大阪府立図書館

English 中文 한국어 やさしいにほんご
メニューボタン
背景色:
文字サイズ:

本蔵-知る司書ぞ知る(142号)

大阪府立図書館 > TOPICS > 中央 > 本蔵-知る司書ぞ知る(142号)

本との新たな出会いを願って、図書館で働く職員が新人からベテランまで交替でオススメ本を紹介します。大阪府立中央図書館の幅広い蔵書をお楽しみください。

》「本蔵」の一覧はこちら

2026年8月20日版

今月のトピック 【縁日】

子どもの頃、近くで縁日があるとワクワクして出かけたものです。綿菓子、焼きそば、金魚すくい…屋台のひとつひとつに心が躍りました。浴衣を着て小銭を握りしめ、どれを買おうか真剣に悩んだのも良い思い出です。今月は、縁日に関する本を3冊ご紹介します。

露店市・縁日市』(秦孝治郎/著 白川書院 1977)

 縁日とは元来、神仏と縁を結ぶ日のことです。18日の観音、8日と12日の薬師など様々な日があります。縁日には参詣のために人が集まるので、市が立ち、露店が開かれるようになりました。本書では、縁日の起源と歴史に加えて、日本や世界各地の露店についてなど、幅広い話題が取り上げられています。

東京の市と縁日 TOKYO情緒歳時記 えどをさがす半日旅 (あるすぶっくす 20)』(婦人画報社 1994.12)

東京の市と縁日が豊富な写真とともに紹介されています。また、針金細工、べっ甲飴、モール細工などを扱う露天商へのインタビューでは、縁日を支えてきたプロたちの技と人生に光が当てられています。

p.126-127「全国の市と縁日」では大阪の縁日として、「今宮神社十日戎(1月10日)」と「四天王寺縁日(毎月21日)」が載っています。

えんにち』(五十嵐豊子/え 福音館書店 1977)

 お兄ちゃんと妹は、二人で縁日に出かけます。2ページ目からは文字が無く、絵だけで縁日の様子が描かれます。綿菓子、お好み焼き、ひよこ売り、ヨーヨー釣り、鯛焼など、次々に夜店が出てきます。売られている品物や行き交う人々が細かく描き込まれており、見ていると自分も縁日に来たような楽しい気持ちになれます。

今月の蔵出し

ダイヤル7をまわす時』(泡坂妻夫/著 光文社 1985.12)

 ジンクスや迷信に抗えない心の不可解さ。人間の愛すべき一面を、泡坂さんは非合理と切り捨てずミステリに組み込みました。「人間らしさを感じるミステリ」、これは泡坂作品の大きな魅力の1つだと思います。
 先生のミステリは技巧面もぴか一です。ユーモアに富んだ文章で読者を煙に巻きながら、ラストの大仕掛けへ誘う。ネガフィルムの白黒が反転するように事件の鮮明な構図が浮かび上がるとき、読者はまた一段と作品の虜になっています。
 これだけ技が優れていても、作品には威張ったところがありません。どれも親しみやすい作品ばかりです。それは泡坂さん自身が、人をあっと驚かせることを純粋に楽しんでいたからだと思います。ミステリに真摯に向き合い、創作を無邪気に楽しみ、読者を想像して相好を崩す。私は作品を読むたびに、先生のそんな姿を思い浮かべてしまいます。

 『ダイヤル7をまわす時』も、泡坂さんの魅力がつまったミステリ短編集です。特に表題作「ダイヤル7」は犯人当ての超逸品。タネを見破ったと得意になっても、あっさり予想を超えてくる仕掛けに、柔道の達人から一本背負いをくらったような衝撃を受けました。
 なお、本作は2023年に創元推理文庫より復刊されています。私は創元推理文庫の方を読みましたが、作家の櫻田智也さんによる解説まで含めて白眉な一冊です。

 この機会にぜひ泡坂さんの作品世界を味わってみてください。
 私もまた、泡坂妻夫さんのことを、ともに語れる友人を、いつだってさがしています。

【時雨】

マンション 狙われる修繕積立金:談合・なりすまし・外部管理者(平凡社新書)』(山岡淳一郎/著  平凡社 2026.6)

 国土交通省がウェブサイトで公開している「分譲マンションストック数の推移(2024(令和6)年末現在)」によると、2024年末時点でのマンションストック総数は約713.1万戸あり、国民の1割超(約1,600万人)が居住していると推計されています。「分譲マンション」と言われる居住形態は戦後に登場した新しいものですが、右肩上がりで増えており、今後も増え続けると考えられます。

 一方で近年では、分譲マンションが抱える課題が浮き彫りになってきています。住民の高齢化と建物の老朽化という「二つの老い」が同時に進行し、管理不全に陥るマンションが増えているのです。

 本書は、このような状況で発生したマンション管理にまつわる不正や利権構造等に迫ったルポルタージュです。具体的には、住民になりすまして大規模修繕に関与しようとした施工会社の社員が逮捕された事件や、公正取引委員会による一斉立ち入り検査で話題となった大規模修繕工事に関する談合問題といった最新のトピック等について、詳しく取り上げています。

 また、これまでに発生した「欠陥マンション」に関する生々しい事例を複数紹介しているほか、我が国におけるマンション政策の系譜や年表もまとめられており、分譲マンションの歴史も概観できる内容になっています。

 2025年には、マンション管理の課題を打開するため、「区分所有法」等のマンション関連法が一括改正されました。改正法の主要部分は2026年4月に施行されており、まさに今年から、マンション管理に関わる制度が大きく変わっています。本書ではこのような変化についても取り上げ、マンションの管理組合等がどう向き合っていけばよいのかも模索しています。

 本書は新書ですのでコンパクトにまとめられていますが、この一冊で分譲マンションを取り巻く社会状況のほか、歴史や課題についても知ることができます。マンションはもちろん、「住まい」に興味のある方も是非ご一読ください。

【隊長】

PAGE TOP