大阪府立中央図書館 国際児童文学館「特別研究者」 令和5年度の成果報告について
国際児童文学館「特別研究者」 令和5年度成果報告
国際児童文学館「特別研究者」制度は、当館の所蔵資料を利用して調査研究を行う研究者の方に「特別研究者」としてご登録いただき、資料を利用しやすい条件を整えて、その研究成果を論文、学会発表等の形で発表していただくものです。
令和5年4月1日から令和6年3月31日までの1年間にご活動いただいた特別研究者の皆様の研究成果をご報告します。
個人
名前(敬称略) | 所属団体(令和5年度当時) | 研究テーマ | 発表方法等 | 発表の概要 |
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井岡 瑞日 | 大阪総合保育大学(准教授) | 月刊保育絵本をめぐる社会関係の史的考察 | 発表方法:論文 世界子ども学研究会紀要〈Halcyon〉(11) (発表年月:2024年3月) 発表タイトル:月刊保育絵本『ひかりのくに』における編集長・豊田次雄の果たした役割 |
絵本と保育が実践レベルで接近する過程で月刊保育絵本がどのような位置づけにあったのかを明らかにするため、1946(昭和21)年創刊『ひかりのくに』の編集長を務めた(1947~1966)童謡作家、豊田次雄の活動歴を整理・検討した。 |
生駒 幸子 | 龍谷大学短期大学部こども教育学科(准教授) | 戦中戦後の翻訳絵本 | 発表方法:講演 国立国会図書館国際子ども図書館 (発表年月日:2023年10月1日) 発表タイトル:絵本に描かれる食べもの―異文化理解、暮らし、ジェンダーの視点から― |
国立国会図書館国際子ども図書館展示会 令和5年度(2023年度)「おいしい児童書」関連講演会において、絵本に描かれる食べものを中心に絵本の魅力を考察した。 (国立国会図書館月報756号、2024年4月、pp.5-14) |
同上 | 発表方法:論文(単著) 白百合女子大学児童文化研究センター研究論文集27(pp.61-81) (発表年月日:2024年3月) 発表タイトル:「戦後占領期の入札制度により翻訳出版された絵本:どのように「絵の翻訳」をしたのか」 |
戦後占領期の入札制度による翻訳絵本の翻訳方法について、GHQ管理下の出版背景(翻訳権、入札制度)をふまえ調査した。【科学研究費助成「翻訳絵本にみられる異文化受容の歴史的研究(終戦から1954年12月まで)」(基盤研究C、20K00308、2020年4月-2024年3月)による研究成果】 |
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同上 | 発表方法:論文(単著) 龍谷大學論集 500・501(pp.174-207) (発表年月日:2024年3月) 発表タイトル:食べものが描かれる絵本:異文化理解、暮らし、ジェンダーの視点から |
国立国会図書館国際子ども図書館における講演会内容をもとに、食べものが描かれる絵本について異文化理解、暮らし、ジェンダーの視点から考察した。【科学研究費助成「翻訳絵本にみられる異文化受容の歴史的研究(終戦から1954年12月まで)」(基盤研究C、20K00308、2020年4月-2024年3月)による研究成果】。 | ||
同上 | 発表方法:Web記事 龍谷大学Moglab (発表年月日:①2023年9月8日②2023年9月15日③2023年10月13日④2023年10月27日⑤2023年11月24日⑥2023年12月1日) |
食に関する情報Webサイト龍谷大学Moglabにおいて、食べものが描かれる絵本の魅力をお話した。 ①絵本と食べ物のおはなし⑧『パンやの くまさん』-異文化の食に触れる翻訳絵本-②絵本と食べ物のおはなし⑨『14ひきのあさごはん』-作者が描きたかった食卓の光景-③絵本と食べ物のおはなし⑩『せかいいち おいしいスープ』-石から作るスープとは?-④【対談】かこさとし『からすのパンやさん』―親子の愛情とパンを巡るおはなし-⑤【対談】かこさとし『たべもののたび』―シンプルかつ端的に描かれる人体の世界―⑥【対談】accototo ふくだとしお+あきこ『ひゅるりとかぜがふくおかで』―美しい絵と言葉に魅了される絵本 |
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遠藤 知恵子 | 白百合女子大学児童文化研究センター(非常勤助手) | 武井武雄と童画に関する研究 | 発表方法:学会発表 日本児童文学学会 (発表年月日:2023年11月19日)発表タイトル:童画作品のなかの「創作する子ども」のイメージ 岡本帰一・初山滋・武井武雄の場合 |
『コドモノクニ』の童画作品を中心に、絵の中で創造的な活動を行う子どもたちの絵姿を整理・分類する。本発表を踏まえ、現在考える今後の課題は、①画家の捉えた子どもたちの創造のイメージを重層的に捉えることと、②ジェンダー的視点で批判的に作品を分析した上で芸術家たちの創造性がもつ可能性を明らかにすることの、2点である。 |
田中 卓也 | 育英大学(教授 幼児教育コース長) |
近代日本における児童雑誌の読書共同体の形成に関する研究 絵本の読み聞かせに関する研究 絵本・民話に関する保育者養成における活用に関する研究 保育現場における絵本の読み聞かせを次世代につなぐための方策・課題に関する研究 わが国における少女雑誌の普及・多様化と少女読者意識形成に関する研究(科研費個人・基盤研究Ⅽ・2024年度~2026年度:24k05795) |
発表方法:論文 彰栄保育福祉専門学校紀要第39号 (発表年月日:2024年3月31日) 発表タイトル:読み聞かせ活動の変遷から見る読み聞かせボランティアの意義(共著)執筆者担当44~45ページ |
2011年に「子どもの読書活動推進に関する法律」制定以降、子どもの読者活動の環境整備が進み、図書館や学校、保育施設など様々な場において読み聞かせ活動が盛んに行なわれている。読み聞かせの楽しさを伝える重要な役割の一端を担っているのが、「読み聞かせボランティア」である。本研究は、読み聞かせボランティアの成立過程を読み聞かせ活動の変遷から辿り、読み聞かせボランティアの意義について歴史的側面から考察を行った。考察から、読み聞かせボランティアは、「地域の子どもたちの教育の担い手」「絵本を介した心の交流を生み出す地域の貴重な人材」であることが見い出せた。核家族化、共働き世帯も増加という地域の繋がりがなかなかもちにくい現代、行政と連携しつつ養成や研修を行ない、読み聞かせボランティア活動が今後さらに発展していくことが望まれる。 |
同上 | 発表方法:論文 育英大学・育英短期大学育英教育研究論集第1号(発表年月日:2024年3月31日) 発表タイトル:光文社刊行雑誌『少年』に関する研究―廃刊をめぐる動向に着目して―(単著) |
『少年』は小学生から中学生らの読者が多く、戦前期の少年雑誌『少年界』、『少年世界』、『少年倶楽部』等の読者と比べ、やや幼い印象を受ける。同誌読者らは「新天地」、「誌友クラブ」なる投稿欄にこぞってはがきを投函し、編集部とのやりとりが行われた。それは読者共同体の形成が目的ではなく、読者個人の個人主義や多様性を尊重するものであった。戦前期の少年雑誌のような、双方向のやりとりは見られず、読者同士の連帯、絆も見られない。さらに投稿者の関心や憧憬するキャラクターへの思いを吐露したもの、ユーモアやギャグ等を通じユニークを追求するものも誌面に登場した。それは戦後の民主主義のもとで、少年読者らが自由にのびのびとして日々の生活を送る雰囲気が醸成された。新たなメディアのテレビの影響を受けることで次第に雑誌から離れる読者も存在した。1960年代後半からは、「性」への意識に関する記事が掲載された。それは「性」への不安・悩みを持つ読者の増加を意味し、アイデンティティに目覚める読者の登場が見られた。かくして戦前期には見られない「子ども(読者)像」が形成された。戦後約20有余年にわたり発刊されてきた同誌は、テレビの登場でその役割を終えることになった。 |
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同上 | 発表方法:論文 育英大学・育英短期大学教育研究所紀要第2号(発表年月日:2024年3月31日) 発表タイトル:少年・少女と関東大震災―講談社・金の星社の事例を中心に―(単著) |
本稿では、明治期から大正期にかけて発刊されていた少年雑誌、少女雑誌を取り上げ、(『少年世界』、『少女世界』(以上博文館)、『少年倶楽部』、『少女倶楽部』(以上、講談社)および、『金の船』、『金の星』(以上、金の船社)の内容構成とその性格について明らかにするものである。本稿の論述より、以下のことが明らかになったと考えられる。① 関東大震災は少年少女雑誌の出版社すべてに大きな痛手となった。②どの雑誌社も愛読者の安否確認など、まずは最優先して取り組んだ。③各雑誌の読者投稿欄では、読者の安否確認、出版社からの励ましのエール、罹災への同情などが掲載された。④講談社は、関東大震災の状況などを読者にすぐさま報知することを取り決め『関東大震災大火災』といわれる雑誌を制作し、多くの国民が手に取ることになった。多くの発行部数を伸ばし、ベストセラーにまでなった雑誌の発刊を通じて読者の関心・興味を一層誘うことになった。⑤また講談社は、野間清治の号令の下、震災直後からすばやく同業他社へ激励の声をかけ、雑誌発刊への希望を持つことになった。すでに出来上がっていた誌面をさきに10月号、11月号と発刊し、12月号については各社休刊の運びとしている。そんななかで講談社の『少年倶楽部』では、毎月震災特集記事を掲載し、愛読者のためにできるだけ早急な対応で、雑誌の復刊に努めていくことになった。(商業主義をいかした展開)⑥『金の船』は後継雑誌『金の星』に受け継いでからも、愛読者の為に発刊を続けた。講談社と異なり、小規模の出版社であった金の船社は震災の影響も少なく、なんとか経営を続けた。震災の罹災について商業主義をいかした講談社に対し、金の船社はまさに社運をかけた大事業となった。最後に関東大震災の罹災を経験した日本の少年・少女雑誌の愛読者らは、震災で何もかも失った絶望のどん底に落とされることになった。読者らは命を落とした多くの人々の分まで、必死に生き抜いていこうと決意することになった。生きていることそのものに幸福を感じながら、将来の人生への希望や夢を捨てようとしなかった。しかし現実はそうではない。彼らはこの苦境から少しでも早く逃がれることができるよう、読者同士で互いに励ましながら、鼓舞し自らが負けない心、折れない心を持つようになった。これにより愛読者らは強い絆、連帯意識を形成することになった。 |
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同上 | 発表方法:論文 育英大学・育英大学短期大学研究紀要第6号(発表年月日:2024年3月31日) 発表タイトル:『海国少年』の読者像に関する一考察(単著) |
本研究では、戦前期に海国少年社から刊行された「海国少年」の読者の特徴や誌面構成の変遷やその特徴を見出すことが目的である。同誌は、タイトルにあるように、海国の兵隊となる年若い読者を対象とした雑誌であるように見えるが、小学校高学年、中学生らがおもな読者層として存在し、軍国主義や戦争をイメージするものと直結していなかったのが特徴である。しかしながら同誌は戦争が激化するとともに「飛行機」や「戦車」などのイラストで定評のあった樺島勝一を表紙絵、挿絵担当に起用することで、多くの子ども読者を魅了し、多く愛読者(ファン)の獲得に成功した。同誌はわずか5年ほどの短命で廃刊となった。(以前の同報告書で掲載) |
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同上 | 発表方法:論文(雑誌) 月刊 子どもの文化 第55巻10号(子どもの文化研究所)(発表年月日:2023年11月1日) 発表タイトル:投稿欄によって構築されるもの(特集 投稿する文化)(単著) |
「読者投稿欄」が構築したものとは、いったいどのようなものであったか。まずは不特定多数の投稿者にとっての「安息の場所」であったものと考えられる。雑誌を読み、同じ興味関心を持つ者同士が、投稿欄に集い、いろいろなことを書面にて伝えた。この投稿欄では読者自身の思いや感情が吐露できた唯一の場所であった。仲間の投書を読み、時には喜び、励まし、勇気づけられる場所であったのだ。だからこそ、投稿者は投書しながら、仲間を気遣い、お便りを交換してつながりを感じることができた。つぎに、「読者共同体」の形成が挙げられる。先述したように読者らはそれぞれ異なる地で購読し、投書していた。投書欄に寄せられた投書を通じて、仲間を見つけ、交流・交際をするようになったり、優秀作品を生み出すために切磋琢磨するライバルを見つけ出し、互いに競い合った。決して目には見えるものではないが、いわば「想像上の読者共同体」が形成されていた。自分の意思やお友達の誘いを受け、この共同体に入会し、さまざまな理由で退会することにもルール・制限等はなかった。いわば「自由に往来可能な想像上の共同体」がそこには存在していたのであろう。最後に「『生涯の友』となる者の出会いの場」であり、「永久不変」のものであったとみられる。読者らはこぞって文通などを介して交際を申し込むことが多かった。同じ趣味関心をきっかけとして、生涯にわたる本当の友人をみつけようとしたのだ。彼らは投書欄に投書と合わせて、よく写真を送ったりした。いまでいうFacebook(フェイスブック)に近いものであったかもしれない。他の読者はこれをみて、自身の写真や友人との集合写真を送り、投書を介してコミュニケーションを図った。投稿者らがやがて年齢を重ねてからも、同誌に投書していた少年・少女時代を振り返りながら、互いに懐かしむことでいつまでも色褪せない「永遠の幼年・少年・少女たち」でいようとした。かくして読者投稿欄は仲間同士の絆・連帯感を培う、いわば機能・装置ともなっていた。現代を生きる子どもたちは、「メル友」とか「LINEグループ」という言葉表現を口にする。「メル友」や「LINEグループ」でつながっている仲間は、はたして本当の友といえるのか?彼らに対し真剣に喜怒哀楽の表情をみせることができるだろうか?また「絆」や「連帯感」を感じることができるであろうか?そのような若者たちに対し、今一度「友達とはどのような存在であるのか?」、「真の友人とは何か?」について真剣に考える機会になることを祈念する。 |
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同上 | 発表方法:学会発表
日本子ども社会学会第30回大会(日本女子大学目白キャンパス)(発表年月日:2024年6月29日) 発表タイトル:戦前期日本の少女雑誌における身の上相談と読者意識 |
本発表では、少女雑誌における身の上相談と読者意識」について、少女雑誌の「身の上相談」に関する記事について考察、検討を試みるなかで、読者意識がどのように変容していくようになったのか、内容と特徴について、見い出そうとするものである。第二次世界大戦の激化に伴い、多くの雑誌が休刊や廃刊に追い込まれた。『令女界』はその後も発刊を続けるが戦時色の影響を強く受け、相談記事が消滅する。身の上相談は少女読者がおしゃれに憧憬するための重要事項であり、いつまでもかわいく、美しい少女であり続けたい思いが込められたものであった。戦後発刊の『少女ブック』(集英社)に受け継がれようとしていった。 | ||
同上 | 発表方法:学会発表
日本乳幼児教育学会第33回大会(名古屋市立大学桜山キャンパス)(発表年月日:2023年12月9日) 発表タイトル:『理化少年』に関する研究―読者における科学心の育成を中心に― |
本発表では、大正期から昭和戦前期の時期にかけて発刊されていた『理化少年』誌をとりあげ、同誌の内容構成とその性格について明らかにするものである。『理化教育』については、関東大震災以後に発刊された形跡は発表者の確認ではみられない。おそらくは関東大震災の被害により出版社が閉じられた可能性がある。しかしながら日本の理科教育雑誌のなかで早い時期から発刊された雑誌としては意義があり、その功績も大きい。①理化に関心を持った少年読者に「理化」に関する知識を習得させることに努めた。また詩や短歌俳句などを通じて投稿家が互いに教養を高めることになった。②「理化」に関心を持った読者(投稿家)らがこぞって誌面の読者欄に寄稿し、「理化少年」と自称し、ともに連帯意識や絆を深め仲間意識を形成していった。③読者らに対し、誌面を通じて、教養を高めるだけでなく、科学の心を育ませていったことであった。 |
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同上 | 発表方法:学会発表
中国四国教育学会第75回大会(広島大学)(発表年月日:2023年11月26日) 発表タイトル:少年雑誌『理化少年』における読者層と読者意識に関する考察 |
本発表では、大正期から昭和戦前期の時期にかけて発刊されていた『理化少年』誌をとりあげ、同誌の読者層と彼らの意識がどのように形成されたのか、について考察・検討を試みるものである。『理化教育』については、関東大震災以後に発刊された形跡は発表者の確認ではみられない。おそらくは関東大震災の被害により出版社が閉じられた可能性がある。しかしながら日本の理科教育雑誌のなかで早い時期から発刊された雑誌としては意義があり、その功績も大きい。①理化少年の読者らは、おもに小学校児童から中学校生徒までの少年らが愛読していた。なかには少女読者、小学校教師らも購読していたが、理化を愛する少年のための雑誌であった。理化に関心を持った少年読者に「理化」に関する知識を習得させることに努めた。また多くの少年雑誌や少女雑誌の誌面にみられた作品(詩や短歌、俳句などへの)投稿について批判し、「理化」そのものを学術として高めるために互いに切磋琢磨した。②従来からの人気雑誌であった『少年世界』・『少年界』・『日本少年』誌の読者から興味・関心がなくなることで離れた者も存在し、これまでになかった新たな少年たちの雑誌として登場することになった。③「理化」に関心を持った読者(投稿家)らがこぞって紙面の読者欄に寄稿し、「我等」・「吾等」・「誌友諸君」と称し、互いに呼びかけ連帯することになった。なかには「理化少年研究士」と自称する者も存在し、さらなる愛読者に成長するともにより連帯意識や絆を深めた。 | ||
同上 | 発表方法:ポスター発表 日本子ども学会第19回子ども学会議(白百合女子大学)(発表年月日:2023年9月26日) 発表タイトル:「雑誌にみる『子役スター』に憧憬する子ども読者の意識形成に関する考察―昭和戦後期の雑誌を中心に― |
本発表は、子役から活躍しているスターに憧れを抱く子ども読者を対象に彼ら意識形成とその特徴について明らかにしていくものである。第二次世界大戦での敗戦を経験し、日本は国民挙げて再生の道を歩むことになった。敗戦後、国民は1人の子役スターに心を奪われることになる。美空ひばりその人である。美空ひばりは歌にドラマにと大活躍を果たすことになり、ますます国民を魅了した。その活躍ぶりを多くの当時発行されていた雑誌などで紹介し、子ども読者たちが彼女に憧れを抱いたのは想像できるであろう。かくして美空ひばりの登場以降、中村メイコ、松島トモ子、岡田可愛、宮脇康之、間下このみ、鈴木福、芦田愛菜らに至るまで、子役たちは雑誌やテレビを中心に現在まで継続している。子役でデビューしてその後のスターとして活躍する様を子ども読者らはこぞって自らに置き換え、夢を見る傾向も強まっていく。しかし活躍する子役は一握り程度であって、子役でデビューしたはずが、成果が伸びず、廃業する者たちは少なくない。本研究では子役に憧れる子ども読者に焦点を当てながら、雑誌の役割や影響について見いだすのみならず、子ども読者たちの葛藤についても浮かび上がる。 | ||
同上 | 発表方法:学会発表(自主シンポジウム) 日本保育学会第77回大会(神戸大学)※ウェブ開催 (発表年月日:2024年5月12日) 発表タイトル:「絵本の読み聞かせに必要な技術を高めるチームビルディングの重要性」(話題提供) |
絵本の読み聞かせボランティア支援のためのプログラム開発へ向けた研究について、2022(令和4)年より科研費共同研究としてこれまで行ってきた。当該研究を進めていくうえで、絵本の読み聞かせボランティアの技術を高めることが重要であることがわかってきた。その際に必要なチームビルディングがどのように行われ、読み聞かせ技術が向上しているのか、について本自主シンポジウムで話題提供の一つとして行うものである。そもそもチームビルディングとは、チームのめざす目的や課題などに対して、メンバーの役割分担を行い、さまざまな問題解決に取り組むものである。絵本の読み聞かせ会をはじめとした団体やグループなどのメンバー全体で成長を遂げていくことが期待されている。絵本の読み聞かせ団体、グループではメンバー間で話し合いの機会を設けるなかで、メンバーの信頼関係の構築をはじめ、絵本の読み聞かせの振り返り、選書方法、読み聞かせ技術向上のための気づきなどを出し合いながら、目標を設定し、自らの技術の向上に努めたりすることが行われる。 | ||
同上 | 発表方法:学会発表 日本子ども社会学会第29回大会(JCOMホルトホール大分) (発表年月日:2023年6月3日) 発表タイトル:少年少女雑誌と関東大震災―読者の絆と連帯感をめぐって― |
本稿では、明治期から大正期にかけて発刊されていた少年雑誌、少女雑誌を取り上げ、(『少年世界』、『少女世界』(以上博文館)、『少年倶楽部』、『少女倶楽部』(以上、講談社)および、『金の船』、『金の星』(以上、金の船社)の内容構成とその性格について明らかにするものである。本稿の論述より、以下のことが明らかになったと考えられる。①関東大震災は少年少女雑誌の出版社すべてに大きな痛手となった。②どの雑誌社も愛読者の安否確認など、まずは最優先して取り組んだ。③各雑誌の読者投稿欄では、読者の安否確認、出版社からの励ましのエール、罹災への同情などが掲載された。④講談社は、関東大震災の状況などを読者にすぐさま報知することを取り決め『関東大震災大火災』といわれる雑誌を制作し、多くの国民が手に取ることになった。多くの発行部数を伸ばし、ベストセラーにまでなった雑誌の発刊を通じて読者の関心・興味を一層誘うことになった。⑤また講談社は、野間清治の号令の下、震災直後からすばやく同業他社へ激励の声をかけ、雑誌発刊への希望を持つことになった。すでに出来上がっていた誌面をさきに10月号、11月号と発刊し、12月号については各社休刊の運びとしている。そんななかで講談社の『少年倶楽部』では、毎月震災特集記事を掲載し、愛読者のためにできるだけ早急な対応で、雑誌の復刊に努めていくことになった。(商業主義をいかした展開)⑥『金の船』は後継雑誌『金の星』に受け継いでからも、愛読者の為に発刊を続けた。講談社と異なり、小規模の出版社であった金の船社は震災の影響も少なく、なんとか経営を続けた。震災の罹災について商業主義をいかした講談社に対し、金の船社はまさに社運をかけた大事業となった。最後に関東大震災の罹災を経験した日本の少年・少女雑誌の愛読者らは、震災で何もかも失った絶望のどん底に落とされることになった。読者らは命を落とした多くの人々の分まで、必死に生き抜いていこうと決意することになった。生きていることそのものに幸福を感じながら、将来の人生への希望や夢を捨てようとしなかった。しかし現実はそうではない。彼らはこの苦境から少しでも早く逃がれることができるよう、読者同士で互いに励ましながら、鼓舞し自らが負けない心、折れない心を持つようになった。これにより愛読者らは強い絆、連帯意識を形成することになった。 | ||
同上 | 発表方法:学会発表(ポスター発表) 日本保育学会第77回大会(神戸大学・ウェブ開催)(発表年月日:2023年5月14日) 発表タイトル:読み聞かせボランティア養成の変遷とその特徴(連名発表) |
2011年に「子どもの読書活動推進に関する法律」制定以降、子どもの読者活動の環境整備が進み、図書館や学校、保育施設など様々な場において読み聞かせ活動が盛んに行なわれている。読み聞かせの楽しさを伝える重要な役割の一端を担っているのが、「読み聞かせボランティア」である。本研究は、読み聞かせボランティアの成立過程を読み聞かせ活動の変遷から辿り、読み聞かせボランティアの意義について歴史的側面から考察を行った。考察から、読み聞かせボランティアは、「地域の子どもたちの教育の担い手」「絵本を介した心の交流を生み出す地域の貴重な人材」であることが見い出せた。核家族化、共働き世帯も増加という地域の繋がりがなかなかもちにくい現代、行政と連携しつつ養成や研修を行ない、読み聞かせボランティア活動が今後さらに発展していくことが望まれる。 | ||
同上 | 発表方法:学会発表(ポスター発表) 日本保育学会第77回大会(神戸大学)※ウェブ開催(発表年月日:2023年5月12日) 発表タイトル:雑誌『少女の花』における読者意識の形成に関する研究 |
本発表では、明治期から大正期にかけて発刊されていた少女雑誌の一つでもあった正光社刊行の『少女の花』誌をとりあげ、同誌の内容構成とその性格、読者意識についてその形成過程や特徴について明らかにするものである。なお同誌の保存状況が劣悪であったこともあり、すべての巻号がそろっているわけではないが、戦前期日本の少女雑誌における読者の様相を浮かび上がらすための一助となれば幸いである。少女の花』誌は、大正末期に正光社から発刊された少女雑誌であった。同誌は発刊直後に関東大震災の被害を受け、雑誌社として復興をめざすことになった。少女の投書の多くは被害を見舞う誌面内容であり、大変な時を一緒に乗り越えようとする少女同士の絆がうかがえるものであった。また、少女特有の言葉をちりばめられた文面が掲載され、少女雑誌の性格を映し出していた。同誌は、女学校生徒らばかりではなく、女工らの投稿も見られた。身分や境遇はどうであれ、読者らはいつまでも「少女」であり続けたい思いでいっぱいであった。 | ||
谷原 舞 | 大阪信愛学院大学 教育学部教育学科 専任講師 | 日本における絵本成立史、読み聞かせボランティア | 発表方法:学会発表(ポスター発表) 日本保育学会第76回大会 (発表年月日:2023年5月14日) 発表タイトル:地域における読み聞かせボランティア活動の概念と効果に関する文献的検討 |
地域における子どもを対象とした読み聞かせボランティア活動に関する国内の文献を分析し、ボランティア活動の概念と効果について整理した。 |
同上 | 発表方法:研究発表 第156回日本児童文学学会 関西例会(発表年月日:2024年5月18日) 発表タイトル:松居直の絵本観 ―絵本研究者たちとの関わりを通して― |
戦後の絵本確立の基盤となった松居直の「こどものとも」創刊時の絵本観について、その前身である「母の友」(創刊号~30号)の分析を通して明らかにし、それらが「こどものとも」(創刊号~72号)にどのように反映されているかを示した。 | ||
新美 琢真 | 川崎市市民ミュージアム(美術館チーフ学芸員) | 戦前期の出版文化が漫画表現に与えた影響とその変遷 | 発表方法:資料集の出版 書籍(夜鳥文庫刊)(発表年月日:2023年5月3日) 発表タイトル:『漫画と云う雑誌の研究』 |
戦時中から戦後かけて刊行された雑誌『漫画』の収録内容を網羅した資料集を作成、出版した。論考「漫画と云う雑誌の変遷」を書き下した。 |
同上 | 発表方法:公開講座 川崎市市民ミュージアムのYoutubeにて公開 (公開期間:2023年10月6日~2024年3月29日) 発表タイトル:昔の漫画に詳しくなろう!「昔の漫画(とアニメ)に詳しくなろう!日本初のアニメーションを作った男たち」編 |
国産初のアニメーションは大正6(1917)年1月に、浅草で封切りされた。これを皮切りに他社もアニメ制作に参入、競うように作品が作られ、日本のアニメ産業は幕を開いた。しかし、この時作られた作品はほとんど現存していない。はたして100年以上昔に作られたアニメはどのような作品だったのか、知られざる日本の初期アニメーションの状況を紹介した。 | ||
同上 | 発表方法:復刻版の出版 書籍(夜鳥文庫刊)(発表年月日:2023年10月29日) 発表タイトル:『ノンキナトウサン 誕生百周年記念復刻版』 |
麻生豊『ノンキナトウサン』の誕生百周年に合わせる形で、1923年に出版された単行本を自費で復刻した。本書に併せて、麻生豊の生涯とノンキナトウサンの成立の概要を付した論考、「麻生豊とノンキナトウサン」を書き下した。 | ||
同上 | 発表方法:年表作成 正チャンの冒険 ―ザ・コンプリート―(viviON刊) (発表年月日:2023年11月22日) 発表タイトル:樺島勝一、織田信恒年表 |
『正チャンの冒険 ―ザ・コンプリート―』掲載の樺島勝一、織田信恒の年表を作成した。 | ||
同上 | 発表方法:シンポジウム登壇・発表 youtubeにて公開中、書籍化予定 (発表年月日:2023年12月23日) 発表タイトル:〈漫画史再考〉100年前のニューウェーブ――正チャンの冒険、親爺教育、ノンキナトウサン、そして震災 |
コマ割りマンガを普及させた3作品の連載開始100年に合わせたシンポジウムを学習院大学が開催し、登壇した。「ノンキナトウサンについて」という発表及び、その後の討議に参加した。 | ||
葉口 英子 | ノートルダム清心女子大学(准教授) | 教育テレビと子どもの歌、幼稚園・保育所の放送教育、テレビ文化と子ども | 発表方法:論文 ノートルダム清心女子大学紀要(人間生活学・児童学・食品栄養学編) 48(1)(発表年月:2024年3月) 発表タイトル:NHK 音楽番組『みんなのうた』のアニメーションはいかに制作されたかー1980 年代半ばから90 年代半ばのアニメーターに着目してー |
本研究は、NHKが1961年から放送開始した音楽番組『みんなのうた』を対象に、1980年半ばから90年代半ばにかけての番組テキストの資料をもとに、この時期『みんなのうた』をはじめ子どもの歌をめぐるアニメーターの創造性やアニメーションの種類や手法を明らかとした。 |
秦野 康子 | 名古屋大学大学院人文学研究科 英米文学分野(博士候補研究員) | 英国の児童文学、英文学、女性学 | 発表方法:学会発表 日本英文学会中部支部 第75回大会 (発表年月日:2023年10月28日) 発表タイトル:The Malevolent Valkyrie Shelob in The Lord of the Rings: An Evil Thing in Spider-Form -『指輪物語』における悪のワルキューレ・シーロブ-蜘蛛の形をした邪悪な者- |
悪の象徴として蜘蛛の形をしたvalkyrie で The Lord of the Ringsに登場する唯一の女性の怪物(モンスター)を古代北欧の伝統形式であるvalkyrie とfeminism の観点から分析した。古英語の詩Beowulfに登場するGrendel’s mother と同様の働きをしていると考えられる。さらに、FrodoとSam との戦いをPhialで間接的に助けた、女神的な力を示すGladriel of LothlórienとShelobの関係性をShelobと同じような性質を持ったTolkien の神話の登場人物であるUngoliantと対比し分析し、Shelobの役割を考察した。 |
同上 | 発表方法:論文 名古屋大学英文学会編『IVY』第56巻 掲載(発表年月:2023年12月発行) 発表タイトル:Frodo the Wanderer from the Shire: Self, Elf-Friends, and Community in The Lord of the Rings |
The Lord of the Ringsにおけるhobbit族のFrodo Bagginsの流浪の軌跡をSelf / Elf-friends / Community を鍵として、読み解いた。叔父のBilboとは違い、最初から指輪を保持し、それを破壊するための使命を負った旅は、苦しみ以外のなにものもうみださない、自己を失う旅だったのである。 | ||
同上 | 発表方法:論文 早稲田大学英文学会編『英文学』110号 掲載(発表年月:2024年3月発行) 発表タイトル:The Transformation of Éowyn in The Lord of the Rings: From Warrior Woman to Ecofeminist |
The Lord of the Ringsにおける数少ない女性の登場人物で、自身のことをshieldmaiden であると名乗る女性戦士の Éowyn of Rohan の苦しみに満ちたwanderingsを古代北欧の伝統であるvalkyries とfeminismの観点から分析した。 | ||
日高 由貴 | 大阪城南女子短期大学総合保育学科 講師 | ちりめん本における神と悪魔について | 発表方法:学会発表 第77回日本保育学会(大阪城南女子短期大学紀要投稿予定) (発表年月:2025年3月発行) 発表タイトル:「言葉」及び「表現」の 領域横断的取り組みの可能性について(2)―「ちりめん本」の動物イメージを通して― |
弘田みな子(神戸教育短期大学)柴田精一(大阪城南女子短期大学)齋藤佳津子(学校法人 蓮光学園/パドマ幼稚園)とともにグループ発表を行った。➀「ちりめん本」と動物イメージについての実践活動ワークショップを手掛かりに、領域「言葉」「表現」の相互関連的な活動のあり方について論じた。②幼小接続の取り組みにも連なる「言葉の力」を育成するための保育カリキュラムの検討。(哲学ワークを通して、文化により、あるいは個人により、同じ動物に対して抱いているイメージが異なること、「いい/悪い」という判断基準が、自明なものではなく、思考や対話によっていかようにも変化するものであることへの気づきのための仕掛けをつくり、「言葉の力」を育成する試み)。 |
廣江 咲奈 | 成城大学 大学院 文学研究科 日本常民文化専攻 | 少女雑誌投書欄における没書の扱われ方について | 発表方法:学会発表 日本民俗学会(発表年月日:2023年10月22日) 発表タイトル:やんちや少女の抵抗―1920 年代の『少女の友』における没書を事例に― |
少女雑誌『少女の友』の投書欄において、1920年代に没書になった少女たちを救い上げる欄が出来た。本発表では、それを少女たちの「抵抗」として読み解き、少女雑誌編集者との関係性について明らかにした。 |
同上 | 発表方法:企画展示 吉澤野球博物館資料展示室(発表年月日:2023年7月22日~2023年8月21日 発表タイトル:早慶戦の大乱闘 リンゴ事件から90年 |
東京六大学野球のなかで唯一応援ベンチが固定されている早慶戦。そのきっかけとなったリンゴ事件について、少年雑誌の挿絵や関係者のインタビューの記録から紹介した。 | ||
弘田 みな子 | 神戸教育短期大学(こども学科講師) | 「対話」的保育活動の歴史及び、スキル養成の可能性 | 発表方法:論文 神戸教育短期大学研究紀要 第5号(発表年月:2024年3月) 発表タイトル:幼児の『話す・聞く』活動をめぐる心性史試論―保育における「共主体」を支える対話の可能性についてー |
保育実践の歴史的展開の中で、子どもと保育者、あるいは子ども同士が「対話」することを、ねらいや手法とした実践の歴史をたどり、その時代ごとに子どもたちの「対話」に向けられた大人(保育者・研究者)の心性の変遷を論じた。 |
同上 | 発表方法:学会発表 第14回幼児教育実践学会(発表年月:2023年8月) 発表タイトル:子どもと先生がともに主体的である保育とは〜保育におけるさまざまな「決める」場面〜 |
子どもが主体的に保育活動に参画する手法として、対話の機会、特に子ども達で「決める」機会の担保がもたらす変化について、保育実践者と共同研究を行い、その成果を論じた。 | ||
堀 啓子 | 東海大学文化社会学部(教授) | 比較文学・日本近代文学 | 発表方法:学会発表 日本比較文学会(発表年月日:2023年6月10日) 発表タイトル:明治の文豪から拡がるユニヴァース―尾崎紅葉文学の水脈 |
日本比較文学会第85回全国大会(於、東京外国語大学)に、発表者及び企画者として参加し、日中の研究者ともにワークショップに参加し、尾崎紅葉及び硯友社の文芸の拡がりについて発表した。 |
同上 | 発表方法:講演 日本比較文学会東京支部研究報告 (発表年月:2023年12月3日) 発表タイトル:文学の街・新宿から拡がる魅惑の明治文壇-尾崎紅葉の作品世界から |
東京都新宿区主催:尾崎紅葉没後120年、泉鏡花生誕150年記念イベント「紅葉と鏡花」(於、四谷記念ホール)に企画者及び講師として参加し、尾崎紅葉についての発表を行った。 | ||
同上 | 発表方法:テレビ番組ナビゲーター NHK―BS(発表年月日:2023年12月19日) 発表タイトル:文豪温泉2 |
NHK番組の「文豪温泉2」の尾崎紅葉のパート(30分)にナビゲーターとして出演し、熱海及び那須の、紅葉の所縁の地でのロケで作品解説を行った。 | ||
町田 理樹 | 美学会 | 絵本における詩の言葉-例えば谷川俊太郎ほか- | 発表方法:商業誌(ムック)の書評欄 『たびぽえ』Vol.6 2023年夏号 (発表年月日:2023年7月1日) |
あべ弘士の絵本『よあけ』について書評。 |
同上 | 発表方法:商業誌の書評欄 『詩と思想』2024年1・2月号(発表年月日:2024年1月1日)発表タイトル:ことばのメテクシス |
谷川俊太郎(文)、樋勝朋巳(絵)の絵本『こっちとあっち』についての書評。絵本のテクストにみる谷川の言語観とその特質について。 | ||
宮田 航平 | 東京都立産業技術高等専門学校(准教授) | 戦後児童出版メディアにおける「童話」の編成 | 発表方法:学会発表 日本児童文学学会2023年度6月例会 (発表年月:2023年6月) 発表タイトル:『びわの実学校』は「現代児童文学」を語るか――《童話の柱》を視座として |
日本児童文学学会例会での研究発表。「現代児童文学」における童話雑誌『びわの実学校』の位置付けや役割について、あまんきみこや宮川ひろを中心に整理するとともに、新発見資料に基づいてあまんきみこの「出発期」について再考した。 |
同上 | 発表方法:学会発表 あまんきみこ研究会第11回研究会 (発表年月:2023年9月) 発表タイトル:「車のいろは空のいろ」はなぜ「更新」されたか――「三巻本」と「四巻本」の成立をめぐって―― |
あまんきみこ研究会のシンポジウム「更新された『車のいろは空のいろ』全4冊をめぐって」に登壇し、発表とディスカッションを行った。「車のいろは空のいろ」シリーズの改稿やシリーズの変遷について、「昔話」という観点から検討を行った。。 | ||
同上 | 発表方法:学会発表 日本児童文学学会第62回研究大会 (発表年月:2023年11月)発表タイトル:詩と絵本のことば―林木林さんに聞く |
日本児童文学学会の研究大会において、詩人・絵本作家として活躍する林木林への公開インタビューを行った。これまでの林木林の活動を振り返るとともに、具体的な絵本出版の過程から「詩のことば/絵本のことば」について検討を行った。 | ||
吉野 莉奈 | 立命館大学大学院 博士後期課程1回生 | 川端文学における「おとぎばなし」と女性の願い | 発表方法:書評 『論究日本文学』第119号 (発表年月:2023年12月) 発表タイトル:〔新刊紹介〕瀧本和成・深町博史編『森志げ全作品集』 |
森鷗外の妻である森志げは、明治四二年〜大正元年の三年間に全二四篇の小説を発表した。彼女の全作品を収録し、現代に蘇らせた『森志げ全作品集』の紹介文。 |
同上 | 発表方法:学術書(共著) 『〈転生〉する川端康成Ⅱ アダプテーションの諸相』仁平政人・原善/編(文学通信刊)(発表年月:2024年3月) |
担当範囲:Ⅲ紹介編(映画38「イタリアの歌」・映画44「白い花」・テレビドラマ15「朝雲」・舞台35「頬づえ」漫画13「薔薇の家」) | ||
同上 | 発表方法:論文(単著) 『立命館文学』第685号 (発表年月:2023年8月) 発表タイトル:川端康成「薔薇の家」論ー愛の「おとぎばなし」の実現を描くー |
川端康成文学には「おとぎばなし」という語が度々登場する。その一つとして、本研究で扱った「薔薇の家」(『少女倶楽部』昭和九年二月号)が挙げられる。本作は、川端が愛の「おとぎばなし」の実現を描いた作品であり、優しい愛の永続=「美しいおとぎばなし」であると論じた。主題の分析のため、〈薔薇の精〉の正体・本作における「愛」の多義性・薔薇の表現が意味することを考察した。また、本作の表現や川端自身の言説(「少女と文藝」(『若草』(大正一五年三月号)・「解説」「『世界少年少女文学全集』(昭和三三年三月)から、本作によって「おとぎばなし」の実現を描こうとした川端の意図を推察した。死によって失われることのない愛=「おとぎばなし」への全面的な肯定を描くことが可能であったのは、本作が「少女のための小説」として書かれたゆえと結論づけた。国際児童文学館所蔵資料は、『少女倶楽部』の昭和八年〜九年巻を参照した。 |
グループ
- グループ名:香曽我部絵本研究室
- メンバー:代表者 香曽我部秀幸(梅花女子大学 教授)、児玉茜(国立国際美術館/金城学院大学)、木戸まや(梅花女子大学)、関純奈(愛知工業大学附属図書館)、新名洋美(摂南大学)※所属団体(当時)
- 研究テーマ:近現代の絵本における表現の研究
発表タイトル | 発表方法等 | 発表の概要 |
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林明子の絵本制作過程の研究 | 発表方法:学会発表 第26回絵本学会大会 (発表年月日:2023年6月17日) 発表者:関 純奈 | 林明子自作の代表作品『こんとあき』のダミー本を詳細に分析検討することによって、制作を進める中で削除・追加された代表的な要素を取り上げ、その変化がもたらす意味を考察した。 |
林明子の絵本制作過程の研究 | 発表研究ノート 絵本学(絵本学会研究紀要)26号 (発表年月日:2024年3月30日) 発表者:関 純奈 | 林明子の『こんとあき』に関するダミー本7冊から刊行作品までのストーリーの変遷を表に表して分析し、本人へのインタビューに基づく制作背景に照らすことで、林の絵本制作姿勢について考察した。その結果作品に内包されたテーマが制作の過程で変化している点について、その経緯や背景にあるものの探求を試みた。 |
食育絵本の変遷と分析 | 発表方法:研究発表 2023年度前期梅花女子大学大学院合同研究発表会 (発表年月日:2023年9月27日) 発表者:新名 洋美 | 絵本を食育に活用する方法を探るため、1995年から2022年以前に出版された日本国内の作家による絵本から「食育」に関する作品を抽出し、食育の視点から分類・分析を行い、絵本の中で食育がどのように扱われているかを考察した。 |
卒業論文による発表
名前(敬称略) | 所属団体(当時) | 研究テーマ | 発表方法等 | 発表の概要 |
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鈴木 彩夏 | 京都ノートルダム女子大学国際言語文化学部 | 現代における書店の形態変化 | 発表方法:卒業論文 京都ノートルダム女子大学国際言語文化学部 (発表年月:2024年3月) 発表タイトル:現代における書店の形態変化 | 本論文では近年の書店減少に伴いみられる書店の形態変化について、その要因や需要の高さを明らかにすることを目的としている。インターネットの発達に焦点を当て「メディアの進化に合わせ書店も変化した」という仮説を元に、過去の出版状況や書店の歴史を分析し、ブックカフェをはじめとした近年みられる新しい書店形態について検証考察を行った。その結果、オンライン書店とリアル書店では別の役割が求められていることが明らかになり、本を起点とした空間やライフスタイルづくり、書店という場所がさまざまな文化・芸術体験を共有する場になっているということが本研究を通して明らかになった。 |
南 泉 | 京都ノートルダム女子大学国際言語文化学部 | 英国児童ファンタジー文学に表れる思想 ~「ナルニア国物語」と「ハリー・ポッター」の比較から~ | 発表方法:卒業論文 京都ノートルダム女子大学国際言語文化学部 (発表年月:2024年3月) 発表タイトル:英国児童ファンタジー文学に表れる思想 ~「ナルニア国物語」と「ハリー・ポッター」の比較から~ | 本論文では、「ナルニア国物語」と「ハリー・ポッター」シリーズという二つの英国ファンタジー文学の間にある世界観の違いを生み出す要素について明らかにすることを目的とした。そして、その違いが両者の宗教観をはじめとする思想の違いから出ているのではないか、という仮説を元に、比較検証を行った。その結果、「ナルニア国物語」と「ハリー・ポッター」シリーズの違いを決定づける要素は、作者が作中に反映させた作者自身の思想の違い、その中でも特にキリスト教的思想の有無にあるという結論に至った。 |