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第75回大阪資料・古典籍室1小展示
平成19年1月12日(金)〜3月7日(水)  (入場無料)


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江戸の食

−料理本・大坂の料理屋・おかず番付で見る−
『素人包丁』         『奇杯品目録(浪花浮瀬引札)』 
                           『奇杯品目録(浪花浮瀬引札)』


    『素人包丁』
『素人包丁』

平成17年7月に食育基本法が施行され、「食育」ということばを良く聞くようになりました。人々の「食」に対する関心が大きく広がってきたように思われます。「食」と私たちのくらしは切っても切れない関係にあります。
私たちの食生活は、どう形成されてきたのでしょうか。私たちが食べている料理のほとんどは、江戸時代に工夫され、完成した料理の延長線上にあるといいます。
温故知新ということばがあるように現代の「食」を知るためにも江戸時代の「食」事情を訪ねてみたいと思います。

日本料理は、室町時代に大きな展開を見せ、江戸時代に急速な発展を遂げました。
宝暦〜天明期(18世紀後半)の大都市には本格的な料理屋が生まれ、さまざまな料理本が出版されるに至って、料理文化が広く人々に享受されるようになりました。
江戸時代を通じて発展した優れた料理文化や、食生活の展開には、じつに多くの点で目を見張るものがあります。


●料理本の時代

『甘藷百珍』
『甘藷百珍』
中世から近世初・中期のころまでは料理を学び実用に供する専門の料理人のための料理書であったのが江戸後期になり、料理の参考ともするが読んで楽しむという要素が強く加わった料理本が多く出版されるようになりました。
料理を楽しむという“遊び”の余裕が加わって、読本や洒落本同様広く庶民にも親しまれるようになりました。
作者も専門の料理人とは限らず、文人の余興として書かれることもあり、読者も料理に直接携わる者から、単に楽しみとして読む者へと、社会的な広がりを見せました。



『素人包丁 初編・2編』 浅野高造 享和3(1746)−文化2(1805) 【石崎593-1】
『献立筌』 山河下物 宝暦10(1760)  【593-74】
『新撰会席しっぽく趣向帳』 禿箒子 明和8(1771)  【593-18】
『豆腐百珍』 正・続 何必醇 天明2(1782)・天明3(1783)     【593-20】
『万宝料理秘密箱』 器土堂 天明5(1785)  【593-28】
『料理早指南大全』 醍醐散人 享和元(1801)  【593-62】
『会席料理細工包丁』 浅野高蔵 文化3(1806)  【子-552】
『甘藷百珍』 珍古楼主人 文化13(1816)  【593-78】
『江戸流行料理通』 八尾善主人 文政5(1822)  【593-76】
『鼎(てい)左(さ)秘(ひ)録(ろく)』 国華山人 嘉永5(1852)  【774-22】
『四季献立会席料理秘嚢抄』 池田東籬 嘉永6(1853)  【子-169】

『鼎左秘録』 『豆腐百珍』
『鼎左秘録』(ていさひろく) 『豆腐百珍』


●大坂の料理屋

大阪はよく食い倒れの町といわれます。
諸国から物資が集まって海の幸や山の幸など豊富な食材に恵まれ、旬のものを安く食べることが出来ました。さらに、塩、醤油などの調味料、食事を盛りたてる酒など上質のものを近郊から取り寄せることができたので、料理メニューが発達しました。
高級料理店から町に散在する屋台店まで、幅広い階層で誰でも味覚を満喫できる食べ物屋が多くありました。
料理屋番付に載る有名な料理屋の引札等紹介します。

『難波料亭仙一方引札』
『難波料亭仙一方引札』
『浪花料理屋家号附録』「たのしみ草紙 参」 【045-192】 
『難波料亭仙一方引札』    【枚-53】
『浪花百景 西照庵月見景』  【甲和-1086】
『浪花百景 増井浮瀬夜の雪』 【甲和-1086】
『奇杯品目録』(浪花浮瀬引札) 【593-68】
『浪華松野尾茶店之図引札』  【378-508】
『花の下影 幕末浪花のくいだおれ』 
岡本良一監修 朝日新聞阪神支局 1986  【383.8-105N】


 
『浪華松野尾茶店之図引札』 『浪華松野尾茶店之図引札』 『浪華松野尾茶店之図引札』
 『浪華松野尾茶店之図引札』
                                             
 










●おかず番付

「日用倹約料理仕方角力番付」
「日用倹約料理仕方角力番付」

江戸時代の庶民は日用どんなものを食していたのでしょうか。
江戸庶民のおかずを知るのに有効な資料におかず番付というものがあります。
江戸後期、盛んに出版されるようになった番付形式により紹介された庶民の人気惣菜はどのようなものでしょうか。また当時、料理に使われた食材について知ることが出来る番付などもあります。

『[安上り惣ざい番付]』  「日用倹約料理仕方角力番付」 【027-26】
『包丁里山海見立角力』  「浪花みやげ3編2」  【027-52】
『包丁里山海見立角力』  「大阪万番附総集帳 4」  【027-8】
『青物料理の献立』  「浪花みやげ1編5」  【027-52】
『日用おかづの見立』 「開花浪花土産 3」  【041-330】
『年中番菜録』 千馬源吾 嘉永2(1849)    【子-262】


参考文献

『江戸時代料理本集成』  吉井始子監修 臨川書店 1977-1978  【383.8-400N】
『翻刻江戸時代料理本集成』  吉井始子編 臨川書店 1978-1981 【593-1209】
『江戸の料理史』 原田信男著 中央公論社 1989        【577-1617】
『論集江戸の食』 石川寛子編 弘学出版 1994         【383.8-128N】
『浮瀬 奇杯ものがたり』 坂田昭二著 和泉書院 1997     【210.5-240N】
『大江戸料理帖』 福田浩・松藤庄平著 新潮社  1999     【383.8-317N】
『天下の台所・大坂』 脇田修監修 学習研究社 2003      【216.3-622N】
『江戸の料理と食生活』 原田信男編 小学館 2004       【383.8-528N】



江戸料理を研究し再現したものは数多くあります。
今回の展示で江戸料理に興味をもたれた方は下記の資料を参考に一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

『再現江戸惣菜事典』 川口はるみ編 東京堂出版 1995    【596.2-164N】
『料理百珍集』 原田信男校註・解説 八坂書房 1997     【596.2-223N】
『変わりご飯』 福田浩・島崎とみ子著 柴田書店 1986    【中央 593-2047】
『江戸料理をつくる』 福田浩料理 教育社 1991       【中央 596.2-35N】
『再現江戸時代料理』 松下幸子・榎木伊太郎編 小学館 1993 【中央 596.2-82N】
『万宝料理秘密箱』 奥村彪生著 ニュートンプレス 2003   【中央 596.2-541N】


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