人魚洞文庫データベース公開記念

これが“おもちゃ絵”だ!

〜巨泉玩具帖に見る大正・昭和初期の郷土玩具〜


《展示会・講演会ともに終了しました》


「これがおもちゃ絵だ!」ちらし 川崎巨泉〔かわさき きょせん〕(1877〜1942)は明治後期から昭和前期にかけて大阪で活躍した“おもちゃ絵”画家。自ら描いた郷土玩具絵を“おもちゃ絵”と称し、多くの絵を残しました。
 中之島図書館が所蔵する巨泉の玩具帖や、巨泉と同時代人で彦根の郷土玩具コレクター高橋狗佛〔たかはし くぶつ〕のコレクション(彦根市立図書館所蔵)から、巨泉の玩具帖にある大阪の“住吉千疋猿”など約40点を並べ、いつかどこかで出会ったかもしれない懐かしい郷土玩具の世界を巨泉の“おもちゃ絵”を中心に展示します。
 また、師であり義父であった浮世絵師中井芳瀧の錦絵も併せて展示します。


日時: 平成18年10月10日(火)〜26日(木) 入場無料
       午前10時〜午後5時 
       12日(木)、15・22日(日)は休館
会場: 大阪府立中之島図書館3階 文芸ホール
       地下鉄御堂筋線・京阪電車「淀屋橋」駅下車
                 1号出口から北東へ約300m



   ■ 主な展示資料
 川崎巨泉の肉筆の『巨泉玩具帖』『玩具帖』から約30冊。また、巨泉と同時代人で彦根の郷土玩具コレクター高橋狗佛のコレクションを彦根市立図書館から借用し、巨泉の玩具帖と狗佛の玩具を並べて展示します。
それに加えて、『浪花百景』『芳瀧役者絵』など、巨泉の師であり義父である中井芳瀧の錦絵や江戸時代の玩具絵本『江都二色』や明治時代の『うなゐのとも』も展示します。


   〜 関連講演会のお知らせ 〜
   
◆「おもちゃ絵画家・川崎巨泉の仕事 −郷土玩具をめぐって−」
北原直喜氏 (日本郷土人形研究会・代表世話人)
おもちゃ絵画家・川崎巨泉のおもちゃ絵とその郷土玩具についてお話いただきます

◆「玩具絵本の系譜 〜「江都二色」から「巨泉玩具帖」まで〜」 
石沢誠司氏 (財団法人京都文化財団 京都府立文化芸術会館館長) 
江戸時代唯一の玩具絵本『江都二色』から明治時代の『うなゐの友』、そして『巨泉玩具帖』までをたどり、玩具絵本がどのように描かれてきたのかをお話いただきます。
  
         日時: 平成18年10月28日(土)  午後1時〜午後4時30分
         会場: 大阪府立中之島図書館 3階 文芸ホール  ※定員90名




■■■ 講演会報告 ■■■




  ◇ 北原直喜氏(日本郷土人形研究会・代表世話人)の講演
      「おもちゃ絵画家・川崎巨泉の仕事 −郷土玩具をめぐって−」 ◇


 北原氏は中学生の頃より兄の影響をうけ、郷土玩具に趣味を持ち、その後全国の郷土玩具趣味の研究会に参加している。主要研究テーマは、日本郷土人形の系統分類、時代判定である。  
当日は北原氏所蔵の写真や郷土玩具を多数持ち込まれての講演で、川崎巨泉と大阪の郷土玩具趣味界に関するお話であった。
川崎巨泉は明治25年、堺に居た大阪最後の浮世絵師といわれる中井芳瀧に入門する。当時堺には造り酒屋も多く、引札やラベルのデザイン等が主な仕事であった。明治36年頃から郷土玩具に興味を抱き、面茶会(おもちゃかい)、美葉会(びようかい)、娯美会(ごみかい)、浪花須耽譜会(なにわすたんぷかい)、毛呂手毛羅緒会(もろてもらおかい)など在阪各種の趣味会に参加。
このような各種趣味の会についてもお話された。「浪花我楽多宗(なにわがらくたしゅう)」は元々は東京で大正から昭和のはじめにかけて東京中心の蒐集趣味家の交友会名で、自らを「がらくた集め」と称して洒落で「我楽多宗」という仏教の一派に見立てて、寺号を雅号にして楽しんだもの。大阪でも別派をということになり「浪花我楽多宗」を結成。川崎巨泉は西国33箇所の内、10番札所で寺号は「碧水山、虚遷寺」、寺印は美江寺の蚕鈴に達磨と鳩笛であったという。
最後は巨泉のおもちゃ絵と実物の玩具の対比をし、大阪張子、大阪練り物、住吉の土人形、生玉人形などを知ることができた。



  ◇ 石沢誠司氏(財団法人京都文化財団 京都府立文化芸術会館館長)の講演
      「玩具絵本の系譜 〜「江都二色」から「巨泉玩具帖」まで〜」  


 石沢氏は長く京都府立総合資料館に勤め、そこで郷土玩具コレクションを担当したことから興味を持ち、郷土玩具文化研究会などに参加している。研究の中心テーマは節句と人形・玩具である。
当館ホームページ上での「人魚洞文庫データベース」の公開の準備過程で、玩具の考証などについて貴重なアドバイスをただくなど石沢氏には大変お世話になった。  
当日は石沢氏所蔵の玩具絵本や玩具を持ち込まれての講演で、玩具関連の主要著作に関するお話であった。
浅見素石作成の「明治以降〜第二次世界大戦間の郷土玩具界概観」の表をもとに各趣味会や主要人物の紹介をされた。北尾重政画の『江戸二色』(安永2・1773)は西川祐信の『絵本西川東童』(延享3・1746)の影響をうけて作られた。『江戸二色』の二色というのは、古いものと新しいものという意味で、88種の玩具を取り混ぜて紹介している絵本である。
戦前の二大玩書のうちの一つである『うなゐの友』についてもお話された。これは明治24年(1891)清水晴風(しみずせいふう)によって初編が刊行され、以後、大正2年(1913)に6編が刊行された後、晴風の死で未完となったが、その後を日本画家・西沢笛畝(にしざわてきほ)が継いで大正13年(1924)に10編で完結するまで、実に33年をかけて二人の著者によって完成した絵本である。この二冊を主とした、玩具絵本から『巨泉玩具帖』・『玩具帖』までの玩具絵本の系譜を知ることができた講演であった。

○朝日新聞 2006年10月14日 29頁 
   観る:「これが“おもちゃ絵”だ!」〜巨泉玩具帖に見る大正・昭和初期の郷土玩具〜
○朝日新聞 2006年10月19日 28頁
   楽しいね♪絵も実物も 北区で「おもちゃ絵」展
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