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第88回小展示(大阪資料・古典籍室1)
平成21年1月9日(金)〜3月11日(水)  (入場無料)

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シリーズ 観光の大阪展
−旅行案内書[ガイドブック]に見る大坂 大阪 OSAKA−

第5回 A GUIDE BOOK to OSAKA 〜国際観光都市 OSAKA〜  

 

昨年の5月31日から始まった「観光の大阪展」。旅の必携、旅行案内書を通じて、これまで近世の、大大阪時代の、郊外の、そして中之島のすがたを紹介してきました。


旅行案内書は見所、宿泊、交通などの客観的なデータが並べられただけの本ではありません。
旅行案内書の内容を「取捨選択」する主体的な読者側の嗜好と、「編集」という工程のなかでの編集者側の意図が反映されます。旅行案内書として「売れる」ためには、これら両者が一致することが必要なことではないでしょうか。
この2つの一致点は時とともに変化し、それがその時代時代の観光地のイメージとして現れてくると思います。また、観光が大衆化という歴史の中から生れたという事実を考えると、観光地のイメージは、大衆に向けて書かれた旅行案内書を読むことによって紐解かれるものといえるでしょう。


最終回となる今回は、外国にむけた“OSAKA”を旅行案内書を通してご紹介します。ここでは、読者と編集者が異なる文化に属しており、日本人が日本人向けに発行する旅行案内書とはおのずから異なるものとなります−日本の風俗・習慣についての説明や日本語対訳など-。そんな他国の人たちへの大阪の紹介や捉え方の違いを旅行案内書から読みといていただければ、と思います。



A 第五回内国勧業博覧会の頃


1903(明治36)年3月1日から、天王寺を会場に第五回内国勧業博覧会が開催されました。
もともと、内国勧業博覧会は国の産業を奨励し、富国をはかることを目的としていました。第一回の内国勧業博覧会は、1877(明治10)年に東京上野公園で開かれ、第三回までは東京で、第四回は京都に会場を移しました。
大阪が会場となった第五回内国勧業博覧会は、それまでの勧業博覧会と同様に「富国」をはかるという目的を持っていました。その一方で、メリーゴウランドやウォーターシュートなど娯楽施設が並び夜間にイルミネーションが灯されるなど「観光地」としての側面を持っていました。
また、欧米諸国が出品し、「日本初の万国博覧会」とも称されたといいます。そのためでしょうか。第五回内国勧業博覧会の旅行案内書には外国語のものが発行されました。The souvenir guide to Osaka and the fifth national industrial exhibition


1 The souvenir guide to Osaka and the fifth national industrial exhibition

Hakurankai Kyosankai 1903(明治36)年 (708-80)

口絵に第五回内国勧業博覧会の会場図があり、本編で大阪府内の名所の写真や説明を載せています。1日で大阪市内をくるりと1周できるコースも紹介されています。結構ハードなスケージュールで、“Tenma Vegetable Market”“Tenma Tenjin Temple” “Sempukan”“Tennoji”。“Evening”は“Shinsaibashi-suji”“Dotonbori”“Sennichimaye”でお過ごしください、といったものです。 英日対訳付で、“Can you speak English?”は「Eigo wo ohanashi nasaimasuka?」とあります。


2 大阪博覧会便覧

裕隣館 1903(明治36)年(378-23#)

中国語による案内書です。冒頭に「大阪博覧会便覧一書。専為清国士商赴会而作」と書かれています。大阪市内の東西南北各区と三島郡、豊能郡、泉北郡、泉南郡、北河内軍、中河内郡、南河内郡の名所を紹介しています。


The fifth national industrial exhibition of 1903  a short guide-book of Japan

3 The fifth national industrial exhibition of 1903  a short guide-book of Japan

The Welcome Society  1903(明治36)年 (708-89)

これも第五回内国勧業博覧会のガイドブック。大阪城、造幣局や公会堂などが紹介されています。博覧会開会に際しては明治天皇発声とともに、全ての寺の鐘や楽器を鳴し、開会を祝ったといいます。
富士山を境に以東、以西の日本各地の名所も記載されています。


A guide to Osaka, Japan

4 A guide to Osaka, Japan

Osaka Hotel出版年不明 (382-125)

大阪ホテルの作成した英語のガイドブックです。最初に大阪ホテルが大阪を訪れる外国人にとってアメニティ豊かなところであると書いています。「中之島公園」「大坂城」「道頓堀」「天王寺公園」などを紹介しています。




B 大大阪の頃


1920年代後半、日本からシベリア鉄道を経由してヨーロッパに至る欧亜連絡輸送が確立され、日本が観光国として世界的に認識されることになります。1930(昭和5)年には、鉄道省に国際観光局が置かれ、外貨獲得の国策としての国際観光が開始されました。
 また、1912(明治45)年に外国人旅行者の誘致・あっせんを目的に創設された現在のJTBの前身、ジャパンツーリストビューローは1927(昭和2)年に法人格を得、先の政策と共に国際観光の「黄金時代」を築きました(日本交通公社社史編纂室『日本交通公社七十年史』1982年)。
 ほぼ機を一にして1925(大正14)年4月1日に大阪市域が拡張され、東京を抜いて日本一の大都会が生れます。いわゆる「大大阪」の誕生です。
 国際観光の黄金期における大大阪は旅行案内書でどのようにイメージされていたのでしょうか。

5 The city of Osaka  compiled and issued by the City Office 1920(大正9)年 (X43)

The city of Osaka The city of Osaka The city of Osaka

6 Osaka sketches 浪華の足

Hokuseido Press 1929(昭和4)年 (221.3-1300)

冒頭に“City of Water”“City of Bridges”“City of Smoke”“Japan's Kitchen” “Industrial and Commercial Capital of Japan”と書かれており、大大阪時代の街の様子を写真や近世の『浪華の賑わい』なども引用して紹介しています。
 著者のGlenn W Shaw はロスアンジェルス生まれのアメリカ人で大阪高等商業・市岡中学・今宮中学で英語を教えた教育者。日本文学の翻訳にも携わりました。戦後もアメリカ大使館に勤めた親日派で“Osaka sketches 浪華の足”の表紙では「尚 紅蓮」とも名乗っています。


Motor Road Map of Kobe,Osaka,Kyoto and surrounding districts

7 Motor Road Map of Kobe,Osaka,Kyoto and surrounding districts  

Japanese Government Railways  1931(昭和6)年(291.6-4F)

国鉄が編纂した大阪を中心とした道路地図。ひろげると97cm×64cmにもなります。

Motor Road Map of Kobe,Osaka,Kyoto and surrounding districts

8 大阪

大阪市役所産業部1938(昭和13年)(291.63-1152N)

中国語によるガイドブック。神武天皇以来の古い土地と紹介する。「現今大阪市広大一八七方公里擁有三百十万余人口、居然世界屈指之大都会也」!



C 万博の頃


1970(昭和45)年に開催された日本万国博覧会はアジアで開催された初めての万国博覧会であり、87の国と地域が参加し、6400万人を集めました。日本人の2人に1人が訪れた万博は、それまで見慣れなかった外国人と間近に接する機会を得、カルチャーショックも大きかったといいます。
 旅行案内書も万国博覧会とあって外国語のものが刊行されました。


9 Expo '70  official guide

 Japan Association for the 1970 World Exposition  1970(昭和45)年(708-130)


10 Expo '70  all color giude(708-128)

 Mainichi Newspapers 1970(昭和45)年


11 Seeing Expo

 Mainichi Newspapers 1969(昭和44)年カ(708-106)


12 Japon Exposition News (仏語雑誌)

 Japan Association for the 1970 World Exposition (708-131)


13 Japan Exposition News  (英語雑誌)

 Japan Association for the 1970 World Exposition (708-132)



D 国際観光都市 OSAKA


地域産業活性化の起爆剤としての「観光」が注目される中、積極的に“OSAKA”を海外にアピールする取組が始められています。官民一体となった「大阪」の知名度アップや文楽などの文化的資産、豊かな「食」文化や水都大阪の魅力の情報発信なども展開されています。
 外国人宿泊客は全国2位の大阪。“国際観光都市 OSAKA”への環境づくりが今、進められています。


14 大阪ブランドコミッティ『大阪ブランド戦略 活動報告 2004年9月〜2007年3月』(601.1-814N)


15 大阪街遊本-2泊3日で遊び尽くす大阪。日本語/英語/ハングル/中国語(繁体字)/中国語(簡体字)

京阪神エルマガジン社 協力 大阪観光コンベンション協会


16 大阪観光ガイド(大阪市内版) 日本語/英語/ハングル/中国語(繁体字)/中国語(簡体字)

大阪市・大阪観光コンベンション協会


17 大阪観光ガイド(大阪府全域版:日本語併記) 英語/ハングル/中国語(繁体字)/中国語(簡体字)

大阪観光コンベンション協会


18 文楽入門 日本語/ハングル/中国語(簡体字)/英語 国立文楽劇場



【参考文献】

日本交通公社社史編纂室『日本交通公社七十年史』1982年

寺下勍編著『博覧会強記』エキスプラン 1987年

三善貞司『大阪人物辞典』清文堂 2000年

砂本文彦「1930年代に欧米で発行された旅行ガイドブックに見る『国際リゾート地・ニッポン』」 『旅の文化研究所 研究報告』12 2003年  

【協力】 (財)大阪観光コンベンション協会  http://www.octb.jp/


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