無料で配布しています。裏表紙の見返しに配布協力一覧がついています。
全ページが中之島のガイドブックといえるでしょう。


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