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第17回大阪資料・古典籍室1小展示
平成10年2月15日(日)〜3月29日(日)


平成9年度新収資料展





 中之島図書館では、日々出版される新刊書籍とともに、出版された当時何らかの理由で手に入れられなかった大阪関係の図書や、大阪にゆかりの深い作家の初版本なども収集しています。
 今回は今年度に収集したこれらの既刊書から数点を展示します。



「平成9年度新収資料展」展示外観

1 俳諧なには風流(はいかいなにわぶり)   2巻2冊
     八千房編 大坂 塩屋忠兵衛 文化3(1806)

   俳諧なにはふり二編
     八千房編 大坂 塩屋忠兵衛

   俳諧なにはふり三編   2巻2冊
     八千房編   大坂   塩屋忠兵衛

   俳諧なにはふり   2巻2冊
     五竹庵・八千房評   大坂   塩屋忠兵衛

 近世後期大坂で一大隆盛を誇った俳諧師八千房駝岳(二世)、屋烏(三世)編纂の俳諧集。 大坂のみならず西日本全域から集まっており、この流派の勢いを物語っている。

2 絵本報仇誓■摺(えほんかたきうちちかいのおいずる)   6巻6冊
     楠里亭其楽著  柳泉斎国重画 南紀若山   阪本屋喜市等刊  文政9(1826) 

別書名「二個伝内誓■摺」。播磨国赤松家の支流赤石藩を舞台に繰り広げられる仇討ちを題材にした読本(よみほん)。著者は、江戸出身、大坂に来て町代(町役人)を勤める傍ら、地誌や読本など数多くの著作を手がけた。

3 (徒然教訓)御影参聞書艸紙(おかげまいりききがきそうし)   3巻1冊
     寸松堂主人著  浪花  河内屋太助等刊   文政13(1830)

文政13年(天保元年)におこった伊勢神宮への集団参宮騒動(お陰まいり)、京・大坂での狂乱ぶりの様子を「徒然草(つれづれぐさ)」のパロディ文で綴ったもの。

4 摂津大坂川口
     広重(二世)画   [江戸]   蔦吉板

幕末の大坂港を描く。「諸国六十八景」のうち。

5 奴隷世界              
     西村天囚著 東京 有文堂 明治21(1888)

西村天囚(1865ー1924)は、明治中期から大正期にかけて大阪朝日の記者として、また当館の初代館長今井貫一ともども大阪の文化界で活躍した人である。

6 (残害事件)河内十人斬り
     劔花道人著 大阪 前野芳造 明治26(1893)

明治26年5月河内国赤坂村で起こった怨恨による惨殺事件の顛末を描く。この事件は後人情物語に姿を変え「河内音頭」で語り継がれている。

7 大阪名所写真帖
     東仙太郎編 大阪 隆昌堂 明治43(1910)

明治後期、大阪市内の風景写真24景を収める。

8 住友私立職工養成所一覧
     大阪 住友私立職工養成所 [大正8(1919)]

「家計困難な者に職工として必要な知識・技能を授ける」という目的で、大正5年住友家の寄付によって、大阪市港区に設けられた「職工養成所」の要覧。

9 無名座 3、4、6、7、9ー16号
     大阪 無名座 大正15(1926)ー昭和2(1927)

大正12年、西区九条の歯科医宮川見介主宰で結成された新劇の劇団「無名座」の機関誌。この雑誌の旧蔵者大岡欣治氏は『関西新劇史』で「無名座の今後の活動は大阪の新劇運動の代表的なものであった」と述べている。15、16号の発行は「大阪舞台協会」。

10 勤人
     水上滝太郎著 大阪 プラトン社 大正13(1924)

水上滝太郎(1887ー1940)の作品集。水上は慶応大学卒業後、父の創始した明治生命に入社、大阪支店勤務時代の作品に「大阪の宿」などがある。その由縁か、大阪の出版社プラトン社から発行した。この書の奥付には当時編集部にいた「直木三十五」(当時は三十三)の名が見える。

11 反射炉
     岡田播陽著 大阪 改善社 大正16(1927)

岡田播陽は作家岡田誠三の父、心斎橋で大正時代呉服商を営んでいた。博学の人、また奇人としても知られ、社会論・小説など様々な分野の書物を著した。この書も、近世初期の儒学者中江藤樹の逸話を小説仕立てにした「近江聖人」や史料「蒹葭堂献本始末」の翻刻など、バラエティーに富んでいて町人学者播陽の面目躍如たるものがある。

岡田誠三(1913ー94) 

大阪生まれ。大阪外大卒後、朝日新聞大阪本社入社。戦時中は特派員としてニューギニヤに従軍した。

12 ニューギニヤ血戦記
     大阪 朝日新聞社 昭和18(1943)

従軍記。

13 失はれた部隊
     大阪 人民会議社 昭和21(1946)

従軍体験を元にした小説。著者はこのニューギニヤ戦を題材にした小説『ニューギニヤ山岳戦』(1944)で第19回直木賞を受賞している。

今東光(1898ー1977)

 神奈川県出身。昭和26年から大阪八尾市天台院の住職となる。この頃から中断していた小説を再執筆しはじめ、河内の風土をふんだんに盛り込んだ小説を数多く手がけた。

14 こつまなんきん
     今東光著 東京 講談社 昭和35(1960)

大阪西成勝間村産の南瓜は、小ぶりで味が良く、実がしまっている。それをなまって「こつまなんきん」と呼ぶ。そんなあだ名を付けられた、威勢の良い河内娘小春の波瀾万丈の半生を描く。

15 悪名(あくみょう)
     今東光著 東京 新潮社 昭和36(1961)

ご存じ八尾生まれ朝吉親分の思春期から徴兵検査までを描く。勝新太郎主演で映画化されヒット作品ともなった。