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第27回大阪資料・古典籍室1小展示
平成11年5月27日〜6月29日


大阪・味の雑誌





 大阪は、「食い倒れの街」「食い道楽」といわれます。幕末のなにわのうまい物案内ともいうべき画帖『花の下影』には、一膳飯屋から高級料理屋まで大坂の食べ物屋316店の様子が楽しく描かれています。
 現在も食の情報誌は数多く出版されていますが、今回は、大正から昭和にかけて大阪で刊行された食にまつわる雑誌を紹介いたします。


1 食道楽 

[第1期] 1巻1号(明治38年5月)〜3巻9号(明治40年8月) 発行 東京市麹町 有楽社
[第2期] 9号(昭和3年4月)〜 ?(昭和11年)? 発行 大阪市北区 内外情報出版社食道楽部編輯兼発行人 藤村精嘉
[第3期] 復刊(昭和11年10月?)〜 発行 大阪市西区 食道楽会  発行編輯人 坂本季良

                                                

 明治36年に、1年間にわたり報知新聞に連載された村井弦斉の小説「食道楽」は圧倒的好評を博し、このような時流にそって雑誌「食道楽」が創刊される。

 各種の食物や料理の記事のほか、有名料理店の紹介などを掲載。発刊部数がのびず廃刊。昭和に入って第2期の「食道楽」創刊。松崎天民を編集者として迎え、当時の有名文化人、食通、料理家などを執筆陣とし、幅広い食文化に関する記事を掲載。明治期のものに比べると全国各地の郷土料理や有名料理店の紹介記事などが多い。

 天民の死後、終刊となるが、復刊。第3期は、坂本季良が編集者となり継続。当時の文化人、趣味人が参画。

当館所蔵 [第1期]1巻1号〜3巻9号(明治38.5〜明治40.8)復刻版
[第2期]9号〜4年12号(昭和3.4〜昭和5.12)復刻版
[第3期]2巻1号〜4巻9号(昭和12.1〜昭和14.9)  
雑946

                                               

2 名物及特産  1巻1号(大正11年4月)〜2巻9号(大正12年9月)

  趣味と名物  2巻10号(大正12年10月)〜4巻6号(大正14年6月)

  遊覧と名物  4巻7号(大正14年7月)〜 ?

         発行 大阪市南区 名物及特産社
         発行兼編輯人 石川喜四雄


 各地の名物、特産に関するもの、名勝旧跡地・温泉地に関するもの、風俗及び郷土研究に関するもの、料理に関する記事などを掲載する。各号巻末には、諸国名物一覧や名勝地旅館案内などがある。

 2巻10号(大正12.10)より「趣味と名物」と改題。改題の辞には、“趣味と実益に富む一般家庭記事をも蒐録”とあり。
 また4巻7号(大正14.7)より「遊覧と名物」と改題。4巻10号の編集後記には、“本誌の使命として蒐集趣味と旅行に関する総てを網羅したい”とある。

当館所蔵: 名物及特産 1巻5号,2巻1,3,5,7,9号(大正11.8〜大正12.9) 雑 3634
趣味と名物 2巻10−12号,3巻1−3,5−10号,
4巻3−5号(大正12.10〜大正14.5)
遊覧と名物 4巻7,8,10号(大正14.7〜10)

3 あまカラ 第1号(昭和26年8月)〜続200号(昭和43年5月)

       発行  大阪市東区 鶴屋八幡内 甘辛社
       発行人 鶴屋八幡 今中善治
       編集人 水野多津子

 終戦後まだ食料事情も十分でない頃に、“たべもの・のみものの楽しい雑誌”として発刊。横開きのポケット版で、多くの写真や広告を掲載。
 小島政二郎の「食いしん坊」、「甘辛談義」「東西味くらべ」などの連載あり。

当館所蔵: 5〜120,122〜続200号(昭和27.1〜昭和43.5) 雑1924


                                    

4 甘辛春秋 1968年春の巻〜1973年冬の巻 以後休刊

       発行 鶴屋八幡 菊正宗酒造(1971年春の巻を最後に発行より退く)

 「あまカラ」終刊のあとをうけて、季刊のPR誌として創刊。
 「あまカラ」続200号に次のような広告が掲載されている。“春夏秋冬、季節の和菓子と日本酒を中心に若い世代の人々に伝統の味覚を伝える楽しい雑誌”
 対談記事も多く、辻嘉一、司馬遼太郎、小松左京、桂米朝など多彩な顔ぶれである

当館所蔵: 1968年春の巻〜1973年冬の巻(昭和43.3〜昭和48.12) 雑2259


                                    

5 洋酒天国  第1号(昭和31年4月)〜50号(昭和35年10月)月刊  第51号(昭和36年6月)〜61号 終刊   季刊   

       発行 大阪市北区 寿屋内 洋酒天国社    編集兼発行人 開高健

 「洋酒天国」は、開高健・坂根進・柳原良平の若いトリオにより企画、発刊され、寿屋のPR雑誌としてトリスバ−を通して毎月配付された。
 昭和25年に創刊されたアサヒビ−ルのPR誌『ほろにが通信』の編集社三国一朗は、『洋酒天国』について次のように述べている。“ひどく粋で、ひどくカラフルで、ひどくリッチで、つまり、ひどく面白い雑誌が、パッと出て来たのである。”
 「洋酒天国」は、昭和33年には、DM部門の広告電通賞を獲得、洋酒党必読の書として愛された。

当館所蔵: 1〜56号(昭和31.4〜昭和38.1) P59-10N