大阪府立図書館

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ビジネス支援サービスの紹介

更新日:2014年2月12日


 大阪府立中之島図書館は、平成16年4月から「ビジネス支援サービス」を開始しましたが、具体的にどのようなサービス、どのようなレファレンスが行われているのか疑問に思われる方も多いかと思います。そこで、当館のビジネス支援サービスにおけるレファレンスについて書かれた『図書館雑誌』の記事を以下に紹介いたします。基本的に図書館員向けに書かれた内容ですが、当館ビジネス資料室のレファレンスを利用する一助になれば幸いです。

大阪府立中之島図書館では2004(平成16)年4月に「ビジネス支援室」を開設し、これから事業を始めようとする人、営業や企画のためのデータを探している人、キャリアアップしようとする人等に、必要な資料・情報を提供することを目的に「ビジネス支援サービス」を開始しました。

これは大阪のビジネス街の中心に立地し、利用者の多くを占めるビジネスパーソンのニーズに対応し且つ館の有益性を向上させるというコンセプトのもとに行われました。具体的には、3門・6門を中心にビジネスの調査に役立つ図書・雑誌・新聞を充実させると同時に、電子媒体についても新聞・雑誌検索や書式集、判例集といったオンラインデータベース、インターネット端末を整備しました。また定期的にビジネスセミナーを実施し、「ネットショップ」や「ベトナム投資」、「貸借対照表」等旬のテーマについて外部講師にお話しいただき、利用の促進を図っています。他にもメールマガジンの発行やパスファインダー、ポータルサイトの整備等、来館・非来館者いずれにもこちらから働きかけビジネスに関する情報を提供できるよう努めています。

1904(明治37)年に開館し、今年で102年という歴史をもつ当館は重要文化財に指定されており、かつては大阪商工の隆盛を図って創設されました。そして21世紀に入り改めてビジネス支援を行う図書館として再出発し現在に至り、財政難の中でどのようなサービスが展開できるか模索する日々が続いています。そのような中で行われたレファレンスの一部をここで紹介いたします。その1は当室におけるオーソドックスな事例、その2は当室の資料を駆使してお答えした事例、その3は当室では調べきれなかった事例について記述いたします。

その1:レンタル業の概要と企業、契約書式を調べたい

 利用者が何を必要としているか把握し、広い概念から徐々に絞り込むことはレファレンスの基本ですが、ビジネス支援サービスにおけるレファレンスでも基本が重要だと日々感じます。
このレファレンスに関しても、「レンタル業」の中でも特に企業向けに機器の貸与を行う業種についての情報を必要としておられるようでしたので、まず『サービス産業白書』(矢野経済研究所 2006年3月)を確認すると「リース業」という箇所に比較的まとまった記述がありました。ここで得た「リース」という言葉から調査し、『リース・ハンドブック』(リース事業協会 2003年8月)に業界概要・協会会員会社名簿(約300社)、雑誌『LEASE』(リース事業協会 月刊)に最新動向が記述されていること、『契約書式の作成全集』(自由国民社 2002年5月)・『リースの会計処理と税務』(中央経済社 2003年11月)に動産の貸借契約書式例が収載されていることを回答いたしました。するとこの利用者はお伝えするが早いか素早く資料を確認すると同時に複写手続きをすませ、複写物を手にあっという間に退館されました。
ビジネス支援室のレファレンスは他でのそれに比べて、今回のように素早く目的を達することを重視する利用者が多いように思われます。「利用者の時間を節約する」ため司書は基本に忠実に、そして一層のスキルアップが求められます。またこの傾向はもしかすると大阪ビジネスパーソンの「時は金なり」という大阪商人気質を反映したものかもしれません。

その2: 過去の有価証券報告書虚偽記載事件について調べたい

 昨今粉飾決算や証券取引法違反に関する報道が世間を騒がせますが、当館においてもこういった類の情報について調査の足がかりを得ることができます。
今回のケースでは今から10年程前のものに遡りたいとのことで、まず手始めとして新聞記事に当たられてはどうかと案内いたしました。当館では朝日新聞、日経新聞、毎日新聞、読売新聞のオンラインデータベースを用意しており、記事の検索・閲覧、その他企業検索等各機能を無料でご利用いただいております。こちらを用いて事件の経緯、正確な時期を把握した後、有価証券報告書自体を参照いただきました。当館は、2004(平成16)年度大阪証券取引所から有価証券報告書マイクロフィルムの寄贈を受け、戦後証券取引所が開設された1949(昭和24)年から2001(平成13)年9月期までの大阪証券取引所及び東京証券取引所上場企業の有価証券報告書を閲覧いただけます。本件では判例集のオンラインデータベースを併せて確認いただき、事件の概要についての情報を入手いただけたようでした。
本事例のように、有価証券報告書等個別企業情報の充実はビジネス支援サービスにおいて極めて重要であると思われます。当館においては過去のものと併せて最新の有価証券報告書についてもインターネットを用いて提供するほか、会社史の収集、名簿・名鑑類の収集にも重点的に取り組んでいます。社史コーナー、名簿コーナーをビジネス支援室内に設け、いずれもホームページにて資料一覧を公開しています。今後もさらなる充実を図ると同時に、広報・利用促進を行ってゆく必要性を強く感じます。

その3: タングステンを扱っている外国の企業を知りたい

 当館は2004年にビジネス支援サービスを開始したと冒頭部で述べましたが、開始3年目を迎え少しずつ資料群の整備がなされているものの、まだまだ充分な蓄積があるとは言い難い状況です。こういった条件の下、専門的な資料を所蔵する類縁機関について把握し、いかに的確な機関を紹介するかが重要になると思われます。
本件は市町村の図書館からWebにて受け付けた事例で、事前に『The Economics of Tungsten』という資料の存在は確認したが国立国会図書館でも未所蔵とのことでした。この資料は金属および鉱物の調査会社Roskill Information Services, Ltd.(本社:ロンドン)の発行でタングステン産業に関する包括的な報告書のようですが、所蔵機関は確認できませんでした。当館所蔵の資料では、タングステン鉱の生産の8割以上が中国によるものであること、日本の輸入も7割以上中国に集中していることは『資源エネルギー年鑑2005-2006』(通産資料出版会 2005年4月)、『世界国勢図会 2003/04』(矢野恒太記念会 2003年9月)等で確認できましたが、企業に関する情報は確認できませんでした。
当館未所蔵の資料に関して、鉱業に関する専門図書館として金属資源情報センターが図書館を設けており、蔵書検索をインターネットにて公開しておられます。こちらを参照すると『希少金属データブック マンガン コバルト タングステン』、『WORLD METAL STATISTICS YEARBOOK』等、会社情報が収録されているかは未確認ですが複数のヒットがありました。こちらの機関を紹介すると同時に、当館から程近く海外情報が充実した「ジェトロ・ビジネスライブラリー大阪」、海外との商品取引に関する情報をお持ちの「大阪国際ビジネス振興協会」を紹介いたしました。
今回は対図書館ということでしたが、対個人の場合は協力貸出が可能か、複写物の送付が可能か等を問い合わせることになります。こういった事例を積み上げることで、まだまだ未熟な資料群しか持たない当館でも、充実した資料を持つ他機関についての情報を提供することによって一定のレファレンス水準を保つことができると思われます。
 大阪府立図書館は総合図書館として中央図書館を設けており、当館の収集範囲以外の資料はそちらから取り寄せて提供しています。ただ資料を手にとって選べない点や、資料の到着が翌日以降になる点等不便も多く、ビジネス支援サービス開始当初は毎日のようにお叱りを受けました。しかし最近では会社員風の利用者の割合が以前にもまして増加しているように思われ、当館の方向性が段々と定着してきたように感じます。
当館は昨年10月に、よりビジネスパーソンが利用しやすいよう平日の開館時間を19時から20時まで延長し、休館日であった月曜日を開館日としました。また前述した図書類の収集に加え、所蔵業界紙は100タイトル、ビジネス関係雑誌も300タイトルを超えました。「なかなかのもんやないか」と言っていただくべく、これら資料をフル活用しレファレンススキルの向上に励むとともに、先進館を手本にしつつ当館の特色も出してゆけるよう、より一層の拡充を図ってゆきたいと考えております。
『図書館雑誌』2006年7月号(Vol.100 No.7)(日本図書館協会)
「れふぁれんす三題噺・131
商売繁盛のお手伝い-商都大阪のビジネス支援」(徳森耕太郎)より

 このコーナーの記事掲載から時間がたっておりますが、そのまま掲載しております。なお、その3についても現在では『資源メジャー・金属部門の動向調査』等の資料からより多くの情報を得ることができるようになっています。日々の調査相談から不足資料を確認し、収集していくように努めております。その調査結果についてはレファレンスデータベース図書館調査ガイドに掲載し、図書館の調査スキルを皆様と共有できるように努めています。現在の業界新聞の所蔵タイトルは400以上に増加しております。(2014年2月12日)


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