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第77回大阪資料・古典籍室小展示
平成19年5月24日(木)〜平成19年7月11日(水)  (入場無料)

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べっぴんさんへの道

『都風俗化粧伝』
『都風俗化粧伝』
  「きれいになりたい」−女性たちの飽くなき美の追求は果てることがありません。シーズンごとに各メーカーから新商品が次々と発売され、『日本マーケットシェア事典 2006年版』によると、化粧品市場は2兆円を超える規模です。
  化粧のほとんどは、生死に関わる問題ではありません。しかし、有史以前から現在に至るまで化粧の歴史が途絶えたことは一度もなく、また、地球上どこを見ても、化粧文化をもたない共同体はありません。
時代によって美しさの基準は変わっても、おしゃれをしたい、美しくありたいと願う心は、昔も今も変わりがないのです。
  今回の展示では、主に江戸時代の化粧に関する資料と、「きれい」のイメージを形づくってきた化粧品の広告をご紹介します。
昔も今も女は気合い、どこまでも続く美の道を感じていただければ幸いです。


上の図に書かれている事:《 円き顔を長く見する化粧の図 》  4.此間かみを少しそり入べし。
1.此所ふきこみ白粉をすべし。  5.此間おしろいうすくすべし。
2.すべてまえがみをのけ、びんのはえぎわは、おしろいをうすくぬるべし。  6.のどより、くびすし、ほう(頬)へむけ、おしろいを濃くぬるべし。
3.此間、目立たぬようそり上ぐべし。  7.髪は少し高くゆふべし。



◆ 化粧やおしゃれに関する書物  ◆
『都風俗化粧伝』
『都風俗化粧伝』
 江戸時代にも現在のファッション誌のような本がありました。江戸時代の女性たちも、本の挿絵の美人を見て、そのお化粧法や装い方が素敵であればこぞってまねをしたことでしょう。
「はるのけはい」、「なつのけはい」など季節に応じた白粉の塗り方、「たれ目のけはい」、「鼻の低きおかたのけはい」など気になる部分をカバーする方法など、美しく見せる秘訣がいっぱいです。
 化粧品の種類が現代とは比べものにならないほど少ないのに、化粧の方法がたくさん考えだされていることには、江戸時代の人々の化粧に対してのはかりしれない情熱を感じます。


 ○『都風俗化粧伝』 佐山半七丸著 龍章堂 嘉永4(1851)  【577-24】
 ○『容顔美艶考』 並木正三著 加賀屋善蔵 天保9(1838)【子-223】
 ○『女重宝記』 苗村常伯著 元禄5(1692)【175.5-22】
 ○『女鏡秘伝書』  山本長兵衛【175.5-14】
 ○『女用訓蒙図彙』 珍書刊行会編 大正4(1915)【577-22】
 ○『女大学宝箱』  貝原篤信  柏原清右衛門 弘化5(1848)【石崎175-3】
 ○『女四書芸文図会』 村田嘉言画 宋栄堂等 天保6(1835)【175.5-16】


『容顔美艶考』 『女用訓蒙図彙』
『容顔美艶考』 『女用訓蒙図彙』


◆ 大坂の白粉仲間・白粉屋 ◆

『おしろいはりまぜ帖』
『おしろいはりまぜ帖』
「色の白いは七難隠す」といわれるほど、美人は色白だということは長い間の日本の伝統で、化粧をするうえで白粉は欠かせないものでした。
白粉が商品として大量に造られ、市販されるようになったのは江戸時代からです。
この白粉の製造は泉州堺が発祥地で、銭屋宗安や薬種屋小西清兵衛らが、明の白粉を模倣して作ったのが始まりだと言われています。 近世大坂の白粉商は、主に生産に携わる正味屋と、販売に携わる箱詰屋に分かれており、その商売領域を巡ってしばしば争いを繰り返していました。


文化文政から天保頃の小町香、さくらべに、をぐら油など大阪化粧品の商標と袋を25種貼り付けたものです。

 ○『白粉商組合仲間商標簿』  出版者不明 [1887]
 【706-803】
 ○『おしろいはりまぜ帖』  【大和銀-87】
 ○『白粉株仲間改正申合印形帳写』 文化8年9月改(1811)  【大和銀-173】
 ○『白粉商仲間規約』 明治18年5月(1885)  【文書-199】


◆ 化粧品の広告 ◆

dentsu online(株式会社電通:http://www.dentsu.co.jp/)の「日本の広告費」によると、2006年業種別広告費は「化粧品・トイレタリー」がトップで、広告費全体の10%を占め、その額はおよそ3600億円にもなります。現代もそうであるように商品イメージが優先される化粧品は、宣伝対象になりやすく宣伝効果も高いため、華やかな化粧品の広告がこれまでに多く出されてきました。

 ○『女達磨之由来文法語 上』  山東京伝作 歌川豊国画 鶴屋 文化12(1815) 
 【255.5-6】
 ○『裾模様沖津白浪』 鶴屋南北作 歌川国貞画 甘泉堂 文政11(1828) 【255.5-34】
 ○『明治広告帖』 【大和銀-216】
 ○『大阪化粧品商報 1340号』 昭和12年3月8日 大阪化粧品商報社 【大和銀-116】
 ○『大阪朝日新聞』  大正7年1月25日


『女達磨之由来文法語 上』 『明治広告帖』
『女達磨之由来文法語 上』 『明治広告帖』


『大阪朝日新聞』 大正7年1月25日










『大阪朝日新聞』 大正7年1月25日
クラブ化粧品の広告です。これは鉄道式化粧法図解と呼ばれ、その分かりやすさと斬新さで、広告史上注目を集めた作品です。





主な参考文献

 『増補改訂 化粧史文献資料年表』 村沢博人ほか編集 ポーラ文化研究所 2001 【383.5-38N】
 『江戸の化粧』 陶智子著 新典社 1999 【383.5-28N】
 『江戸の化粧 川柳で知る女の文化』 渡辺信一郎著 平凡社 2002 【L33-143N】
 『化粧ものがたり 赤・白・黒の世界』 橋雅夫著 雄山閣出版 1997 【383.5-20N】
 『都風俗化粧伝』(東洋文庫414) 高橋雅夫校注 平凡社 1982【577-941#】
 『鉛丹及び鉛白と鉛屋市兵衛』  鉛市商店・荻田商店 1939 【778-411】
 「大阪の白粉仲間」 池田治司著 
『大阪商業大学商業史博物館紀要』1号 大阪商業大学商業史博物館 2001)
【P67-78N】
 『中之島図書館メールマガジン 第14号』 大阪府立中之島図書館 2006
    【http://www.library.pref.osaka.jp/nakato/archives/20060328.txt】 
 『広告で見る江戸時代』 中田節子著 角川書店 1999 【674.2-29N】
 『日本広告史』 八巻俊雄著 日本経済新聞社 1992【674.2-11N】
 『なにわの新聞広告100年』 「なにわの新聞広告100年」編集委員会編集 大阪広告協会 2002 【674.6-70N】


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