本蔵-知る司書ぞ知る(140号)
本との新たな出会いを願って、図書館で働く職員が新人からベテランまで交替でオススメ本を紹介します。大阪府立中央図書館の幅広い蔵書をお楽しみください。
2026年6月20日版
今月のトピック 【こどもの市販薬乱用】
近年、中高生を中心に咳止め薬や風邪薬といった市販薬の乱用(OD:オーバードーズ)が増加していると様々な場面で指摘されています。その背景には何があるのでしょうか。今月はこどもの市販薬乱用について考える本を3冊紹介します。
『オーバードーズする子どもたち:なぜ、「助けて」が言えないのか?』(松本俊彦/著 合同出版 2025.10)
こどもが市販薬を乱用するのはトラウマに関連する様々なこころの痛みや生きづらさ(フラッシュバックや希死念慮など)を紛らわせたり忘れたりするための対処として行っていると、精神科医で薬物依存症の治療を専門とする著者は指摘します。そのうえで、生きづらさを抱えるこどもたちとどう向き合い支援や治療につなげていくのか、具体例を交えながらまとめている一冊です。
『オーバードーズな人たち:ホスト!立ちんぼ!トー横! 慶應女子大生が歌舞伎町で暮らした700日間』(佐々木チワワ/著 講談社 2024.2)
本書は歌舞伎町を“地元”とよぶ著者による「歌舞伎町民」の観察記録です。歌舞伎町には夜職の人や居場所のない人など様々な背景を持った人が集まり、その中には「オーバードーズ」をする人も含まれます。本書を読むと、様々な生きづらさを抱えながらも日々を生きている人たちの生々しい生きざまが見えてくるようです。
『傷つけ合う子どもたち:大人の知らない、加害と被害』(石井光太/著 CEメディアハウス 2025.11)
学校に通っていたころ、同調圧力や閉塞感、停滞感にも似た息苦しさを感じたことはないでしょうか。あるいは大人からの理不尽さを経験した人は少なくないかもしれません。本書はそんな「学校に通っているからこそ感じるリアリティ」を感じさせる一冊です。現代を生きるこどもが感じている生きづらさを窺い知れるのではないでしょうか。
今月の蔵出し
『十歳のきみへ:九十五歳のわたしから』(日野原重明/著 冨山房インターナショナル 2013.11)
人生100年時代と言われる時代となりました。著者の日野原重明さんは、105歳まで様々な活動を続けてこられたお医者さんです。「成人病」という言葉に代えて「生活習慣病」という言葉を使うように働きかけてこられた方、民間の病院としては初めて人間ドックを導入した方でもあります。本書は、全国の小学校などで「いのちの授業」を行ってきた著者が10歳ぐらいの子どもたちに伝えたい内容を、子どもたちを思い浮かべながら、ゆっくり会話するつもりで書かれたお話です。やさしい語り口が想像され、じんわりと心に沁みこむお話です。
著者がお医者さんということもあり、いのちを、そして生きているということを、とても大切に考えていることが伝わる言葉が、たくさんちりばめられています。例えば「わたしがイメージする寿命とは、手持ち時間をけずっていくというのとはまるで反対に、寿命という大きなからっぽのうつわのなかに、せいいっぱい生きた一瞬一瞬をつめこんでいくイメージです」という言葉があります。私もある程度年齢を重ね、「人生の半分くらいは生きたのかなあ、あとどれくらい生きる時間が残っているのかなあ。」と考えたことがあります。上記の言葉に触れて、「ああ、まだまだ生きた一瞬一瞬を詰め込んでいったらいいんだな。」と、うれしい、勇気づけられる気持ちになりました。
また、著者は、寿命という与えられた時間を「自分のためだけにつかう時間」と「ほかの人のためにつかう時間」に分けて考え、子どもたちにも、成長して大人になったら、自分の使える時間を自分のためだけでなく、ほかの人のためにも使ってほしいと伝えています。
私の子どもも十歳を少し過ぎました。ゆっくりできる休日に子どもいっしょに読みたい、いのちについて大切なことを教えてくれる本です。
【Poco】
『やさい:もっとおいしく、もっと知りたい』(真木文絵/編 幻冬舎エデュケーション 2011.11)
小説の中で、知らない野菜や果物が登場することってありませんか?
私は今まで、名前は知っているけれど見た目や食べ方の想像がつかない野菜や果物に遭遇し、モヤモヤしながら本を読み終えたことが何回かありました。
作中であんなにも美味しそうに描かれる食べ物たちを、上手くイメージできないことに悲しみを覚え、重すぎない本を探していた時に見つけたのが、この本です。
本書は作物の基本情報はもちろん、おいしさの見分け方、保存法、食べ方のポイントなどといった、作物に関する情報がたっぷり詰まっています。
スーパーでは見かけないものから、トマトなどのメジャーなものまで様々な野菜や果物が掲載されています。もちろん各野菜・果物のカラー写真付きです。
私のモヤモヤだった、宮沢賢治作『風の又三郎』に出てくる「かりん」、モンゴメリ作『黄金の道』に出てくる「ルバーブ」の掲載もあり、無事すっきりすることができました。
【はにわ】