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本蔵-知る司書ぞ知る(143号)

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本との新たな出会いを願って、図書館で働く職員が新人からベテランまで交替でオススメ本を紹介します。大阪府立中央図書館の幅広い蔵書をお楽しみください。

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2026年9月20日版

今月のトピック 【食を感じる】

食欲の秋。食べることが楽しい季節です。おいしそうな見た目、「ばりばり」「ざくざく」「ぱりっ」「さくっ」といった食感やその音も食べる楽しみのひとつです。今月のトピックでは「食を感じる」本3冊を紹介します。

五感で楽しむ食の日本語』(ポリー・ザトラウスキー/編 くろしお出版 2021.12)

春は牡丹にちなみ「ぼた餅」、秋は萩に寄せて「おはぎ」と呼び分ける。和菓子の名には季節を表すものが多くみられます。本書はそんな食にまつわる日本語表現を考察しています。クックパッドの料理名にはどんな食感のオノマトペが使われているか、文学作品の食の描写から登場人物の性格や関係性を読み取るなどの研究があり、食の表現の奥深さを感じます。

「おいしさ」の錯覚:最新科学でわかった、美味の真実』(チャールズ・スペンス/著 長谷川圭/訳 KADOKAWA 2018.2)

「おいしさ」には、味覚や嗅覚だけでなく、視覚、聴覚、触覚、記憶や思い込み、雰囲気も影響することを研究した本です。四角より丸いチョコレートのほうが甘く感じたり、重いスプーンで食べたほうがおいしく感じたり…。音響調味(ソニック・シーズニング)とともに味わう料理などが紹介されていて、食の世界のさまざまな試行錯誤がうかがえます。

美食三昧:ロートレックの料理書』(トゥールーズ=ロートレック/著 モーリス・ジョアイヤン/著 座右宝刊行会編集部/訳 座右宝刊行会 1974)

画家ロートレックのレシピを親友のジョワイヤンが整理し、1930年に“La Cuisine de Monsieur Momo”として出された本の翻訳書です。ロートレックの挿絵がランダムにちりばめられていて、画集のようでもあります。レシピの文章は独特です。おいしそう!と思えるものから獲物を捕まえる描写などがグロテスクに思えるものもありますが、それも興味深く、その人柄と当時の雰囲気を感じることができます。

今月の蔵出し

めねぎのうえんのガ・ガ・ガーン』(多屋光孫/文・絵 合同出版 2021.12

「めねぎ」とは、芽が出て間もない細いネギのこと。400年の歴史がある、めねぎ農園の社長である鈴木さんのところへ、特別支援学校の先生が、二人の生徒を働かせてくれないかと連れてきます。頼りなさそうな二人に仕事ができるわけがないと思った鈴木さんは、めねぎを育てるのはとても難しく、長年の訓練が必要なんだと断ります。しかし、先生はある工夫を提案。その工夫で作業すると、長年の訓練がなくても作業できそうだと判り、鈴木さんは「ガーン」。その他、「ちゃんと」やっておいてと指示したことをできない生徒を拒絶する鈴木さんに、「ちゃんと」ではなくて、もっと具体的にわかりやすく教えてあげないといけないと先生に指摘され、またまた「ガーン」。具体的に伝えたら、ちゃんとできました。

他にも「ガーン」はあって、「ガーン」があるたびに農園はどんどんと、誰もが働きやすい職場になっていきます。「ガーン」(気づき)が始まる前は、なかなか従業員数が目標の100人に達しませんでしたが、「ガーン」の後、障がいのある人たちが仲間に加わるようになると、不思議と若者、高齢者、女性も集まるようになり、100人が働く農園になりました。私自身も読んでいて、こんな職場が近くにあったら働いてみたいと思いました。

さて、本年7月に、事業者に課されている「障がい者の法定雇用率」の引き上げが行われました。歓迎すべきことですが、この農園のように誰もが働きやすい職場ならば、雇用率の向上を特段意識しなくても、自然といろいろな人たちが集まり、そこには自然と法律で「障害者」に定義されている人たちも含まれるだろうと想像できます。

本書は「子どもといっしょに『障害』を身近に考える絵本」と銘打たれていますが、子どもだけでなく、経営者や組織のリーダーにもお薦めしたい一冊です。

【天野】

中野のお父さんは謎を解くか』(北村薫/著 文藝春秋 2019.3)

「ほ?」 主人公の文宝出版に勤める大学体育会出身の編集者田川美希がよく口にする、「は?」でも、「へ?」でもない、この「ほ?」という力の抜けた相づちが、この小説全体のほんわかした雰囲気を醸し出しているように思います。
そしてもう一人の主人公ともいうべき重要人物は、高校国語教師である美希の父親である「中野のお父さん(東京都中野に実家があるので)」です。この娘と父が日常と本に関する謎を解き明かしていく物語です。美希が持ち込む様々な「謎」を「中野のお父さん」が豊富な文学に関する知識で解決していくのですが、解決できたと美希がほっとしたところで、「まだ終わりじゃない。」と続きの展開を話し始めるところが一筋縄ではいかない「中野のお父さん」の凄さです。

「<中野のお父さん>シリーズ」は、シリーズ化されており、現在、単行本として4冊刊行されています。今回ご紹介するのは、その2冊めにあたる『中野のお父さんは謎を解くか』です。こちらには八つの短編が収められていますが、いくつかをご紹介します。

「縦か横か」
こちらには、美希が担当する作家が講演で語る形で、2つの謎が出てきます。最初の謎は『クオレ物語』の翻訳に関することで、何年もたってから謎が解明されるお話です。そして2つめは、1つめと「意外な犯人」のキーワードでつながる自動車当て逃げ事件。昔読んだ雑誌の読者投稿記事からのエピソードです。

「水源地はどこか」
松本清張の作品に対する評論家の模倣を疑う批評記事から、清張と批評家の間に繰り広げられた推理小説に関する論争のお話で、後年になってから、丹念にたどって調べていく面白さを感じました。

日常のちょっとした謎から、有名な作家の埋もれていたエピソードを各種資料から掘り起こして「謎」を解明していくところが、図書館でのレファレンス調査のようで、興味深いです。しかも、古書店めぐりが趣味で若いころから買いためてきた古書等の自分の蔵書の中からキーポイントになる資料が、過去に読んだ記憶とともに魔法のように出てくるところが「中野のお父さん」のすごいところです。
「<中野のお父さん>シリーズ」は、最近では『オール読物2026年3・4月号』に最新作が掲載されており、今後も刊行が続くのが楽しみな作品です。

【たま】

 

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