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第68回大阪資料・古典籍室1小展示
平成17年11月1日(火)〜1月11日(水)  (入場無料)



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江戸のビジネス書?!『商売往来』





 『商売往来』堀流水軒著は江戸時代、寺子屋での手習いテキストとして元禄7年(1694)大坂から出版されました。内容は商取引に関する帳面類、貨幣、商品、商人生活に必要な教養・教訓など4部からなり、商人は『商売往来』1冊学習すれば商業活動に必要な最低の学力を身につけることが出来ました。この手軽さと有用性が評価され明治初期まで200種以上の増補、改版を重ね大変流布しました。
 今回の展示では明治期までに出版された様々な『商売往来』をご紹介します。
 現代日本ビジネスマンの原点ともいえる『商売往来』の世界に興味をもっていただければと思います。
商売往来絵字引写真





《江戸時代の商売往来》      【 】: 中之島図書館請求記号

1 『商売往来』  大坂 糸屋市兵衛板  【190-194】
凡(およそ)商売(しょうばい)持扱(もちあつかう)文字(もんじは)員数(いんずう)取遣之(とりやりの)日記(にっき)証文(しょうもん)注文(ちゅうもん)請取(うけとり)質入(しちいれ)算用帳(さんようちょう)・・・と始まる本文は全て漢字、それを漢文調に記し右側に平仮名の総振りをつけて楽に読み下せるように配慮されている。商取引に関する用語類、商取引の対象となる商品名が読み下しやすいようにテンポよく羅列され、最後に商人の生活や心得について述べる。商人の子どもに学問を勧めたこと、芸道の稽古を認めたこと、始末・柔和・正直の道徳を説いたことが特徴としてあげられる。『商売往来』が出版された元禄時代は新興する商人が台頭し、商人のためのテキストとして時代のニーズに応える形で出版された。あまりにも現実生活にマッチしていたため、長い間多くの人々に役立つ手本として受け入れられた。

2 『商売往来』改正  西川広道書 大坂 綿屋喜兵衛板 【190-204】

3 『さ山商売往来』  さ山周暁著 東都 鶴屋喜右衛門板 安永5(1776)   【190-3】
さ山周暁は江戸の書家。巻末に五畿七道の諸国名を記す。

4 『御家(おいえ)商売往来并官名』  坂川芝泉堂書 東都 和泉屋吉兵衛板 文政8跋(1825) 【中西-452】
坂川芝泉堂は御家流(おいえりゅう)の書家。商売往来が手習いのテキストであったことから御家流系統の書家のものが多く出版されている。

5 『両点講釈大全商売往来』  近沢幸山書 東都 若林喜兵衛板 文久元(1861) 【190-98】
「商売往来」「拾遺商売往来」「商売往来講釈」の三編を合冊したもの。
「商売往来」は本文に音訓を施したもの、「拾遺商売往来」は「商売往来」に漏れた語句で綴ったもの。「商売往来講釈」は「商売往来」本文を語句ごとに区切って大字で掲げ割注を施したもの。

6 『傍訓商売往来絵抄』  松川半山画 [大坂] 播磨屋喜助板 弘化3(1846) 【190-88】
本文の左側に楷書体で漢字を再記したものに本文とは別の読み仮名をつけている。読みの学習の便を図ったもの。

7 『商売往来絵字引』  又玄斎南可著 【540-6】
商売往来本文が漢字ばかりであったため、子どもにもわかりやすいより平易なものが求められた結果か、本文の日用の語彙のすべてに彩色入りの絵と説明が記されている。

8 『商売往来絵字引』   狭川半水訂 長谷川貞信画 大坂 綿屋喜兵衛板 【540-8】
題簽書名は講釈画本商売往来。

9 『商売往来絵字引』  中井芳滝画 金随堂 【子-622】
題簽書名は画本商売往来。巻頭に色刷りの士農工商四職の図を載せる。

10 『商売往来画抄』  槐亭賀全編 東都 吉田屋文三郎板 【190-202】
本文の左側に略注を囲み枠で示す。挿絵はすべて頭書に示す。



《明治時代の商売往来》 

1 『続世界商売往来』  橋爪貫一著 東京 雁金屋清吉板 明治5(1872) 【540-12】
世界商売往来は貿易商子弟用の教科書として作られたもので、明治四年板を初編として以後五編まで刊行された。この『続世界商売往来』は貿易商に必要な知識・教養・心得等について記したもの。本文中の主な語に注解または図解を示し、頭書に用語の英単語とその読みを示す。巻頭に各国の貨幣と換算がある。

2 『開化普通商売往来』  住正太郎編 村田海石書 大阪 此村庄輔板 明治6(1873) 【190-78】

3 『開化商売往来』  松川半山編・画 大阪 岡田茂兵衛板 明治6(1873) 【190-192】
商売往来の明治期改編版の一つ。新規の語彙を集録して子どもの理解を助けるために絵も加える。

4 『万国新商売往来』  松川半山編・画 大阪 赤志忠雅堂板  明治6(1873) 【223.9-86】
商売往来が明治初年の実情にそぐわない為、文言を一新し特に西洋の諸品などの新語を多く盛り込んだ往来。巻頭に色刷りの「地球東(西)半面図」と「五大州広狭人口総数大略」を掲げる。

5 『万国商売往来』  横田重登著 松川半山画 京都 林芳兵衛板 明治6(1873) 【540-10】
商売往来にならって万国交易大意、諸国産物など近代国際社会における物産・通商のあらましと関連知識とを概説する。巻頭に色刷りの「商法会社の図」を掲げる。

6 『新撰画入商売往来』   赤沢政吉著 大阪 花井知久板 明治12(1879) 【190-206】
商売往来の明治期改編版の一つ。

7 『画引新撰改正商売往来』  伴源平著 大阪 赤志忠七板 明治16(1883) 【540-4】
商売往来絵字引の増訂版。銅板刷りの和装本で絵字引と同体裁の図解入り本文に、
種々の頭書記事を載せる。巻首、巻末に「勧業博覧盛大之図」「浪花心斎橋通り諸商業隆盛之図」「商家繁昌之図」を掲げる。

8 『絵入普通商売往来』  高峰寅二郎編 大阪 田中太右衛門板 明治16(1883)  【542.3-14】
商売往来絵字引の改編版。挿絵・割注とも絵字引にほぼ等しいが部分的に増補または削除が見られる。巻頭に「大阪停車場之図」「摂津国天保山之図」「商家繁昌之図」を載せる。



《商売往来より派生・発展したもの》 

1 『万家日用商家往来』  清妻延明編 西川竜章堂書 大阪 伏見屋嘉兵衛板 【大和銀-4】
商家子弟用に商人の心得と商家要用の語句などを列挙した往来。後半「寺子教訓書」では手習いの大切さ、非行の戒め、学問出精を説く。「堂島米相場」「小西薬種店の商店風景」を載せる。

2 『倡賣往来』  十返舎一九著 文化2序(1805)  【朝日255.4-3】
商売往来の構成にならって倡家用語・隠語や遊女心得、遊里風俗などを戯文で書き綴った往来。頭書遊里風俗の挿絵とともに本文要語の解説「倡賣往来弁解」を置く。

3 『頭書絵入問屋往来』  きん流堂書 大阪 石川屋和助板 弘化3(1846) 【190-38】
江戸時代の商業活動において分業が進んでいく中で問屋業に必要な語彙や心得を記している。

4 『商社往来』   下 加藤佑一著 東京 柳原喜兵衛板 明治6(1873) 【223.9-116】
商社設立に関する法令、約定書、会社規則、外国人の雇用手続など、近代商業に関する知識・心得を往復書簡に認めた往来。書簡文の体裁で商社運営に関する法規・技術・用語全般を教えた往来である。



■主な参考文献

『往来物分類目録』  岡村金太郎編 啓明会 1925 【015-37#】

『近世民衆の手習いと往来物』  梅村佳代著 梓出版社 2002 【372.1-442N】

『往来物解題辞典』  石川松太郎監修 大空社 2001 【375.9-294N】

『商売往来の世界』  三好信浩著 日本放送出版協会 1987 中央所蔵 【541.3-275#】

『日本教科書大系・往来編 産業』  石川謙編纂 講談社 1978  中央所蔵 【193.5-169#】

『往来物大系 産業科往来』  大空社 1993  中央所蔵 【375.9-204N】



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