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第5回大阪資料・古典籍室1小展示
平成8年11月1日〜11月29日


明治期大阪の講談速記本



−講談速記本から講談本へ、玉田一派と立川文明堂−


 明治・大正期の寄席の時代、落語・浪曲・漫才とともに、講談も庶民の楽しみであり、講談師の流れるような口調から、寄席に集う人々は、真田十勇士や岩見重太郎などの英雄・豪傑・侠客の活躍の様を想像し、胸踊らせた。その毎回の講演を、速記者が書写し、それに手を加えて出版したものが「講談速記本」と言われるものである。

 「講談速記本」の嚆矢は、西洋近代速記術が日本に紹介された2年後の明治17年、東京で出版された三遊亭円朝の「牡丹灯籠」と言われている。
 大阪は、遅れること5年、明治22年9月に落語・講談など演芸の速記を主とした雑誌「百千鳥」が駸々堂から出版されたのに始まる。以後、講談速記本は、講談師の活躍とともに、数多くの読者の心を掴み、また、貸本屋の重要な商品として、駸々堂を始め、当時の大阪の主だった出版社、岡本増進堂、博多成象堂、柏原奎文堂などの種々様々な出版社から発行されることとなった。

 その後、講談速記本の読者層が広まるに沿って、速記者の創作部分が多くなり、読み物として独立していく道をたどる。そこに登場するのが、今なお多くの日本人の郷愁を誘う立川文庫である。

 今回は、当館が所蔵する約400冊の講談速記本から、その過渡期にある玉田玉秀斎講演、山田唯夫等速記、立川文明堂(明治37年創業)刊の速記本を中心に展示し、その概要を見てみたい。




参考文献


明治期速記本基礎研究 旭堂小南陵著  大阪  たる出版  1994.8
立川文庫の英雄たち 足立巻一著   東京  文和書房   1980.8
女紋 池田蘭子著   東京   河出書房新社  1960.1
明治の上方講談師 1−24回 旭堂南陵著  雑誌「上方芸能」掲載 7−30号(1969.5-1973.7) 雑-2327



展示資料リスト


A 大阪の講談速記本

1.神田白竜講演・丸山平次郎速記  「大道寺源左兵衛門」 駸々堂  明治29 229.8-349#
2.神田白竜講演・丸山平次郎速記  「(伊達騒動)乳人政岡」 駸々堂  明治43 229.8-337#
3.神田白竜講演・丸山平次郎速記  「(講談)朝比奈巡島記」 駸々堂  明治44 229.8-339#
4.神田白竜講演・丸山平次郎速記 「(関西漫遊)水戸黄門実記後編」 柏原奎文堂 明治45 229.8-333#
5.旭堂小南陵講演・山田都一郎速記 「飯田武勇伝」 島之内同盟館 明治44年 229.8-731#
6.玉田玉秀斎講演・山田酔神速記 「(奥平源八郎)浄瑠璃坂仇討」 中川玉成堂  明治36 229.8-555#

      

B 東京の講談速記本

7.松林百燕講演・速記社々員速記 「栗原百介」 萩原名月堂 明治31年 229.8-751#
8.田辺南鶴講演・一ツ穴の狢速記 「(怪談)百鬼夜行」 春江堂 明治39 229.8-711#
9.鈴木金輔編 「(千変万化)白狐おせん」 大川屋書店 明治42 229.8-967#
10. 松林百燕講演・速記社々員速記 「(敵討)正木武勇伝」 武田音作 田中正平 明治31 229.8-753#



C 立川文明堂の速記本

11. 玉田玉秀斎講演・山田唯夫速記「( 吉野山豪僧) 最後の南岳坊」 明治43 229.8-447#
12. 玉田玉秀斎講演・山田唯夫速記 「( 加藤家十虎勇士) 赤星太郎兵衛」 明治44 229.8-595#
13. 玉田玉秀斎講演・山田唯夫速記 「( 豪傑) 花房一角」 明治44 229.8-451#
14. 玉田玉秀斎講演・山田唯夫速記 「富士野巻狩」 明治44 229.8-579#
15. 玉田玉秀斎講演・山田唯夫速記 「( 片鎌鎗の達人) 宝蔵院覚禅」 明治44 229.8-581#
16. 玉田玉秀斎講演・山田唯夫速記 「( 天目山大仇討) 三浦武勇伝」 明治44 229.8-443#
17. 玉田玉秀斎講演・山田顕速記 「( 侠客) 旭権五郎」 大正5 229.8-437#